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October 13, 2022

米中がインターネットと世界市場を二分する時代へ j-fashion journal(453)

1.中共の5Gと監視パッケージ

 次世代通信網の5Gは、通信性能がPremium 4Gの約20倍に高速化され、同時接続端末数は約10倍になり、通信の遅延はほとんどなくなるという。
 ドコモが紹介する5Gがある未来はこんなイメージだ。(https://www.bizsolution-docomo.jp/special/5g/social.html)
 (1)ショベルカーを自宅から操作できる
 (2)ロボットの精緻な連動が可能に
 (3)花火大会で「スマホが繋がらない」が過去のものに
 (4)誰もが“顔パス”の世界へ
 (5)スマートカーで事故ゼロ・渋滞ゼロの社会に
 (6)超高品質VRでよりリアルな疑似体験を
 以上のような前向きでワクワクするようなイメージが紹介されている。
 しかし、技術は良い方向に、悪い方向にも活用できるものだ。
 例えば、コロナ禍の期間中に、中国は国民監視システムをほぼ完成したと伝えられている。
 (1)GPSと連動したスマホアプリで、行動が記録され、感染リスクのある人と接したかどうかがチェックできる。これにより、完全に個人の行動が把握できる。
 (2)ドローン、監視カメラと顔認証技術とAI技術により、10億人以上の中から個人を特定できる。
 (3)5Gにより、大容量の画像データがリアルタイムで収集できる。
 (4)IoTとカメラにより、家電製品等が全て監視システムとして活用できる。
 (5)ビッグデータ処理が可能なAIにより、インターネット上の情報の監視とコントロールができる。
 もし、世界中に5Gネットワークが完備し、バックドア機能のついた中国製の通信機器が使われれば、世界中の情報は全て中国共産党が収集、分析、コントロールできるようになる。
 これと香港国家安全維持法により、中国共産党は世界中から個人を特定し、人権弾圧することが可能になるだろう。
 もちろん、技術を悪用するかは分からないが、実際にウイグル人、チベット人、モンゴル人等は人権弾圧を受けている。

2.米国防権限法で中国5社を政府調達から除外

 2019年8月13日に、米政権は、国防権限法により、華為技術(ファーウェイ)、中興通訊(ZTE)、海能達通信(ハイテラ)、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)、浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)の中国企業5社から製品を調達するのを禁じる措置を発効させた。実施は2020年8月13日である。更に、この5社の製品を使う企業も米政府との取引は禁止され、そこには日本企業800社も含まれている。
 中国企業、日本企業共に、米政府とのビジネス額は少ないだろう。だからと言って、影響がないと考えるのは大間違いだ。
 まず、米国政府は同盟国に同様の措置を求めるだろう。そうなれば、日本政府とのビジネスが禁止される。更に、地方政府や政府の補助金を使ったプロジェクトからも締め出されるかもしれない。
 米政府は日本企業に1年間の猶予を与えた。ここで決断をしないと将来はなくなる。
 米政府に最も警戒されているソフトバンクでさえも、今回の米政府の措置には従う方針だ。

3.世界のインターネットは二分される

 実は、既に世界のインターネットは二分されている。中国とそれ以外の国だ。
 多くの国は、インターネット上でオープンである。互いに自由に情報交換することが可能だ。
 中国は、国境のようにインターネットの壁を築いている。国内から海外のサイトに自由にアクセスすることはできない。更に、アクセス制限だけでなく、情報の検閲も行っている。中共の意に沿わない情報は次々と削除され、場合によっては個人が特定され、逮捕されることもある。
 中共の情報統制の一部でGAFAが協力しているという噂もある。実際、西側諸国でも、中共に批判的なコンテンツが制限されたりする。
 中共は、この「インターネットの壁」をイランにも輸出しようとしている。一帯一路で連携した中国陣営諸国には、中国と同様のインターネットの壁が作られるに違いない。情報統制をしないと中共連合の統制が取れないからだ。

4.世界の市場も二分される

 インターネットだけでなく、オフラインのリアルな市場も二分されようとしている。
 米国は、中共の影響を受けている中国企業をサプライチェーンから外すことを目指している。そしてG11構想、経済繁栄ネットワーク(EPN)構想を打ち出している。
 その動きに呼応するかのように、英国のボリスジョンソン首相が「D10クラブ」構想を発表した。
 これらの構想は反中共の経済圏を作ろうという意味で共通している。各国の構成は微妙に異なるが、ほとんどが共通している。
 D10は、日本、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダのG7に、韓国、インド、オーストラリアを加えた民主主義10カ国である。この10カ国で「脱中国の5G整備」を進めようというものだ。
 G11は、G7に韓国、ロシア、インド、オーストラリアを加えた11カ国である。
 巨大な中国市場を切り離す代わりに、巨大な人口を持つインドを加え、ファーウェイ等の中国企業を切り離す代わりに、日本、韓国、米国等の企業が結集する。ここにイスラエル、台湾等が加われば、かなり強力なサプライチェーンと市場が誕生することになる。
 前述した米国防権限法に従うかどうかは、この民主主義陣営参入の踏み絵にもなるだろう。
 もし、そうなるならば早めに準備をして、新たな時代に積極的に対応した方が有利になるに違いない。今、日本企業の経営者は決断を迫られている。

*有料メルマガj-fashion journal(452)を紹介しています。本論文は、2020.7.27に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。  

日・米・中の複雑な関係 j-fashion journal(452)

1.日本企業は中国と付き合うべからず

 米中貿易戦争が始まり、コロナ禍とマスク問題があり、中国の人権問題が明るみに出て、香港国家安全維持法による民主化デモ弾圧が起きた。
 米国は中国への経済制裁や金融制裁を強めている。一方、台湾はコロナウイルス防疫でも見事な対応を見せ、日本に対する支援も行った。中国で提唱する一国二制度を拒否し、独立の姿勢を示し、米国も台湾をバックアップしている。
 日本にとって米国は同盟国、中国は反日教育を行い、尖閣諸島の海域で挑発行動を繰り返す反日国、台湾は親日国というレッテルが貼られた。そして、「なぜ、日本企業は中国と離れないのだ。中国に依存することは悪だ」という論調が目立つようになった。
 しかし、実際にはもっと複雑な状況である。「親日・反日二元論」の前に歴史を振り返ってみたい。

2.日米繊維交渉と日中国交正常化

 1971年、日米繊維交渉が決裂し、日本政府は米国政府の圧力に屈した形で繊維製品の対米輸出の自主規制を受け入れた。
 この背景には沖縄返還問題があった。ニクソン政権は、沖縄返還の代わりに繊維規制に同意するように求めたのである。この時、交渉の最前線で通産大臣として奮闘したのが田中角栄氏であり、翌72年には総理大臣に就任した。
 1972年9月25日に、田中角栄首相が現職総理大臣として北京を初めて訪問し、周恩来総理と首脳会談を行い、「日中共同声明」に調印した。同時に、国交のあった台湾に断交を通告した。
 日中国交正常化のシンボルとしてパンダが上野動物園にやってきて、日本中が日中友好ブーム、パンダブームに沸き返った。
 しかし、この日中国交回復は、米国の頭越しに行われたとして、アメリカ政府は激怒した。そのせいかどうかは明らかになっていないが、1976年ロッキード事件が発覚し、田中角栄首相が逮捕され、田中角栄は失脚した。。
 
3.米中パートナーシップによる対日政策

 戦後日本の高度経済成長に伴い、日本と米国は様々な分野で貿易問題を抱えていた。
 日本と経済対立を強める米国政府は、一方で中国との関係を強化していった。
 73年キッシンジャー大統領補佐官は「イギリスを除き、中国は国際認識で我々に最も近いのではないか」と大統領に語り、74年には中国を「暗黙の同盟国」と称するまでになった。
 75年には、フォード大統領がベトナム戦争後のアジア太平洋政策を発表した。この中で、米国は太平洋国家であり、この地域における米中の「対日パートナーシップがアメリカの戦略の柱である」と語った。日米は経済的に対立し、両国とも中国と友好関係を結んだ。そして、中国は巧みに日米両国をコントロールし、両国から様々な支援を引き出した。
 米国の親中政策はクリントン大統領に引き継がれた。1997年江沢民主席が公式に訪米した際、まずホノルルに立ち寄り、アリゾナ記念館に花輪を捧げた。彼はかつての米中間の同盟を想起させ、9月に成立したばかりの日米の新ガイドラインを牽制したのだ。
 クリントン大統領は、首脳会談後の共同声明で米中両国の「建設的で戦略的なパートナーシップ」を強調し、会談を通じて三つのノー(台湾の独立、「二つの中国」、台湾の国連加盟を認めないこと)を約束した。
 1998年、クリントン大統領は米大統領としては天安門事件後、初めて訪中したが、その前後に同盟国である日本や韓に立ち寄ることはなかった。しかも、首脳会談後の記者会見で、アジア金融危機における中国の金融政策を賞賛する一方で、日本の金融改革を促した。
 クリントン大統領は中国のWTO(世界貿易機関)加盟を推進し、2000年9月までに、対中最恵国待遇の恒久的付与を盛り込んだ貿易法案を議会で成立させた。この年、アメリカの最大の貿易赤字国として中国が日本を抜いた。
 
4.日米は安全保障と経済の両面で協調できるか?

 クリントン大統領の次の大統領、オバマ大統領は、ほとんど中国を放任した。その裏で、中国は南シナ海の領有権を主張し、ウォール街との連携を進めた。中国企業は次々とアメリカで上場し、ウォール街も莫大な利益を上げた。
 しかし、トランプ政権になって、中国への対応は一変した。アメリカ第一主義を掲げるトランプ大統領は、中国や日本のせいで失った米国の製造業と雇用を復活させると語った。そして、米中貿易戦争が始まり、互いに報復関税を掛け合った。
 次にファーウェイの通信機器にバックドア機能の疑いがあるとして、ファーウェイ社の通信機器を禁止する措置を打ち出し、西側諸国にも同様の措置を求めた。
 更に、チベット、ウイグルにおける人権弾圧問題が浮上した。
 そして、新型コロナウイルスの感染が始まった。米国は感染者が世界最多となり、最も深刻な被害を受けた。
 米国政府は中国の責任を追求し、中国は米国が感染源であるという情報を流した。米国は、中国政府が感染源に関する情報を隠蔽したとして、損害賠償を求める動きに出た。同時に、中国にコントロールされているとしてWHOを非難し、脱退を決めた。
 次に起きたのが、香港民主化運動の弾圧と香港国家安全維持法の制定である。そして、それら全てに対して、米国は本格的に対抗し、制裁を課す動きに出ている。
 考えてみれば、今回初めて日米が協調し、中国と対峙している。長年経済的に対立してきた日米両国は、中国という共通の敵を得て、安全保障も経済も含む強固な同盟国になろうとしているのかもしれない。

*有料メルマガj-fashion journal(452)を紹介しています。本論文は、2020.7.20に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。  


 

中国に対する大きな誤解 j-fashion journal(451)

1.中国は分割される?

 中国は広大な国土を持っているので、分割して統治すべきだという意見がある。「中国は分割される」という予言めいた書籍も多い。
 しかし、中国は分割するどころか、一国二制度の香港を完全に中国に組み入れてしまった。更に、「一帯一路」で各国に融資をして、返済不能になると、鉄道や港湾等の権益を拡大している。中国は、世界に「中国」を輸出しているのだ。
 中国が分割論は、完全に誤解である。中国分割論は日本の道州制に似ている。道州制は、行政の効率等を考え、広域の行政区分を設け、自治権を与えるというものだ。しかし、中国のような独裁国家にとって、人民のサービスの向上や行政の合理化は優先順位が低い。人民へのサービスを向上するために分割統治するのではなく、文化や宗教が異なる人民を一括統治すべく、思想統制を行うという考え方である。
 「共産党支配を世界に拡大する」ことを目的としている国家が国内を分割統治する意味はない。中国は分割されない。むしろ、覇権を求め領土の拡大を目指している。
 
2.中国は民主化する? 
 
 西側諸国は「中国は経済的に貧しいから全体国家を選んだのであり、経済的に豊かになれば、やがて個人の人権意識が芽生え、民主主義を選ぶだろう」と考えていた。
 これは民主主義の方が社会主義より進んでいるという信念に基づいた意見である。しかし、中国は経済活動だけに資本主義的なルールを導入し、国家運営は共産党一等独裁を継続しながら、経済成長をなし遂げ、GDPを世界第二位に押し上げた。中国は民主主義に移行しなくても経済成長が可能であることを証明した。むしろ、民主主義は無駄が多く、非効率的であると考えているだろう。確かに、経済成長だけを考えるならば、人民を統率し、働きアリのように教育した方が有利かもしれない。通常ならば、個人の尊厳や人権が経済に優先されるが、中国はそうではない。
 経済活動の目的が人民を豊かにすることではなく、共産党の支配力を高めることなのだから、普通選挙などあってはならないのである。 
 
3.中国は崩壊する?
 
 何十年も前から、「中国経済は崩壊する」あるいは、「中国の政治体制は崩壊する」という書籍が数多く出版されたが、未だに崩壊していない。現在も、米中経済戦争、コロナ禍、洪水や蝗害によって、中国は崩壊まで秒読みに入ったとされているが、本当だろうか。
 中国は我々の常識では判断できない。
 我々は自分の立場で、経済第一に考える癖がついている。損をすることはしないし、採算に合わないこともしない。しかし、中国は国家としての損得を優先する。一つの企業、一つのビジネスでの損得は関係ない。赤字でも世界に浸透するなら、安価な商品を市場に出す。そして競合他社を追い込み、最終的には買収してしまう。また、企業間競争でも、競合他社の不満分子を調べ上げ、ハニートラップを仕掛け、情報を聞き出し、工作員にする方が、正面から競争するより安上がりだ。こうして世界各国に浸透した結果、親中勢力は意外に数も多く、根深いのである。
 また、世界中で5G、監視カメラ、顔認証、ドローン、スマートグリッド等による高速デジタル通信革命は進行しており、ファーウェイを潰したとしても、中国政府の影響力の強い中国、台湾メーカーや、中国資本に買収された西側諸国のメーカーが代替えになるかもしれない。
 中国には西側諸国のコンプライアンスはない。むしろ、マフィアのような行動原理を持っており、マフィアのように世界に浸透している。
 しかも、中国では、人民が大量に餓死したとしても、政府は崩壊しないのだ。

4.中国の世界覇権の野望は消えない!

 仮に、中国がアメリカからの制裁に屈したとしよう。中国は自らの非を認め、悔い改めると宣言する。金額はともかく、コロナ禍を招いた隠蔽行為の賠償金も支払う。何人かの官僚は引責辞任する。その代わり、政治体制は変えないし、指導者も変えない。そして、実際に軍事的行動を控え、笑顔の外交戦略を展開する。アメリカとの貿易も次第に開放され、世界との貿易も復活する。そして、再び、中国は世界の工場として復活する。
 3年後か5年後に再び、ウイルス感染症が報告される。今度は中国からではなく、アフリカやイタリアから発生するかもしれない。中国は献身的にウイルス対策外交を展開するだろう。
 さて、中国は変わっているだろうか。私は中国の世界覇権の野望は消えないと考えている。5年、10年間、何もなくても、いつか行動を開始するに違いない。それが中国共産党だ。

*有料メルマガj-fashion journal(451)を紹介しています。本論文は、2020.7.13に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。  

中国の経済成長が止まる理由 j-fashion journal(450)

1.中国は「経済」で世界を脅迫した

 鄧小平は、改革開放と共に、「アメリカに逆らわず、国際的に目立たないこと」を政治方針にしていたという。それが功を奏し、発展途上の中国には世界中から資本が集まり、生産設備が集まり、技術やノウハウが集まった。そして、世界は中国に市場を開いた。そして世界の工場になった。
 国際的な野心を見せなかった中国は、世界から安全な国と認識されていた。世界は中国を愛し、抱きしめた。そうすれば、中国は民主主義国家の友人にふさわしい国に変わっていくと考えたのだ。
 しかし、中国の共産主義に対する信念は揺るがなかった。世界の工場となった中国は、その独占的な地位を利用し、政治的な取引の道具として使うようになった。それが最も明確になったのが、コロナ禍におけるマスクや防護服の輸出停止だった。
 そして、「ウイルス感染源について第三者機関の調査に応じるべきだ」というオーストラリアの意見に対して「オーストラリアから牛肉を輸入しない」という報復措置を打ち出した。今度は、世界の市場としての優位性を政治利用したのである。
 中国は生産国の地位も市場としての地位も全てを政治利用することが明らかになった。
 また、ウイグル人やチベット人を差別虐待も明らかになってきた。実質的な収容所に隔離し、奴隷労働を強制するだけでなく、臓器売買の材料にしているとの噂も出ている。それが本当なら、最早、犯罪国家といわざるを得ない。
 
2.金の卵を産む「香港」を殺した
 
 香港は中国の富を生み出す装置だった。
 欧米企業が中国市場に進出するとき、香港企業をエージェントに使うことが多い。香港なら法律が整備しており、アクシデントがあっても対応できるからだ。直接中国に投資したり、市場進出する場合、中国の法律の整備が不十分であるため、リスクが高い。
 なぜか、日本企業は中国に直接進出することが多かった。中国政府も直接投資を推奨したし、日本政府もそれを後押ししていた。しかし、そのことが撤退時のリスクにつながっている。
 アメリカは安全保障上の問題で中国に輸出を禁止している物資も多い。しかし、香港への輸出は自由だった。香港を経由することで、中国は必要な物資を調達できたのだ。また、中国からの輸出も香港を経由することで、自由な貿易が保証されていた。しかし、そうした香港の特例も「香港国家安全維持法」の発令と共に消えようとしている。
 更に、香港は金融の窓口でもあった。香港ドルを経由することで、中国人民元と米ドルを自由に交換することができた。それが可能だったのも、アメリカが国際金融都市としての特権を香港に与えていたからである。世界の金融を支配しているアメリカが香港を特例から外すことはほぼ確実である。香港は、中国国内の一都市になってしまったのだ。
 
3.全てがお金で支配できるという錯覚

 中国政府の振る舞いを見ていると、「権力さえあれば何をやってもいい」と思っているかのようだ。そして、「権力を保証するのは経済力、つまりお金である」と。「人間はお金で動くもの」であり、「買収こそ、個人をコントロールするのに最も有効な手段」である。公式に入手できないものは、個人や企業を買収して入手する。技術やノウハウは個人を買収して盗めば良い。
 もちろん、多くの国ではこうした行為は犯罪である。しかし中国では、法律よりも上位に共産党があり、共産党の意志とは主席の意志に他ならない。独裁国家では、独裁者が何をしても良いのだ。
 中国は「世界の工場」「世界の市場」として、十分な力を持っていると認識しているのだろう。その力を政治的に使えば、世界は従わざるを得ない。少なくとも、中国に敵対することはないだろうと。
 しかし、アメリカは中国が反社会的な存在に認定しようとしている。例え、マフィアに経済力があっても、真っ当な企業はマフィアとは取引しない。瞬間的な利益を得ても、最終的には社会的に葬られるからだ。 
 金で支配しようとしても、金を失えば力もなくなる。中国も富を失った途端に権力も失うだろう。そのために、金融の覇者であるアメリカは戦略的に中国を締め上げようとしているのだ。
 
4.中国への資本のパイプを遮断する

 アメリカは世界の金融を支配している。その代表がSWIFTである。SWIFTは《Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication》の略で、国際銀行間通信協会を意味する。200以上の国や地域の金融機関1万1千社以上が参加しており、そのネットワークを経由しないと送金情報を伝えられず、国際送金ができない。事実上の国際標準となっている。
 アメリカは、これまでもイランに対してSWIFTによる経済制裁を行っている。制裁対象の国の銀行をSWIFTから外すことにより、海外送金ができなくなるのだ。中国の銀行がSWIFTから外されれば、ドル建ての決済比率が高い中国の海外との貿易は成り立たなくなり、中国経済は壊滅的な打撃を受けるに違いない。
 これに対して、中国も座視しているわけではない。中国は、人民元の国際決済システム、国際銀行間決済システム(CIPS)を導入し、ロシア、トルコなど米国が経済制裁の対象とした国々の銀行が、このCIPSに多く参加している。2019年4月時点でCIPSへの参加は89か国・地域の865行に広がっており、国別の参加銀行数では、第1位が日本、第2位がロシア、第3位が台湾である。
 と言っても、現状では多くの貿易が米ドル建てで行われているのが現状である。中国経済の先行きについて楽観視できる要素はほとんどないのである。

*有料メルマガj-fashion journal(450)を紹介しています。本論文は、2020.7.6に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。  

January 23, 2009

「中国マーケティングチーム」創設の勧め

概要
・大量生産した商品を大量販売するために、消費者とどのようなコミュニケーションを持つかがマーケティングの大きなテーマである。中国生産ビジネスにマーケティングは必要なかったが、中国市場参入にはマーケティングが不可欠である。
・日本では、大手原糸メーカーがアパレルや小売店と連携して、消費者に訴求するために、マーケティング活動を展開した。マスプロモーション全盛の時代には有効に機能したマーケティング活動も時代の変化と共にポジションが低下していった。
・ファッションビジネスの主導権が川上から川下へ移るにつれ、抽象的なマーケティングよりも、合理化や低コストを実現する海外生産や情報システム導入へと企業の軸足は移っていった。
・中国はマスプロモーション全盛の時代であり、中国アパレルは様々な問題や課題に直面している。彼らの直面している問題を解決するようなソリューションサービスが求められている。
・社内だけでなく、アウトソーシングを含めた「中国マーケティングチーム」を創設し、中国市場に参入する企業もチームでプロモーションを行ない、チームで営業活動を進めることを提案したい。

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August 08, 2006

中国ビジネスと情報システムの潮流

1.中国生産を生かすビジネスモデル
これまで日本企業が展開してきた中国ビジネスは、「世界の工場」としての中国をいかに活用し、「安くて良い商品」をいかに日本で販売するか、であった。そして、いち早く中国を活用した企業は先行者利益を上げた。しかし、誰もが中国生産を活用するようになった現在では、中国生産商品の価格競争が激化し、中国製品を日本に輸入するだけでは十分な利益を確保することが困難になっている。
更に安価な製造コストを求める企業は、中国よりも人件費の安いベトナムやミャンマー、バングラデシュ等での生産を試みるだろう。
日本市場を起点に考えると、「生産拠点の移動」ということになるが、中国生産を起点に考えるのならば、「海外市場の開拓」という可能性も出てくる。日本企画、中国生産の商品を海外市場で販売するというビジネスモデルである。
特に、日本のテレビ、映画、マンガ、音楽、ファッション等が人気を集めている国は有望だろう。この場合は、メディアやエンターテインメントとのコラボレーションによるブランド企画が望まれる。アジアで人気の高いアーティストによるブランドであれば、相乗効果が生まれるに違いない。こうした背景を考えるのであれば、日本アパレル企業は欧米のライセンスブランドを軸とするのではなく、今後は日本オリジナルのブランド開発を軸としたビジネスを展開しなければならない。

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December 06, 2005

中国ビジネスは恋愛に良く似たり

 ビジネスはコミュニケーションから始まる。その意味では、恋愛に似ていると言えよう。
 名刺さえ出せばビジネスができるお手軽ビジネス。金さえ出せば疑似恋愛気分が味わえるキャバクラのようなものだ。出会い系サイトのように手軽にできるビジネスもある。不倫はサイドビジネスか。ビジネスも恋愛もお手軽だ。
 しかし、世界的に見るとこれほどお気軽な国は珍しい。男女関係もビジネスも手続きが必要だし、偶然に頼ったのでは良い結果は得られない。
 特に、中国ビジネスは人脈が命。まず個人の信頼関係があって、次にビジネスができる。また、共産党幹部等のエリート層が政治経済を牛耳っている国でもある。従って、上層部とのコミュニケーションも重要だ。
 ここで、恋愛にたとえて考えてみよう。私は男性なので、日本人の男性が中国人女性の良き伴侶を得ようと考えているとする。あなたならどうするだろうか。
 日本人は中国語が話せない。だから、日本語が話せるホステスのいるクラブに行く日本人男性は多い。あなたは、その中から伴侶を選ぶだろうか。あるいは、ナンパで良い女性を引っかけることを考えるかもしれない。自分は金持ちであることをアピールして、盛り場で遊んでいる女性を狙うとか・・・。

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良い人だから、お礼は言わない

 日本人は均一に出来ている。すごく悪い人もすごく良い人も少ない。中国人は幅が広い。すごく悪い人からすごく良い人まで揃っている。ビジネス上で出会う中国人の多くは、少し悪い人と少し良い人だ。すごく良い人もいるのだが、なかなか出会えない。
 私の知人、Yさんのお父さんはその昔、中国で生活していた。Yさんが大人になって中国に旅行に行く時に、お父さんがこう言った。「あの近くに友人がいるから、訪ねてごらん」
 Yさんのお父さんが最後にその友人と会ったのは30年前。30年経って、昔々の友人の娘が訪ねて来たのである。勿論、事前に手紙で連絡はしてあったが、まるで自分の娘のように手厚く歓迎してくれたそうだ。彼女はお礼を述べてから「こんなに良くしてもらっても、私はまだ若いので何もお返しができません」と言うと、そのお父さんの友人はこう応えたそうだ。
 「私はあなたのお礼を期待しているわけではないし、あなたが何もできなくてもいい。でも、私の子供があなたの世話になるかもしれない。私の子供でなくても、他の中国人があなたの世話になるかもしれない。あなたが親切にされたことを覚えてくれて、あなたが誰かにそれを返してくれればそれでいいんです」

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November 03, 2005

中国市場のブランドプロモーション

 10月28日、上海で「21世紀トップ・ラグジュアリーブランド」というイベントがあった。主催は「21世紀経済報道」という経済新聞。21世紀経済報道は、中国のWTO加盟による経済成長に合わせ2001年に創刊された経済専門新聞。現在の発行部数は48万9千部。協力はSuntch Branding。中国で唯一のファッション専門のブランドコンサルティング&プロモーション企業である。顧問として世界的に有名なGallup Consultingの中国法人が参加。5年前から中国市場のブランドイメージ調査等を行なっており、客観的なデータの提供をしている。
 第一部は、「中国ブランドの21世紀戦略」というテーマのパネルディスカッション。私もファッションプロデューサーという立場で参加した。パネリストのメンバーは、中国の有名ジュエリーメーカー「周大福」の代表者、中国白酒のトップメーカー「水井坊」の代表者、復旦大学管理学院の教授、シンガポールから参加した「AMEX」のアジア担当シニアリーダー、21世紀経済報道の代表者、そして私。
 彼らのブランドに対する意識は十分に成熟していないが、単純に商品だけでは国際競争力がないことは理解しており、いかにして欧米のラグジュアリーブランドに負けない中国ブランドを創造するかを真剣に考えていた。

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October 12, 2005

「強い中国製品」と「発展途上の中国企業」

 中国製品の国際競争力は強い。日本よりも「地価」「人件費」「エネルギー費」の水準が低く、その分高い価格競争力を持っている。しかも、豊富な外資が集まり、日本からの積極的な技術指導もある。技術レベル、製品の品質も年々高まっている。去年できなかったものが今年はできる。今年できなかったものも来年はできる、という感じだ。
 中国製の商品を見て、価格を聞くと、国内メーカーは暗澹たる気持ちに襲われる。中国人に会っても、彼らは自信満々。「日本は中国を必要としているが、中国は日本を必要としていない」とのたまう中国人も多い。
 日本人から見ると、中国人には悩みなどないのではないか、とも思える。中国人経営者は若く、海外の留学経験を持つ人も多い。日本ではフリーター、ニートが増えている。あらゆる分野で、中国勝ち組、日本負け組というイメージを感じてしまう人も多いだろう。
 しかし、中国を訪問し、中国人と話をすると彼らも悩んでいるという。中国の悩みは自立していないことである。海外からの資本、技術を使い、中国製品を生み出し、海外に輸出している。つまり、巨大な「資本」「技術」の奔流が、海外から中国を通り、大量の「商品」が海外に流れ出ているのである。その過程で、蓄財に成功した経営者も多い。しかし、その巨大な潮流をコントロールしているのは、ほとんどが海外企業であり、中国企業ではない。

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