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August 29, 2022

香港国家安全法が日本経済に与える影響 j-fashion journal(445)

1.高度な自治を失った香港

 5月28日に閉幕した中国全人代において、香港への国家安全法導入が決定した。中国の国家安全法は政権転覆や機密情報漏洩の防止だけでなく、領土保全、インターネット規制まで幅広い分野をカバーする法律である。この法律を香港の立法会を通さず、中国共産党が勝手に決めたことになる。
 前日の27日、アメリカのポンぺオ国務長官は「もはや香港が『高度な自治』を維持しているとは言えない」と宣言した。
 そして29日、トランプ米大統領は「中国による香港国家安全法の導入決定は明らかな中英共同宣言違反であり、香港と中国、世界の人々の悲劇だ。中国は一国二制度を一国一制度に置き換えた。香港への通関・旅行などの優遇措置を撤廃する手続きを始めるよう指示した」と発表した。
 同時に、かねてより「中国寄り」と批判を強めていた世界保健機関(WHO)からの脱退を宣言した。
 
2.金の卵を産む「香港」を殺すのか?

 香港と中国はどうなるのか。最悪のシナリオは以下の通りだ。
 香港が「高度な自治」を失ったことにより、アメリカは香港優遇を停止する。
 香港ドルと米ドルの交換が制限され、中国は香港経由の米ドル調達ができなくなる。
 中国の輸出産業はコロナ禍により、完全に停止し、米ドルが入ってこない状態にある。米ドル決済の輸入ができなくなり、中国国内の物価も上がるだろう。同時に、部品等が輸入できないと、輸出も再開できない。ますます米ドルは不足し、人民元は下落する。
 中国企業は内部留保が少なく、その分個人が株や不動産に投資してきた。現金確保のために株や不動産を売却する人が増えれば、不動産バブル、株式のバブルが崩壊する。そして、銀行や地方政府が破綻するケースも出てくるだろう。
 中国企業は倒産が増え、中国国内の失業者も増える。中国は建国以来初めての不況に直面するのだ。
 中国の経済成長は、輸出産業が牽引した。しかし、現在は世界の得意先が中国に不信感を抱いている。
 中国は技術を他国から盗み、補助金を出して製品価格を下げ、ハニートラップや買収によりキーパーソンへの影響力を強めてきたのではないか、という疑いがあるのだ。
 どんなに品質が良くて安い製品だったとしても、中国が反国際社会の勢力と定義されれば取引はできない。
 アメリカは中国企業だけでなく、中国企業と取引した企業も制裁するだろう。そうなれば、中国生産に依存している日本企業も無傷ではすまされない。
 香港は、金の卵を産む鵞鳥だった。中国は、その鵞鳥を「鳴き声がうるさい」と殺してしまったのだ。
 
3.強制的に進む中国とのデカップリング

 現段階で、多くの日本企業は中国とのデカップリング(分断)を望んでいない。日本企業は中国国内に多大な投資をしており、それを捨てることはできないからだ。仮に、中国生産のメリットがなくなっても、中国政府は簡単に撤退させてはくれない。保証金や賠償金、訴訟が待っているのだ。
 チャイナプラスワンでASENに生産拠点を移転した企業も、素材の調達や物流、生産ロット等の問題に直面し、既に撤退し、中国生産に回帰したという事例もある。最早、中国生産しか考えられない、という企業も少なくないのだ。
 しかし、それでも中国生産が継続できるかは不明だ。あらゆる業種の中国企業は都市封鎖によって資金繰りに苦しんでおり、倒産ラッシュを迎えようとしている。
 更に、香港が国際金融センターの機能を失い、米ドルと香港ドルとの交換ができなくなれば、銀行の倒産や不動産バブルの崩壊も早まるだろう。最悪の場合はハイパーインフレが起きる可能性もある。
 中国国内は混乱に陥り、全ての経済活動が麻痺するかもしれない。
 そうなれば、マスクで起きたような事態が他の商品でも起こる。中国の経済回復が見込めなければ、中国生産、中国市場は諦めざるをえない。
 
4.国内生産回帰で新たな成長モデルを

 昔は、「アメリカがくしゃみをすれば日本が風邪をひく」と言われた。日本の最大の貿易相手国がアメリカだった時代だ。
 現在は、中国が日本の最大の貿易相手国である。「中国がくしゃみをすれば日本が風邪をひく」状態だ。現実は風邪ではなく、重症の肺炎である。しかも、アメリカ、中国を含む世界中が同時に影響を受けている。
 この影響がどれほどのものかは、数年後に分かるだろう。おそらく天文学的な経済的損失になるはずである。
 今回のコロナ禍によって、日本はグローバリゼーションの恩恵を受けなかったことが明らかになった。結局、消費財のほとんどを国内で生産していた時代こそ、最も経済力が強かったのである。グローバリゼーションは、商社と小売業、海外工場が利益を得たに過ぎず、国全体で見れば明らかにマイナスだった。
 中国生産を進めることは、中国で雇用を生み出し、国内の雇用は失われる。中国生産と競合する日本国内のメーカーは価格競争に破れ淘汰された。
 商品価格が下落し、その分、数量を増やそうとしたが、売上は増えず売れ残りの在庫が増えた。大量の資源を使い、ビジネスを縮小し、廃棄物を増やし、運送の燃料を消費した。サスティナブルとは正反対のビジネスを志向していたのである。
 そう考えると、中国生産から国内生産に移行することは悪いことではない。むしろ、サスティナブルな成長モデルが見えてくるのではないか。

*有料メルマガj-fashion journal(445)を紹介しています。本論文は、2020.6.1に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。  

May 29, 2016

ファッションビジネスの変革 j-fashion journal(196)

1.絶対王者「ユニクロ」

 ユニクロ以前とユニクロ以後では、ファッションの定義が変わったような気がする。ユニクロは、コモディティとしてのファッションを確立した。ファッションもコモディティである。余計な思想やデザインは必要ない。日本人のファッションは、低価格でベーシックな商品を使い捨てていくこと。そんな思想を、一般消費者に植えつけることに成功したと思う。
 ファッション業界では、ユニクロを批判する人も多いが、それ以上にユニクロに追随する人が多い。ユニクロで新製品が出れば、それと似たような素材を探し、ユニクロに近い価格で販売する。
 しかし、ユニクロを模倣する限り、ユニクロには勝てない。ユニクロほどの店舗数とグローバルなサプライチェーンを確立している企業はないからだ。
 そして、ネット戦略もグローバル市場戦略もユニクロに勝るアパレル企業はない。

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October 31, 2011

近況報告及び諸々のお知らせ

お知らせ①東レ経営研究所との契約が終了しました
 2005年から2011年4月末までの6年間、「東レ経営研究所客員研究員兼中国ビジネス研究会主幹」として活動して参りましたが、2011年4月末を以て契約が終了いたしました。 東レ経営研究所の最後の仕事は、東レ関係会社を対象にした「実践中国ビジネス研修会」で、全7回の講座の内、3回を私がコーディネーターとして企画構成・進行し、8月に無事終了いたしました。

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May 18, 2011

一般社団法人日本テキスタイルデザイン協会総会基調講演「震災後の社会・企業・個人はこう変わる」~ソーシャルビジネス、ソーシャルデザインの思想~

一般社団法人日本テキスタイルデザイン協会総会

基調講演「震災後の社会・企業・個人はこう変わる」
~ソーシャルビジネス、ソーシャルデザインの思想~

講師:日本テキスタイルデザイン協会副理事長 坂口昌章

◆年に一回の日本テキスイタルデザイン協会の総会ですが、今回の基調講演は私が講師です。どなたでも無料で受講していただけます。お時間のある方は是非、どうぞ!!

■日時:2011年5月21日(土曜日)15時~16時30分
■会場:東京ウィメンズプラザホール(東京都渋谷区神宮前5-53-67←青山通りの国連大学の横を入ります。青山ブックセンターに降りるエスカレーターの途中で降りてください)
■受講料:無料
■*お申し込みは、ツイッターで@masakaguchiまで連絡をお願いします。フォローしますので、DMにて氏名、所属をご連絡ください。
メールの方は、 masakaguchi@nifty.comまで氏名と所属をご連絡下さい。よろしくお願いします。


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December 01, 2010

2010年末「激変の時代」緊急集中セミナー/2011年から始まる次の20年を生き抜くために

1970年代80年代に急成長し、90年代2000年代に沈滞し、2010年から次の20年が始まる!

*忘年会も愉しいけど、まずは今年を考える考年会をやりましょう。その後、愉しい忘年会をするというのはいかがでしょう?割り勘ですが・・・。最近のモヤモヤを吹き飛ばし、目からウロコをボロボロと落として、新年迎えたいものです。ということで、年末緊急集中セミナーを企画しました。是非ご参加ください!!!

■日時:2010年12月18日13時開場、13時30分~17時(渾身の力で!)
■会場:日本ファッション協会会議室
     〒103-0022 東京都中央区日本橋室町1丁目5番3号 福島ビル6階
     
■講師:坂口昌章(シナジープランニング代表/東レ経営研究所客員研究員)

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1.日本はどうなる?!
 ・閉塞感と自信喪失の理由
 ・ユニクロ、ファストファッション一人勝ち
 ・中国・韓国に追い上げられる日本
 ・世界が憧れる日本
 ・日本のアイデンティティとは?
 ・世界が日本に求めるものとは?
 ・ガラパゴスが悪いのか?

2.ファッション業界、流通はどうなる?!
 ・百貨店、量販店は浮上せず
 ・SPAの課題も見えてきた
 ・中国の人件費アップ、原料費アップ
 ・JFWが機能しない理由とは?
 ・海外見本市と国内求評会の違いとは?
 ・中国市場進出の成功と失敗
 ・中国企業に買収される日本企業

3.会社はこのままでいいのか?!
 ・生産基地の移転とBPO
 ・サラリーマンはバカにならなければ駄目なのか?
 ・既得権と過去の成功体験が改革を阻害する
 ・リスクヘッジと意思決定
 ・日本型組織は崩壊したのか?
 ・「女性、若者の活用」から「女性、若者が主役」へ
 ・会社が主役の日本と、個人か主役の中国の違い

4.売れない店、売れないブランドを変えられるか?!
 ・同質化する店頭、サプライズがないファッション
 ・なぜ、日本の業界から第二のアップル社が出ないのか?
 ・価格が安ければ、技術、品質が高ければ売れるという思い込み
 ・Twitter,Facebook,Ustreamからの発想
 ・顧客に何をどのように知らせるのか?
 ・絞り込め!絞り込め!絞り込め!
 ・売るための論理、ツール、アクション

5.ブランディングを考えているか?!
 ・日本のアパレルは「ブランド」ではない!?
 ・付加価値とは何か?
 ・テキスタイルも部品も原材料も「ブランド」が大切!
 ・「ブランド」は最も分かり易いコミュニケーション要素
 ・日本企業のWEBを見て企業イメージが伝わるか?
 ・「環境」「人権」「法令順守」はなぜ必要か?
 ・ブランドストーリーブックを考える

6.アート、デザイン、コンテンツを売っているか?!
 ・現地生産のクールジャパンが世界で売れている
 ・トレンド、コレクションでテーマが重要な理由
 ・ハードにはソフトを、ソフトにはコンテンツを
 ・町おこし、観光とデザイン
 ・コレクションさせる商品を考える
 ・技術はあるのに、活用できていない分野とは?
 ・アート、デザイン、コンテンツの宝庫=日本

September 14, 2007

朝青龍、安倍晋三の道理

 朝青龍は一人横綱として相撲界を一身に背負ってきた。相撲協会を含めた相撲業界が朝青龍に依存してきたのは事実だろう。元々、朝青龍にはいろいろな問題があった。しかし、短所には目をつむり、長所を評価していたのだ。
 しかし、白鵬が横綱になったことで、朝青龍へのポジションが微妙に変わってきた。相撲業界も朝青龍への過度の依存に後ろめたい部分があったのかしれない。これまで目をつむっていた短所が目につき出した。その象徴的事件がモンゴルでのサッカー問題なのではないか。
 我々がショックを受けたのは、横綱である朝青龍の精神的な脆さが露呈したことだった。日本人の心の中には、「横綱は神聖なもの」という認識がある。人格も精神力も凡人を圧倒するものでなければならないと。しかし、我々が目にしたのは、世間知らずで力の強い普通の27歳の男性だった。

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December 26, 2005

少子問題解決のためのイメージ戦略

 2005年、日本は出生数が死亡数を下回る初の「自然減」になる。それに対する政府の少子対策は、保育所の整備、児童手当の拡充など。個人的見解だが、効果は期待できないだろう。
 人間の行動を決定づけるのはイメージである。
 現在、婚姻率も減少しているが、これはカップルで生活することの楽しいイメージが持てないからだろう。結婚への憧れが結婚という行動を起こす。結婚は大変。結婚するよりも独身の方が楽しいというイメージが共有されている限り、結婚は増えない。
 結婚に到る前の男女の出会いにも問題がある。日本における出会いのイメージは、「偶然の出会い」だ。居酒屋で偶然出会う。海で偶然出会う。出会い系サイトで偶然出会う。偶然の出会いが恋愛に発展するというイメージである。
 しかし、世界的に見れば、「誰かに紹介されて出会う」というイメージが強いのではないか。階層社会では、互いの階層が問題になる。紹介されるということは、階層を保証されるという意味もあるのだ。大学での出会いや会社での出会いはある程度、階層が保証されている。従って、リスクが少ない。

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April 17, 2005

4月16日上海反日デモ見聞記

 4月16日、偶然、上海出張。しかも一日予定が空いていたので、反日デモを見物に出かけた。「何かあったら危ないからやめた方がいい」と言われたが、日本人襲撃の指令がた出ているわけではない。現地人に間違えられることも多いし、日本語を話さなければ大丈夫だろうという自己判断。危ない様子ならそこから引き返せばいい。
 人民広場に向かう途中、次第に警官の姿が多くなる。一部には武装警察の姿も見えるが、それほどの緊張感はない。途中、デモ隊の尻尾をつかまえ、追いかけていく。デモ隊のスピートは意外と速く、追いつくのが大変なくらいだ。周囲の人は冷静に見物している感じ。道路を一つ隔てれば、全くいつも通りの風景が広がっている。欧米人観光客、ローカルの観光客も多い。違うのは、街中で全く日本語が聞こえてこないこと。各企業からも、レストランなどで大声で日本語を話さないようにとの警告が出されている。
 人民広場の近くの歩道橋でデモ隊を撮影。皆、とても楽しそうだ。天気も良いのでピクニック気分。声を合わせて大声で歌っている。歩道橋の見物人に向かって「皆さんも参加してください」と呼びかけている。大勢の人たちが声を合わせて歌うと腹に響く。今は冷静だが、反日という明確な主張を掲げている以上、このまま流れ解散というのでは納得できないのではないか。「石の一つも投げたいだろうな」と思う。

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September 07, 2004

プロ野球ストへの提案

プロ野球が初のスト決行か!

一般の人にアンケートを取るとかなりの人がスト賛成。まぁ、「たかが選手の言うことなど門前払いが相応しい」という石頭爺軍団の姿を見ていると、選手側に与するのが当然でしょう。プロ野球がつまらなくなっていることもあり、初のストがどうなるのか見てみたいという野次馬的根性も多分にあると思います。
選手側は「今、行動しないとファンに対しても申し訳ない」と言っているようですが、ファンはペナントや日本シリーズより面白そうと期待しているだけのような気もします。

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May 07, 2004

福田の勝ち、菅の負け

五月七日の報道ステーションを見ています。
菅直人が出演しており、いろいろと弁明していますが、説得力ゼロ。目が泳ぎ顔が死んでいます。
厚生大臣の菅さん、素敵でした。今のあなたは見苦しいだけです。
福田さんの個人情報発言は政治生命を左右するほど無茶苦茶な発言でしたが、今回の辞任でチャラになりました。見事な対応です。
それに対して菅さんは後手に回り、政治家としての脇の甘さを露呈してしまいました。奥さんを出したのも致命的だと思います。政治的センスゼロ、決断力ゼロです。
政治家の皆さんには、年金が破綻するだろうという私たちの不安を払拭して欲しいのですが、無理のようですね。
ちなみに私は借金をしても国民年金を払っています。腹わたが煮えくりかえっています。

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