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July 29, 2023

グローバル経済から御用達経済へ j-fashion journal(544)

1.グローバリズムは儲からなかった

 バブル経済がピークだった1980年代末から90年代初頭、既に日本は閉塞感に覆われていました。人件費と不動産価格の上昇により、新たな国内工場を建設することが難しくなっていたのです。
 そんな状況の中で、中国はフロンティアに見えました。豊富な労働力と安い地代。「日本国内ではできなかった理想の工場が、中国ならできる、と思ったのです。
 90年代半ばになると、中国からの輸入品が加速度的に増え、国内製造業の淘汰が始まりました。単価の下落は、市場の収縮につながり、デフレスパイラルに陥ったのです。なぜ、こんなことになったのでしょうか。
 中国生産を開始した当初、日本企業は中国工場で「安くて品質が良い商品」を大量に生産すれば、売上が増大し、儲かると考えていました。しかし、生産した商品を全て日本市場に持ち帰るのでは、限られた市場の中でシェアを食い合うだけです。しかも、食い合う相手は国内生産の商品でした。その結果、国内製造業の淘汰が始まったのです。
 もし、中国生産の商品を第三国に輸出できれば、市場規模は広がり、売上も伸びたでしょう。あるいは、中国市場で販売できれば、その分だけ売上は伸びたはずです。
 アパレル業界で、販路拡大に成功したのは、ユニクロと無印良品くらいのものでした。多くのアパレル企業は、第三国の市場を開拓することができず、中国市場で勝ち抜くこともできなかったのです。
 国内では、デフレスパイラルが始まり、消費者の所得は上がらず、益々安い商品しか売れなくなりました。結局、儲かったのは、商社と中国企業だけでした。
 中国生産で、安く作れば利益が上がるというのは、国内生産と同じ価格で売れる前提です。全ての会社が中国生産を行い、低価格商品を市場に出せば、価格競争が起こるのは必然です。
 所得と生活水準が上がった日本国内の生産者が生き残るには、価格競争に陥らずに、付加価値の高い商品やサービスを提供する以外に道はありません。もし、価格競争の激しいコモディティ商品を扱うなら、新興国の企業にはできない独自のビジネスモデルの開発が不可欠です。
 
2.「見ず知らずの人との商売」と「顔見知りの商売」

 日本企業も、一度は海外市場開発の夢を見ました。しかし、資本力のない中小企業が海外市場開拓を行うのは困難です。成功例もありますが、ほんの一部の企業に過ぎません。大多数の中小企業は国内市場で生きており、海外で成功することはできないのです。
 そもそも海外ビジネスとは、見ず知らずの他人、しかも外国人を相手に商売することを意味します。日本の商売は、信用できる人との取引でした。飲食店でも「一見さんお断り」の店は多かったし、多くの商店街の商店主は顧客と顔見知りでした。
 問屋との商売でも「そうは問屋が卸さない」というように、誰かの紹介、つまり身元保証や、厳しい与信審査があって初めて取引可能になったのです。
 見ず知らずの人との商売が成長したのは、大量販売のチェーンストアからです。消費者の買物は、顔見知りと商店街から、見ず知らずの大手量販店に転換しました。
 知らない人との商売が更に発展し、海外にまで拡大したのがグローバルビジネスです。そして、大資本の企業が勝ち残り、中小零細企業が淘汰されました。

3.購買はサプライチェーンの選択

 昔の商店街では、生産者と消費者が、時と場合によって入れ代わっていました。酒屋さんのお客さんは電気屋さんであり、酒屋さんも電気屋さんも畳屋さんの顧客でした。商店街と周辺の住民は、ゆるやかな地域コミュニティで結ばれていたのです。互いに商店街で買物をすることで、地域コミュニティ全体が潤うのです。
 一方、大手量販店で働く人はサラリーマンです。その地域で生活しているとは限りません。また、大手量販店で販売している商品も、消費者にはどこの誰が作っているのか分かりません。安くて良い商品を世界中から調達し、販売しています。
 消費者として考えれば、どこで生産していようが、品質が高くて安い商品ならいいでしょう。しかし、生活者として考えると、地域コミュニティの関係性の中で購入する方が良いことになります。
 我々は、お金で商品を購入しています。商品の代金には小売店の利益、問屋の利益、工場の利益が含まれています。その利益の中には、小売店経営者の家族、小売店従業員の家族、問屋の家族、工場で働く人達の家族の生活費が含まれています。
 海外生産の商品には、海外の工場の利益、商社の利益、貿易の費用に加えて、国内の流通企業、物流センター、大手量販店の利益等が含まれています。こちらは、見ず知らずの人の生活を支えています。
 いずれにしても、買物をすること、消費をすることは誰かの生活を支えているということです。商品の選択は、サプライチェーン全体の選択を意味しています。サプライチェーンの選択は、支援する地域を選択しています。商品を購入するとき、目の前の商品を見るだけではなく、その背景のサプライチェーンのことを考えていただきたいと思います。
 
4.御用達経済の可能性

 大手量販店のバイヤーは、不特定多数の顧客のために商品を調達します。良質で安価な商品を豊富に品揃えすることがミッションです。良い商品を調達するために新規取引先を開拓し、一方で、実績のあるメーカーでも、取引を打ち切ることがあります。関係性より商品本位で判断するのが、プロのバイヤーなのです。
 
 「国内サプライチェーンを選びたい気持ちはあるけど、所得が低いので、安い海外製品しか買えない」という人も少なくないでしょう。
 そういう人も、その人にとって特別な商品だけは国内生産のものを購入して欲しいと思います。それが御用達です。皇室御用達とは、皇室が優先的に購入する特定の商店や企業を指す言葉です。皇室が指定したことに価値が生じ、ある種のブランド価値が生れます。皇室が購入している商品なら間違いないという信用と、皇室と同じ商品を使ってみたいという憧れが、皇室御用達という言葉に含まれています。
 昔は、百貨店にも御用達の価値がありました。高島屋謹製の緞帳とか、三越お誂えの着物は、百貨店の目利きが選んだ逸品です。
 しかし、百貨店は委託で預かった商品を販売するだけとなり、百貨店御用達の価値は失われました。そして、百貨店ののれんの価値も失われました。
 私たちは、国内経済を自立させ、日本企業のため、日本の国益のために商品を購入すべきではないでしょうか。商品を購入することは、消費者が商品を入手するということではなく、サプライチェーン全体を支持するということです。
 たとえば、神田明神は江戸総鎮守です。神田明神御用達の商品を、神田明神の氏子、産子が関係する企業から選び、それを氏子、産子の人々が優先的に購入する。こういう総鎮守ならではの、互助会的な御用達があってもいいでしょう。
 こうしたささやかな試みが、グローバリゼーションとは異なる、持続可能で地域コミュニティ優先の健全な経済活動を生み出すと思います。

*有料メルマガj-fashion journal(544)を紹介しています。本論文は、2022.4.25に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。  

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