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July 30, 2023

魔除けマーチャンダイジング

1.お守りとは?

 神社や寺院で売られているお守りには、悪いものを遠ざける厄除け、魔除けと、福を呼び寄せる招福、開運等があります。
 人は平和な時、更なる福を呼び寄せようとします。悪いことが起きている時は、とにかく悪いものから遠ざかりたい、と願います。コロナ禍、戦争、自然災害と、悪いことが次々と押し寄せる現在は、魔除けのニーズが高くなっています。
 そもそもお守りや御札は、道教の呪符、あるいは陰陽道の護符を日本化したものとされています。世界には、様々な形態の護符やお守りが存在します。
 動植物の超常的な力をお守りにしたものとして、スカラベ(フンコロガシ)、うさぎの足、四葉のクローバーなどがあります。
 スパイスやハーブも、邪悪なものを払うと信じられています。ニンニク、トウガラシ、タイム、ヨモギなどです。
 その他にも、馬の蹄鉄、ひいらぎ鰯などがあります。
 宝石にも特別なパワーがあるとされています。アダーストーン(ケルトの祭司、ドルイドが魔除けや妖精の幻術破り等に用いた穴の開いた石・ガラス)。勾玉(曲玉)、天寿(メノウに特殊な加工を施したビーズ)。銀の弾丸は、悪魔や狼男と戦う武器であり、魔除けでもあります。
 神や宗教者の像や画像もお守りとして使われます。仏像、神像、ロザリオ、聖遺物などです。
 その他に、千人針、千羽鶴のように手間暇かけて、多くの手を経ることでお守りとすることもあります。
 
2.セーマン・ドーマン

 私が個人的に最強のシンボルと考えているのは、セーマン・ドーマンです。
 荒俣弘の「帝都物語」で、主人公加藤保憲が「ドーマンセーマン」を縫い込んだハンカチを使っていました。小説の中では、セーマンは安倍晴明、ドーマンは蘆屋道満の名に由来するとあります。
 ドーマンセーマンは、セーマンドーマンとも言われます。セーマンが五芒星、ドーマンが九字紋で、それが並んでいます。三重県志摩地方(現・鳥羽市と志摩市)の海女が魔除けとして、磯ノミ、磯シャツ(上着)、磯メガネなど、海女の用具全般に記されています。貝紫色で描くか、黒糸で刺繍するのが一般的です。
 五芒星の星形は、一筆書きで元の位置に戻り、始めも終わりもないことから、魔物の入り込む余地がなく、また海女達の口伝に寄れば元の場所に戻る、即ち、「無事に戻ってこられるように」、との祈りを込めたともいわれています。
 陰陽道において、五芒星は魔除けの呪符として伝えられています。陰陽道の基本概念となった陰陽五行説、木・火・土・金・水の五つの元素の働きの相克を表したものであり、五芒星はあらゆる魔除けの呪符として重宝されました。
 平安時代の陰陽師、安倍晴明は五行の象徴として、五芒星の紋を用いました。「安倍晴明判(あべのせいめいばん)」、キキョウの花を図案化した桔梗紋の変形として、「晴明桔梗(せいめいききょう)」とも言います。
 明治の初期から昭和の太平洋戦争直前まで、旧日本陸軍の将校、准士官が正装・礼装時に着用する正衣(大礼服)の正帽の天井には、金線(銀線)で五芒星が刺繍されていました。また陸軍軍属においても、親任官以下全ての陸軍軍属が着用する軍属従軍服(軍属服)では、五芒星を模した臂章が制式(昭和18年制)であったほか、平服着用時に佩用するバッジ型(七宝製)の徽章でも五芒星が使われていました。その起源や意味についてははっきりしませんが、桜花の萼(がく)の形を模しているとも、弾除け(多魔除け)の意味をかついで採用されたとも言われています。
 九字紋は横5本縦4本の線からなる格子形、(九字護身法によってできる図形)をしています。九字護身法(くじごしんぼう)とは、「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」の九字の呪文と九種類の印によって除災戦勝等を祈る作法です。これは道教の六甲秘呪という九字の作法が修験道等に混入し、その他の様々なものが混在した日本独自の作法と言われています。
 九字は、中世には護身、戦勝の利益があるとして、武人が出陣の際の祝言に用いるようにもなり、やがて忍者の保身の呪術としても使われました。
 戦場に臨む武士が行う修法「摩利支天の法」(まりしてんのほう)は、忍者が結ぶ印の基にもなりました。摩利支天は武士の守り本尊として鎌倉時代から武士に人気がありました。方法は、右手と左手の人差し指と中指をそれぞれ立て、右手を刀、左手を鞘に見立て、右手で空中を切る。空中を切った後、刀に見立てた右手指は、鞘に見立てた左手に納めます。
 
3.魔除けグッズ人気ランキング

 具体的な魔除けグッズには、どんなものがあるのでしょう。アマゾンの魔除け人気ランキングで検索すると、次のような商品が出てきました。
 アマゾンスポンサーの商品として3点紹介しましょう。
 (1)疫病退散護符(2980円)。疫病除けの白澤(はくたく)の絵姿入り。「白澤とは、古来より疫病退散に霊験あらたかな最強神」とのこと。
 (2)黒檀ウッドビーズ・六字真言・銅銭・赤いロープで作られたブレスレット(1000円)。「黒檀は厄除け、六字真言は精神生命力増強、銅銭は金運、赤いロープは幸運を導く」とのこと。。
 (3)霊能者直筆神気霊符(28000円)。「霊能者占い鑑定所代表者直筆で、自室や寝室などに張り付けて使用する」とのこと。
 一般の出展品として12点紹介したい。
 (1)白崎八幡宮の浄化神塩印籠型お守り(白)(1500円)。神社で祈願済。印籠の中にお清めの塩が入っている。
 (2)同じく白崎八幡宮の浄化神塩印籠型お守り(赤)(1500円)。
 (3)オブシディアンペンダントネックレス(1599円)。「オブシディアン(黒い天然石)は全体的に非常に強く、直接的なエネルギーを持ち、マイナスの感情や、衝動を抑え、精神的成長のサポートをすると言われる」とのこと。
 (4)マラカイト勾玉ネックレス(2999円)。「マラカイトは和名「孔雀石」といい、その美しいグリーンと、模様が羽を広げた孔雀の様に見える事から、その名前がつけられた。古くから多くの伝承が残る石で、ヨーロッパでは幼児を危険から守るお守りとして護符を作って籠に結びつけたりした記録が残っている」とのこと。
 (5)タイ王国伝統の布製護符(780円)。毘沙門天( ターオ・ウェースワン)の図像が描かれている。「魔除けのお守りとして、お店や部屋の壁や天井に貼ったり、折りたたんでお財布にしまったりすると良い」とのこと。
 (6)梵字六字真言刻印ネックレス(5990円)。ホワイトメタル製。
 麒麟像(銅製)2体セット(6950円)。「古代中国の伝説上の霊獣である麒麟(キリン)は、名君の誕生にあわせて現れるといわれる縁起の良い瑞獣。リビングや寝室・玄関などに置くと平和な生活をもたらしてくれる」とのこと。
 (7)オルゴナイトペンダント(1690円)。「オルゴナイトは(タイガーズアイ、レッドジャスパー、アメジスト、ラピスラズリ、ターコイズ、シトリン、アベンチュリン)天然石と金属、銅線などで作られたコイルをある一定の量入れて、樹脂で固めて創る。水晶は圧力によって微弱電位を発生する性質があり、この微弱電位がコイルと金属を伝って四方にマイナスイオンを放出させる仕組みになるだけでなく、宇宙と繋がるアンテナが常に立っている状態になるので、置いておくだけ、身につけているだけでその空間やその方に必要な調整をあらゆるレベルで起こしてくれて、7つのチャクラの活性化も促してくれる」とのこと。
 (8)オルゴナイト盛り塩(3980円)。特殊な製法で岩塩と水晶を閉じ込めた八角錐のパワーオブジェ。交換いらずの盛り塩。
 オニキス・ブレスレット(600円)。「オニキスは、持ち主の意志の力を強くさせ、正しい判断力を与え、他人の悪意を跳ね返して身を守る『自己防衛の石』と呼ばれる。強力な魔よけや邪気払いのパワーストーンとして、バリアを張り、害が及ばないよう持ち主を保護してくれるでしょう」とのこと。
 (9)ハートベル・キーホルダー(1950円)。ベルの中に複数の様々なハートのレリーフが浮かぶ「ハートベルのシンボルは、心やバレンタインデー、キスを表現する他、愛や恋などの恋愛感情や、対象に好感を持っている事を示すために用いられる」とのこと。
 (10)六字真言指輪(1180~1860円)。
「六字真言とは、六字大明王陀羅尼(ろくじだいみょうおうだらに)とも言う。この呪文を毎日唱えることにより、病魔や災難から逃れ、幸運が訪れると信じられている。この6つの言葉を唱えることにより、病気・苦痛・刑罰と恐怖が消え、寿命が延び、財産が増えると語り継がれている」とのこと。
 (11)生霊返し・梵字護符「迦楼羅」(1000円)。「迦楼羅(かるら)の絶大なご利益で、生霊や悪霊、貧乏神などの運気を下げる悪しきオーラや怨霊を祓い、飛ばした相手に飛ばし返す強力な護符。 呪いの苦しみから開放され、心と身体の健康を取り戻すパワーを秘めている。主なご利益は、生霊返し、怨霊祓い、悪霊退治、貧乏神退散」とのこと。
 (12)桃木の剣(899円)。「桃木剣は、悪霊を追い出すのに適している。使い方は、鎮宅、魔除けの場合、門(門の中心位置)に掛けるように。あるいは、門の後ろの壁に掛けるように」とのこと。

 かなり特殊な商品ですが、これはネット販売のアマゾン・ランキングゆえのことでしょう。多くは、アクセサリーとして身に付けられるもの、あるいは、インテリアグッズとして飾れるものです。
 その他には、神社やお寺では販売していない特殊な護符のみが販売されています。
 
4.ラッキーアイテムと魔除けアイテム

 福を招き、幸せを呼び込むラッキーアイテムは見るからに、清く正しく美しいイメージです。したがって、ラッキーアイテムの店があるとすれば、店内に入っただけで幸せな気分になるでしょう。
 しかし、悪を遠ざけ、魔から身を守る魔除けアイテムは、見るからに、おどろおどろしく、不気味で怖いイメージです。邪悪なものを退ける、つまり、邪悪なものさえ恐怖するアイテムです。魔除けアイテムは基本的に見るものを拒絶します。もし、魔除けアイテムの店があるとすれば、店内に入っただけで悪寒を感じるでしょう。
 平和な時代であれば、ラッキーアイテムだけで十分です。美しく、カワイイものに囲まれていれば、それだけで幸せになれます。そもそも、魔除けという概念そのものが、魔の存在を前提にした不吉なものです。
 不安な時代、争いや不幸があふれた時代には、魔除けが必要になります。魔物にとって、かわいく無抵抗なものは、単なる餌食です。
 そう考えると、強そうなモノは、魔除けにつながります。刃物や刀も魔を祓います。拳銃、武器、兵器も魔除けになるでしょう。アーミーファッションも魔除けファッションです。
 ハリボテのミサイルを並べて行進するイベントも、祖国を魔国から守る魔除けなのかもしれません。
 そういえば、パンクファッションもイギリスの経済が低迷し、不安に満ちていた時代に流行しました。安全ピンのピアスをして、拘束衣のデザインを取り入れ、鋲やリベット、金具で全身を覆う。パンクファッションは魔除けファッションだったのかもしれません。
 ゴシックも魔除けファッションです。教会、悪魔祓いに使う道具、十字架や杭、銀の銃弾、聖水の瓶等の聖なるモチーフも悪魔的なモチーフも全ては魔除けに通じています。
 アニメのストーリーも、聖なる者と邪悪な者との対決は永遠のテーマです。逆にいえば、アニメのキャラクターも魔除けアイテムになるのかもしれません。
 「魔除け」も、軽いモノから、ヘビーでマニアックなものまで幅広く存在します。そう考えると、魔除けマーチャンダイジングも十分に成立するでしょう。

*有料メルマガj-fashion journal(545)を紹介しています。本論文は、2022.5.2に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。  

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