My Photo

お知らせ

無料ブログはココログ

« 日本を軸としたグレート・リセットを構想しよう j-fashion journal(516) | Main | ビジネスの目的と人生の目的 »

June 07, 2023

ファッション起業は「ニットアパレル」がお勧め! j-fashion journal(517)

1.昔のアパレル卸はローリスクだった

 アパレル業は不況業種になってしまいました。アパレル企業は儲からないし、残業も多いブラック企業だと見られています。
 しかし、これはSPA(製造小売業)を前提にした話です。SPAは店舗運営費が掛かり、商品リスクも全て負担します。売れれば高収益型のビジネスモデルですが、売れないと高経費型ビジネスとなります。
 そこで、アパレル卸の基本に立ち戻って考えてみましょう。
 アパレル卸の基本は、展示会を開き、受注生産し、小売店に卸売する、というものです。小売店は展示会で発注しない限り、商品を調達できません。
 展示会で受注した分しか生産せず、買い取り条件で卸売する限り、不良在庫を抱えることはありません。
 布帛の場合、縫製工場に支払う工賃は現金ですが、生地の仕入れは約束手形で買っていました。元々は、60日の手形から始まり、私が就職した頃は90日の手形が中心でしたが、やがて、120日の手形になりました。
 アパレル生産の期間を1カ月と設定し、小売店に出荷する場合、請求書の締め日と支払日を考えると、生地を仕入れてから代金を回収するのに3カ月から4カ月掛かります。120日の約束手形で生地を仕入れれば、アパレル製品の代金を回収してから、支払うことができるというわけです。
 同様に、縫製工場の支払いも、締め日の翌々月に支払うという条件も多かったと思います。これらの支払い条件が通用したのは、毎月安定して仕事を出し、ある意味で運命共同体の関係を構築していたからです。取引が継続できれば、一度、商売が回り始めれば、互いに困ることはありません。
 継続的な取引と、資金の回収、支払いの条件は、アパレル企業の基本的なノウハウです。しかし、商社依存が進み、こうしたアパレル卸の常識を知らない人が多くなりました。
 お客様は神様だと、勝手に思い込み、一度切りの商売でも大いばりで値切り、クレームをかけます。工場の立場に立てば、こんな相手とは仕事をしない方が良いと思うのは当然でしょう。
 元々、アパレル卸はローリスクであり、無茶なことをしなければ、利益率も高い商売だったのです。
 
2.ニットデザイナーの仕事

 ニット製品を生産するニットメーカー、特にセーターを作る横編みのメーカーは「ニッター」と呼ばれています。ニッターは、自社で糸を仕入れ、ニット製品に編み立て、リンキング、縫製、仕上げを行って、最終製品を出荷します。
 ニットデザイナーは、一人で商品を企画生産できます。これは、デザイナーとパターンナがいないと、工場に指図できない布帛製品とは大きな違いです。
 ニットデザイナーは年々減少しています。そもそも、一般のファッション専門学校は洋裁が基本であり、ニットに関する教育は片手間に過ぎません。
 しかも、百貨店からセーター売場が消え、ニットアパレル企業は淘汰されました。ニット製品の市場そのものが縮小したのです。そして、ニットデザイナーを育成する仕組みも失われました。
 しかし、ニット製品にニーズがなくなったわけではありません。むしろ、売場もメーカーも減った現在こそ、ニットは儲かる業態だと思います。
 次に、ニットデザイナーの仕事を紹介しましょう。ニットデザイナーには、二つの仕事があります。
 一つは、糸から編み地を作る仕事。言い換えれば、ニットのテキスタイルデザイナーです。糸とゲージを選び、色出しをして、編み組織や配色等を指示します。
 ニッター、糸商には編み地見本が数多く展示されており、そこから編み地を選ぶこともできます。色出しも、染色して在庫を持っている糸商もあり、そこから選ぶことも可能です。それでも、色と編みの知識は必要です。
 二つ目は、製品のデザインです。ニットの場合、ゲージ、編み組織、寸法と簡単なスケッチがあれば、それで製品が出来てきます。
 問題は、サンプルをどのように修正すれば、市場で売れる商品になるのか、を判断することです。
 もっと簡単な方法は、雑誌等から商品の写真を見つけ、それを元にどこをどのように変えるかを指示することです。
 糸の選択をニッターに任せるのなら、最終的にいくらぐらいの価格にしたいのかも、一緒に指示しておけば、ニッターが糸を決定し、目付を決めてくれます。
 最終製品のイメージが明確であれば、ニットの商品企画は可能です。
 
3.クラウドファンディングの活用
 
 購入型のクラウドファンディングは、商品開発のコンセプトやプロセスを公開し、リターンとして開発商品を設定すれことで、予約販売が可能です。
 問題はニッターが、クラウドファンディングのプロジェクトに乗ってもよい、と考えるか、です。企画そのものに夢や可能性がなければ、プロジェクトに参加する意義が見いだせないでしょう。
 例えば、私なら以下のようにニッターを口説くでしょう。
 第一に、これまでのアパレル企業のビジネスモデルは、原価率が低すぎます。もっと原価率を高く設定し、品質の良い商品を顧客に届けたい、と訴求します。例えば、原価率40%に設定した企画を組みたいと提案します。
 第二に、アパレル企業はブランド訴求を優先し、ニッターの情報を公開しません。ニッターの情報を公開すれば、ニッターにとって更なる販売先の開拓につながるかもしれません。そこで、生産者の顔の見える商品にしましょう、と提案します。
 第三に、利益配分を明確に設定することです。これまでは卸と小売が儲けすぎていて、生産現場に十分に還元していません。そこで、実験的に利益配分を再設定したい、と提案します。
 たとえば、原価率40%にして、この中に糸代、加工賃、ニッターの利益を含めます。例えば、ニットデザイナーに10%、WEBコンテンツに10%、プロジェクト管理に10%、小売店に30%と配分します。
 クラウドファンディングの場合、小売店経費はクラウドファンディング会社の手数料に相当します。
 もちろん、これはスタート時の設定であり、生産数量が増え、売上が増えてくれば変動していくでしょう。また、広告宣伝等の経費も必要になります。
 ここまでは商品以前の話です。これに加えて、独自のブランドコンセプトや世界観、商品コンセプト、顧客ターゲット設定でブランドについて説明し、次に具体的な商品企画の説明を行います。
 ビジネスの条件をガラス張りにして、ブランド、商品の考え方を共有します。ここまで行えば、これに賛同してくれるニッターとチームを組めるはずです。
 このプロジェクトの目的は、利益を上げることではありません。継続的な事業を行うために、互いの利益を確保するということです。事業が継続すれば、結果的に利益を確保できるという考え方です。

4.ニットデザイナー育成プロジェクト

 更に、このケースを一つの事例として、新たなニットデザイナー育成プロジェクトを提案したいと思います。ニットデザイナーの育成は、ニッターの利益にも直結し、サスティナブルなビジネスにつながるからです。
 現在、ニットデザイナーという職業は、絶滅危惧種です。ニットは奥深く、プロとして活動するには、キャリアが必要です。しかし、前述したように、ニットアパレルも淘汰され、ニット製品の多くが中国生産になった現在、国内でニットデザイナーを育成する仕組みは失われています。
 ニット業界の発展を考えると、発想の転換が必要です。ニットデザイナーを一から育成するのではなく、ニット製品の発注の方法を共有するということです。
 具体的に言えば、標準的な指示書、基本的な編み地の資料等をクラウド上に用意します。そして、会員制の組織を作り、一定の審査の上、会費を支払えば、資料等を自由にダウンロードできるようにします。
 技術的なことをサポートすれば、ニットが分からない布帛のデザイナーでも、ニット製品を発注できます。
 ニットデザイナーは、自分で作ったオリジナルの指図書を販売するビジネスモデルに転換すべきだと思います。料理研究家がオリジナルのレシピを販売するように、ニットデザイナーもオリジナルのデザインを販売するのです。
 ニッターにとっても、こうした資料を配布することは、自社の受注につながります。したがって、自社で作成した編み地等も公開すべきです。同様に、編機メーカーにとっても、資料の配布は高度な製品を市場に提供することにつながります。
 基本的なニットの発注方法が共有されれば、もっと簡単にニット製品を発注することができます。消費者もニット製品に接する機会が増えるでしょう。

*有料メルマガj-fashion journal(517)を紹介しています。本論文は、2021.10.18に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。  

« 日本を軸としたグレート・リセットを構想しよう j-fashion journal(516) | Main | ビジネスの目的と人生の目的 »

ファッションビジネス」カテゴリの記事

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

« 日本を軸としたグレート・リセットを構想しよう j-fashion journal(516) | Main | ビジネスの目的と人生の目的 »