アパレルDXについて考える j-fashion journal(509)
1.クラウド上で仕入れ、販売する
アパレルビジネスはデジタル化によって、どのように変容していくのでしょうか。もし、しがらみも既得権を考慮せず、理想的なビジネスモデルを考えるとしたら、何ができるのか、について考えたいと思います。
アパレルビジネスとは、生地や付属等の原材料を仕入れ、縫製工場でアパレル製品に加工し、それを販売するビジネスです。小売店に卸売をするのが製造卸、自社で販売まで行うことを製造小売りと言います。
現在は、グローバルSPAがアパレル産業の主力です。自社ブランドを開発し、商品を企画し、直接工場から商品を調達して、世界中の店舗で販売するというビジネスモデルです。
アパレルビジネスは柔軟です。グローバルな大企業から個人まで、様々な規模でビジネス展開することが可能です。
例えば、縫製工場でも、小売店でも、テキスタイルメーカーでも、アパレルビジネスをコントロールすることはできます。もちろん、個人でも可能です。誰がリスクテイクして、ビジネスをコントロールするかの制約はありません。
もし、生地や付属のデータベースがクラウド上に存在し、それを1着分単位で仕入れるなら、縫製工場は無駄な在庫を持たずに、一着ずつ生産することができます。
同様に、アパレル製品がクラウド上に登録され、自由に小売店が仕入れることができれば、無駄な製品在庫を防ぐことができます。
更に、顧客が直接クラウド上から購入すれば、店頭在庫の無駄がなくなります。予約販売のように、一定のリードタイムが確保できれば、更に無駄を減らすことができるでしょう。
2.クラウド上にパターンデータを公開する
クラウド上には様々なデータが公開されています。3Dプリンターが普及したのも、クラウド上に3Dデータが公開されていたからです。画像データ、音楽データ等、様々なデータがクラウド上で公開され、無償あるいは有償で提供されています。
アパレルCADがあるのだから、アパレルのパターンデータもクラウドにありそうですが、現段階ではほとんど存在しません。
そもそもアパレルのパターンはアパレル企業のノウハウの結晶であり、それを公開することはあり得ないとされています。欧米ではパターンを外注することもほとんどありません。
しかし、日本にはアパレルCADを使ったパターンメーキング、グレーディング業務を行う企業が存在します。と言っても、パターンメーキングはクライアントからの受注業務なので、所有権を持っているわけではありません。したがって、クラウド上に公開できるオリジナルのパターンは存在しなかったのです。
私はパターンメーキング会社に「トレンド情報に基づくオリジナルパターンの作成と販売ビジネス」を提案し、トレンドパターンセミナーを企画し、そこで使うオリジリルパターンを開発しました。そのパターンはネット上で販売しています。
まだまだ普及していないが、パターンが入手できるならば、縫製工場は生地を選ぶだけでアパレル製品が作れるようになります。
こうなるとデザイナーの業務内容も変わってくるでしょう。商品デザインというより、ブランドを維持するためのテーマ設定、テキスタイルや付属の選択、パターンと生地とのマッチングが重要になります。
3.展示会DXを考える
これまでのアパレルのコレクションや展示会はB2Bでした。アパレル企業が、プレスと小売店のバイヤーに見せるための展示会です。顧客はブランドの情報を雑誌から入手し、小売店から商品を入手しました。
今では、ファッション情報は、雑誌よりもインスタグラム等のSNSから入手する顧客が増えています。
それなら、インフルエンサーを招待し、服を選んでもらい、プロのスタイリスト、ヘア&メイクアーティスト、フォトグラファー等でチームを作り、インフルエンサーをモデルにした一枚の写真を作るイベントを展示会と考えた方が良いのかもしれません。
メーキング動画を配信してもいいし、作成した写真をアート作品として販売してもいいでしょう。
その写真をネット上に上げ、そこから商品購入した場合、インフルエンサーに報酬を支払う仕組みができれば、インフルエンサーの新しいビジネスモデルになります。
これまでの展示会は完成した商品を販売するのが目的でした。しかし、商品の販売だけならネットで完結します。人を集めて、商品を紹介するのであれば、それを着用してもらうことが重要です。つまり、リアルな展示会は商品の試着イベントにして、販売はネット上の展示会というように分けることも可能です。
ネット上の展示会であれば、完成品だけを展示するのではなく、プロセスも紹介するのはどうでしょうか。デザイン画、1次サンプル、2次サンプル等をアップし、そこでの議論を公開し、顧客からの意見も募集します。
そうすれば、人気のない商品は企画段階でボツにできるし、人気のある商品は予約注文を取ることもできます。
情報公開は一般公開でもいいし、ある程度の制限を加えてもいいでしょう。
例えば、年齢別に顧客の意見を聞くのも面白いし、サイズ別の顧客の意見を聞くもの良いでしょう。
クラウドファンディング型のオンライン展示会があってもいいと思います。生産ロットに達したら生産開始となる仕組みです。
4.ファッション体験DX
店頭販売とネット販売の違いは何でしょうか。DXにより、小売店はどのように変容していくのでしょうか。
商品を購入するだけなら、ネットで十分です。ネットでは素材の感触を確認したり、試着して着心地をチェックすることはできま線が、写真から想像することはできます。動画ならシワや生地の動きが確認できるので、更に分かりやすくなります。
アパレル製品を着用して、SNSに上げ、「いいね!」をもらう。消費者の中には、それを目的としている人もいます。そうならば、小売店は良い写真が撮れるスタジオになるべきです。販売員はスタイリストやヘア&メイク等を担当します。あるいは、販売員自身がインフルエンサーになるのも良いでしょう。
そうなれば、接客をする必要はありません。商品が欲しければ、店頭に端末をおいて、そこから注文してもらえばいいのです。
店頭では、顧客参加型の撮影イベントを行います。その体験が楽しければ、店まで出かける意義が出てきます。
あるいは、小売店では小売店限定モデルを販売します。この商品はネットでは購入できません。あるいは、オーダーメイドでも良いでしょう。いずれにしても、ネットではできないサービスを店舗で行うのです。
そうなると、店の立地、面積、サービス内容も変わってきます。商品を並べるのではなく、写真の背景となるようなショップです。カフェやメイクスタジオを併設するのもありです。
こうして、小売店の役割は物販から体験へと移行していくことなるのです。
*有料メルマガj-fashion journal(509)を紹介しています。本論文は、2021.8.23に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。
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