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October 13, 2022

アパレルDXについて考えるj-fashion journal(448、449)

1.伝票レス、FAXレスから始めよう

 今更、言うまでもないことですが、伝票とはアナログな数値データを交換する手段です。納品書には、品番、品名、単価、数量、金額等が記載されています。
 商品を受け取った側は、その納品書の数字が正しいことを確認して、入荷データとして仕入れ台帳等に記載します。
 それを自動化するために、データベースを連携させれば、納品書の数値が自動的に相手の仕入れ台帳に記載されます。
 FAXも伝票と同様の弊害があります。FAXが届くとその数字を手入力しなければなりません。これも本来ならば、自動的に記帳されるはずです。
 基本となる数値データが入力されれば、計算式を当てはめることで、更に必要な計数を導くことができます。
 あらゆるデータ入力、集計作業が自動化されれば、売上管理も在庫管理も原価管理もとても楽になります。
 理論的には可能ですが、未だに実現していません。これはDX以前の業務改善の問題ですが、そこからスタートしないと何も始まりません。 
 
2.ショップと企画をデジタルでつなぐ

 アパレルの企画は、まず計数から始まります。年間の売上予算を半期四半期、月単位に配分し、期首在庫、仕入れ、売上、期末在庫を追いかけながら、毎月の生産量を想定します。そこからアイテムバランスで各アイテムに落し込み、小売価格、生産数量、各アイテムの平均用尺、平均工賃等から型数を割り出します。
 現在は製品仕入れが主流なので、複雑な計算は必要ないかもしれません。
 ここまでの計数管理は、AIで行うことになるでしょう。
 量の問題はAIで対応可能ですが、質の問題はAIでは難しいと思います。
 そこで最も重要なのは、店頭の販売員からの情報です。売上には上がらない顧客の動きや反応について聞くのはとても有効です。あるいは、周囲の競合ブランドの情報も必要です。
 数市の情報は売上がカウントされないと何も上がりません。しかし、現実には、購買に結びつかないで終わるケースも多いのです。
 ZOOMが普及したので、次の企画に向けた店長会議をオンラインで行ってはどうでしょうか。
 もう一つは、チャットを利用した、意見収集です。こんな商品があれば、売上が取れたのに、という情報等をチャットで共有する。
 数値ではない情報を活かす仕組みを作ることが、新しいビジネスモデルにつながると思います。
 
3.販売員からショップスタイリストへ

 私は小売業の主役が企業から個人に移行すると考えています。企業より個人、ブランドより個人、ショップより個人です。むしろ、個人がブランド化するのかもしれません。
 そうなるには、販売員のポジションを変えなければなりません。店頭で商品管理と接客販売するだけの販売員から、店内の商品をコーディネートして、情報発信する「ショップスタイリスト」に変わるということです。
 ネットショップとリアルショップの双方を展開する場合、販売はネットショップで行い、ショップはメディアとしての性格を強めると思います。
 ショップスタイリストのミッションは個人メディアとして、情報発信してファンを集め、顧客へと誘導することです。
 個人がSNSで情報発信をするには、店内での写真撮影を認めることも必要になります。アパレルショップでは、デザインが盗用されるからと店内を撮影禁止にしているところが多いのですが、これも再考の必要があるでしょう。
  
4.商品の店間移動と価格変更

 アパレルにとって、いかに「プロパー消化率」を上げるかが利益のボイントとなります。アパレルは仕入れた商品在庫をいかに利益に換えるかが問われるビジネスだからです。
 百貨店は、決まった店舗面積からいかに利益を生み出すかを考えるので、「売り場効率(月坪)」がを上げることがポイントになります。
 商品の値下げをいかに少なくするか。半期に一度、集中的に半額セールをするのが良いか。あるいは、2割引き、3割引きと小刻みに値下げを行うのが良いのか。
 「しまむら」は、商品の店間移動をしながら、価格を変えて、消化していくと言われています。
 これを行うには、徹底した単品管理と各店のデータ分析が必要です。
 店間移動は意外に難しい問題です。商品を最適な店舗に配置するには、売れない店から商品を引き上げ、売れる店に移動します。しかし、売れる商品を引き上げられるのは嫌なものです。そこで揉めることになります。ですから、商品の移動には明確なルール作りが必要になります。 
 これもAI活用が生きる分野だと思います。

5.単品単位の売上進行予測

 アパレルビジネスとは、予測ビジネスです。将来の需要を予測した上で、商品を仕入れ、展開します。プロモーションする場合も、常に消費者意識の変化を予測しなければなりません。
 営業は店別の売上予測、販売員別の売上予測が必要です。
 企画にとっては、商品別の売上予測が必要になります。商品別の予測と管理ができれば、商品によって、販売期間を設定することができます。ロングセラーの商品、シーズンの立ち上がりに必要な商品、実需期に必要な商品、端境期に必要な商品等は、それぞれに販売期間が異なります。
 商品の性格によって、期中にワゴンでセールをした方が良い商品も出てくるでしょう。あるいは、一定の消化率を達成したらセールにかけるという設定もできます。

6.パターンデータベースの可能性

 アパレル製品を生産するには、生地と付属とパターンと縫製仕様書が必要です。デザイン画は、パターンを引くための指図書であり、パターンは服を作るための設計図です。
 パターンを引く人をアメリカでは、「パターンメーカー」、ヨーロッパでは「モデリスト」、日本では「パターンナー」と言います。
 ヨーロッパのアパレル企業の経営者は、「モデリストはレストランのシェフだ」「モデリストは企業の宝だ」と讃えます。それほど、重要な仕事であると認識されているということです。
 パターンはアパレル企業のノウハウの塊です。海外縫製する時にも、イタリアのアパレル企業は裁断してから送るそうです。パターンを送って、海外で裁断させると、簡単にコピーできるからです。
 それほど大切なパターンですので、量産可能なパターンを販売したり、クラウド上で公開することはありません。
 しかし、日本にはパターンメーキング専門の会社があります。その会社がオリジナルのパターンを作成し、販売することは可能です。
 それにより、何が起きるでしょうか。もし、タイムリーに新しいパターンが公開販売されるのであれば、デザイナーもパターンナーも必要なくなるかもしれません。
 縫製工場がファクトリーブランドを作って、製品を販売するのなら、とても便利です。あるいは、テキスタイルメーカーが、パターンを購入してアパレル製品に加工すれば、利益率の高いビジネスモデルができるかもしれません。
 
7.B2Bの展示会、B2Cの展示会

 欧米のファッションビジネスは、年2回のコレクションがベースになっています。糸のコレクション、テキスタイルのコレクション、アパレルのコレクションが半年ずつずれて開催されます。
 展示会の期間を過ぎると、商談ができなかったのですが、ネット活用になって、次第に柔軟な運用が可能になりました。
 例えば、受注が少なくて、生産中止になる場合の代替え品の提案や、着分の発注がオンラインでできるようになりました。
 それでも、オフラインの見本市が開かれるのは、色やタッチ、素材の表面等は見て触らないと分からないからです。
 また、知られざる見本市の目的は、業界のボス同士が会えるということです。これは、展示会期間中の夜がメインの舞台になります。
 商取引、受発注であれば、ネットで行った方が合理的です。遠隔地からも受発注が可能であれば、出張経費も削減できるでしょう。
 更に、メーカーが小売店を対象に行うだけでなく、直接顧客に対して予約販売を行うこともできます。
 現在のような自粛期間中であっても、予約制にして、会議室の鍵をスマホで管理できるソフトがあるので、バイヤーに暗証番号を送り、無人の部屋に入ってもらい、机の上のモニターを通じて、商談するというスタイルも考えられます。
 あるいは、ファッションショーの観覧券と展示会の予約販売券をセットにして販売するのはいかがでしょうか。
 一定の料金を支払えば、会員限定のファッションショーがオンラインで見ることができて、ショーの後で割引価格で予約もできるという仕組みです。

8.店舗と工場をデジタルで直結する

 日本の縫製工場は、生地を支給され、縫製工賃を受け取って、アパレル製品に加工します。数量も指図された通りに裁断し、縫製します。
 海外のOEM工場は、自社で生地を仕入れ、製品を販売する形態です。そのため、オーダーがあれば、期中で追加生産することも可能です。
 日本は、アパレル企業(商社)が生地を調達しない限り、追加生産はできません。
 かつて米GAP社は、インドのOEM工場と店頭情報を交換し、売れ行きの良い商品は、追加生産する契約を結んでいたそうです。つまり、工場が世界の店頭を見ながら、追加生産の段取りを行うことができるというわけです。もし、追加生産ができなければ、次の企画の商品が展開されることになります。
 アパレル企業が全ての意思決定をするのではなく、情報データを結ぶことで、意志決定が分散されるということです。
 例えば、パターンについても、縫製工場が作っても良いわけです。そうなると、アパレル企業はサンプルのアプルーバルをすれば良いことになります。
 これは、前述したパターン会社との連携も可能であるということです。
 
9.クリエイティブディレクター、デザイナーとのデジタル連携  

 デザイナーは都会にいることが多く、縫製工場、テキスタイル工場は地方にあることが多い。これら3者をオンラインでつなげば、ファクトリーブランドができるかもしれません。
 クラウドファンディングを活用して、ブランドのストーリーを紹介し、テキスタイルの特徴、縫製の技術をアピールし、それぞれの顔が見えれば、顧客にとっても魅力的でしょう。あるいは、日本のテキスタイルメーカーが世界の10人のデザイナーにオファーしてコレクションを作ることも可能です。テキスタイル、縫製、デザイナーが、フリーな立場でつながることで新しいクリエイションが生れる可能性があります。
 あるいは、クリエイティブディレクターがブランドのテーマや考え方を公開して、それに共感するメーカーを募集して、コレクションを作ることもできるかもしれません。
 
10.3Dデータとアバターによるデジタルクチュール

 オートクチュールのメゾンでは、顧客全員のボディ、頭型を作り、服や帽子を立体裁断で作っていました。
 現在もシルクドソレイムのからだにフィットした衣裳や仮面はオートクチュールの手法で作られています。
 これをそのままデジタル化することができないでしょうか。
 顧客の体型を3Dスキャナーで写し取り、コンピュータの中にボディを作ります。
 アパレルのパターンCADデータをボディに合わせて、自動的にグレーディングし、3Dシュミレーションすることで、実際に着用して歩いた時にどのように服が動くかをチェックすることができます。
 レーザーによる一枚裁断をすれば、フルオーダーに近い形てオーダーメイドができるはずです。
 もちろん、現段階ではまだ不十分ですが、理論的にはオートクチュールをデジタル化することは可能だと思います。そして、二次元のアバターと三次元の自分が同じスタイルで登場することが可能になります。
 これまでは二次元のキャラクターのコスチュームを三次元の人間がコピーしましたが、それを同時に作ることができるということです。
 そうすれば、ゲームの中でファッションショーをすることもできるでしょう。

*有料メルマガj-fashion journal(448、449)を紹介しています。本論文は、2020.6.22、29に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。  

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