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July 23, 2019

M&Aによるアパレル再生の可能性 j-fashion journal(291)

1.苦境に陥るアパレル企業

 アパレル企業が苦境に陥るとは、具体的にどういうことだろう。
 まず、予算に売上が届かなくなる。その結果、大量の在庫商品を抱える。アパレル企業の場合、そのシーズンに売れ残った商品が次シーズンで売れることはまずない。次シーズンは、次シーズンのトレンドが存在する。素材やカラー、デザインが微妙に変化するので、前年の商品は古くさく見える。
 原価の範囲内で在庫商品が処分できれば、まだ健全な状態だ。原価割れの価格で処分すると損金が発生する。処分せずに、在庫のまま保管すれば経理上は利益になる。しかし、損金を計上できずに在庫処分ができないのは病んでいる状況だ。資金を投入して在庫処分しないと、キャッシュが回らなくなる。
 次に人材の問題。店舗流通からネット流通に軸が変わっていることは分かっていても、社内にITを理解する人材がいないアパレル企業は多い。新たな人材を採用しようにも、予算が確保できない。逆に事業部がなくなり、店舗が縮小し、営業の人材が余っているケースも多い。人材のミスマッチだ。しかし、退職金を確保しなければ、早期退職を進めることもできず、会社の活性化ができず、無気力な雰囲気が支配的になる。人材ミスマッチの解消にも資本が必要だ。
 モノの問題もある。ブランディングやデザインなど、付加価値を高めるには、それなりの人材を揃え、開発経費を確保しなければならない。
 良いテキスタイルを確保するには、良いテキスタイルメーカーと取引きしなければならないし、縫製を良くしようと思えば、良い縫製工場と取引し、それなりの工賃を支払うことが必要になる。業績が悪いと与信管理で取引することができない。どんな仕入れ先とも、取引ができる状態になるには、経営が健全化しなければならないし、それには資本が必要である。
 システムの問題も根が深い。多くの企業のシステムは継ぎ接ぎでごまかしてきたが、そろそろ限界であり、全体最適化を図らなければならない。もちろん、これも資本が必要だ。
 以上のように、経営を改善するには資本が必要だ。それができないなら、現状のまま乗り切るしかないのだが、既にそれが限界に来ている。
 
2.企業存続のためのM&A
 
 多くの日本人にとって、企業は個人の上位に存在する概念だ。個人が企業に所属しているのであって、個人が企業を所有しているのではない。企業は家である。したがって、個人の判断で企業を売却するという発想がない。
 一方、中国人や欧米人は、個人主義で、企業を利益を得るための装置と考える。利益が出なくなれば、売却もあり得る。そもそも、未来永劫企業を存続させる意義も感じていない。企業とは、時代と共に変化していくものという認識だ。
 さて、業績が悪化して、建て直しができない企業は、どうすべきなのか。倒産させれば、仕入れ先等に迷惑が掛かるし、社員の生活保証もできない。社長自身も個人保証していれば、自己破産は免れない。
 もし、企業を売却できれば、建て直しの可能性が見えてくる。少なくとも、仕入れ先に迷惑は掛からないし、社員の生活の保証もできる。オーナー社長も自己破産しなくても済む。
 冷静に考えれば、業績が悪化した企業を売却することは悪いことではない。むしろ、皆がハッピーになるはずだ。

3.企業建て直しの処方箋

 企業を売却して、資本注入されれば、企業の建て直しの可能性が出てくる。少なくとも、現状より悪くはならない。
 第一に行うべきは、新時代に対応できる経営者に交代することだ。旧来の商慣習や業界の常識にとらわれず、普通の企業として全うなマネジメントができればいい。異業種の人材でも良いと思う。最近では、経営者専門のリクルートサービスもあるので、そういう人材を登用しても良いだろう。
 トップが変わらない限り、会社は変わらないし、そもそも、旧来の経営者には責任があるのだから交代すべきだ。
 第二は、不良在庫の処分である。資本注入がされれば、在庫評価を落とすことができる。その上で、いくらかでも値がつけば、それが利益になる。
 在庫を抱えていると、何もできない。過去を清算し、新しい体制で出直しためにも、最初に在庫を処分しなければならない。
 第三に行うべきは、早期退職を含む人材ミスマッチの解消である。人間は変化を嫌うものである。変化を嫌う人が抵抗勢力となり、企業再生を阻害する。
 また、新たな事業戦略を推進するには、新たな人材を登用する必要がある。その人材コストを確保するためにも、新たな事業に対応できない人材は,他の企業に移ってもらうことが必要になる。もちろん、新しい事業に対して、必要な人材とそうでない人材を見極める必要がある。
 第四の改善は、継ぎ接ぎだらけのシステムの全体最適化である。
 業績の悪い企業の業務システムの多くは、地代遅れであり、バラバラな時期に、個々の担当者がシステムを導入しているために、全体がつながっていない。そのため、様々な段階で無駄な作業が発生している。そこで、システム全体を見直し、全体最適化を図る必要がある。クラウド化が一つの方向性になるだろう。
 第五は、組織改革とモチベーションアップである。
 企業買収は、社員にとっても大きなショックだろう。不安ばかりが先行し、悲観論が横行すれば、経営再建はできない。
 企業のビジョンやミッションを明確に設定し、それを共有すること。そして、評価と報酬システムを改善し、社員のモチベーションアップを図らなければならない。継続的なワークショップ等により、社員の不安を取り除き、新たなチーム編成を行う必要がある。
 第六は、ブランディングと商品開発の強化だ。経営改善というと、いきなり新ブランドを展開しようという人も多いが、私は反対だ。現在の商品にも、それなりの販売経路が確保されているし、顧客も存在している。それを無視して、全く新しいラインに変えても、そこにも競合は多い。既存のブランドや商品の分析を終えてから、現状の改善を行わなければならない。
 もちろん、必要であれば、新ブランド開発も行うが、その場合は、一からチーム作りをしなければならないし、仕入れ先や販売先も一からスタートとなる。それよりは、既存ブランドのリニューアルを優先すべきだろう。
 第七は、新たな人材導入と新たなサプライチェーン構築である。これは、全く新しいブランドや事業部を立ち上げることを想定するものだ。
 新たな事業部をスタートさせる場合は、M&Aも視野に入れたい。社内で一からプロジェクトを立ち上げるケースと比較して、方法を考えるべきだろう。
 第八は、本社移転を含む経費削減である。新会社のビジョンやミッションを理解し、経営的な視点に立てるようになってから、本社移転を考えるべきだろう。本社が自社物件ならば売却して、よりコストが下がることを前提に、賃貸物件への移転を考えたい。無駄なコストを削減し、有望な新規事業に投資することは経営改善の基本である。
 
4.中国アパレルとの連携

 現在、日本のアパレルをM&Aする可能性があるのは、中国内販アパレルだ。その理由は、上場する中国アパレル業界が多く、新たな投資ニーズが高いこと。中国アパレル業界は全般的に不況だが、その陰で世代交代も起きている。若い企業は上場し、新たな資金調達を得て、業務拡大を考えている。その手段として、有望なのが、日本アパレル企業のM&Aである。
 日本アパレルにとっても、中国アパレルと組むことで様々な可能性が広がる。たとえば、中国アパレルにブランドライセンス供与すること。それだけで、安定したロイヤリティ収入が期待できる。また、自社ブランドの商品を中国市場で展開する場合でも、中国アパレルと連携した方が有利だ。
 これまで、日本のアパレル企業が中国市場に進出しても、多くが失敗している。中国市場の特徴やニーズを把握できず、日本の商品をそのまま投入しても売れないのだ。中国アパレル企業の協力を得ることで、中国市場に対応した商品供給や、販売体制を整備することができるのではないか。

*有料メルマガj-fashion journal(291)を紹介しています。本論文は、2017.6.19に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

 

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