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January 07, 2019

サスティナブルなブランドの提案 j-fashion journal(281)

1.古いほど価値が出る商品

 ビンテージのリーバイス501の価値を見出したのは、日本の古着屋だ。その昔、アメリカの古着の取引は「1トンあたりいくら」という取引だった。日本でリーバイス501の古着が高値で取引されるようになり、アメリカでもリーバイスは分別されるようになった。そして、世界中で、リーバイスのビンテージに高値がつくようになった。
 日本人は歴史的に、古いモノの価値を見出すのが得意だ。戦国時代は、中国や朝鮮半島で日常雑器として使われた陶磁器を千利休などの茶人が目利きとして、高額な茶器として取引された。
 二つの事例に共通しているのは、日常のモノであること。古いから価値が出ると思われていなかったこと。それを一部の目利きが価値を見出し、価格を設定し、市場を創造したことである。
 価値が定まった骨董品は、最も安定した投資商品でもある。限定された商品であり、値上がりが期待できるし、欲しい人がいる限り、価格が下がる危険性も少ない。
 もし、使えば使うほど価値が上がる商品があるとすれば、その商品が高額であっても投資として購入するだろう。
 アパレルの分野でそんな商品はできないだろうか。
 

2.サスティナブルな生産

 アパレルの分野で、時間が価値を生む可能性があるアイテムは、デニム、藍染めである。デニム、藍染めは古くなると褪色し、それが魅力になる。
 合成インディゴのデニムは大量生産が可能なので、初期のリーバイスに歴史的価値が生じる。需要より供給が圧倒的に少ないので、安定した価値を生み出している。
 日本古来のたで藍による天然発酵建て藍染めも大量生産が不可能である。
 20年着続けた藍染め刺し子の作務衣を見たが、良い味が出ていた。色の褪せ方が美しく、また、新しいものよりも風合いが増し、柔らかく膨らみが出ている。これを見ると、時間経過による価値が増していると言えよう。
 埼玉県羽生市の野川染織工業は、日本で唯一天然発酵建ての糸染めを工業的に生産している。2014年で100周年を迎え、それを機会に創業時の屋号である「喜之助紺屋」をブランドとして復活させ、次の100年間の継続を目指そうとしている。私はそのお手伝いをしている。
 藍染めの原料であるスクモ(藍玉)を生産する藍師は減少の一途であり、長期的な契約をしないと購入することもできない。つまり、今後、新規で参入するのが非常に困難であるということだ。
 また、多くの藍染め工房は工芸的な生産であり、反物や製品を染色しているケースが多い。スカーフや着尺はあるが、服地として入手することは困難である。
 野川染色工業も藍染めの生地を販売していない。自社の剣道着の生地を生産するので手一杯であり、外部に生地を販売する余裕はない。とは言え、剣道着の需要も減少しているので、新しい需要開拓が求められている。それも、ブームにせずに、細く長く継続的な生産を維持することが必要なのだ。
 
3.藍染めのオーダーメイド

 私の古くからの友人であり、メンズもレディースもこなすベテランデザイナーは、新たな仕事としてオーダーメイドを始めたと言う。彼は、自分で縫製もできる。
 これまでは若いブランドのデザインを受託していたが、「このままでは何も残らない」と感じたそうだ。そこで、口コミでオーダーメイドを始めたところ、顧客からも喜ばれ、やり甲斐を感じているようだ。
 私は彼と組んで、「喜之助紺屋」のオーダーメイドラインを発表することを計画している。
 野川染色工業では生地売りをしていないので、他のデザイナーとバッティングすることはない。世界で唯一、たで藍の天然発酵建て藍染め生地を使うことができるのだから、差別化は十分だ。
 しかも、オーダーメイドである。私が構想している、国産プレタの上のゾーン、10万から30万円程度の価格ラインのデザイナーズコレクションの可能性が見えてきた。

4,「一生着る服」というコンセプト

 私は、このラインのコンセプトを「一生着る服」にしたいと考えている。サスティナブルな生産だけでなく、服そのものもサスティナブルになって欲しいからだ。
 一生、着るための手法の一つは、「染め替え」である。藍染めなので、褪色した製品を再度染めることで製品が生まれ変わる。その場合でも、濃く染めるのではなく、薄い色を重ねるくらいの方が良いのかもしれない。
 第二の手法は、「継ぎあてを含むリフォーム」である。江戸時代、藍染めの野良着は何度も繰り返し繕われ、ボロボロになるまで着用した。藍染めの生地は常に生産しているので、継ぎ足したり、擦り切れた部分だけ補強することも可能である。
 そして、新たなビジネスモデルとして提案したいのは、下取り価格を保証するということである。例えば、製品には価格の3割程度の「買い取り/リフォームクーポン」をつけて販売する。
 クーポンを出せば、どんなに古くなってもその金額で買い取る。あるいは、クーポンを出せば、そこに記載している金額でリフォームを受けることができる。
 リフォームした製品は、新しい製品よりも時間的価値が加わるので、より高い価格で販売する予定だ。顧客が手放したくなければ、クーポンの金額を支払えば、リフォームを受けることができる。

5,藍染めクチュリエの養成

 ここで新たな課題が生れる。「一生着る」と言う以上、数十年スパンの計画が必要だ。しかし、私もデザイナーも10~20年しか仕事を継続できないかもしれない。
 正直なところ、藍染めの製品は20年や30年ではビクともしないのだ。このプロジェクトを立ち上げるには、最初から後継者育成に取り組まなければならない。
 最初のコレクションを発表した後、若い世代のデザイナーにも参加を募りたい。そして、藍染めオーダーメイド講座を開設する。講座と言っても、座学ではない。
 オーダーメイドなので、デザイン画だけ描くデザイナーでは役に立たない。デザイナーというより、クチュリエ、クチュリエールの能力が求められる。オートクチュールの時代のようにお針子からスタートするのが正しいだろう。
 最初は、お針子兼アシスタントとして、オーダーメイドの受注会に参加するところから始まる。そして、リフォームや縫製の仕事を受注する。勿論、工賃を受け取ることができる。
 ある程度、修行を積んだ段階で、受注会に自分のオリジナル作品を展示することが許される。勿論、受注を取ることができる。但し、この段階では支給された生地の範囲の中で作品を作る。
 正式なクチュリエとしてデビューする。そうなると、自分の名前を冠したコレクションを発表することができる。この段階では、使用できる素材の幅が広がる。例えば、リネン、ウール、シルク等の着分を染色して使用することも可能になる。
 ここまでを含めたプロジェクトを立ち上げたい。プロジェクトもサスティナブルでなければならない。 


*有料メルマガj-fashion journal(281)を紹介しています。本論文は、2017.4.10に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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