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January 15, 2018

アニメ化するリアル世界 j-fashion journal(272)

1.世界的ビジョンの共有

 原始仏教は紀元前450年頃、原始キリスト教は400年代、イスラム教は600年代に始まったとされる。大昔の偉人が語り、実践したことが教義となり、現代にも生きている。
 経典や教典は文字で書かれている。内容は、象徴的な詩や寓話や対話等が主たるものだ。人は、それらを読んで自分なりに解釈し、独自のイメージを作り上げる。
 それぞれの宗教ば独自の世界観、価値観を持っている。その世界観や価値観を共有することで、人は結びつく。そして、国家を建設されることもある。
 多くの人が共通のイメージを共有することは強大な力になる。しかし、イメージの共有は容易ではないし、時間も掛かる。
 1455年、グーテンベルグが発明した活版印刷は、聖書の大量印刷を可能にした。聖書は、現在に至るまで最大のベストセラーだ。活版印刷という技術は、イメージの共有を加速した。

 19世紀に発明され20世紀に発展した映画も、世界中の人々に共通のイメージをもたらした。20世紀に実用化されたテレビは、更にイメージ共有を身近なものにした。
 欧米文化が世界を席巻したのは、こうしたメディメアによるイメージ共有が貢献した。欧米の映画やテレビドラマは、欧米人の価値観、生活スタイルを世界中に拡散した。もし、日本や中国、インドが世界で最初に映画やテレビを実用化し、それが世界に輸出されたとしたら、歴史は変わっていたかもしれない。
 日本で二足歩行ロポットが発達したのは、手塚治虫の「鉄腕アトム」の影響が大きかったと言われている。ロボットの研究者の多くは、子供の頃、鉄腕アトムを見て育ったというのだ。研究者が共有イメージとして鉄腕アトムの世界観を持っていたため、二足歩行ロボットを開発することに疑問を持たなかったのだろう。
 「鉄腕アトム」は21世紀の未来都市を視覚化したという意味でも、大きな意義があったと思う。現在の上海市の高層ビル群と高速道路を見ると、鉄腕アトムに出てくる街のように感じるのは私だけではないだろう。
 日本のアニメは、世界中で放映された。日本のアニメ制作会社には、グローバルビジネスのノウハウが欠如していた。グローバルビジネスのノウハウがないため、日本市場で利益を確保した後、二束三文で権利を売却した。そのために、日本のアニメは世界中で評価されることになったのだ。
 世界中に共通イメージを放映し、それを共有したことは、大きな意味があった。アニメを見てから、日本文化に興味を持ったり、日本語を学んだ人は非常に多い。 
 
2.歌舞伎とコスプレ

 江戸歌舞伎は、なぜ、現実離れした大げさで派手な格好をしているのだろうか。それは、歌舞伎がリアルな人間をモデルにしていないからだ。
 歌舞伎の由来は、阿国歌舞伎と言われるが、阿国歌舞伎から、女歌舞伎、若衆歌舞伎までは、舞踊ショーのようなものだったらしい。男性だけの野郎歌舞伎になって、内容が一変する。
 上方歌舞伎は、愛憎、義理人情、涙と笑いのドラマ。江戸歌舞伎は、仮面ライダーや戦隊が活躍するヒーローものに例えることができる。明確なキャラクターを持った登場人物が大げさな衣装を身につけ、独特の化粧をして、ミュージカルを繰り広げる。芝居の脚本は、当時の事件などを題材とし、時代設定は江戸時代以前。基本となるストーリーは、曽我物語、源平盛衰記、道成寺、八百屋お七、獅子ものなど、それぞれの世界観の中でストーリーが展開する。
 江戸歌舞伎の登場人物は、リアルな人間がモデルではなく、人形浄瑠璃、絵草子などがモデルである。人形浄瑠璃や絵草子の実写版であり、コスプレミュージカルだ。
 登場する役者はスターであり、そのスターが次から次へと異なるヒーローを演じる。しかも、当時の役者は、お金を払えば、酒食を共にすることもできたという。当時の歌舞伎は、あらゆるエンタテインメントを複合したエキサイティングなパフォーマンスだったのだ。
 アニメ作家が意識しているかはわからないが、歴史的に見ると、歌舞伎はアニメの原型だと思う。現実離れした登場人物。現実とは異なる歴史観、世界観の中で物語が展開する。
 役者絵が売れたように、キャラクターグッズが売れる。歌舞伎の構造はアニメと酷似している。
 こうした歴史と伝統があったからこそ、日本のアニメが世界的水準となり、短期間で世界に受け入れられたに違いない。
 
3.憧れのキャラクターに似てくる

 日本のアニメは、世界中で観られている。そのイメージは各自の心の中に何らかの形で定着している。それが、憧れの対象になれば、アニメのキャラクターをモデルに自分自身をイメージする。
 かつて、映画スターが憧れの対象だった。その後、テレビに出演するタレントが憧れの対象になる。
 江戸時代の文献には、「最近、商人の娘まで花魁の真似をして嘆かわしい」という記述があるらしい。当時の人気の花魁は若い娘の憧れだったのだ。勿論、歌舞伎役者に憧れる人もいただろうし、歌舞伎の登場人物のキャラクターに憧れた人も少なくなかっただろう。吉原や歌舞伎の舞台は、当時のファッション発信基地だったのだ。
 お笑い芸人に人気が出れば、お笑い芸人に憧れる。アイドルに人気が出ればアイドルに憧れる。そして、その真似をするようになり、外見が似てくる。
 最近はアニメは、キャラクターが類型化しているように感じる。女子だったら、リーダーシップのあるしっかり者、やさしいドジっ子、ツンデレの秀才、スポーツ万能の子、人見知りのオタク等々。おそらく、アニメを観ながら、「私はこの子に似ているな」と思うだろうし、こんな女の子になりたいな、と思うはずである。
 人は、念じるとその通りになっていくものだ。戦後、日本人が急激に脚が長くなったのも、胸が大きくなったのも、目が大きくなったのも、遺伝子だけの影響とは考えられない。そうなりたいという強い願望、脳の働きがあって、その姿に近づいていった。
 世界中で、アニメはどれほどの影響を与えたかは分からない。しかし、アニメがきっかけとなり、日本に興味を持ち、日本語を学び、日本に旅行に来た人は少なくない。
 私は、アニメやマンガは強大な影響力を持っていると思う。自我が形成される時期に接するメディアであり、夢中になって読んでしまう。現在は、これにゲームが加わっている。既に、強大な影響力を世界に与えているのではないか。
 日本には強力な宗教は存在しないが、心の隙間はマンガやアニメが埋めている。「人間関係をアニメで学んだ」という若い世代も多い。同様のことが世界で起きている。
 影響力の強さという点で見るなら、最も強力な日本文化、日本精神のメディアはマンガ、アニメといえよう。
 
4.アニメ化するリアルな世界

 アメリカのトランプ大統領の言動を観ていると、マンガを観ているような気分になる。独自のキャラクターを持ち、単純で大げさで分かりやすい。
 トランプ大統領ならずとも、自分のキャラクターを設定することは、大衆の印象を強める。
 活字は読まないと分からない。活字の時代の人間は、会話が重要だった。政治家なら演説である。
 テレビの時代になって、演説に視覚的要素が加わるようになった。赤いネクタイは強い印象を人に与える。
 SNSの時代になると、長い演説は効果を発揮しなくなった。自分の考えを140文字で表現しなければならない。短い文章で注目を集めるには、過激な表現が有効である。良識よりもインパクト、バランスの撮れた人格よりも、強烈な自己主張が重要視されるのだ。
 こうした風潮は、マンガじみた、あるいは、アニメじみた世界を醸成していく。その自我が実体化したのが、トランプ大統領ではないのか。
 同様のことは、企業にもいえる。活字の時代の企業は、何をしているのか分からなかった。読み込まない限り、実態を理解することはできない。今後は、分かりやすいキャラクターが要求されるだろう。分かりやすい主張と、分かりやすいキャラクターが求められる。
 ファッションのブランド開発では、顧客ターゲット設定が重要である。しかし、これからはキャラクター設定に変化していくだろう。分かりやすいキャラクターを設定して、そのキャラクターのワードローブを構成する。ある意味では、リアルなコスプレの衣装を作ることが求められているような気がするのである。

*有料メルマガj-fashion journal(272)を紹介しています。本論文は、2017.2.6に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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