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January 14, 2018

ラグジュアリーなカジュアル j-fashion journal(265)

1.フォーマルとカジュアル

 フォーマルな服は、きちんと縫製しなければならない。縫製工賃も高いし、生地値も高い。思わず背筋が伸びるような緊張感を伴う服である。
 カジュアルな服は、ラフな作りのものが多い。縫製工賃も安いし、生地値も安い。その代わり、カラフルで気楽に楽しめる。そんな服である。現代はカジュアルファッション全盛の時代である。緊張感を伴う服は、コスプレや礼服だけかもしれない。
 日本でイメージするカジュアルウェアのルーツは、アメリカンカジュアルであり、工業製品のように大量生産した製品だ。アメリカンカジュアルを本物とすれば、本物のカジュアルは大量生産の安い服ということになる。
 したがって「ラグジュアリーなカジュアル」という表現は成立しにくい。しかし、ラグジュアリーなカジュアルは存在する。カジュアルウェア用のテキスタイルにも高級原料を使ったものがあるし、ビンテージ感覚の高密度でヘビーなテキスタイルもある。

 2016年秋に立ち上がった「Uniqlo U」のスウェットは正にラグジュアリーなカジュアルだった。特に、「MEN スウェットプルパーカ(長袖)+E」は、分厚いスウェット生地を二重にしたフードが襟元を包み込む感動的な服だった。

2. 軽くて薄くて高機能なテキスタイル

 これまでのユニクロの製品は、薄くて軽くて機能的な素材が主だった。これは、合繊メーカーの東レが主たる素材供給をしていることに関係している。合繊の理想はシルクである。シルクのような薄くてなめらかな素材。しかも、夏は涼しく、冬は温かい。そんな素材が理想なのだ。
 また、アメリカのギャップとの差別化を意識していたのかもしれない。アメリカは綿産国である。アメリカから生まれたTシャツもジーンズもスウェットシャツも実用的で丈夫なコットン製である。一方、日本のきものはシルク製であり、シルクから派生した日本の合繊技術は世界的な水準を誇っている。ギャップがアメリカのコットンカジュアルとするなら、ユニクロは日本の合繊カジュアルと言ってもいいだろう。
 もう一つ、ユニクロの製品の生地が薄いのは、価格を抑えるためでもある。商品の価格を下げるためには、生地値を抑えなくてはならない。最も簡単な方法は、原料を安いものに変えるか、打ち込みを減らすかだ。加えて、生地の用尺を減らし、シンプルなデザインにして縫製を合理化する。
 以上、二つの理由からユニクロの商品は薄い生地のものが多く、それがユニクロの特徴でもあった。

3.ラグジュアリーなカジュアル

 「Uniqlo U」では、そのユニクロの常識を覆した。多くの製品は、ヘビーウェイトで高密度なテキスタイルである。また、デザインを見る限り、用尺を気にしていない。縫製仕様も合理化することなく、見えない部分に手間をかけている。非常に原価が高い商品である。しかし、実際の小売価格は低く抑えている。どう考えても、レギュラー商品とは原価率設定等を変えているとしか思えない。
 ヘビーで高密度な素材は、糸を多く使うので、生地値が高くなる。しかも,製品が重くなる。洗濯しても乾きにくい。コモディティ商品ではヘビーな製品は売りにくい。高くて売りにくい商品を作るのはタブーである。「Uniqlo U」はユニクロのタブーに挑んでいるように見える。
 ラグジュアリーブランドは、ヘビーて高密度なテキスタイルを多用している。差別化という意味もあるが、生地の重さやボリュームは、ラグジュアリーな気分を引き立てるのだ。身体が生地で包み込まれ、保護されるような安心感を感じることができる。
 ヘビーな素材を重く感じさせないためには、高度なパターンメーキングが必要になる。身体全体で重さを受け止めるような立体感が求められるからだ。
 「MEN スウェットプルパーカ(長袖)+E」のボリュームは、ラグジュアリーな気分になれる。カジュアルの象徴のようなフーデッドパーカなのに、高価なバスローブを着ているように感じる。身体感覚としてラグジュアリー感が伝わってくる稀有な商品である。
 
4.常識とトレンドを覆す

 一般的なアパレル企業にとって、デザインとは高く売るための手段であり、差別化の手段である。最近は、SNSで紹介してもらうことを想定して、視覚的に目立つデザインがトレンドになっている。
 ファストファッションは、安い素材とトレンディなデザインを組合せた安い服を供給している。そんな服が世界市場を席巻しているのだ。
 「Uniqlo U」は、それらとは正反対の服を打ち出してきた。見えない部分をデザインして機能性を高めている。そして、見えない部分に手間をかけている。しかも、それらを価格に転換していない。
 私は、「Uniqlo U」は売れないと思った。通常のアパレルならば、半年か一年で打ち切るだろう。それが分かっていたから、次々と商品を買い求め、周囲に製品の良さを吹聴した。普段は書かないレビューも書いた。全ては、「Uniqlo U」に存続してほしいからである。
 しかし、私のこうした動きも予測していたに違いない。既に「Uniqlo U」には熱狂的な少数のファンがついている。これはレギュラーのユニクロには見られなかった現象だ。
 ユニクロが高級ブランドを展開しようと思えば、簡単にできるだろう。少なくとも商品の問題はない。問題があるとすれば、分厚いサービスである。しかし、ユニクロは高級ブランドには興味がないと思う。
 全く新しいビシネスモデルに向けて進み始めているとしか思えない。

*有料メルマガj-fashion journal(265)を紹介しています。本論文は、2016.12.19に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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