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January 14, 2018

トランプに何ができるか? j-fashion journal(268)

1.トランプ氏の公約

 2017年は、トランプ氏への期待と不安と共に始まった。選挙期間中は、トランプ氏の暴言ばかりが注目されたが、現在は政策に興味が移っている。彼の公約を確認してみよう。
 選挙スローガンは「アメリカを再び偉大に」である。

(1)貿易に関する公約。
・環太平洋連携協定(TPP)には署名せず別途、北米自由貿易協定(NAFTA)に関しメキシコ、カナダと再交渉を目指す。
・中国は通貨を操作している。同国の輸出品には相殺関税を課す。政府による輸出業者への助成制度を世界貿易機関(WTO)に訴える意向。

(2)税に関する公約。
・減税と税制簡素化
・年収2万5000ドル未満の単身世帯と年収5万ドル未満の夫婦世帯は所得税を免除する。
・ミニマム税と遺産税の撤廃。
・投資運用会社が成功報酬として受け取る「キャリードインタレスト」向け税制優遇措置を廃止。
・法人税の最高税率を現行の35%から15%に引き下げ。

(3)移民に関する公約。
・オバマ政権が大統領令で導入した移民制度改革を撤廃し、数百万人に上る不法移民を強制送還する。
・ムスリム系米国人のデータベースを強化し、モスクを監視する。米国とメキシコの間に「大きな壁」を建てる。
・イスラム教徒に対する米入国一時禁止を呼び掛け、シリア難民は受け入れない。

(4)医療
・医療保険制度改革法(オバマケア)を撤回し、医療貯蓄口座制度に置き換える。
・保険会社に対して、持病のある人にも保険を適用するよう義務付ける。(これはオバマケアの主な特長)
・増加する女性退役軍人の医療充実のため、女性医療を専門とする医師の数も増やす。
・自由市場原理で動く医療保険計画を提案する。

 以上を見る限り、彼の発言ほどには、過激でないように感じる。オバマケアについては、まだ始まったばかりであり、それを否定しても、オバマ以前に戻るに過ぎない。

 最も過激なのは、移民政策だが、これとて日本と比較すれば大きな差はない。日本も移民を受け付けていないし、外国人労働者を受け入れていない。

 中国との貿易摩擦問題も、かつて日本が経験したことだ。日本は1971年、日本政府は日米繊維交渉決裂を受け、アメリカへの繊維製品輸出を自主規制した。

 アメリカは世界に対しては自由貿易を標榜していたが、自国だけは保護貿易主義を貫いている。

 トランプ氏は、ツイッターでは、アメリカ製造業の復権を提唱しているが、以上の公約には具体策は含まれていない。中国製品への関税を強化しても、アメリカの製造業が復権するとは思えない。日本が対米輸出を自主規制しても、結局アメリカの繊維産業は淘汰されたのだ。果たして、政治の力でどれだけ経済が動くのだろうか。その壮大な実験が始まるのかもしれない。
 
2.経済は政治で動くのか?

 国家には国境という壁がある。また、固有の法律が存在する。そして、税を徴収することができる。

 政治家は、新たに法律を作ることができる。政治家ができることは法律を作ることだ。

 多国籍企業は国境を超える。様々な国の法律や制度を調査し、最も収益性の高い地域に本社を移す。また、企業という組織内では、独自のルールを定めることが可能だ。税を徴収する権利はないが、人々の生活の情報インフラから様々な形で代金を徴収している。料金の徴収方法は完成されており、利用者が料金を払わずに逃げることはできない。税金の徴収よりも確実であり、金額も大きい。

 経済という面から見ると、国家は一部の多国籍企業よりも権限が小さい。したがって、特定の国家や政治家が多国籍企業をコントロールすることは難しい。

 トランプ氏は、大統領就任前であるにも関わらず、世界経済に大きな影響力を行使している。その道具は法律ではなくツイッターだ。彼がツイッターで政治的な発言をする度に、世界は一喜一憂し、株や為替が影響を受ける。

 この情報操作は、多国籍企業にも影響力を与えている。計算づくでツイートしているとも思えないが、結果的にトランプ氏はこれまでの政治家とは全く異なるパワーを身につけたことになる。

 もし、オバマ氏のように理性的かつ良心的な発言を繰り返せば、市場はその発言を折り込み済みとして扱うだろう。予測が容易な発言に市場は反応しない。

 今後、AI(人工知能)が進化すれば、政策決定もAIが活用されるだろう。AIはロジカルな存在である。AIで予測できないような混沌を生み出すことこそ、グローバル経済に対抗する手段といえるかもしれない。トランプ氏はそれを実践している。
 
3.投機マネーと情報操作

 トランプ氏は、予測不能な発言により、世界にカオスを与えている。そして、カオスの帝王としてリーダーシップを握っている。

 ツイッターで世論を動かすにも条件がある。アフリカの独裁者が同様の発言をしても影響力はないだろう。日本のように周囲との関係を重んじている国の指導者が暴言を吐けば、周囲から抗議と非難が殺到する。それでも、唯我独尊を保てるかが問われる。

 世界一の大国であるアメリカ大統領という立場があるからこそ、トランプ氏のツイートには強大な影響力がある。

 トランプ氏は、大統領選挙期間中から暴言を吐き続けている。そして、その反応を確認している。

 世界経済では、二種類のマネーが存在する。

 一つは、商品の売買やサービスの提供に支払われるマネー。実業のマネーだ。

 もう一つは、投機のためのツネー。虚業のマネーだ。残念ながら、投機マネーの方が圧倒的に多い。そして、これらのマネーに対して、国家や政治家はほとんどコントロールできない。投機マネーは、楽々と国境を超え、タックスヘイブンに潜んで課税から逃れている。
 
 その投機マネーは、情報によって動く。実績よりも将来の見通しが重要だ。実績を上げて見せても、それは事実であり結果であるに過ぎない。投機的な価値は低いのだ。それよりも影響力の強い個人の発言の方が影響力は強い。それがトランプマジックである。
 
4.インターネットが引き起こす革命

 トランプ氏のツイッターの使い方は、孫正義氏に似ている。孫氏は、消費者からのツイッターの意見を次々と取り上げ、新サービス等の約束をした。ソフトバンクの幹部は、常に孫氏のツイッターをチェックし、孫氏の発言に対応しなければならなかった。

 この手法は、通常の企業では通用しなかっただろう。稟議や会議という手続きを省いてトップダウンで意思決定することは、日本の組織ではタプーなのだ。ワンマン経営者の孫氏だからできたことである。

 トランプ氏も誰の承認も得ないままに、次々と発言している。この手法を大統領就任後も続けるかは興味深い。私は継続すると考えている。むしろ、もっと戦略的に活用するのではないか。

 かつて、情報の価値は正確性、客観性にあり、理性に訴求するものだった。現在は正確性よりも大衆の興味を引くこと、感情に訴求する情報が好まれている。人は感情によって動くからだ。

 かつて、政治家は演説によって民衆の感情に訴えていた。宗教家も同様であり、世の中を動かすのは、民衆の感情だったのだ。

 科学の時代になり、感情より客観的情報や客観的事実が尊ばれるようになった。マスコミも客観報道を心がけるようになった。

 そこにインターネットが登場した。個人は大衆に直接情報発信ができるようになり、個人の呼びかけで大衆が動く事象も増えてきた。ネット上では客観的情報はありふれたものに過ぎない。誰もが知っている情報に価値はない。

 政党政治も「数の論理」を優先すると、途端につまらないものになる。個人の意志よりも、組織が優先され、個人の発言は制限される。常識的な思想と行動は既得権を守ることはできるが、世の中を変革することはできないのだ。

 トランプ氏の行動は、組織の論理を無視している。それができるのも、アメリカの大統領制ゆえのことだ。

 今後、トランプ氏がアメリカ経済を建て直すことができるかは分からない。しかし、間違いなく組織の論理は通用しなくなるだろう。個人が意志決定し、それを大衆に直接伝え、それに大衆が反応する。これは「アラブの春」と共通する原理だ。

 大衆の感情に任せたのでは、更なる分裂と分断が深まるだろう。その隙に乗じてイスラム国のような過激な勢力が出現するかもしれない。

 更に混沌は続くだろう。インターネットの出現によって、政治や経済の状況は激変した。正に革命である。しかし、そこに我々の法律や社会システムが追いついていない。その中で、個人と組織の役割も変わっていくだろう。その壮大な実験に我々は立ち会っているのだ。

*有料メルマガj-fashion journal(268)を紹介しています。本論文は、2017.1.9に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。 

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