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January 14, 2018

分散の果てにあるもの j-fashion journal(267)

1.イギリスのEU離脱

 2016年6月、イギリスは国民投票によってEU離脱を決定した。当初、イギリス国民の衆愚的事件という報道が多かったが、次第に問題はEUにあるという論調も増えてきた。少なくとも、イギリスだけが損害を被り、EUは安泰ということでもなさそうだ。
 EUの壮大な実験は国家という単位を超えて、巨大な行政組織を構築するというものだった。しかし、その土台は移民問題で揺らぎ始めている。大量の移民がEU、イギリスに流入し、元々の国民の負担が増えてくる。人道的支援という思想だけで、個人の負担を強制することも困難だったろう。
 そもそも、国家とは民族がその基本単位だった。複数の民族が共存するためには、長い時間と政治的判断、ルール作りが必要だった。その歴史的な課題を乗り越えて、国家が成立したのだ。
 戦争による大量移民の流入という事態は、突発的であり、国民の同意を形成する時間も足りなかった。イギリス国民の判断は理解できるし、むしろ投票結果が拮抗したことは、イギリスの成熟として評価すべきではないか。

 イギリスのEU離脱は、ある意味でイギリスが国家を取り戻したともいえる。
 EUの人道的支援が善であり、イギリス国民が自らの生活を防衛することをエゴだと言い切れるだろうか。そもそも世界中の個人の人権を守ることはできるのだろうか。個人の人権を守ることは、国家という枠組みの中だけで成立するのではないか。
 グローバリズムとローカリズムの対立は、価値観の対立である。グローバリズムを否定することが、ローカルのエゴというならば、グローバリズムが世界のために貢献していることを証明しなければならない。グローバリズムへの批判は、グローバリズムが実は少数の支配者の利益を確保することを目的としているのではないか、という疑いに由来している。
 
2.トランプ現象とアメリカの分断

 2016年11月のアメリカの大統領選挙では、ドナルド・トランプ氏が勝利した。トランプ氏は、「アメリカ・ファースト」を掲げて、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)脱退を宣言している。また、日米同盟、日本の核保有等についても、これまでのアメリカとは異なる見解を示している。
 トランプ現象は、アメリカの分断が表出したものと言われている。アメリカの分断とは、格差の拡大であり、その原因がグローバリズムや自由貿易であるという主張である。強いアメリカを取り戻すために、アメリカの製造業を復権させ、雇用を創出する。そのためには、保護貿易に徹するというのだ。
 果たして、製造業復権を目指すことが、アメリカの経済を好転させるかは疑問だが、これまでのグローバリズムの動きに反する動きが出てくるのは確実である。
 ここでも統合から分散が見られる。個別の利益を追求することは、全体の効率追求を阻害するに違いない。
 問題は、全体の利益を享受するのは、グローバル企業の一部の資本家に過ぎないということであり、彼らはタックスヘイブンに資産を移し、国家に納税していないということだ。
 私が興味を持っているのは、アメリカの一部の右翼的なICT業界の人々がトランプ氏を支持していることだ。政治判断はAIが間違いなく行うので問題ない。頭の良い政治家は必要ない。政治家はもっと感情的な役割を担うべきだ、という主張らしい。
 この思想には、既にAIを社会に組み込み、人間の役割をどのように規定すべきか、という視点が含まれている。確かに、理性的、論理的な判断ならば、AIが判断できるということはあるだろう。しかし、そのことが反知性的な人間で良いということにはならないと思う。むしろ、感情的な調和を見出すような人材が必要とされているのではないだろうか。
 
3.国家を凌駕する企業

 安倍首相は、就任前のトランプ氏に会いに行った。ソフトバンクの孫正義氏もトランプ氏と会談し、500億ドル(5兆7000億円)の投資を表明した。
 安倍首相は、ロシアのプーチン大統領とも会談している。孫正義氏もまた、プーチン大統領と電撃会談を行った。印象的だったのは、トランプ氏もプーチン氏も、孫氏と会っている時の表情が明るかったことだ。
 国家を動かすには、複雑な組織を動かさなければならない。特に日本のような官僚主義的国家では簡単に動かない。政治的な手続きも複雑だ。孫氏はワンマン経営者であり、個人で会社を動かすことが可能だ。その意味では孫氏の発言の方が影響力があるるだろう。
 グローバル企業は、既に国家を超えている。国境も超えているが、その影響力、資本力も国家を凌駕している。マイクロソフト、インテル、アップル、グーグル、ソフトバンク等の企業は、税金の徴収より確実に収益を確保する方法を確立している。世界の情報通信インフラを支配しているからだ。
 最早、グローバル企業は国家のライバルと言っていい。国家がグローバル企業を潰すことは困難だ。彼らは単一国家の法律には縛られないからだ。
 グローバル企業にとって、どんな国家が都合が良いのだろうか。オバマのような大統領が良いのか。トランプのような大統領が良いのか。自由貿易体制が良いのか、保護主義の貿易体制が良いのか。
 私は既にどちらでも良いのでは、と思っている。保護主義になるほど、グローバルサービスの重要性が増すだろう。逆に、自由貿易ならば、その体制の上に乗ってビジネスをすれば良い。
 どちらかというと、定期的に変化をもたらす方が良いのかもしれない。投資する方向が明確になるほど、資本が動くからだ。 
 
4.統合から分散へ

 インターネットは分散処理で運営されている。分散処理だから安定しているし、低コストで運営している。そのため、大きな組織でなくても、少人数組織、あるいは個人でもビジネスが可能になっている。
 情報についても同様だ。個人が高性能なスマホを所有しているので、組織力がなくても情報を入手し、それを分析することができる。また、個人でも簡単に小売業に参入することも可能だし、世界各地から商品を仕入れることもできる。
 情報通信技術の活用という面では、主役は個人である。むしろ、大きな組織では活用することが困難だ。個人だから、世界中の誰とでも連携できる。組織に所属していたのでは、連携することが難しい。情報の伝達も個人の方が圧倒的に早い。組織の稟議を通しているうちに、事態は変化していく。
 「統合から分散へ」という流れの根本には、インターネットがある。インターネットがあるから、グローバル経済が発展したし、難民の流入も増えた。そして、貧富の格差が拡大した。そして、様々な極端な言動もインターネットで伝播している。
 東京都の築地移転問題も、オリンピックの様々な問題も、問題が明らかになったのはインターネットがあったからである。自民党都連が機能しなくなり、分裂が始まったのも、大きな視点で見れば、インターネットの影響だろう。インターネット以前の社会では、事実が明るみに出ることなく処理されていたに違いない。
 既に、我々は情報をコントロールすることができなくなっている。原価情報も利益情報も公開される時代である。それでも、価値がある存在にならなければ、必要とされないのだ。


5.宗教、哲学とビジネス

 最早B2BとB2Cの区別もなくなっている。最終的に消費者、生活者が喜ぶ情報でなければ意味がない。これは、コンサルタントという仕事にも共通している。最早、企業相手のコンサルタントは必要ないのかもしれない。消費者を動かすことができなければ、ビジネスは動かない。コンサルタントは消費者に情報発信をして、自分で市場を動かせなければ意味をなさなくなる。
 そして、業種業態という境界も次第に意味をなさなくなっている。なぜなら、顧客はあらゆる業種業態のサービスを受けるからだ。一つの専門性にこだわることは、むしろ生活という大きな流れを見失うことになる。専門性とは、一つの部分に過ぎないし、一つのボジションに過ぎない。
 特に、小さな集団の利益を声高に主張する数多くのグループが存在するならば、全てに対応するビジネスは成立しない。ビジネスはよりマニアックになり、個人の考え方、個人のコミュニティが重要になる。個人の主張がなければ、自分のアイデンティティがなくなり、アイデンティティを明確にしなければ、存在する意義もなくなる。
 あるいは、更に大きな思想を打ち出すという方法もある。小さな集団の利害を乗り越える思想である。それは、哲学かもしれないし、宗教かもしれない。理性だけでなく、人々の感情を強く動かすこと。そこからビジネスが始まっていく。

*有料メルマガj-fashion journal(266)を紹介しています。本論文は、2017.1.2に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。 

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