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October 09, 2017

Uniqro U を解剖する j-fashion journal(256)

1.「+J」と「ユニクロ アンド ルメール(UNIQLO AND LEMAIRE)」

 「ユニクロ(UNIQLO)」は、クリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)がディレクターアーティスティックとして監修する初のコレクション「ユニクロ ユー(Uniqlo U)」を日本、ヨーロッパ、カナダにて、2016年9月30日に発売した。
 フランス出身のクリストフ・ルメールは、「ラコステ(LACOSTE)」、「エルメス(HERMÈS)」等のラグジュアリーブランドのデザイナーを歴任。2015年秋冬と16年春夏には、ブランド「ルメール(LEMAIRE)」と「ユニクロ」のコラボレーションライン「ユニクロ アンド ルメール(UNIQLO AND LEMAIRE)」を発売した。
 その後、クリストフ・ルメールがユニクロパリR&D(リサーチ&デベロップメント)センターのアーティスティックディレクターに就任。今回の「ユニクロ ユー(Uniqlo U)」が初仕事ということになる。
 「ユニクロ アンド ルメール(UNIQLO AND LEMAIRE)」の発売当日には、都内店舗に長蛇の列ができた。しかし、私は、あまり興味を持てなかった。デザイナーとのコラボはこれまでも行っていたし、ジルサンダーとのコラボ「+J」ほどのインパクトはなかったからだ。

 「+J」は良いコレクションだったと思う。しかし、何かが足りなかったのだろう。もしかすると、ユニクロの売上基準を満たさなかったのかもしれない。それなら、「ルメールも同じではないか」と思ったのだ。
 しかし、クリストフ・ルメール氏はコラボでは終わらなかった。次のステージが用意されていたのだ。

2.デザイナーのタイプの違い

 ユニクロは、ジル・サンダーとはできなかったことが、クリストフ・ルメールとならできると考えたに違いない。ルメールも、ユニクロという企業か、柳井さんという人物に興味を感じ、次のステップに進みたいと思ったのだろう。
 この違いは、作業プロセスにあったのではないか、と想像している。ジルサンダーは職人的な人だ。個人でブランドを立ち上げ、最終的には会社をオンワード樫山が買収した。企業を売却した原因も、職人的なこだわりとビジネスのマネジメントが対立してしまったのではないか、と想像している。
 「+J」が展開している時、その裏でイタリア人デザイナーの友人がユニクロと契約し、新ブランドの準備をしていた。イタリアから来日して、企画の打ち合わせをするのだが、ジル・サンダーの来日と重なると、スケジュールが全て止まってしまうと嘆いていた。
 多分、商品チェックが厳しく、全てやり直しというようなこともあったのではないか。おそらく、社員全員が振り回されていたと思う。
 デザイナーには二通りある。どんな細かいものでも自分が目を通さなければ気が済まないタイプと、相手の会社のスタッフと役割分担をして、人材育成しながら作業を進行するタイプだ。職人型と組織型と言ってもいいかもしれない。
 ジル・サンダーは前者であり、ルメールは後者だったのだろう。売上の結果だけでなく、チームとして働けると実感があったこそ、新たな契約に繋がったに違いない。 
  
3.Uniqro Uのコンセプト

 「ユニクロ アンド ルメール(UNIQLO AND LEMAIRE)」のルメールは、あくまで外部のデザイナーだった。しかし、パリR&Dセンターと契約したルメールは身内である。仕事の手法も含めて全てが変わるはずだ。
 パリR&Dセンターは最初からルメールをディレクターアーティスティックに考えていたわけではないようだ。パリの友人に聞いた話だが、複数のデザイナーとコンペをしていたらしい。その結果、柳井さんが最終的に選んだのがルメールだった。
 ルメールは誠実に、ユニクロのためのモノ作りをしている。
 ここからは、私の妄想モードである。ユニクロや関係者に対して、何の取材も行っていない。ただただ、自分がルメールになったつもりで、商品の声を聞いて感じたことである。
 新ブランドのコンセプトをどうすればいいのか。ユニクロのロゴタイプをみると、赤い四角形の中にブランド名が行儀よく並んでいる。カジュアルブランドの名前がスクエアの中にきちっと収まっていることは、ある意味、非常に日本的である。
 この「スクエアとUのアール」のバランスは、カジュアルとエレガンスのバランスに繋がっている。
 現在のユニクロはポリエステルの比重が高い。ポリエステルは薄くて柔らかい素材であり、Uのアールのような素材である。しかし、カジュアルの王道を目指すなら、天然素材のハードなラインをプラスするべきではないか。これがスクエアな要素である。
 現在のユニクロにスクエアな要素をプラスすることで、ユニクロ全体を活性化させ,ブランディングを後押しする。そんなコレクションを目指したいと思ったはずである。
 新ブランドのロゴは、「U」を12個並べて正方形にしたもの。アールをスクエアに並べたものだ。UとはユニクロのUであり、YOUでもある。そして、12は1年でもある。
 そして、ブランドコンセプトを以下の12のフレーズで表現した。
U have clothes
U have essentials
U have colors
U have possibilities
U have comfort
U have movement
U have function
U have innovation
U have quality
U have simplicity
U have LifeWear
U have Uniqlo

4.商品に潜んだコンセプト

 「Uniqro U」のコンセプトは、ボタンに表れている。丸いボタンに、角の丸い四角を彫刻している。これは、ジャケット用、シャツ用のボタンに共通している。丸の中に四角があり、その中に丸い穴が空いている。スクエアとアールのバランスが取れたデザインである。
 また、特に機能性を考えたパターンメーキングになっている。そのコンセプトが明確に表現しているのが袖のパターンである。「機能袖」と呼ばれる腕の運動性を考慮した設計だが、それが実に美しい。
 今回の「Uniqro U」は、コレクションとして見ても完成度が高い。外見はシンプルだが、そのテキスタイルの選択と、カラーリングは完璧にコーディネートされている。
 ユニクロのレギュラー商品は、アイテム毎にカラーを設定しているため、トータルなコーディネートが監修されていない。
 ウインドーのVPを見るだけで、各アイテムのカラーコントロールがなされていないことが分かる。全てのアイテムをトータルに監修するディレクターアーティスティックのような人がいないのだ。
 今回のコレクションは、ルメールのような一流のディレクターアーティスティックが担当したことにより、各アイテムがコーディネートできるようなカラー設定となっている。これは、コレクション型アパレルの常識だが、ユニクロのような単品集積ではなし得なかったことだ。

5.驚きのミラノリブのプルオーバー

 私が最初に購入したのは、ミラノリブVネックセーター、ミラノリブモックネックセーターだった。この二つの商品は、ミラノリブの総減らし(減らし目による成型編み)である。コンピュータ編機でも効率が悪いので、多くのミラノリブの商品はカット&リンキング(四角い編地を作り、裁断、縫製、リンキングして仕立てる)である。
 しかも、ミラノリブは重い編み地であり糸量が多くかかる。セーターの価格は、糸の値段と編み立て工賃、縫製リンキング工賃、付属で決まる。糸量が多いということは、どうやっても安くはできないということだ。
 したがって、通常は単価の高い商品しか作らない。例えば、ニットスーツやジャケットである。
 ここ何シーズンかユニクロでもミラノリブのジャケットを作っていた。編み立ても縫製を良かったが、デザイン、パターンが悪かった。若い世代もシニア世代も買えない難しい商品だったと思う。
 今回は、それをプルオーバーで出してきた。しかも、身頃の袖ぐり、袖山のカーブが美しく減らされている。ジャケットよりも、無理のない美しい服に仕上がっている。
 かつて、日本の有名デザイナーズブランドが同様のミラノリブ総減らしの商品を出していたが、10万円近い価格だった。私は小売価格に驚くよりも、その仕事を引き受けたニッターが存在したことに感動した。よくぞ、商品化したという思いである。
 外見からは分からない、高度で難しい商品を4990円で販売しているが、これでは原価にも満たないではないかと思う。通常なら、この3倍、4倍の価格でも驚かない。
 多分、コラボ商品企画であれば、どんなに安くても9800円上代だろうし、多分、原価をはじいた段階でボツになっていると思う。この価格設定からもユニクロの本気度が伝わってくる。

6.シャツのパターンも凄い!

 あまり期待しなかったのだが、何かあるかもしれないと思ってオックスフォードシャツを買ってみた。価格は2990円。
 なぜ、期待しなかったかというと、写真では、あまりにも普通だったからだ。
 最初に気がつくのは、裏衿のタブである。通常なら、衿にボタンホールを明けてボタンダウンにするが、衿に穴を明けるのを避けて、わざわざコストの掛かるディティールを選んでいる。これだけなら、単に我が儘なデザイナーの仕事にしか見えない。
 着用してみると、非常に着心地が良い。袖も上がる。絶妙な身幅と着丈のバランスである。
 そう感じた最大の原因は、袖のパターンだった。袖下にマチを入れ、それを袖から続け裁ちしたようなユニークなパターンである。
 後ろ身頃の袖ぐりから身頃に繋がるカーブが実に美しい。クチュールの香りを感じるほどだ。
 肩ヨークにはタックがないが、運動量は十分に確保されている。これは前述した後ろ身頃と袖の裁断によるものだ。
 カフスは、スクエア。剣ボロ(カフス開きの始末)もスクエア。良くみると、カフスのタックは深く、袖口は太い。これは、ワーキングシャツの袖口だ。
 エレガントな衿と、ワーキングのような機能的な袖とカフス。しかも、前から見たら、ボタンダウンでもなく、ボケットもつけていない。外見は機能性を排除し、構造的に機能性を高めている。非常に高度な服作りをしている。
 最近のコレクションのテーマとして「ユーティリティ」が上げられるが、正にこのシャツがそれを表現している。エレガンスと機能性を高度に組み合わされている逸品である。

7.本気のスウェットプルパーカ

 「スーパーヘビーウエイト」とか「スーパービンテージ」とか、大げさな表現が何もないスウェットプルパーカだが、手にした途端、「マジ?」と思う。それほど、ヘビーウェイトな裏毛である。しかも、裏起毛。
 昔、某有名セレクトショップの黒の裏起毛裏毛のスウェットを着用したところ、ケバが落ちて腕が真っ黒になったものだ。それ以来、黒の裏起毛の裏毛には用心しているが、その心配は無用だった。
 綿100%だと思ったが、綿88/アクリル8/レーヨン4だった。アクリルが嵩高とケバ落ちを防いでいるのは間違いない。縫製は中国だが、テキスタイルは日本調達だろう。付属のテレコは、綿86/ポリエステル14。ポリエステルを加えることにより、使い込んでも付属が伸びてしまうこともないはずだ。
 プルオーバーのパーカは、襟ぐりの設計が難しい。小さくすると頭が通らないし、大きすぎると衿が抜ける。しかし、この製品は絶妙である。着用する時は重く感じるが、着てしまえば、包み込まれるような快適さを感じる。襟も抜けないし、襟元も緩まない。
 このフードのパターンは非常に良くできている。フード全体をダブルにしているので重いが、その厚みが襟元を包んでいるのだ。
 還暦近い年齢になると、フーデッドパーカは似合わなくなる。しかし、この商品ならおかしく見えない。勿論、若い人も似合うと思う。
 このパーカもシャツ同様、機能袖だが、加えて、後ろ身頃を切り換え、テレコを挟み込んでいる。これが、アクションプリーツのように更なる機能性を加えているのだ。
 パーカというと、前身頃に台形型のパッチポケットを付けるものが多いが、この商品は脇縫い目を利用したポケットとなっている。こちらの方が使いやすいし、正面から見た時にシンプルで美しい。
 細かいことだが、フードのコードも平打ちの紐を使っていて響かないように配慮されている。紐端の金具も趣味が良い。
 更に細かいことだが、身頃側のポケット袋布を薄い天竺を使っている。これも外側に響かないような配慮である。
 更に更に細かいことだが、後ろ襟ぐりの縫い目の部分に、細いテープをたたきつけている。首に縫い目がゴロゴロしないような配慮だが、とても良い仕事をしている。

8.遊び心のワークジャケット+E

 「ワークジャケット+E」も、ユニクロには珍しいヘビーなアイテムである。10番単糸のカツラギか、もう少し太い糸かもしれない。写真を見る限り、何の変哲もないジャケットだが、Uniqro Uに仕掛けがないわけがない。
 まず、正面からみると、比翼仕立てでボタンを隠している。これは、シャツの衿やポケットレスに共通している考え方で、極力ミニマムに処理している。
 しかし、この比翼仕立てが普通の仕様ではない。見返しを内側から折り返し、それを閂で止めているだけだ。非常に合理的な仕様である。
 第一ボタンと第二ボタンの間に小さなボタンが付いている。最初は、比翼抜きを押さえる飾りだと思ったが、何と内ポケット口を押さえているのだった。
 ポケットの袋布は、一見すると半裏の裏地にしか見えない。袋布にしてはあまりにも大きいからだ。しかし、ここに遊び心がある。
 袖を見ると、オックスフォードシャツと同様の考え方だが、裁ちだしを逆にしている。シャツでは後ろ身頃の脇が美しいカーブを描いていたが、こちらは、前身頃の脇線を美しく後ろに流している。
 全くダーツを取らずに、最小限の切り換えで立体を構成しているのである。
 裏から見ても、全て縫い代はWステッチで折り伏せ縫いになっている。隠しポケットの袋布は袋縫いだ。
 最後に注目したいのは、エルボーパッチだ。袖のパターンは通常の二枚袖ではなく、一枚袖のカフス明き部分で切り換えられている。
 その切り換えの上にエルボーパッチを叩いているのだが、カフス明き部分をダーツ処理し、そのラインと袖口タブの端を揃えている。
 本来なら、このエルボパッチは必要ないと思う。これだけ厚い生地なら肘が擦り切れる心配もない。
 言われなければ誰も気がつかないディティールで、スクエアとダーツで作るかすかなアールを表しているのではないだろうか。
 見える部分からは極力デザイン的要素を排除し、シルエットを出すためのオリジナルの切り換えをつくり、見えない部分をデザインしている。そして、ポケットとフラップのバランス、袖口の折り返し分のバランス等は完璧である。無骨だが、細心の気遣いが感じられ、非常に気持ちの良い商品に仕上がっている。

*有料メルマガj-fashion journal(256/257)を紹介しています。本論文は、2016.10.17と24に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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