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October 09, 2017

Uniqro U の挑発 j-fashion journal(258)

1.脱低価格路線は「+J」から続いている

 2015年秋冬商戦でユニクロは失速した。15年9~11月期(第1四半期)決算で、国内ユニクロ事業の営業利益が448億円と、前年同期を12.4%下回った。
 マスコミ等では、その原因を「値上げ」にあるとした。ユニクロは14年、円安による原材料価格昇、生産国における人件費の上昇をカバーするために秋冬商品を平均5%値上げした。それにより、14年11、12月、15年2、3月において客数が前年割れした。
 更に、15年の秋冬商品も平均10%値上げした。2年連続での値上げとなり、割高感はより一層強まり、売上不振を招いたとされたのだ。
 しかし、2016年春夏には復調する。2016年3~5月期の連結決算では、売上収益が4229億円で前年同期比6.2%増、営業利益464億円で18.6%増となった。国内ユニクロ事業も増収増益となった。

 私は、原材料と工賃が上がったのだから、ユニクロが値上げしたのは当然だと思っている。むしろ、原価が上がっているのに、小売価格に反映できない競合他社が異常だ。
 マスコミや評論家は店頭売上実績を見て、いろいろ言い立てるのだが、それはあまりにも近視眼的である。アパレルは、企画生産のサイクルで見なければならない。店頭に商品が並ぶ半年前には、商品企画は終了しており、その半年前には素材企画が終了している。つまり、一年前から店頭設計は始まっているのだ。
 私は、ユニクロの脱低価格戦略はジル・サンダーとのコラボ「+J」からスタートしていると思う。「+J」が発売されたのが2009年秋なので、素材開発を含めると、少なくとも2年前から企画はスタートしていただろう。
 「+J」の時には、取引先のテキスタイル部隊とジル・サンダーによる素材ディレクション及びデザインディレクションが主であった。
 勿論、優秀な縫製工場を使っていたが、まだ少数であり、フルアイテム構成できるだけの布陣はできなかった。
 「+J」は2011年秋まで続いたのだから、最初から3年計画だったのだと思う。「+J」を失敗と見る向きもあるが、私はそうは思わない。あれは、ユニクロが自らのレベルアップのために計画的に投資したのだと思う。
 2011年はH&Mの失速が明らかになった年でもある。ユニクロは、脱低価格戦略が正しいことを確信したに違いない。そして、すぐにジル・サンダーの後継を探したはずだ。
 「ユニクロ アンド ルメール」が発売されたのが2015年10月だから、遅くとも2015年の春にはコレクションが完成していたはずで、素材開発を含めると、最低でも1年間の準備は必要なので、2014年春には始動していたと思われる。
 ルメールは、2010年から2014年秋までエルメスのディレクターアーティスティックに就任していたことを考えると、多分、最後のコレクションを作っている時に、ユニクロとの交渉も行い、半年は重複した作業をしていたと思う。
 ユニクロの戦略は一貫しているし、実に計画的である。一時的に売上や利益が落ちたからと言って、価格を上げるとか下げるとかいう短期的な判断だけで動いたわけではないのだ。

2.アンチユニクロの実験

 「+J」「Uniqro U」では、既存のユニクロビジネスとは正反対のアプローチを行っている。ユニクロは自ら、アンチユニクロの実験を行っているのである。
 レギュラーのユニクロでは、厳しい原価管理を行っているはずである。徹底的に無駄を排除し、いかにコストダウンできるかを考える。そして、様々な計数分析を行い、いかにリスクを軽減するかを科学的に考えているはずだ。
 しかし、こうしたアプローチからは革新的な商品は生まれない。通常のファストファッションは、ラグジュアリーブランドのコレクションをベースにトレンド分析を行い、商品企画を決めているが、ユニクロのようなベーシック中心の商品MDではラグジュアリーブランドのコレクションをコピーすることは意味がない。
 むしろ、ラグジュアリーブランドのデザイナーにユニクロのコンセプトに基づいた商品を作らせ、そのエッセンスをレギュラー部隊で応用した方が合理的である。
 現在、ラグジュアリーブランドのトレンドは、「ノームコア(究極の普通)」から「タッキー(悪趣味な)」へ、「シンプル」から「デコラティブ」へと移行している。
 しかし、ユニクロの商品は最初からシンプルであり、ノームコアに近い。
 そこで、ルメールは、正面から見たら何でもない普通の服だが、見えない部分を徹底的に作り込むコレクションを作り上げた。
 また、これまでのユニクロのような合繊中心の軽量で高機能の素材ではなく、天然素材でヘビーウエイトなものを選んでいる。
 あるいは、手縫いで仕上げる、ダブルフェイスの完全リバーシブル仕立てのジャケット、コートをさりげなくコレクションに加えている。
 ニットでは、大変効率の悪いミラノリブの総減らしの製品を出している。しかも、全てはレギュラーのユニクロの価格帯に収めているのだ。
 それでも高いという意見があるが、私から見たら原価で販売しているに等しい。
 つまり、全ては実験なのだ。売る商品を作っているのではなく、売る商品を作るためのリソースとなるような商品を仕込んでいるのである。

3.既存アパレル、消費者への挑発

 今回の「Uniqro U」のコレクションは、一般の大手アパレルでは作り得ない商品を展開している。
 まず、これだけ高度なデザインができるデザイナーが存在しない。また、これだけ高度なパターンが引けるパターンナーが存在しない。
 これだけの素材開発ができるテキスタイルディレクターが存在しないし、これだけ高度な縫製技術を持つ縫製、ニッター、テキスタイルメーカー、丸編みメーカー等とのネットワークを持っていない。
 仮に、同じ商品ができたとしても、多分、価格が2倍から3倍になってしまうだろう。
 私には、ユニクロが既存のアパレルに対して、挑戦状を叩きつけているように見えて仕方がない。これだけの服が作れるのか、と。
 しかし、悲しいことに、大手アパレルの社員には、ユニクロの商品を分析できる専門家もいない。挑発にも気がついていないと思うし、最初から諦めているのかもしれない。
 ユニクロが挑発しているのは既存アパレルだけではない。消費者をも挑発しているように感じるのだ。
 「Uniqro U」は、非常に高度で手間の掛かる服を通常の服と同じ価格で販売している。洋服が分かる人が見れば、大騒ぎになるはずだが、分からない人が見れば、単に重くて嵩張る服だと思うだろう。
 ユニクロは消費者を試している。消費者が支持しなければ、消費者のレベルがそこまでだということだ。そうなれば、「Uniqro U」の店頭販売は中止になるかもしれない。
 価格を再設定し、独立した店舗で展開するか、ネットだけで販売するかもしれない。
 あるいは、「Uniqro U」の計画は既に出来上がっていて、期間限定のブランドかもしれないし、定期的にデザイナーが交代するのかもしれない。
 ユニクロは戦略的であり、したたかである。着々と進化するためのトレーニングを重ねているのである。

*有料メルマガj-fashion journal(258)を紹介しています。本論文は、2016.10.31に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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