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October 09, 2017

ハードとソフト、男と女のトレンド j-fashion journal(260)

1.マニッシュとフェミニンという軸

 トレンドとは、時代の変化のベクトルであり、時代の気分である。いろいろな軸があるが、男性的という意味のマニッシュと、女性的のフェミニンを結ぶ軸は代表的なものだ。
 トレンドは常にこの軸を往復している。
 ファッションの場合、マニッシュにはテーラードクロージングという意味が含まれ、フェミニンにはドレスメーキングという意味が含まれる。
 テーラードは鎧のような服だ。理想的なボディのフォルムを作り、その中に人体を押し込む。ドレスメーキングは、ヌードのボディの上に布を置いていく服だ。ボディに対する意識が異なる。
 現代のファッションは両者がミックスされ、そのバランスの上で成り立っている。
 また、女性的な美は、ウエストのくびれとバストの膨らみに代表される曲線の美である。優しく繊細。曲線を強調するのは、シルクのような素材であり、ドレープやフリルだ。

 男性の美は、筋肉美につながる逞しさの美だ。女性に比べれば直線的であり、へビーな素材が持つ安心感や包み込まれるような魅力。レザーやツイードのような外部からプロテクトしてくれるテキスタイル。高密度なので、構築的なシルエットも作りやすい。
 タオルで言えば、今治タオルのような無撚糸や甘撚りの糸でフワフワにつくったタオルは女性的であり、ホテル仕様のガッチリしたタオルは男性的と言えるだろう。
 どちらも魅力的だが、価値観の変化により、片方が魅力的に見えたり、片方が時代遅れに見えることがある。

2.ラグジュアリーとファストファッション

 テキスタイルの世界では、メンズは高密度な固い素材。レディスは打ち込みの甘いソフトな素材というイメージがある。当然、打ち込みが甘いテキスタイルは糸量が少ないので、価格も安くなる。生地屋的な悪い言い方をすれば、レディスは安物ということにもなる。
 ファストファッションは、トレンドを取り入れた低価格の商品を販売している。低価格にする一つの方法は生地値を落とすことだ。つまり、打ち込みを甘くして糸量を減らす。そのため、ファストファッションの服はペラペラの頼りない服になることが多い。
 ラグジュアリーブランドは富裕層を対象にしている。ファストファッションとは差別化しなければならない。そこで高密度の織物を使い、構築的な服を打ち出す。あるいは、手作業による装飾を施すことが多い。
 それが持続することで、重い服は高級であるというイメージが定着しているが、実際に重い服は疲れるものだ。できれば、ボリュームはあるが、軽い素材が良い。といっても、フリースにしたのでは、ファストファッションになってしまう。天然素材を主体でこれを実現することが課題になる。
 
3.ユニクロとユニクロU

 ギャップはアメリカのカジュアルブランド。ユニクロは日本のカジュアルブランド。両者の違いは、テキスタイルにも表れている。
 アメリカは綿産国であり、伝統的に綿製品の比率が高い。ジーンズもTシャツもダンガリーシャツもチノパンツもネルシャツも全てコットンである。コットンカジュアルはアメリカがルーツと言ってもいい。
 実際には、日本の綿紡績は世界市場を席巻しており、アメリカンカジュアルウェアも高級品は日本の紡績の糸を使っている。しかし、ウェアのルーツはアメリカなのだ。
 日本のカジュアルブランドがコットンカジュアルをつくっても、アメリカの二番煎じと思われてしまう。グローバル市場を考えるならば、日本カジュアルは日本の特徴を打ち出さなければならない。
 ユニクロの場合、東レとの連携により、ハイテクな合繊を主体に商品構成を行ってきた。ヒートテックもエアリズムもフリースも合繊の技術が基本になっている。綿100%ではなく、あえてポリエステル/コットンにして機能を訴求しているのである。
 合繊テキスタイルはシルクを目標にしてきた。薄くて軽くて機能的。そのため、スポーツウェエやユニフォームに使われることが多い。
 ユニクロは合繊カジュアルである。第一段階としては、ギャップとの差別化もできたし、世界市場でのアイデンティティ確立にも貢献したと思う。
 しかし、欧米のメンズ市場では、合繊主体の薄い服は売れない。女性的過ぎるのだ。
 そこで、ユニクロは男性的な価値観のテキスタイルを使った商品群を打ち出してきた。しかも、アメリカンカジュアルのように無骨な商品ではない。フランスのエレガンスな要素を加えた新しいカジュアルウェアである。
 それがユニクロUだ。
 
4.長期トレンドは、女性モードから男性モードへ

 ユニクロUが発表されたことで、ユニクロはファスストファッションというカテゴリーから外れるのではないか、と思っている。ユニクロUは、トレンドを追いかけたものではない。むしろ、アンチトレンドの服づくりをしている。
 エルメスのデザイナーを務めたクリストフ・ルメール氏と契約するのだから、ファストファッションの手法を取るはずがないし、実際に彼はユニクロの新しいコレクションをつくっているのだ。コレクションを発表する手段は、ファッションショーだけではない。展示会という形態で発表することもあるが、今回はいきなりユニクロの店舗で商品を発売してみせたのである。これは、ファッション業界全体にとっても特筆すべきニュースだと思う。
 私は、ユニクロUにより男性的なトレンドが再評価されるのではないか、と考えている。私自身、ユニクロのペラペラな服には飽き飽きしていたし、ワードローブを全てLLビーンに替えてしまおうか、と考えていたのだ。
 ところが、ユニクロUが発売され、何枚か試しているうちに、できればワードローブ全てをユニクロUに替えたいと思うようになった。
 多分、再びヘビーデューティーな本物のカジュアルも見直されるのではないか。その前触れはアーミー、ミリタリーというトレンドにある。
 長期的なファッショントレンドが大きく変化しつつあるのを感じている。ヘビーな価値観が再評価され、素材に対する見方も変わるのではないだろうか。

*有料メルマガj-fashion journal(260)を紹介しています。本論文は、2016.11.14に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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