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August 04, 2017

簡単服を見直そう! j-fashion journal(247)

1.簡単服の社会的意義

 私が文化服装学院に通っていた頃、「装苑」誌上には、毎号のように若手デザイナーの「直線裁ちドレス」「半日でできる簡単服」が掲載されていた。当時は、「装苑賞」を受賞した「デザイナーの卵」の最初の仕事を「装苑」が提供していたのである。
 私自身も、学校卒業後数年間は、自分で作った服を着ていた。ほとんどが民族衣装のような簡単服であり、生地の上に直接チャコで線を引き、自分で裁断、縫製したものだ。
 その後、次第に構築的なファッションが好まれるようになり、簡単服は姿を消した。私自身も就職後はサンプルセール等で服を購入するようになり、自作の服を着用することはなくなった。
 その後、日本の繊維ファッション業界全体を考える仕事が増え、より高度な技術を生かした服こそ価値があると考えるようになった。

 しかし、ソーシャルいう視点に立つと、高度な服の意味が変わってくる。高度な服とは、高度な技術で生産したテキスタイルを、高度な技術を持つパターンナーが引いたパターンで裁断し、高度な生産設備を駆使して、高度な技術者が仕立てた服を意味する。高度な服は、技術と資本がないとできない。
 電力不足の発展途上国では工場を運営することも難しいし、資本力のない工場では高度なミシンを揃えることもできない。勿論、高度な技術者を養成し、雇用することもできない。
 もし、手縫いでも縫えるシンプルな服を輸出できれば、貧しい国でも外貨を獲得できるだろう。そのためのデザインやパターンを先進国が提供し、フェアトレードで輸入することができれば、ソーシャルビジネスにつながっていく。
 簡単服には、先進国と途上国をつなぐ社会的な意義があるのだ。

2.簡単服の定義は?

 簡単服は、直線裁ちを基本とする。勿論、全てが直線でなくてもいい。襟ぐりや袖ぐり、袖山はカーブでも良い。しかし、できればカーブの部分もマチを使って機能性を確保するなど、なるべく直線で構成することを推奨したい。
 直線裁ちは、日本の「きもの」にもつながる。平面の布で、立体の人体をくるむ。当然、あちこちに空間ができるのだが、それが湿度の高い日本では快適なのだ。
 また、着付けによって、巧みに立体を構成することは、折り紙にも通じている。
 また、シワができないことを理想とする立体裁断に対し、「シワが美しい」というきものの価値観を提示することもできるのではないか。ダーツを否定するわけではないが、それをシワで吸収することもできるだろう。
 また、なるべくボタンやファスナーを使わないということも重要である。中国服で使われる「釈迦結び」や、共布のひもで結ぶことで、服資材がなくても布さえあれば、服を構成することができる。
 原則として、芯やパッドも使わない。布だけでできることが基本である。
 こうした条件の元で、先進国市場でも受け入れられる服をデザインする。
 そのデザインとパターンは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(https://creativecommons.jp/)の著作権者の表示を条件にしてはいかがだろうか。
 
3.簡単服の流通システムを構築しよう

 簡単服は、ファッション専門学校と相性が良い。特に、最近のファッション専門学校の学生は縫製が苦手だ。技術専攻でない限り、「簡単な服でいかにビジネスをするか」というカリキュラムがあってもいい。
 例えば、テキスタイルの違いを生かした簡単服をデザインする。綿ローン、綿ブロード、綿カツラギ等の基本的なテキスタイルでどんな簡単服ができるか。同じパターンでも生地が異なると、どれだけシルエットが変わるか、を確認することも重要だ。
 また、ロック始末割縫い、折り伏せ縫い、袋縫い等の仕様を変えることでも、シルエットが変わる。
 パターンは基本的に囲み製図とし、イラストレーターのデータとしてWEB上に公開する。
 できれば、全国のファッション専門学校に呼びかけ、カリキュラムに取り入れてもらい、コンテストやWEBマガジンや電子書籍を発行するのはいかがだろうか。各学校の作品を学生モデルが着用し、学生が写真撮影を行う。それを集めて、作品集を制作するのである。
 そして、実際に商品として販売するのも良いかもしれない。自作の一点ものでもいいし、縫製工場を使って量産することも可能だ。
 
4.海外ワークショップとフェアトレード

 「社会的な簡単服」というコンセプトは、世界に広がる可能性もある。民族衣装と洋服の中間に存在するような服。日本でも、本格的な既製服が登場する前に、「アッパッパー」と呼ばれる簡単服が普及していた。そこに市場があるかもしれない。
 家庭用のミシンでも縫えるし、手縫いでも縫える服。天然素材で、樹脂や金属を使わなければ、全ては生分解する環境に優しい服になる。大量生産せずに自作することを原則にすれば、不要な製品を廃棄する必要もない。余分な在庫を作らないことは、エネルギーも使わないし、環境にも優しい。
 「自作の簡単服をみんなで着ましょう」という運動は、開発途上国にとっても良いことだ。簡単服であれば、開発途上国でも生産できるし、それを輸入することで、その国の経済を支援することができる。
 簡単服はテキスタイルの違いが個性になるので、アフリカや南米の民族衣装で使われるようなプリントの生地を使うこともできる。
 簡単服のワークショップとは、生地作りと縫製の実習である。発展途上国でワークショップを展開し、それをフェアトレードで先進国が輸入する。それを先進国の若者が担えば、新しいビジネスも生まれる。
 全ての国々がWIN-WINの関係になるには、高度な製品では難しい。簡単服であることこそ、重要なのである。

*有料メルマガj-fashion journal(247)を紹介しています。本論文は、2016.8.15に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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