My Photo

お知らせ

無料ブログはココログ

« アパレルは、どう曲がる? j-fashion journal(242) | Main | 検索メディアの可能性 j-fashion journal(244) »

June 27, 2017

サステイナブル・コットン・プロジェクト j-fashion journal(243)

1.オーガニックコットンがなくなる?

 日本オーガニックコットン協会は、WEB内の「オーガニックコットンとは」で以下のように解説している。
 「オーガニック・コットンは、オーガニック農産物等の生産方法についての基準に従って2 ~ 3 年以上のオーガニック農産物等の生産の実践を経て、認証機関に認められた農地で、栽培に使われる農薬・肥料の厳格な基準を守って育てられた綿花のことです。
 オーガニック・コットンは、紡績、織布、ニット、染色加工、縫製などの製造工程を経て最終製品となりますが、この全製造工程を通じて、オーガニック原料のトレーサビリティーと 含有率がしっかりと確保され、化学薬品の使用による健康や環境的負荷を最小限に抑え、労働の安全や児童労働など社会的規範を守って製造したものを、オーガニック・コットン製品といいます。」
 また、「どうしてオーガニックコットン?」では、以下のように解説している。
 「綿の畑は世界の耕作地のわずか2.5%しかないのに、世界の殺虫剤の16%が使われています。アメリカ環境保護局は、アメリカの綿花栽培に使われている農薬の中で、る10種類の農薬については、発ガン性の。疑いがあると認めています。゛

 オーガニックコットンは畑に化学肥料を散布する代わりに牛糞や堆肥などの有機肥料を使用することにしています。除草剤で雑草を枯らす代わりに耕運機で土を掘り起こし雑草を土に埋めます。
 オーガニックコットンは殺虫剤を散布して害虫を殺す代わりに、畑の回りにトウモロコシなどの雑穀を植えてテントウムシなどの天敵を増やし、害虫を駆除する方法をとります。
 オーガニックコットンは落葉剤を散布して綿を収穫しやすくすることはせずに給水を絶ち、霜によって自然に葉が落ちるのをじっくり待ってから収穫します。
 綿から布をつくる時も塩素系漂白剤などの化学薬品はできるだけ使わずに、天然ワックスやデンプンを主体に使います。発ガン性物質、アレルギーの元となる薬品はすべて使用禁止。染料も厳しく制限しています。
 遺伝子組み換えの種は使わずおおむね3年以上化学薬剤や化学肥料を使わない畑で栽培され、製品になるまですべての工程でできるだけ化学薬品を使わずに作られたものがオーガニックコットンと呼ばれています。そんなオーダニックコットンの生産量は、綿の全生産量の1%未満でしかありません。
 そして、オーガニックコットンでは農民のことも考えています。公正な価格で買い取ること、買い取りの保証をすること、子供たちが学校に行ける時間をつくること・・・フェアトレードにより、農民たちの暮らしの向上にも努めています。」
 以上の表記には、微妙に異なる部分がある。まず、農薬を全く使っていないのか。あるいは、厳格な基準の元で使っているのか。
 実は、オーガニックコットン、あるいは、それに近いものを認証している団体は複数存在する。その団体毎に基準があり、全く農薬を使わないところと、一部の農薬は認めている団体がある。また、上記では遺伝子組み換え種子は使っていないという表記があったが、無農薬で遺伝子組み換えを認めている団体も存在する。
 オーガニックコットンが生まれたのは、アメリカのカリフォルニア州である。現在、地元では、「オーガニックコットンはなくなるかもしれない」と言われている。綿花農家にとっては、「オーガニックコットンは生産性は悪いが、二倍の価格で売れるのだから半分の収穫量でも採算が取れる」ものだった。しかし、近年の日照りと水価格の上昇により、採算が極端に悪化している。その意味では、「現在のオーガニックコットンはサステイナブルではない」のである。
 農業とは、自然環境を人間がコントロールし、一定の作物を大量に栽培し、収穫するシステムである。その意味では、農業そのものが自然ではない。しかし、農薬や化学肥料を無制限に使ったのでは、土壌汚染などで継続的な農業ができなくなる。
 農家にとっては、継続的な経営と、環境汚染を防ぐことの両立が重要である。農薬を使わなくても害虫がつかない遺伝子組み換え種子は、穀物メジャーへの経営依存を意味するので、これもサステイナブルと言えるか否かは微妙である。
 現在、アメリカの一部の綿花農家はサステイナブルな農業を目指して、新しい認証基準を作ろうとしている。完全な無農薬ではないが、発ガン性のある農薬は使わない。あるいは、遺伝子組み換え種子は使わない。
 そして、エンドユーザーまでの完璧なトレーサビリティを実現し、顔の見える高品質な有機栽培の超長綿あるいは長綿を限定的かつ継続的に供給していくというプロジェクトである。

2.インドのオーガニックコットン

 世界のオーガニックコットンの約半数がインド産である。「アメリカのオーガニックコットンが消えても、インドのオーガニックコットンがあればいい」と考えるのは、綿花の品種の違いが分からない人だ。
 インド綿は、繊維長が短く、太い糸に適している。インテリアや寝具では、独特のナチュラルな味が出る。しかし、インド綿のシャツはシャキッとしない。ヘナヘナッとした腰のないシャツになってしまう。
 前述した、アメリカのオーガニックコットンはピマ綿、アケーラ綿だが、インドのオーガニックコットンはインド綿だ。
 インドでは、化学肥料も化学農薬も存在しなかった時代から綿花栽培を行っている。そのため、現在でも農薬や化学肥料の使用は少ない。インドのオーガニックコットンの最大の課題は認証である。認証を取得するには資金が必要である。しかし、認証を取得すると価格が上昇してしまう。売れるか売れないか分からない綿花に認証を取得することはできない。そこで、オーガニックコットンの注文があれば認証を取得し、そうでなければ、通常の綿花と混ぜて販売することも少なくない。
 認証という意味では、日本におけるオーガニックコットンも微妙である。そもそも認証を受けずに、オーガニックコットンと名乗っている製品も存在している。中小企業は認証を取得する資金がないという問題もある。
 最終製品を見ても、オーガニックであるか否かは区別できない。オーガニックとは栽培方法であり、製品の違いではない。だからこそ、認証が必要なのである。したがって、日本に広く流布している「オーガニックコットンはアトピーに良い」説は真実ではない。オーガニックコットンとは認証が全てと言ってもいい。
 オーガニックコットンの商品を購入するということは、最終製品ではなく、あくまで環境問題に寄与する行為である。あるいは、顔の見える農家の野菜を購入するということである。
 したがって、トレーサビリティがいい加減なオーガニックコットンに意味はない。日本のオーガニックコットンの多くは、商社がオーガニックコットンの糸を輸入し、それを使った織物をオーガニックコットンとして生地問屋が販売している。その生地を使った加工メーカーがオーガニックコットン商品として販売している。しかし、こうした商品は厳密に言えば、オーガニックコットンと言っていいのか、分からない。グレーゾーンなのだ。
 本来は、トレーサビリティが義務付けられているので、その綿花がどの国のどの畑で誰が栽培し、どこの紡績が糸にして、どこのテキスタイルメーカーで生地にして、どこで染色・整理をしたのか。それらの業者全てが本当に認証を取得したのか、を明確にしなければならない。
 
3.サステイナブル・コットン・プロジェクト

 前述したアメリカの綿花農家が進めているのが、「サステイナブル・コットン・プロジェクト」である。
 ここでは、従来、カリフォルニアの綿花農家が使用してきた13の毒性の強い化学薬品を使用せず、かつ使用量を30%以下に抑えている。遺伝子組み換え種子を使用せず、生物学的な害虫管理技術を用いている。
 この手法で栽培した綿花を「クリーナーコットン」という商標で販売している。
 カリフォルニアでオーガニックコットンを栽培するコストは非常に高いので、そのコストを抑え、環境を汚染することなく、サステイナブルな綿花栽培を実践することを目標としている。
 たとえば、従来の遺伝子組み換え種子を使用し、化学的な栽培した綿花と比較しても、70%以上の収穫が可能となっている。
 最も重要なことは、ここで栽培されている綿花が最高級の超長綿であることだ。
 実は、このクリーナーコットンの綿花を10トン買いつけ、それを日本国内で紡績、機織しタオルを制作し、販売しようというプロジェクトが進んでいる。綿花農家の人、貿易商社、紡績、機織、整理、販売に至るまで、全ての工程で顔が見える製品作りと流通を実践しようというのだ。
 このプロジェクトを推進しているのが、東京タオル卸商業組合の「もの作りタオル塾」のメンバーである。現在、試作途中であり、商品化には少し時間が掛かるが、来年には販売できると思う。(私も微力ながらお手伝いしている)

4.サステイナブルなビジネスモデルを

 綿花10トンという量は、最低限である。通常なら20トンが一つの単位だ。試験的な買いつけはしたものの、これで終わったのではサステイナブルとは言えない。
 折角の超長綿のピマなので、肌に当たる商品が良いのではないか。例えば、Tシャツとタオル。布帛なら、パジャマ、ヨガウェアなど。差別化したデニムもカジュアルシャツも良いかもしれない。
 目的はサステイナブルなビジネスモデルの確立である。ブームのような波は必要ないのだ。なるべく定番的な商品を継続的に生産し、継続的に販売することが重要である。 
 サステイナブルなビジネスモデルを構築するには、更なるプレイヤーが必要である。私は繊維商社、テキスタイルコンバーター等を組織化し、毎年20トン使い続けるプロジェクトを立ち上げたいと考えている。
 サステイナブル・コットン・プロジェクト自体が、カリフォルニア州のフレズノ、マデラとマーセド郡で綿花を栽培している家族農家のコミュニティがベースとなっている。したがって、日本の受け入れチームも大手商社は似合わないと思うのだ。
 サステイナブル・コットン・プロジェクトでは、毎年、コットンファームツアーを行っている。プロジェクトに参加している農家の畑を視察するのである。
 私は日本チームができたら、是非、毎年このツアーに参加すべきと思っている。オーガニックコットンとは商品が重要なのではない。綿花農家から、紡績、機織、染色整理、縫製加工までの全てのプロセスをが重要なのであり、エンドユーザーもそのコミュニティに参加し、自身が使う製品を愛してほしいと思う。

*有料メルマガj-fashion journal(243)を紹介しています。本論文は、2016.7.18に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

« アパレルは、どう曲がる? j-fashion journal(242) | Main | 検索メディアの可能性 j-fashion journal(244) »

「ファッションビジネス」カテゴリの記事

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

« アパレルは、どう曲がる? j-fashion journal(242) | Main | 検索メディアの可能性 j-fashion journal(244) »