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May 25, 2017

中国アパレルが直面する課題 j-fashion journal(238)

1.「モノ不足時代」から「モノ余り時代」へ

 アパレル製品は多岐に渡っている。ジャケット&コート、シャツ、パンツ、ブラウス&スカート&ワンピース、カットソー等々。それぞれのアイテムは生産設備が異なる。工場にとっては、同じアイテムの製品を大量生産する方が効率が良い。
 「モノ不足の時代(需要>供給)」は、作れば売れるし、作れば儲かる。最大限の生産効率を追求するには、アイテムを絞る方が有利だ。
 日本では、1960年代から70年代まで、単品アパレル全盛の時代だった。百貨店の婦人服売場は、ブラウス売場、セーター売場、ボトム売場、ドレス&コート売場、ランジェリー&ファンデーション売場のように、アイテム別売場が半分以上を占めていた。
 中国も同様である。改革開放以前から、アパレルメーカーはアイテム別の単品メーカーが基本だったし、百貨店の売場もアイテム別に編集されていた。

 日本では80年代からDCブランドブームとなり、ブランド単位のショップが百貨店内に進出した。同時に、全国でファッションビル、地下街等が整備され、アパレルショップが急速に増加した。
 中国も改革開放から経済成長が始まり、2001年のWTO加盟から、次第に輸出から内需への転換が始まった。同時に、外資アパレル企業が中国市場に進出した。
 97年からCFW(チャイナファッションウイーク)がスタートし、デザイナー企業を中心に中国アパレルもトータールアイテムのショップ展開をするようになった。
 2008年のリーマンショックは、中国のアパレル輸出企業に大きな打撃を与えた。同時に、中国のアパレル市場の需要と供給が拮抗した時代でもあった。ここから、中国のアパレル市場は、供給過剰の「モノ余りの時代」に転換していく。
 しかし、内販アパレルは、それほど大きな損失を被らなかった。相変わらず経済成長は続いていたし、中間層の増加から新たなアパレル市場も生まれていた。
 内販アパレルが供給過剰の壁にぶつかったのは、2011年から2013年頃である。急激に売上が減少し、在庫が増大、利益率も下がった。
 そして、2014年に大手アパレルの大量店舗閉鎖が目立つようになった。
 
2.ファストファッション、ネット流通との競合

 現在の中国アパレルは、単品アパレルとSPAアパレルが混在している。
 単品アパレルは、直営店主体のSPAアパレルを目指している。しかし、SPAアパレルもオーバーストアに悩み、規模の縮小を余儀なくされている。単品アパレルが単純にSPAアパレルを目指しても問題が解決するわけではない。
 日本のアパレル業界に目を転じてみよう。日本のアパレル業界も、2008年のリーマンショックは大きな節目だった。
 2008年には、H&Mが日本市場に進出し、ファストファッション時代の到来を告げた。
 2010年には単品メーカーの雄、東京ブラウスが倒産した。また、日本のアパレル業界のリーダー的な存在であったレナウンが中国の山東如意科技集団有限公司に買収された。
 この頃から、日本のアパレル市場では、国内のSPAアパレルと外資のファストファッションの競争が激化していった。
 実は、もう一つ水面下の競争が始まっていた。インターネット流通と店舗流通の戦いである。スタートトゥデイが手掛けるアパレルのオンラインショッピングサイト「ZOZOTOWN」が開設されたのが2004年で、2007年には 東証マザーズに上場、2011年には韓国、中国に進出。2012年には東証一部に市場変更した。
 ファストファッションとの競合と、インターネット流通との競合という二つの競合により、2015年になると大手アパレルは、事業部の整理、人員削減、ショップ閉鎖が目立つようになった。
 中国のSPAアパレルも全く同じ状況である。大手外資のファストファッションと、インターネット流通との競合は益々激しくなるだろう。そして、日本同様、店舗拡大は経費拡大を意味するようになり、過剰な店舗を閉鎖しなければならない。
 供給過剰に対応するには、生産設備の整理も必要になる。中国国内の工場は、規模を縮小し、付加価値の高い商品にシフトするべきである。その上で、店頭と直結した多品種少量短サイクル生産に転換しなければならない。価格訴求の商品を生産するならば、中国内陸部や東南アジアに生産拠点を移転させることが必要になる。
 
3.中国単品アパレルの課題と対策

 中国の単品アパレル企業は、基本的に大量生産の生産設備を有している。この生産設備は経営の重荷になるだろう。
 生産に関する選択肢は二つ。
 第一は、生産規模を縮小すること。
 第二は、生産設備を高度化し、単品ではなく、フルアイテム縫製に対応すること。そして、中国国内市場に対応できるように、多品種少量短サイクル生産に転換すること。これができれば、他社ブランドのOEM生産を拡大する可能性も出てくる。
 商品企画を高度化することで、生産設備を維持することができるかもしれない。
 商品企画高度化のポイントは、三つ。
 第一は、これまでのように単純に購入サンプルをコピーしてはならないということ。コピーするならば、徹底的に分析する。購入サンプルを分解し、パターンを比較し、縫製仕様を分析する。その上で、自社製品とどこが異なるのかを理解し,自社の製品を改善するのだ。
 多くの中国アパレルは、コピーの精度が低い。何となく、サンプルに似ていれば良いと判断している。そのため、購入サンプルは着心地が良いのに、コピー製品のパターンが悪く、着心地が悪いことが多い。これではコピーの意味がない。
 コピーが悪いと言われるが、コピーも満足にできないのはもっと悪い。コピーをするにも技術が必要なのだ。
 第二は、購入サンプルをどのように変更を加えるかを徹底的に考えること。コピーではなく、アレンジを加える。
 自分の頭を使わずに、単純にコピーして売れない場合、その理由は分からない。もっと売れるサンプルを探すしかなくなってしまう。しかし、売れるサンプルを見極めることは困難である。
 自分で考えた商品なら、売れる理由も売れない理由も分かるだろう。自分で考えて企画し、その結果を検証し、改善ポイントを明確にする。それを、次の企画に生かすというサイクルを繰り返せば、次第に企画力は向上していく。
 第三は、購入サンプルのコピーをやめて、オリジナルの商品を企画すること。
 ここでも、いくつかの方法がある。
 第一は、クリエイティブディレクターを採用し、ブランド全体のディレクションを委ねること。これはヨーロッパ、アメリカのアパレル業界の手法である。
 ここで留意すべきは、クリエイティブディレクターの契約では、徹底した実績主義を貫くこと。売れなかったら、即、契約を解消するか、解雇することが必要だ。したがって、責任を取らせることができない経営者の身内にその役割を任せてはならない。権限を与えて、解雇できないなと、会社の経営は傾いてしまう。
 第二は、科学的に市場調査、顧客意識調査、テキスタイルトレンド分析、コレクション分析を行い、組織的に企画を組み立てることである。この手法はファストファッション企業、日本のアパレル企業の手法である。
 ここで留意すべきは、組織の役割と責任を明確に設定すること。
 第三は、海外アパレルブランドのライセンシーとなり、そのノウハウを吸収することである。多くの日本のアパレル企業は、欧米のアパレルブランドのライセンス契約により、ノウハウを吸収していった。
 但し、ライセンス契約の内容が問題だ。自社にどんなノウハウが欠如していて、どんなノウハウを取得したいのかを明確に設定し、それが実現するライセンス契約を締結しなければならない。
 以上、いずれの場合も、社内だけで改革を進めるのは難しい。中国の状況を理解している外国のコンサルタントへの依頼も検討してほしい。
 
4.中国SPAアパレルの課題と対策

 単品アパレル企業がSPAアパレルに転換したとしても成功するとは限らない。既存のSPAアパレルと競合関係になるだけだ。
 SPAアパレルの課題は、競合他社との差別化と、インターネット通販への対応である。
 競合他社との差別化は、三つのポイントがある。
 第一は、ブランディングである。ブランディングとは、ブランドイメージ、ブランド価値を高める活動を指す。
 数年前なら、有名人をイメージキャラクターモデルにすることで、簡単にブランドイメージを上げることができた。しかし、現在の消費者は有名人の顔写真と商品の品質が何の関係もないことを知っている。どうせ買うなら有名なブランドの商品を選ぶという購買行動は、未成熟の市場でのみ見られることであり、現在の中国市場のように成熟が進んでくると効果がなくなる。
 今後は、商品と店舗の双方のレベルを上げるという真面目なブランディングが必要になる。
 第二は、商品企画、生産の改善と改革。つまり、テキスタイル、パターン、縫製仕様等を全面的に見直すことが必要だ。
 特に、テキスタイルの調達は最も利権が生じやすい。担当者と仕入れ業者が癒着できないような仕組みが必要である。
 日本のアパレル企業では、定期的に配置転換を行い、利権が固定化しないように配慮している。
 欧米のテキスタイル企業は、商品毎のプライスリストを公開しているため、不正が生じにくい。不正をすれば、アパレル業界にいられなくなる仕組みが業界の中で確立している。
 パターンの改善は、日本のパターンメーキングの専門企業との取り組みを勧めたい。勿論、社内でパターンメーカーを育成することが理想的だが、それには時間が掛かる。
 欧米のパターンメーカーのコンサルティングは高額な上に、ヨーロッパ人種とアジア人種の体型の差があるので、そのままのパターンを採用するのは難しい。
 第三は、ショップデザインとVMDの改善と改革だ。
 中国では、ショップデザインとVMDが混同されることが多い。ショップデザインは、ブランドコンセプトを具現化し、ブランドイメージを高めるだけでなる、VMDを理解した上で売場を設計することが求められる。
 VMDとは、あくまで運営と演出であり、むしろ、商品MD(商品展開計画)との連動が重要である。
 商品MDが季節ごとのテーマを設定していれば、そのテーマと連携してVMDテーマを設定することができる。しかし、多くの場合、商品企画がコピー製品の寄せ集めであり、商品MDが混乱しているために、計画的なVMDが展開できない。
 結局、売場にある商品を整理分類して、より見やすく演出することしかできない。これでは差別化戦略としては不十分である。
 第三は、サービスの差別化である。サービスというと、VIP顧客の設定と、VIP顧客に対する特別なサービスを思い浮かべる人も多いだろう。
 欧米のブランドでは、展示会期間の一週間程度を教育に充てるところもある。販売員のレベルを上げることは、ブランドイメージを上げることに直結する。
 勿論、VIP顧客は重要だが、サービスで最も重要なのは販売員教育である。販売員が十分な商品知識を有し、そのシーズンの企画テーマを理解していれば、顧客に有用な情報を与えることができる。
 販売員のモチベーションを上げるには、販売員の能力をいくつかの段階に分け、それぞれの段階での能力評価基準を策定し、それに伴う給与制度を整備する必要があるだろう。また、各販売員の売上歩合による報酬をすることで、より積極的な接客が行われるが、同時に、ショップ内の販売員同士がチームワークができるような配慮も必要である。
 例えば、販売員個人の売上だけでなく、ショップ全体が予算達成した時の報酬制度を加える。あるいは、新人に指導することの評価も考慮しなければならない。

5.店舗販売とインターネット販売の違い

 店舗は一定の空間であり、その空間全体でブランドコンセプトを主張することができる。当然、商品も空間に対応した量が必要であり、広い店ほど商品も多く在庫する必要がある。
 しかし、インターネットショップは、一点の商品でも出品が可能だ。商品の量よりも、商品の情報の質と量が求められるのである。
 例えば、一点の商品ができるまでの企画から生産の流れ、商品の生産工程、検査と物流等を情報番組のようにビデオ画像に編集してWEBで公開する。これは、店舗にはできない大量の情報を消費者に伝えることになる。
 店舗で重要なのは「視覚的情報」だが、インターネットで重要なのは、検索キーワード設定を含めた「テキスト情報」である。勿論、画像の情報が重要なのは言うまでもないが、その画像に到達するまでにはテキスト情報によるストーリーやナビゲーションが必要になる。
 特定のアイテムを得意とする単品アパレルには、二つの戦略が考えられる。第一の戦略は、トータルアイテム展開をしてSPAを目指すこと。第二の戦略は、インターネットを使って、得意なアイテムに集中し、世界市場に販売することだ。
 例えば、店舗展開の商品は、周囲の店やショップ内の商品との価格バランスが重要になる。しかし、インターネットではその商品に集中するので、価格よりも性能や特徴や、他の商品との違いがより重要になる。
 店舗では販売できない「究極の逸品」をネットで紹介したり、予約販売することでブランディングにつなげるという戦略も考えられるだろう。
 インターネットならではの、SNSとの連携、動画との連携、人的ネットワークによる共有が機能すれば、単品アパレルも新たな道が開けるのではないか。
 これはSPAアパレルにも共通している。自社ブランドの得意な商品を徹底的に掘り下げて、インターネットで訴求する。インターネット流通では、「スタイリングから単品へ」という流れも存在するのである。
 中国アパレル企業は、それぞれ異なる段階にいる。一つのキーワードを取り上げて、それを目指せば成功するという単純な時代は終わった。今後は、各企業の特性や発展段階に合わせて、戦略を練らなければならない。
 それには、ヨーロッパ、アメリカ、日本のアパレル産業の発展を学習し、応用することか重要になるだろう。

*有料メルマガj-fashion journal(237)を紹介しています。本論文は、2016.6.13に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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