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May 25, 2017

全てのビジネスは個人から始まる j-fashion journal(240)

1.システム導入とタブレット導入

 私のクライアントの一社が変貌を遂げている。新商品を開発し、新規取引先を開拓しながら、課題を分析し、対策を考えられるようになった。
 3年前は、全く違っていた。旧来の商品にこだわり、旧来の取引先に振り回され、安物商品ばかりを生産し、利益を確保できなかった。
 会社が変わったきっかけは、売上在庫管理システムの導入である。品番ごとの売上と在庫が明らかになった。取引先別の利益も明らかになった。
 しかし、システム導入も簡単ではなかった。当初、業者に相談すると既存のパッケージで数百万の見積もりが出された。最終的には知人で小回りの利く小規模な業者と知り合うことができて、安価でオリジナルのシステムを構築できた。それでも、本格的導入までには2年が掛かった。
 私は最初から「システムの重要性と導入の苦労」について説明したのだが、最初はもっと簡単に考えていたようだ。

 全ての数字が明らかになった結果、価格訴求の商品は会社の利益に貢献していなかったことが分かった。そして、一定価格以下の商品を打ち切ることにした。
 次に得意先の見直しも行った。文句や無理ばかり言ってくる得意先は、意外にも会社の利益に貢献していなかった。会社の利益にならない得意先の無理難題を聞く必要はない、ということが分かったのだ。
 一方で、新規取引先を足で開拓した。その結果、売上は延ばせなかったが、売上の中身が大幅に変わった。
 システム導入と時を同じくして社内チャットシステムを導入した。ここに日報を上げることを決定したのだが、最初は日報を書かない社員も多かったし、内容も紋切り型だった。それが一年たった頃から、「この仕組みをもっと活用しよう」という声が社員から出てきた。そして、二年目から社長が社員に呼びかけたり、役員が積極的に現場に呼びかけるようになった。その結果、社内の様子が次第に可視化されるようになった。
 もう一つの革新は、役員と営業全員にタブレットを支給したこと。会議では全員がタブレットを開く。最初の頃は開いているだけだったが、気がついたら、会議の最中に全員で検索を掛けて、その場で情報を共有するようになった。
 既存の仕事にこだわり、自分の頭だけで考えるより、外部の情報を検索し、それを応用した方が効果的であることを全員が理解するようになった。
 気がつくと、社員全員が会議で発言するようになっていた。自分の考えも述べ、資料をプリントアウトして配布する。課題を正しく把握し、自分なりの対策を考えるようになった。
 私は、次の課題として、SNS活用とネットショップとの連携を提示した。ポイントは、個人と会社の壁を崩すこと。個人がSNSに慣れることだ。そのうちにSNSの性格や可能性が見えてくると思う。そうすれば、次のビジネスモデルが見えてくるだろう。
 多分、この会社は今期予算をクリアすると思う。今後三年間の見通しも立っている。しかし、それでも何が起きるか分からない時代だ。変化に対応する準備を怠ってはならない。
 
2.「見える化」は突然変移を促す情報共有

 システムの導入により、ビジネスに対する意識が変わる。あるいは、ソフトウェアの導入により、コミュニケーションが見えてくる。タブレットの導入により、自分の頭脳だけでなく、外部の頭脳を活用するメリットを感じるようになる。いずれにせよ、個人の意識が変わることが重要であり、個人が変わらなければ会社は変わらない。
 前述した企業は、若手営業担当者全員が変わった。印象としては、突然変わったのだ。そして、会社も変わることができた。
 コンピュータとインターネットは、一人の人間が複数の頭脳を持ち、複数の仕事をすることを可能にする。大げさではなく、一人が百人分の仕事をする時代が到来している。
 逆を言えば、社員百人の会社が一人の個人に負けることもある。進化とは突然変移の連続である。少しずつ進むわけではない。一つの突然変移が次の突然変移を生み出し、次々と変化をもたらす。最初の突然変異がなければ、次のステージには進めない。
 リスクヘッジという考え方は、突然変移を妨げる。旧来のビジネスを継続し、個人の仕事も変わらない。そのため進化が起きないのだ。
 売上とは結果である。結果に至るプロセスと意志決定システムが重要であり、結果だけを求めても結論は出ない。
 例えば、アパレルで言えば、既存のトレンド情報を基本にした商品企画の手法と、会議で商品を決める意志決定システムにメスを入れずに、情報の中身ばかりを議論しても結果は出ない。しかし、プロセスを変えることは、組織と必要な人材を変えることにつながる。したがって、社内ではプロセスを変えることを嫌がる。
 結果的に、「見える化」とは、否応なくプロセスに問題があることを直視して、全員で改善していくことに他ならない。「見える化」は突然変移を促す情報共有につながる。しかし、全員が結果を見たくないと思っていれば、都合のよいものしか見えないだろう。

3.仕事は個人でもできる

 これまで、仕事は企業に所属しなければできなかった。商取引も委託加工も企業対企業で行うことが原則だった。
 企業と言っても、大企業でなければできない分野もあるし、中小企業でも対応できる分野もある。巨大な資本が必要なビジネスに、中小企業が参入することはできない。油田開発や航空機の製造に中小企業が参入することは難しい。
 しかし、中小企業でできる分野も少なくない。そして、中小企業でできることは、個人企業でもできる。個人企業でもできることは、個人でもできる。
 多くの中小企業は、経営者一人がビジネスを把握し、社員は経営者の指示通りに動く。しかし、社員一人一人が社長の気持ちでビジネスを組み立てていけば、何倍かのビジネスになるに違いない。
 昔、日本の産業界は大企業を中心とした系列が強く、系列以外の企業の仕事は受けなかった。しかし、インターネットによるグローバル調達が主流になり、系列は崩壊した。しかし、個人でビジネスができることは、素人でもビジネスができるという意味ではない。ビジネスを組み立てる構想力、サプライチェーンに関する情報や知識、商取引のルール等を知らなければ、どこも相手にしてくれないだろう。

4.全てのビジネスは個人から始まる

 情報や知識を得るための最強のツールはインターネットである。大企業も中小企業も個人もインターネットで情報を検索する。つまり、個人も大企業と同じ情報を入手できるということだ。
 また、SNSによって面識のない個人が出会うチャンスが増えている。昔は、社会人になると、会社で付き合いがある人としか出会えなかった。企業同士の付き合いがあるから、企業に所属する個人同士が知り合える。
 しかし、企業に関係なく個人が出会うようになると、この順番が変わってくる。まず、個人同士が知り合い、そこから仕事が生まれるのだ。
 私は、今後は「全てのビジネスは個人が起点になる」と思っている。
 個人がビジネスをするとは、まず、それを自分が好きになることだ。あるいは、自分がその分野の専門家になることから始まるべきではないか。
 就職して、特定の部署に配属されたから、特定の商品の担当になる、というのも考えてみれば不自然なことだ。商品の担当者になるには、その商品に詳しい専門家になってから担当してほしい。というか、そうなるべきである。
 そう定義すると、顧客の定義も変わってくる。顧客とは、商品を購入する人ではない。顧客は、個人のこだわりや思想に共感する人だ。
 特に、ネットショップでは、この定義を守らないとビジネスにならない。担当者が専門家になれば、担当者個人の情報発信も専門家としての発言になる。本当にその仕事が好きならば、仕事とプライベートの区別もないはずだし、プライベートで発言するからこそ、個人としての信用がつく。
 そして、「個人に共感する顧客が何人つくか」がビジネスに直結する。個人を支え、支援するのが組織の役割である。最初に個人があって、個人を支援するための組織がある。そうなれば、指示系統も明確になるし、ネットショップにも命が込められるだろう。
 デザイナーも個人が基本である。デザイナー個人にファンがつく。ファンがつかないデザイナーは商品も売れないのだ。

*有料メルマガj-fashion journal(240)を紹介しています。本論文は、2016.6.27に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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