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May 25, 2017

ネットショップ企画のアナログ的発想 j-fashion journal(239)

1.ペルソナとWEB企画

 最近、ネットショップのセミナーに積極的に参加している。その中で「ペルソナを設定しましょう」というのがある。
 私は長年ファッションマーケティングに携わっているが、この手法は昔からあるものだ。本来ならば、市場調査やグループインタビューなど、客観的な調査をベースにするのだが、それほど厳密でもないらしい。
 リアルな顧客より少しだけカッコイイ顧客としてのペルソナを設定し、そのペルソナに向けたカッコイイWEBデザインをすると売れる、とのこと。ファッションマーケティング的に考えると、かなり単純な考え方で、「結局、カッコイイWEBサイトにした方がいいよね」というだけのようにも思える。
 ファッションマーケティングでは、最初にビジネス環境の分析を行い、そこからコンセプトを導き出す。最近では、グローバルトレンドと呼ばれる長期的なトレンドテーマを基準とすることも多い。
 いずれも、客観的なデータからコンセプトを導くというロジックである。しかし、実際にはクリエイター、デザイナーやクリエイティブディレクターが、時代をどのように認識し、その中で、独自のコンセプトを発想するかが起点となる。その客観的なプレゼンとして、時代背景や様々な統計を持ち出すに過ぎない。

 結局、ファッションビジネスの世界では、ブランドコンセプトを構築するのはプロフェッショナルであり、素人にさせることはない。しかし、ネットショップの世界では、社内でパソコンの得意な人がショップ運営することも多く、そういう人を対象にしたセミナーで教えるのが「ペルソナ」という概念なのだ。
 ファッションのブランドコンセプトは、最終的に商品、ショップを具体化するために決められるものだ。それに対して、ネットショップは最終的にWEBデザインを決定するために行うのであり、商品を開発するわけではない。あくまで視覚的なデザインであり、ファッションのように身につけるわけでもない。とにかく、思考を整理し、概念をまとめるためにペルソナを設定するということなのだろう。
 そうならば、ペルソナと顧客ターゲット設定は異なるのかもしれない。

2.WEBとファッションのブランディング

 ブランディングについても、ネットショップの発想とファッションマーケティングは異なる。
 ネットショップの世界では、ブランディングは集客し、商品を販売するための手段だ。
 ファッションマーケティングでは、最初に企業アイデンティティがあり、そのアイデンティティを表現するために、ブランドが存在する。ブランドは単独の場合もあるし、複数のブランドを構築する場合もある。
 ブランドは企業資産であるし、ブランディングには相当のコストと組織が前提になる。したがって、簡単にブランドを変えるより、デザイナーを交代して、イメージの刷新を図ることが多い。(日本では、比較的、頻繁にブランドのスクラップと開発を行うが、それでも最低限の組織は必要である)
 ネットの世界の「ブランディング」という言葉は、ファッションよりかなり軽い響きがある。
 私はネットショップを単独では考えない。リアルなショップを持った方が良いのなら、ショップを作るべきだと思う。また、ネットで全てを完結すべきとも思わない。リアルなイベント開催や展示会の出展も必要ならば行うべきと考える。
 そういう立場からすると、WEBだけで完結するかのような企画には疑問が残る。

3.テキストで世界観を構築する

 WEBマーケティングで最も優先すべきは、コンセプトを表現するコピー、テキストではないだろうか。検索も広告も全てはテキストが基本になる。
 まず、ネットショップのネーミングが最も重要だ。顧客に理解しやすい説明と印象的なワードの二つが必要になる。ここで考えなければならないのは、ネーミングをどの程度絞り込むか。ネーミングを絞り込むことは、商品を絞り込むことである。限られた商品で売上を取るのは難しいので、売上を考えると、商品を拡大したくなる。商品の幅を広げると、WEBの印象が曖昧になってしまう。ここに悩みが生じる。
 店舗とネットというメディアの性格の違いを考えると(店舗もメディアである)、店舗は最低限のスケールが必要であり、一つの商品だけを販売するわけにはいかない。したがって、ブランド単位の商品構成が必要になる。
 ネットでは、一点の商品だけでも販売することができるし、一つの商品の情報を分厚く蓄積できる。したがって、一般的な商品よりもマニアックな商品を絞り込んで販売すべきと思う。一般の商品なら、店舗で販売すればいい。
 ショップのネーミングは、ブランド全体を表現するものだ。その下には、商品、サービス、作り手、こだわり、コミュニケーション等を解説するページが必要になり、それぞれに魅力的なテキストを配置しなければならない。
 書籍のタイトル、大見出し、小見出しのように、テキスト(コピー)が構成しなければならない。
 私は、一つの商品には一つの短編小説くらいの解説なり、こだわりが必要だと考えている。店頭はビジュアル中心のイメージ中心。ネットの方がロジカルなテキストの積み重ねが重要と考えている。
  
4.商品パッケージと商品写真

 ネットショップで扱うのは、商品ではない。商品の画像である。その意味では、パッケージも商品の一部と言える。また、商品デザインについても、画像で表現できることが望ましい。
 店舗のVMDでは、スタイリングをVPで見せて、PPでプラスワンのコーディネート、IPでは商品を美しく見せる。
 WEB上では、着用方法。コーディネートの提案等を動画で見せることが重要ではないか。できれば、いろいろなタイプの人が着用している動画があると良いかもしれない。
 また、商品の畳み方、収納の方法、洗濯の方法等も重要だ。
 商品の画像については、全体の画像だけではなく、細部のデザインを解説する必要がある。
 商品パッケージを開いて、着用するところまでを動画で紹介するのも良いだろう。そうすることにより、パッケージの問題点や同梱している伝票等の問題点を発見できるかもしれない。
 商品のデザインについては、デザイナーが解説したり、アパレルであれば、パターンナーがこだわりのポイント等を解説するのも良い。
 ネットショップとは商品を販売するのではなく、最終的には顧客とのコミュニケーションを図る媒体である。そう考えると、ネットショップの商品は、トレンドを追いかけて変化を続けるよりも、少しずつ改善を進め、その改善結果もWEBで紹介するような手法が適しているのではないか。
 
5.WEBデザインのカラーを絞り込む

 WEBデザインとコンテンツの密度は互いに影響する。コンテンツが充実していれば、WEBデザインはシンプルにした方が良いだろう。
 例えば、パワーポイントのプレゼンテーションでも、使って間もない頃はデザインに凝る。しかし、最終的には用意されているテンプレートは使わずに、超シンプルに画像を見せるか、テキストを見せるようになる。
 同様のことがWEBでも言えるのではないか。まずコンテンツを優先させ、WEBデザインはなるべくシンプルにする。このことは、前述したペルソナにも関連している。
 私は一人のペルソナではなく、リアルな複数の顧客ターゲットを設定すべきだと考えている。それらの顧客が共通して好感を持つデザインにすべきなのだ。そうなると、あまり癖のあるデザインよりもシンプルなものが使いやすい。
 但し、カラー計画は非常に重要になるだろう。色を絞り込み、WEBに使っても良いカラーパレットを設定し、その中でデザインすることが望ましい。これは、ファッション商品の企画にも共通するポイントである。

*有料メルマガj-fashion journal(239)を紹介しています。本論文は、2016.6.20に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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