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May 25, 2017

アパレルのIR戦略を見直そう j-fashion journal(241)

1.ファッションビジネスはコンテンツビジネスだ

 欧州のデザイナーは、ビッグメゾンからのオファーを勝ち取るために、自分の小さなコレクションを発表する。オリジナルブランドの小さなコレクションを発表しても、それが大きなビジネスに成長する可能性は低い。より高いステージに挑戦することで、資本力のあるブランド契約し、より大きな資本や工場を使ってビジネスも大きくなるのだ。
 現代のファッションビジネスには、資本とクリエーションの双方が必要不可欠であり、どちらが欠けてもファッションビジネスは成功しない。
 ファストファッションもラグジュアリーブランドのビッグメゾンも資本と大きく関わっている。資本にとらわれないファッションの古き良き時代は終了しているのかもしれない。
 デザイナーの成功とは、ビッグメゾンのクリエイティブディレクターとして招かれ、コレクションを成功させ、アパレル製品の販売と巨大なライセンスビジネスの双方を成功させ続けることである。その見返りとして、巨額の報酬と名誉が与えられる。

 独立系のデザイナーは常に買収と訴訟問題を抱えている。資本家にとって、ビジネスに直結する才能はなんとしても手に入れたいものなのだ。
 ファッションとはある意味でコンテンツビジネスである。しかし、良い服を作るには、コンテンツだけでなく、良いテキスタイルと良い縫製工場が必要だ。また、ビジネスを成長させるには、巨大な資本力と専門家チームが必要である。
 優れたコンテンツに資本が加わることで初めて、服そのものの完成度が高まる。そして、資本家にとって最も魅力的なのはライセンスビジネスである。巨額なライセンス料により、豪華なコレクションが可能になり、旗艦店の建設と運営が可能になる。物販だけを考えたのでは、とてもペイできない。
 残念ながら、日本ではクリエーションと資本のマッチングが行われていない。デザイナーにもその発想は希薄だ。日本国内の資本家もファッションコンテンツ、ファッションビジネスを理解していない。
 私は、日本のデザイナーに投資できるのは、中国人などアジアの投資家しかいないと考えている。しかし、彼らにとって、日本のデザイナーやコレクションはブラックボックスである。何の情報公開もされていないし、どのようにアクセスしていいのかも分からない。
 
2.アパレル企業の成長には資本が不可欠

 アパレル企業は売上が大きくなり過ぎると倒産するというジンクスがある。
 創業時は、規模が小さいので、少数の尖った感性の顧客に向けた個性的な商品を提供することができる。それが雑誌に掲載され、人気を集め、ブームになると、一気に成長する。
 大手企業は、個性的商品をリスキーと考える。売上が大きくなれば、少数の顧客だけを相手にするわけにはいかない。多くの顧客に受けるものを提供するようになり、商品の個性は薄れる。あるいは、売れ筋商品を追いかけるようになる。その結果、売上が上がるにつれ、商品感度は落ちていく。
 商品感度を落としたくないなら、規模を大きくしなければいい。ショップの数を増やさず、売上規模も一定で抑える。こうすれば、創業時の人材でも継続可能だろう。
 もし、規模を追求したいのならば、それなりの人材を補充しなければならない。そもそも、個性的な商品を創り出す人材は大きな組織には馴染まない。
 企業規模が大きくなるにつれ、ドンブリ勘定は通用しなくなる。プロの管理職が必要になるのだ。管理ができないために、売上が好調なのに、在庫や資金繰りで倒産する事例は少なくない。
 企業の成長と共に人材を補充しなければならないが、チーム編成を変えると軋轢が起きる。それを上手く調整するのは非常に困難だ。
 また、企業の体質を変えるには、資本も必要である。より良い人材を獲得するのも、オフィスを拡大するのも、ショップを増やすのも資本が必要である。
 ある一定規模を過ぎると、外部からの資本と人材の注入が必要になるのである。
 業績が悪化してから、事業を売却するのでは、買い叩かれてしまうが、業績が良い段階で次の飛躍のために、資本を受け入れるのであれば、高く売ることもできる。
 アパレル企業であれば、必ず起きるであろう問題を予測し、その準備をすることが必要である。それには、海外のファンドに向けた情報公開と企業アピールが必要だろう。
 
3.海外ファンド向けの情報発信を

 IRは、インベスター・リレーションズの略であり、企業が投資家に向けて経営状況や財務状況、業績動向に関する情報を発信する活動を指す。しかし、日本企業の多くは、日本国内の既存の株主か、国内の一般投資家を想定しているに過ぎない。
 海外のファンドにとって、日本企業の内容はまるで見えない。日本では、企業のランキング情報や客観的評価等が公開されることは少ない。国内の投資家であれば、何となく評判で分かるかもしれないが、ネットで検索するだけの海外投資家にはまるで分からないのだ。
 欧米のデザイナーは、ビッグブランドにスカウトされることで、巨大な資本のビジネスに参加することができる。しかし、日本にはデザイナーがビッグビジネスに参画するチャンスは少ない。日本のデザイナーにも、日本企業にもそうした発想がないのだ。
 日本人のデザイナーや個性的な中小企業への投資が期待できるのは、中国やアジアのファンドである。日本では売上規模が小さくても、コンテンツがしっかりしていれば、中国やアジア諸国で販路を延ばしたり、ライセンスビジネスを拡大することもできるからだ。
 私は、デザイナーやアパレル企業は発想を変えるべきだと思う。積極的に海外ファンドにアピールし、ビジネスをアジアスケールに拡大すべきである。資本があれば、グローバルなショップ展開もできるし、海外に向けてのコレクションも制作することができる。日本国内だけでは、縮小均衡を考える他にはない。それでは、ファッションビジネスの醍醐味がないではないか。

4.日本のデザイナー、アパレルが発信すべきもの

 日本のデザイナーやアパレル企業は何を発信すればいいのか。
 まずは、日本だけでなく、中国等、アジアでも商標登録しておくこと。これは基本である。
 最も重要なのは、しっかりとしたブランドコンセプトである。アジア諸国のアパレルにとって、最も重要でありながら苦手な分野である。だからこそ、日本のブランドに資本参加するか買収したいと考えているのだ。
 但し、ブランドコンセプトは、アジア市場を見据えたものでなければならない。できれば、アジアの富裕層を意識してほしい。
 欧米のブランドでは満足できない顧客をどのように設定するか。欧米のラグジュアリーブランドとは異なる価値観を明確に打ち出さなければならない。
 コレクションは、ライセンスビジネスを想定したものであること。バッグ、靴、時計、アクセサリー、香水等を、想定したブランド設定が望ましい。
 ショップは、すぐには実現できないので、デザイン計画だけでも公開したい。旗艦店と標準化された店舗の基本的なデザインがあれば良いだろう。
 プロモーション計画、グラフィックデザイン、シンポルやキャラクターデザインも重要である。特徴的なテキスタイルデザインがあれば、これらを展開しやすいだろう。
 また、販売員教育、VMD運営等も計画しておくべきだ。これらは、自社だけで行う必要はない。外部の企業、コンサルタントと連携しておけばいいのだ。
 また、多言語のWEBを用意することも不可欠である。更には、ブランドのSNSも用意するべきだろう。こうした準備があって、初めて海外のファンドにアピールすることが可能になるのだ。

*有料メルマガj-fashion journal(241)を紹介しています。本論文は、2016.7.4に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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