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January 04, 2017

人生を変えるモノはあるか? j-fashion journal(234)

1.DCブランドに熱狂した理由

 メンズDCブランド全盛期の販売員の話。
 「一番いい客は、カッコイイ奴じゃない。少しダサイ方がいい。埼玉か千葉から出てきたような客。そういう客に、頭の先から爪先まで全部コーディネートする。総額30万くらいになるけど、クレジットで買わせる。
 一カ月すると、その客が再び店に来る。一カ月の間で、彼の人生は変わっている。女性にモテるようになるし、周囲の目も変わる。突然、カッコイイ男に変身したんだ。
 そういう客にとって、販売スタッフは教祖になる。何でもいいから、コーディネートしてくれ、と頼まれる。そして、10万くらいの商品を売る。これの繰り返し。あの頃は、本当に面白いように商品が売れたね」
 当時のDCブランドには、購入した人の人生を変える力があった。それは、製品の力ではない。最新のファッションを認め、評価するという周囲の環境もあった。社会に対するファッションの影響力があったということだ。

 現在はどうだろう。残念ながら、ファッションに個人の人生を変えたり、世の中に影響を与える力はない。
 アパレル製品はコモディティになってしまった。テッシュペーパーや洗剤に人生を変える力はないのだ。
 
2.何がファッションになり得るか?

 現在、人生を変えられるモノは存在するのだろうか。それが見つかり、それを販売できれば、売れるに違いない。それこそ,かつてのDCブランドであり、現在のファッションだ。
 かつての服には、TPOが存在していた。「どんな時」「どんな場所」「どんな場合」に着る服か、というルールだ。カジュアル全盛の時代になり、平日も休日も、職場でもプライベートでも、屋外も屋内でも、同じような服を着るようになった。というより、どんな服を着ても文句を言われなくなった。
 勿論、一部のファッションフリークは、ファッションにこだわっている。しかし、ファッションにこだわっても、人生が変わるわけではない。周囲の人からは、「ファッションが好きな人」と思われるだけだ。
 DCブランドの時代、ファッションが持つ最大の力は、異性にモテることだった。しかし、現在では高い服を着てもモテるとは限らない。
 当時は、かっこいい自動車に乗ることも、異性を惹きつけるためだった。現在は、異性に興味がない人が増えている。運転免許を取得する人も減少する一途だ。
 人生は異性のためではなく、自分自身のためにある。そういう思想が主流になっている。したがって、自分自身の好きなモノやコトにお金を使う。そうなれば、他人に見栄を張るファッションではなく、食事や旅行、個々の趣味への支出のように自分で満足できる分野が中心になる。
 欧米では、ファッションは社会的ステイタスを示す物差しだった。だから、成金はブランドものを身につける。ラグジュアリーブランドを身につけることにより、上流階級に所属しているという気持ちが味わえるし、周囲もそういう目で見る。
 しかし、先進国ではラグジュアリーブランドの神通力も衰え始めている。ブランドものを買い漁るのは、新興国の富裕層ばかりになった。
 外見という意味であれば、服よりも時計や靴、髪の色やメイクが重要かもしれない。

3.仕事から趣味へ、そしてオンライン

 「ファッションに人生を変える力はあるのか」という問いの前に、「人生の目的とは何か」「人生の喜び、楽しみとは何か」を考えなければならない。リアルな人生に、経済的な目標を設定できるのは、成長期だけだ。経済の停滞期、衰退期に経済的な高い目標を設定しても到達することは困難である。
 現在の若者は、経済的に苦労している。正社員として就職することは狭き門であり、非正規労働者として働くことも多い。そんな境遇で結婚や子育てを考えることは、かなりハードルが高いだろう。
 そんな環境では、リアルな世界に人生の目標や喜びを見出すのは難しいのではないか。リアルな世界は、物理的な生活を支えるために働くだけ。仕事にロマンや生き甲斐を見出すことはない。勿論、ファッションなんて、コモディティ以外の意味はないのだ。
 仕事に生き甲斐を見出せなければ、趣味の世界に生き甲斐を見出すことになるだろう。彼らの趣味は余暇ではない。趣味の時間が本物の時間なのだ。むしろ、仕事をしている時間が余暇時間とも言える。
 生き甲斐を見出すのならば、他人と同じような趣味では満足できない。他人と同じ仕事をして、他人と同じような服を着て、同じような部屋に住んでいるのだ。趣味の世界にこそ、自分のアイデンティティを構築したいと思うだろう。
 更に、リアルな世界は生活を支えるだけであり、インターネットのSNSやゲームといったオンラインの世界に生き甲斐や楽しみを見出す人も増えているに違いない。
 本当の自分が所属しているのはオンラインの世界であり、リアルな世界の自分は偽りの自分として生活している。オンラインにアイデンティティを感じるならば、ファッションではなく、SNSの「いいね!」が人生を変えるかもしれない。
 
4.人生を変えるフォトジェニック

 現在、ファッション以上に人生を変えるものは、投稿する写真ではないか。人々は、毎日の食事の写真をアップし、外出先の風景をアップする。自分の子供やペット、自分のきもの姿等をネットにアップしている。
 ここで重要なのは、あくまで静止画や動画である。リアルなモノやコトではなく、スマホの画面で見る画像が中心になる。
 ファッションを選ぶのもスマホの画面だし、それを着用した写真をSNSに上げると、友人たちはスマホの画面でそれを見る。買い物、コミュニケーション確認し、コメントを残す。生活の全てがスマホの画面で行われている人も少なくないだろう。極論すれば、ファッションは画像データでも良いのかもしれない。「こんな服で外出してます」という画像が合成であっても誰も気がつかないだろう。
 目を大きく写すプリクラのように、コミュニケーションはリアルである必要はない。食べ物も服も、旅先の風景も持ち物も全てはフォトジェニックであることを求められている。ショップやレストランの空間もフォトジェニックであることを求められている。自分の部屋がフォトジェニックであれば、人生は変わるかもしれない。
 これからのファッションとは、フォトジェニックであることが主流になるのではないか。そうなると、通常の服も舞台衣装も変わらなくなる。ファストファッションは素早くトレンドを取り入れ、リーズナブルな価格の商品を提供する業態だ。しかし、今後はトレンドではなく、多重人格を演じ分けるためのフォトジェニックなファッションが主流になるのかもしれない。

*有料メルマガj-fashion journal(234)を紹介しています。本論文は、2016.5.16に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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