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January 04, 2017

ファッション起業講座 j-fashion journal(232)

1.現場対応能力を評価する

 中国アパレルのコンサルティングで、違和感を感じることがある。私は、「切羽詰まっているのだから、早く結果を出さなければならない」と思っている。しかし、彼らはそうは考えていない。こちらが良い企画を提案しても、それを全面的に取り入れようとはしない。その企画手法を既存のスタッフに学習させたいのだ。
 先方の経営者は、「あなたは先生で、私たちは生徒です。正しい企画手法を私たちに教えてほしい。私たちも一生懸命努力しますから、半年でできるようにしてください」と言う。周到な準備のもと、作成したドキュメントをプレゼンしても、「結果だけ出されたのでは、やり方が分からない」と言うのだ。
 日本人的に考えれば、周到な準備をした仕事には敬意を払い、全面的に受け入れることが多い。その場で仕事をして見せても、その仕事を評価することはできないし、「やっつけ仕事」だと思われることが多い。しかし中国では、現場での問題解決が高く評価される。
 

2.不況の時こそ勉強したい

 先日、中国のファッション専門学校に勤める友人に会った。彼は、不況の現在こそ、教育ビジネスのチャンスだと言う。
 「今の中国は不景気なので、みんな勉強したいと思っている。景気の良い時は、金儲けに集中すれば良かったから、誰も勉強しようとは思わなかった」
 経営を建て直すことが急務の会社で、社員教育を優先することが正しいかは分からない。しかし、困ったときにジタバタしないで、「こういう時こそ勉強し、次の時代に備えよう」という考え方は間違いとは言えないだろう。
 一方、日本の企業はどうだろう。業績が悪化して最初に考えるのは経費削減であり、事業縮小である。そんなときに、外部のコンサルタントに期待するのは教育ではなく実行のみ。多くの場合、自力更生を諦め、外部に全面的に依存してしまう。
 現在、中国経済は不況である。しかし、その中で勉強して力を蓄えることができれば、次の局面では再び浮上するかもしれない。
 
3.中国アパレルのビジネスモデルの転換

 中国のアパレル業界は転換点にある。最初に成長したのは、大量生産型単品アパレルだった。モノ不足時代であり、作れば売れる時代。アパレルはひたすら設備投資をして、販売は代理商に任せる。その分業体制が上手く回ることで急激な成長を遂げた。多くは、OEM生産とオリジナルブランド展開を両立させる形で、生産数量を確保し、工場の稼働率を稼いでいた。
 やがて、海外資本が上陸し、トータルアイテム展開のブランドショップが登場した。ここで重要になったのは、プロモーションである。イメージキャラクターモデルを多用し、一気にブランドのイメージを上げ、代理商を獲得することが成長モデルとなった。
 やがて、需給バランスが逆転し、モノ余り時代が到来した。
 大量生産型単品アパレルは、高いブランドイメージを保つことが困難になり、顧客は離れた。
 ブランドショップも同質化が進み、より明確な差別化が求められるようになった。海外市場で入手したサンプルをコピー生産するだけでは、他ブランドと差別化することができなくなったのだ。
 ここで重要になるのが、明確なブランドコンセプトである。ここに至って、クリエイティブディレクターが必要になるのだが、残念ながら人材が育っていない。
 ヨーロッパのデザイナーと契約する事例も少なくないが、中国市場の特性を理解せず、企画を押しつけることも多く、あまり成功していない。

4.インターネット流通への転換

 同時に、小売流通からインターネット流通へと流通経路が変化した。
 小売流通では店頭のビジュアル訴求が重要である。商品MDとVMDの連携が必要だったが、その対応が十分にできないままに、インターネット流通が始まってしまった。
 インターネット流通では、視覚よりもスペックやキーワードが重要になる。ネットショップに顧客を集めるには、SNS等によるコミュニケーションと、そこからの検索で引っかからなければならない。
 商品だけでなく、着用シーンやライフスタイル訴求が重要になる。しかし、店頭展開のように視覚的訴求だけでは不十分であり、ブランドストーリーやコンテンツが重要になる。
 需給バランスが、供給不足に振れている時には、メーカーが有利だが、供給過剰になると小売店が有利になる。
 しかし、需給バランスが変化する途中で、インターネットの波が押し寄せた。小売店が有利になるはずだったのが、小売店が儲からなくなってしまった。
 そして、新たな製造業モデルが求められる時代になったのである。

5.先進国型メーカーの起業

 インターネット流通が発展するにつれ、メーカーのポジションが変化している。メーカー、卸、小売業が分業していた時代は、メーカーは製造技術に集中していれば良かった。企画は卸商や小売店から注文が出される。その指示通りに、「いかに生産するか」が問われたのだ。
 現在は、メーカーがインターネットを通じて、直接消費者に販売する時代である。メーカーは、「いかに作るか」以上に、「何を作るべきか」が問われる。
 特に、先進国のメーカーは、人件費の低い新興国のメーカーと役割が異なる。言われた通りに作ること、注文通りの商品を作ることは、新興国メーカーで十分だ。人件費の高い先進国のメーカーに対しては、それ以上の機能が要求される。つまり、メーカー側から提案することが求められるのだ。
 メーカーは、消費者ニーズやウォンツを把握し、独自の商品を企画しなければならない。理想はオンリーワンだ。他社の企画を追随しているようでは、先進国のメーカーとは言えない。
 コスト追求の新興国メーカーは、基本的に大量生産である。大量生産では、工場稼働率とコスト削減が求められる。最新の機械も必要になるし、巨額の設備投資をしなければならない。
 先進国でメーカーとして起業するのであれば、大量生産の設備より、旧式でも多種多様な品種が少量で生産できる設備の方が適している。産業革命以後の機械は、効率が追求された。特殊な技術を持たない未経験者でも、スウィッチ一つで均一な製品ができることが求められたのだ。
 その進化は、必ずしも品質を追求したものではない。効率追求と品質追求とは全く方向性が異なる。品質の良い製品を作るには、高い技術を持った職人がコントロールできる速度の遅い機械が適している。つまり、旧式の機械ということだ。速度が遅いということは、効率追求とは正反対である。しかし、低速で生産することは、品質を高めることにつながる。
 高い技術を持つ職人にとって、最も精度が高く、汎用的な生産方法は精度の高い道具を使った手作業である。機械でモノを作ることではないのだ。
 これからメーカーとして起業するのであれば、二つの方向が考えられる。
 新興国で大量生産を行うのか、先進国で手工業的なモノ作りを行うかである。
 但し、先進国型と言っても、手工業だけで完結したのでは、ビジネスが広がらない。手工業で完成させたサンプルを、ブランドライセンスや技術ライセンスにより、大量生産し、利益を上げる方法も同時に必要になる。
 それにより、新興国の大量生産の設備をいかに活用するかが重要なのだ。
 新興国で大量生産設備の工場を建設するには、多額の資金が必要だ。それを起業家が用意することは難しい。資本は資本家に出してもらう。
 しかし、その工場をいかに活用し、ビジネスするかが起業家として考えなければならない。
 
6.セレクトと編集による起業

 メーカーで起業するなら、オンリーワンの商品を生産することを目指すべきだ。しかし、成熟した商品においては、差別化できるオンリーワンの商品を生産することは容易ではない。
 その場合は、単独の商品の差別化ではなく、商品群としての差別化を考えるべきだ。たとえば、ヴィレッジヴァンガードは、書籍と雑貨をミックスし、ユニークな商品を品揃えすることで、独自の業態を展開した。
 ポイントは編集力だ。何と何を組み合わせれば、顧客はその店を新鮮と感じるのか。そして、顧客は店舗まで足を運んでくれるのだろうか。
 最近、アパレルのショップの淘汰が始まっている。アパレルのショップは、採算が取れなくなっている。これまでは、店舗を増やすことが成長を意味したのだが、現在は、店舗を増やすことは、経費を増やし、赤字を増やすことにつながっている。
 そこで、大手アパレル各社は、事業部やブランドの整理を行い、ショップをスクラップしている。一方で、アパレルショップの代わりに増えているのが、雑貨主体のショップであり、飲食を組み合わせたカフェである。
 しかし、百貨店等では、既にカフェも飽和状態に近づいている。カフェを運営するには、水回りの設備を設置しなければならないからだ。
 顧客が高齢化していることから、カフェからバーに転換するところも出てきている。ヨーロッパのように、昼間でもワインヤシャンパンを飲んでもらおうということだ。
 更には、これまで健康や香りという新しいジャンルで飲食と物販、サービスを組み合わせた業態を開発しようという動きも見られる。
 いずれにせよ、ポイントはどんな商品、サービス、環境を編集すれば、顧客が集まり、そこに利益が発生するかである。
 メーカーは、商品を軸にビジネスを考えるが、小売業はスペースを軸にビジネスを考えなければならない。
  
7.コミュニケーションを軸としたビジネス

 卸商という分類は、商品を軸にしたものだ。現在は、商品だけでなく、情報、コンテンツ、サービス、体験、コミュニケーション等を編集しなければならない。そして、魅力的なコンテンツを集め、独自のコミュニティを組織化する。それを軸にビジネスを組み立てるということだ。
 コミュニティは、多種多様である。学校もコミュニティだし、趣味のサークルもコミュニティだ。地域の消防団、青年団、婦人会もコミュニティである。勿論、会社も重要なコミュニティである。
 例えば、学校のコミュニティを軸に新しいビジネスを創造できないだろうか。
 スクールアイデンティティのブランディングや商品開発はどうだろう。近畿大学では、マグロ養殖が事業化され、それが近畿大学の入学性の増加にも貢献している。
 既に、大学に蓄積されている研究成果や特許を民間企業とコラボすることで有効活用し、新たなビジネスチャンスを探ろうという動きも見られる。
 これらのビジネスは勿論、大学が主体となるが、その業務委託を引き受けるという会社も必要なのではないか。
 会社コミュニティのビジネス化は考えられないだろうか。会社は、事業を目的とした組織である。しかし、組織そのものを事業化しようという発想は少ない。社員も生活者であり、消費者だ。社員に利益の一部を還元するのは福利厚生だが、もう一歩進めて、社員がお金を出しても経験したいサービスを提供できないだろうか。
 社会活動を軸に考えると、政治コミュニティも面白い存在である。アメリカ大統領選挙でトランプ氏のような型破りの大統領候補者が出るということは、それほど既存政党に嫌気がさしているということだ。それは日本でも同様だろう。
 考えてみれば、選挙は社会的な大イベントである。選挙で採算が取れれば、政党というコミュニティをビジネスとして考えるのも面白いのかもしれない。
 たとえば、徹底的にネットやSNSを活用した政治活動を行ってみる。それが普通選挙法に触れるのであれば、立候補者は立てなくてもいいのかもしれない。議員にならなくても、政治活動はできるのではないか。逆に言えば、既存の議員とのコラボだけを考える。是々非々で、自分たちの政策に賛成してくれる議員を応援するのだ。
 議員が専業政治家だとすれば、兼業政治家の団体を作る。兼業だから議員にはならない。しかし、兼業だからできることもあるだろう。
 かつて、私たちは学生で学び、社会人になって働き、リタイヤして地域活動を行うというような、暗黙のステップを共有していた。しかし、現在は、生涯学び続け、生涯働き続けなければ、時代の変化に対応できなくなっている。そして、生涯遊び続け、生涯社会貢献をする時代なのかもしれない。
 そうであれば、学校でビジネスを行い、会社で教育を行い、地域コミュニティで学校や会社を設立する時代なのかもしれない。
 更にいえば、個人が学校を作り、個人が会社を作り、個人同士が連携して生活するという時代なのかもしれない。
 新たなコミュニティというコンセプトは、今後数十年かけて、社会に根付いていくのではないか。

*有料メルマガj-fashion journal(232・233)を紹介しています。本論文は、2016.5.2、2016.5.9に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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