阪急電車のシート生地で作ったソファが欲しい! j-fashion journal(221)
1.テキスタイルメーカーは最終製品を手掛けるべきだ!
テキスタイルは中間素材だ。テキスタイルをアパレル製品やインテリア製品に加工して最終製品となる。最終製品にならないと、消費者と直接コミュニケーションを取ることができない。
消費者と接点を持たなければ、消費者の意識に興味を持つこともない。また、生機(きばた)を納品するだけで、染色に触れなければ、トレンドカラーに興味を持つこともない。オリジナル商品の企画をしなければ、市場でどんな商品が売れているか、ということにも興味は湧かない。言われた通りに生産して、納品すればいいのだから。
消費者との接点を持つことは、メーカーが自立する第一歩である。また、ブランディングを考えるスタートとも言える。
しかし、テキスタイルメーカーは、製品を手掛けることをリスクと考える。アパレルの人間から見れば、機屋の設備投資や原材料の仕入れの方が余程リスクである。それぞれの立場によってリスクの概念は異なるし、リスク回避の方法も異なる。
テキスタイルメーカーが考える最終製品の多くは、スカーフやストール、マフラーである。テキスタイルそのものが商品であり、端の始末さえすればいい。新たな設備投資も必要ない。問題は、類似商品が多いということだ。
私は、スカーフやストールを作ることが悪いこととは思わない。逆に、テキスタイルメーカーなら、一度は手掛けてみるべきだ。そのことで初めて、カラーや風合い、サイズのことを考えるだろう。
2.高野口産地で考えたこと
2016年1月末に和歌山県の高野口産地を訪れた。高野口産地はパイル織物やパイル編物の産地である。ボア、シール、フェイクファー等と呼ばれる毛足のあるテキスタイルが特徴だ。
私は、「高野口産地で作るべき最終製品とは何だろうか」と考えた。
例えば、「ぬいぐるみ」はどうだろう。高野口のテキスタイルを使えば、どんなぬいぐるみでも作れそうだ。しかし、ぬいぐるみを縫製するなら中国だ。中国で縫製すると、中国製になってしまう。高野口のテキスタイルを中国に輸出して、ぬいぐるみに加工するくらいなら、中国で生地を現地調達した方が早いだろう。
「フェイクファーのコート」はどうだろうか。あるいは、「フェイクファーのジャケット」でもいいし、「フェイクファーのバッグ」でもいい。あるいは、これらをトータルで展開するブランドを立ち上げるのも良いだろう。
多分、百貨店に話をすれば、イベントを行うことはできるだろう。しかし、百貨店のイベント販売は、ある程度の在庫を確保しなければならないし、おそらく生産ロットにならないに違いない。
どんなアイテムを作るにしても、そのためにテキスタイルを生産することは難しい。テキスタイルは流れているものを活用するしか方法がないだろう。
また、商品リスクを避けるには、生産ロットが少ないことが重要だ。そして、予約販売が可能なものがよい。サンプルを一つだけ作り、予約が取れたら生産する。そうすれば、商品リスクは軽減される。
3.クラウドファンディングを活用する
予約販売という手法を使うには、クラウドファンディングを活用する方法がある。
商品開発そのものをプロジェクト化し、クラウドファンディングでサンプルまでの開発費を調達する。支援の中には、完成した商品を特別価格で販売という設定もできるので、実質的な前払いの予約販売が可能になる。
勿論、イベントが成立しなければ開発費は調達できない。しかし、考えてみれば、イベントが成立しないということは、製品を生産しても売れないということだ。つまり、クラウドファンディングは、テストマーケティングも同時にできるのである。
4.阪急電車のソファーストーリー
ここで、タイトルのソファー構想が登場する。私は、高野口産地で阪急電車のシートになる生地を見た。電車のシートは定期的に交換されるので、定期的に一定量の発注があるのだと思う。そのタイミングを見て、ソファを作ることはできないだろうか。そうすれば、生地のロットの問題は解消する。
阪急電車のシートと同じ生地で出来ているという説明はクールではない。阪急電車のシートそのものであるという、阪急電鉄の認定が欲しい。そして、できれば阪急百貨店でイベント販売を行いたい。
このプロジェクトは阪急グループに提案するべき案件ということになる。阪急グループにとってメリットは、企業イメージアップである。
私は、阪急電車のシートの生地が上質の国産ウール織物であることを知らなかった。強度的にも機能的にも美的にも素晴らしい生地である。
この生地にはストーリーがある。そのストーリーとは、テキスタイル生産のストーリーと阪急電車のストーリーである。二つのストーリーを紹介するだけで、阪急グループのイメージアップになるだろう。
トレンドを追わず、地味でクラシックで懐かしいカラーと上質な素材。しかも、電車のシートは過酷な条件で使われる。家にある椅子とは異なるのだ。子供が土足で汚すこともあるし、ジュースをこぼすこともあるだろう。それでも、何年も使い続けることができる生地なのである。
これをソファにして家に置くことは、そのストーリーを受け入れることに他ならない。勿論、メインターゲットは、鉄道マニアだが、一般の人にも十分に魅力的だと思う。
*有料メルマガj-fashion journal(221)を紹介しています。本論文は、2016.2.8に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。
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