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November 19, 2016

多層構造衣服の可能性 j-fashion journal(222)

1.革靴からスニーカーへ

 かつて、靴と言えば革靴だった。革が高価なので、革の代わりに綿のキャンパス地を使ったのがズック靴だ。
 現在のスニーカーは多層構造である。表生地、、ウレタンフォーム、裏地、インソール、プラスチックやシリコン、ゴム、金属などのパーツで構成されている。
 多層構造にすることにより、スニーカーは様々な機能を付加され、専門的な用途に対応できるようになった。
 一枚の革を曲げたり、伸ばしたりしながら、立体に加工していく技術と、薄くて柔らかいパーツを重ねて作る技術は全く異なる。そもそもモノ作りの発想が正反対なのだ。
 衣服で言えば、テーラードジャケットとドレスの違いに似ている。テーラードジャケットが固い生地を裁断し、イセたり、伸ばしたりして立体に構成するのに対し、ドレスは人体の上に生地を重ねていく。
 但し、ドレスはスニーカーのように機能を付加するために生地を重ねたのではない。あくまで美しい女性のボディを生かすために、薄い布を重ね、布の流れで装飾したに過ぎない。

 現代社会の衣服は、カジュアル化、スポーツ化が進んでいる。機能的で手入れが簡単で、軽く、安価な衣服だ。
 本格的なテーラードジャケットやウール素材はドライクリーニング、アイロン掛け等が必要で手間が掛かる。素材は重く、高価だ。
 経済的合理性を追求するなら、安価なカジュアルウェアを選ぶのが正解だろう。身体的機能を追求するなら、スポーツウェアだ。そして、ファッション的合理性で選ぶならファストファッションである。
 もちろん、これら全ての要素を兼ね備えた衣服も次々と誕生している。ラグジュアリーブランドのコレクションでさえも、「ユーティリティ」は重要なテーマとなっている。

2.ダウンウェアの進化と課題

 防寒用衣服として、重いウールのロングコートしかなかった時代に、軽くて温かいダウンウェアは革新的だった。昔のダウンウェアは、登山、スキー等で使われる高価な衣服だったが、次第に価格も下がりタウンウェアとしても着用されるようになった。
 ダウンウェアを生産する時に、気をつけるべきことは羽毛の吹き出しである。羽毛は細いので粗い生地から飛び出してくるし、ミシンの縫い目からも飛び出してくる。
 ダウンが吹き出さないように開発された生地が、細い綿糸を高密度で織り、表面をつぶしてコーティングして羽毛の吹き出しを防いだ「ダウンプルーフ」だった。
 やがて、コットンのダウンプルーフは、ポリエステルやナイロンの高密度タフタに代わった。これにより、より軽量化が進み、美しいカラーと光沢を持つようになった。
 ダウンが温かいのは、大量の空気を含むからである。空気は優秀な断熱材だ。しかし、大量の空気を含むということは、嵩高になり、シルエットが太くなることでもある。機能性には優れているもののスタイリッシュとは言えない。
 そこで登場したのが、羽毛を薄く入れてインナーにも使えるようにしたユニクロの「ウルトラライトダウン」であり、様々な高機能なハイテク・ワタを入れた中綿衣料だった。
 また、単体の生地でありながら、多くの空気を含むフリースもダウンウェアの強力なライバルである。シャツやパンツのライナーとしてフリースを使うことで防寒の機能を果たしている。
 しかし、これらも全て多層構造の衣服である。その生地がコットンのダウンプルーフ、合繊の高密度タフタ、高密度ニットファブリック、フリース等から選べるようになり、断熱材がダウン、合繊のハイテク・ワタ等から選べるようになったということである。
 これらをいかに組み合わせ、新たな専門的機能を持たせられるかが問われているのではないか。
 
3.専門的機能の分類

 スニーカーは、スポーツの種目や用途によって限りなく細分化している。しかし、ダウンウェアの専門化はまだまだだ。多くは防寒という機能だけで満足しており、着用シーンの快適性にまで至っていない。
 もちろん、ダウンウェアだけでなく、多層構造衣服という視点で考える必要がある。着用シーン及び専門的機能についてどのように分類すればいのだろうか。
 私はまず、防寒だけでなく防暑について考えるべきと思う。そうすれば、その中間を埋めることで全てのシーズン、全ての地域に対応することが可能になる。最終的には、どんな環境でも、衣服内の身体には一定の温度と湿度を保つことが理想だ。
 炎天下の砂漠のような環境下では、紫外線を防がなければならない。汗の発散も必要である。
 砂漠の民がゆったりした衣服を着用しているのは、紫外線と太陽光を防ぎ、身体の周囲に断熱材としての空気を保持し、同時に汗の発散を促しているからである。
 また、ラクダや羊等が長い毛で覆われているのも、紫外線と太陽光を防ぎ、毛の中に空気を蓄えることで断熱効果を発揮しているのだ。毛(ウール)そのものも、水分を吸収し、湿度を一定に保つ効果がある。
 ジャングルのような高温多湿の環境では、衣服は必要ない。但し、汗の発散を促す機能を持つ肌着であれば、裸よりも涼しいと感じるのではないか。
 また、昆虫等による風土病の感染などからガードするという別の機能も必要かもしれない。
 
4.シルエットのコントロール

 身体的機能性だけでなく、審美的機能性というアプローチも必要ではないか。
 たとえば、貧弱な体型が理想的な体型に見える服。筋肉組織に対応したパッド、あるいはキルティングという考え方である。
 あるいは、コスプレのようなアプローチも必要かもしれない。お気に入りのキャラクターのシルエットに見える多層構造衣服である。
 これまでのダウンウェアは、防寒が目的であり、身体全体を同じボリュームで覆っていた。しかし、強調すべき箇所のボリュームをあげ、細く見せたい箇所のボリュームを減らすことでスタイリッシュなダウンウェアはできないだろうか。
 これらは、ダウンや中綿だけでなく、プラスチックや樹脂の成形パーツで表現するというアプローチもあるかもしれない。
 
5.視覚的機能性のアプローチ

 多層構造を考える上で、色柄という要素もまた一つの層であると考えられないだろうか。特に、デジタルプリントは生地の表面に染料や顔料で一つの層を作る。それにより、視覚的、心理的な機能を付加させることができる。
 例えば、多くの動物は周囲の環境に合わせてカモフラージュ(擬態)する。ミリタリーの迷彩柄もカモフラージュの一種だが、その他にも様々なカモフラージュが考えられるだろう。
 ダウンウェアは機能訴求が主であり、無地の製品が多いが、これを丸ごとデジタルプリントし、バッディングによってシルエットもコントロールできる。これらの組み合わせにより、全く別のアイテムになり得るのではないか。
 例えば、世界の有名な観光地の一部の風景を切り取って原寸大でプリントする。実際、そこに行くと風景に溶け込めるのだ。場所は、QRコードから誘導することも可能だ。自分が風景に溶け込んだ写真を撮って公開することをイベントにできれば面白いのだが。

*有料メルマガj-fashion journal(222)を紹介しています。本論文は、2016.2.15に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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