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October 11, 2016

ライセンス生産による中国市場戦略のすすめ j-fashion journal(220)

1.日本企業の製品が大量に横流しされる

 中国で話題になっている事件がある。日本のマスコミでは報道されていないが、中国のネット上で大きな話題になっている。
 日本のM社の商品が大量に横流しされているというものだ。「そんな話は珍しくない」と言う人もいるだろう。小さい工場が目先の利益に目が眩んで、横流しするという事件は日常茶飯事だ。
 しかし、今回の事件は規模が大きい。中国でも有名なOEM工場が仲間と結託して、組織的かつ大量に商品を横流ししたのだ。
 一説には、受注の10倍以上の商品を生産し、転売したという。この問題が複雑なのは、これらの商品が本物と同じであること。原材料の調達も工場も本物と変わらない。織ネーム、下げ札等も本物と同じものを生産して付けているからだ。

 さて、商品を横流しされたM社はどうするのか。勿論、取引停止にしたいはずだ。しかし、そうなると店頭の商品が欠品してしまう。何といっても、大手の取引工場が結託しているのだ。
 それなら、中国で訴訟を起こし、損害賠償を請求すればいいのか。中国で中国企業を訴えても、解決するまでには長い時間が掛かるに違いない。

2.日本の仕事は勉強になる

 私がこのニュースを聞いた時、「遂に出たか」と思った。以前から、同種の事件が起きると予測していたからだ。
 最近、中国では「小ロットでも生産できます」という工場が増えている。しかし、中国の工場の規模は大きく、生産ラインも長い。こういう工場で小ロット生産をするのは、とても大変だ。
 それでも、日本の小ロットの仕事を取るのは勉強になるからだ。そういう工場のごく一部が、企画を盗んでいる。
 100枚の注文でも、1000枚生産して、地方の市場で販売すれば日本人には分からない。日本人が中国出張しても、大都市しか行かないし、市場まで見に行く人は少ない。工賃の厳しい日本に輸出するよりも、中国国内で販売した方がはるかに利益率が高い。
 こういう事情は、現場で働いている商社マンには分かっていたはずだ。しかし、摘発すれば頼める工場がなくなってしまう。ばれなければ、双方にメリットがある。
 小ロット生産には、小ロット生産の体制が必要だ。工場を見れば、分かるはずである。しかし、アパレルの多くは、商社に生産を丸投げしている。商社の担当者も本社の応接室で商談するだけで、現場の工場を見ていないことも多い。不正を行う環境は整っていたのだ。

3.中国企業にライセンス生産権を与える

 私は、「この事件は確信犯ではないか」と疑っている。つまり、工場側はバレルことを承知で横流ししたのではないか。あるいは、ばれても開き直れると考えたのではないか。
 その理由は、前述したように、一度に多くの工場を切れば、店頭に商品が供給できなくなるからだ。そのために、工場は仲間の工場と結託したのだろう。
 かつて、タイでホンダのバイクが大量にコピーされたことがあった。ホンダはコピーしたメーカーを責めるのではなく、ライセンス契約を結び、現地生産パートナーにして、市場シェアを高めた。
 勿論、今回の事件はホンダのケースとは異なる。正式にOEM生産を委託していた工場が契約を破って勝手に増産し、勝手に販売したのだから。それを許すことは日本の常識では考えられない。
 しかし、日本の常識を無視すれば、今回の事件をきっかけに、大手工場と合弁で販売会社を作り、正式にライセンス生産を認めることが有効だと思う。正式なライセンス生産権を得れば、横流しする必要はない。むしろ、他社が偽物を生産するのを防止しようとするだろう。
 販売会社を合弁で作れば、一時期の安売りがブランドイメージを崩し、継続的なビジネスができなくなることは理解できるはずだ。現在は、「単なるOEM工場だから横流しする」という見方もできる。身内にすれば裏切らない。その上で、一気に中国市場のシェアを拡大すれば、双方にメリットが生じる。
 M社は安定したライセンス収入が得られるし、日本のショップへの商品供給も安定する。生産ロットが増えれば、よりコストダウンもできるかもしれない。
 中国市場でのショップ展開は、まだそれほど多くないのだから、新たな中国販売会社に移管してもいいだろう。というより、その方が中国市場では成功できると思う。

4.中国市場は中国企業に任せる

 日本企業は何を担当すればいいのだろうか。ブランド管理、生産管理、品質管理、納期管理等々の全ての管理業務。そして、商品デザイン、ショップデザイン、グラフィックデザイン等のデザイン業務である。
 勿論、日本国内市場については、日本企業が担当した方が上手く機能するだろう。
 しかし、中国における店舗展開、営業戦略、広告宣伝等は中国企業に任せた方が良いのではないか。勿論、合弁にするのなら、何人かのキーマンを派遣する必要はあるだろう。しかし、経営トップを含め、主要なスタッフは現地の人材を現地採用すべきである。
 日本の多くのアパレル企業は中国市場進出で失敗している。その最大の原因は、「現地化ができていない」ことである。
 商業は、その市場を十分に理解しなければ成功しない。中国市場と中国消費者、そして、中国ビジネスの十分な理解が必要だ。そして、信頼できる中国人パートナーが欠かせないのである。
 今回のM社も、ブランディング、デザイン、マネジメントの部分は日本側が担当するが、中国市場の販売戦略、知的所有権保護等については、中国企業に任せるべきだと思う。
 そして、ルールを破った相手を許し、更に、新たなビジネスパートナーとすることで、M社の中国での信用は上がるだろう。M社は、度量が広く、器の大きな企業だという評判を得る大きなチャンスだと思う。危機をチャンスに変える戦略転換が重要ではないだろうか。

*有料メルマガj-fashion journal(220)を紹介しています。本論文は、2016.2.1に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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