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October 11, 2016

メイドインジャパンブームと国内製造業の危機 j-fashion journal(219)

1.日本の製造業の強みとは?

 日本の製造業の強みとは何か。
 第一に上げられるのは、機械である。特に、マザーマシンと呼ばれる機械の作るための機械の技術は素晴らしい。
 繊維関連でも、ニット編機の島精機や工業用ミシンのジューキ等は世界でもトップクラスの技術力を誇っている。
 第二は、素材である。代表的なものとしては、合繊、綿糸が上げられる。そして、合繊メーカーや紡績から派生したフィルム、炭素繊維、ナノテク素材等は世界をリードしている。
 第三は、優れた部品である。他社にはできない工夫と精度の高さ。日本製の部品がなければ、成立しない機械が数多く存在する。
 繊維関連で言えば、YKKのファスナーは世界でも圧倒的なシェアを占めている。

 第四は、優れた加工技術である。代表的なものとしては、精度の高い金属加工や研磨加工が上げられるだろう。
 繊維関連では、小松精錬やセーレン等の染色加工技術は世界のトップクラスである。
 残念ながら、日本の繊維製造業の技術は世界を圧倒するに至っていない。日本国内でなくても、日本の技術を駆使した機械と素材を使えば、日本と変わらない水準の製品を生産することが可能である。
 これは機織、縫製、ニット等にも共通している。中国生産が急増したのも、日本と同等の品質が保証できるようになったからである。
 また、日本のアパレル企業、流通企業も世界で勝負できるレベルではない。国内ではビジネスを主導していても、海外では通用しない企業が圧倒的に多い。
 
2.日本市場の中国製品は日本水準

 日本市場で流通している中国製品は、日本企業が管理しており、日本市場の要求を満たしている。
 日本に来た中国人が驚くのは、中国で売られている中国製品と、日本で売られている中国製品のレベルが全く異なることだ。
 最近、中国人もこのことを認識するようになった。中国人が考えた商品を、日本人に生産管理を依頼し、中国市場で販売するというプロジェクトも始まっている。私は、この流れは今後増えていくと思う。
 これは、メイドインジャパンではなく、メイドバイジャパンである。考えてみれば、当然の流れだ。日本企業は日本市場に合うように、中国生産のコストや品質を管理しており、中国人が日本水準の製品を欲しいのならば、日本人に生産管理、品質管理を委託すればいい。
 日本の商社、企画会社、OEMメーカー等は、日本品質の中国商品を、中国市場で販売するというビジネスモデルが考えられる。
 例えば、中国のデザイナーブランドを日本の商社が生産管理とライセンス管理を担当するというのはどうだろうか。加えて、グラフィックデザインやショップデザインは日本のデザイナーに業務委託を行う。それにより、短期間て優れた商品を展開することができる。
 更に、デザイナー企業を上海や香港で上場させることまで視野に入れれば、より大きなリターンが期待できるだろう。
 いずれにせよ、メイドインジャパンを基本にしたビジネスよりは、メイドバイジャパンのビジネスの方が成長の可能性は大きいと思う。

3.日本の若者が目指す分野

 若者は、常に未来志向である。若者は、自分の将来のために進学し、就職する。将来的な展望を見出せない分野には進まないし、有望と思えば、その分野に飛び込んでいくに違いない。従って、若者の動向を見れば、その国の将来を予測することができる。
 最近の若者は企業を信用していない。企業への忠誠心も低い。その分、自分の時間や家族を大切にする。社会的な分野に関心が高いのも特徴の一つだ。会社に所属するのではなく、社会に所属するという意識が強いようだ。
 かつては、車を買い、異性と出会い、結婚し、家庭を作り、子供を育て、家を建てるという人生コースが共有されていた。従って、この人生コースを実現するための産業は有望だったと言える。
 現在は、自分の時間と自分の趣味を大切にしており、恋愛や結婚には関心がない。ファッションやグルメにも関心は低く、車や家に対しても冷やかである。ネットに接続している時間は長く、ゲームやSNSに熱中している。また、働いて収入を得るだけでなく、投資への関心も高い。
 当然、衣食住という生活必需品や、自動車、住宅に関するビジネスも成長を期待できない。ネット、ゲーム、SNS、ソーシャルな分野は有望と考えられるし、マニアックな分野や趣味に関するビジネスは成長するだろう。
 衣食住にこだわらないのなら、最低限の品質と低価格な商品があればいい。それらの商品はアジア生産が中心になる。ファッションやグルメに関心が薄いのであれば、それらを職業として選ぶ人も減少するだろう。
 そう考えると、現在のメイドインジャパンブームには、世代ギャップがあるように思える。中高年は、職人の存続を経済的問題と考えるが、若者は、社会的、文化的価値として評価している。職人を目指す若者もある意味でソーシャルな仕事と認識しているに違いない。残念ながら、それをビジネスにしようと考えていないし、考えても簡単には成功しないだろう。
 若者が経済的な安定を考えるのならば、投資を勉強し、大企業への就職を目指すと思う。独立志向が強ければ、ゲーム、インターネットを活用した新しいサービス、エンターテイメントを目指すのではないか。
 つまり、そういった分野が有望なのであり、国もそれらの産業を支援するに違いないのだ。

4.余剰投機マネーはどこに向かうのか?

 製造業や流通業のビジネスの中心は商品である。商品を企画、生産、流通、販売する仕事だ。これらの産業におけるマネーは、商品を売買したり、加工するために使われる。物価と連動したリアルなマネーである。
 一方で、為替や株式への投資、運用に使われるマネーも存在する。マネーのためのマネーであり、常に有利な投資先を探している。数字だけが飛び交い、実際の商品やサービスを伴わないバーチャルなマネーだが、こちらの方が圧倒的に量が多い。健全な経営で黒字を目指すよりも、赤字企業であっても多額の投資を受けた方が有利になることは珍しくないのだ。あるいは、実際の商品で儲けることを考えるのではなく、お金の流れの中で一定の手数料を稼ぐといったビジネスモデルの方が有利とも言える。
 少なくとも、こうしたマネー中心の経済下においては、製造業に投資が集中することは考えにくい。もし、製造業に投資が集中するとすれば、人件費の低い新興国であり、その潜在的成長性に投資が集まるということである。
 少なくとも、日本のような先進国においては、製造業に投資が集まることはないし、設備投資が消極的になるのも当然なのだ。
 私は製造業の根源的な危機は、マネー中心に経済にあると考えている。
 メイドインジャパンがブームなのは、ソーシャルな課題としての地域産業の活性化が提唱され、政治的な思惑による補助金や助成金が増えているからである。ある意味で、社会的安定を促すことが目的であり、実際に製造業がV字回復させることを目指しているわけではない。補助金は、あくまでソフトランディングが目的なのだ。しかし、社会安定ということは大きな課題であり、国や社会の必要経費としてのマネーが流れ込むのも確かだ。そこを割り切れば、ここにもビジネスチャンスは存在すると思う。

*有料メルマガj-fashion journal(219)を紹介しています。本論文は、2016.1.25に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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