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June 18, 2016

SPAからRSPAへ j-fashion journal(198)

1.SPAの革新

 SPAとは「speciality store retailer of private label apparel」の頭文字を並べたもの。繊研新聞の記者が米国のGAP社の経営者を取材した時に、「GAPはSPAになった」という発言が紙上に紹介され、そこから日本のアパレル業界に定着した。
 GAP社は、かって全米で最もリーバイスを販売する大手ジーンズ専門店だった。カットソー等は、GAPブランドでオリジナル商品を展開していたが、ジーンズはNB商品に依存していたのだ。しかし、「GAPジーンズ」を開発し、リーバイス等のナショナルブランドとの取引を全て取りやめ、GAPのショップ内は、全てGAPブランドの商品に転換したのである。SPAとは、そのタイミングで使われた言葉だ。
 その後、世界一ウール糸を使う大手ニットメーカーだったベネトン社も「ベネトン」ブランドとショップを展開するようになった。 GAP社が小売店から製造小売り業になったのに対し、ベネトン社はメーカーから製造小売業となった。

 日本では、DCブランドがトータルアイテムによる直営店をするようになり、アパレル卸から製造小売業へと転換した。その後、大手アパレルのブランドの一部が卸主体から直営店モデルに転換し、これらを「SPA=製造小売業」と呼ぶようになった。
 小売店からSPAに、メーカーからSPAに、そして卸から製造小売業にという変革が、時を同じくして世界中で起きたことは興味深い。
 逆に言えば、世界のアパレルビジネスの主流は製造小売業になったということだ。その潮流の中で、既存の業態にこだわり、変革できなかった企業は大量に淘汰された。勿論、現在もメーカー、卸、小売りという業態は存在する。しかし、少なくとも、アパレルビジネスにおいては、非主流になりつつある。
 
2.SPAが有利だった要因

 SPAが成功した要因は二つある。
 第一は、メーカーと小売店が直結することで利益率が高くなること。利益を多く確保することで、広告やプロモーション、店舗演出等にコストを掛け、ブランド価値を高めるための投資が可能になる。
 利益を少なくすれば、安売りが可能になる。価格競争をするなら、流通はなるべくダイレクトにしなければならない。
 第二は、ショップ名とブランド名を共通にすることで、ファッション雑誌等のプロモーションが有効になったこと。
 昔の製造卸のアパレル企業は、「全国有名百貨店、専門店にて取り扱っております」等の解説しかできなかった。ファッション雑誌にブランド単位の広告を出しても、その情報が売場と直結していなければ、売場への誘導が難しかったのである。
 また、日本に限った話だが、「プレスルーム」「プレス担当」を置くことで、ファッション雑誌との連携が可能になった。
 第三の要因は、ショップ単位の出店が可能になったことである。百貨店や専門店の平場に商品を卸すだけでは、駅ビル、ファッションビル、SCモール等に出店することはできない。
 以上の三つの要因は、いずれも以前のアパレル製造卸では対応できなかったことである。

3.SPAの利点が失われた理由

 アパレル製造卸からSPAへと転換し、一定期間は成果を上げてきたが、最近になって再び売上が伸び悩んでいる。その理由について考えてみたい。
 第一の理由は、店舗からネットへという消費者の商品購入手段の変化である。全国の百貨店、ファッションビル、テナントビル、駅ビル、SCモール等に売場面積を確保することで、市場シェアを取り、売上を上げるというのが、SPA業態の基本的なビジネスモデルである。しかし、多くの店舗を持つことは、店頭在庫を持ち、販売員コストを負担するということである。利益を上げる店舗という装置が在庫と経費を積み上げるマイナスの装置になってしまったのだ。
 第二は、商品の陳腐化と同質化である。SPA業態は珍しいものではなくなり、専門店企業も商社を経由して商品を調達するようになった。
 商社傘下の企画会社は、自社でリスクを負うことはない。オリジナルのテキスタイル開発まで提案することはなく、在庫を構えているテキスタイル卸の生地から選ぶことになる。
 あるいは、ヨーロッパのサンプルを購入し、そのテキスタイルを中国のテキスタイルメーカーにコピー生産させる。これは、中国アパレル企業と全く同じ手法だ。
 いずれにしても、SPA型アパレル企業も、セレクトショップも商品が同質化してしまった。素材はあるものから選び、デザインはトレンド情報を元に提案されるからだ。
 第三の理由は、ファッション雑誌の衰退と共に、情報発信のノウハウを失ってしまったこと。
 店舗流通からネット流通へと購買手段が変わり、ビジュアルなイメージ訴求より、検索、アプリ等を経由した情報発信が重要になってきた。ファッション雑誌も変革を余儀なくされ、ブランドイメージ訴求よりも、着回しなどの利便性を訴求するようになった。
 結果的に、お金を出してまでファッション雑誌を購入する必要はなくなり、スマホから入手する情報、SNS経由で入手する情報で済ますようになってしまった。
 今や、SPAであることの優位性はほとんどない。世界中のファストファッションは皆、SPAなのだ。
 
4.RSPAの可能性

 RSPAは、「Rental Service of Private label Apparel」の略であり、私の造語。オリジナル商品のレンタルサービスである。
 私はレンタルサービスに大きな可能性を感じている。
 商品を販売する限り、小売価格が問題になる。製造卸からSPAに業態転換した時には、利益と価格の水準が変わった。
 同時に、ファストファッションへの流れが強まり、その流れが20年以上継続したために、アパレル製品のイメージはコモディティ化してしまった。多少品質やデザインが良かったとしても、高額な商品を買う行為に顧客は恐れを感じてしまう。
 この状況を打破するためには、ビジネスモデルの革新が必要だ。その解決策の一つがレンタルである。
 販売とレンタルでは、商品に求められる条件が異なる。販売するなら、ファストファッションのように適度なトレンド商品を低価格で販売することが有利だ。常に陳腐化を進め、使い捨てのように消費してもらうことが利益の元になるからだ。
 レンタルであれば、一つの商品が何回転するかが問われる。何度もレンタルできれば、料金は低く設定できる。小売価格を抑えるために、生地代や工賃を叩くのではなく、生地代や工賃が高くても回転率が上がれば良い。
 販売よりレンタルの方がサスティナブルなビジネスモデルである。上質ベーシックというシニア市場への対応にも通じるものだ。
 しかし、シニア層は古着に対する抵抗感も強い。このあたりを解決できれば、面白いビジネスモデルになるだろう。
 現在、アパレル製品のレンタルサービスは始まったばかりだが、まだ、オリジナルブランドに限定した事例は少ない。そして販売することを前提にした商品の中で、レンタルを前提にした商品は究極の差別化が可能になるのではないだろうか。
 
5.注文住宅の賃貸のようなサービス

 私は、販売ではなく、レンタルすることで、上質ベーシック商品を提供できるのではないか、と考えている。
 そして、何度も使われて、味が出てきた段階でリフォームをしたいとも思う。現在販売されている安物の服では、リフォームするのに値しないものが多いからだ。
 アイテムは基本的に重衣料が主体になるだろう。軽衣料や単品などの低価格商品は購入しても良いからだ。しかし、ジャケット、コート、ドレス、バッグ、靴、アクセサリー等は着用回数も少ないので、上質な商品をレンタルした方が合理的ではないだろうか。
 私は、家と服は似ていると思う。どちらも人間を保護し、世間に対してステイタスを演出するものだ。家も一戸建ての注文住宅から賃貸マンションまでいろいろとある。
 現在、アパレルの状況は、安い建売住宅ばかりがあふれているように見えるのだ。それなら、高級な賃貸物件があってもいいのではないか。
 賃貸という形態があってこそ、注文住宅にも価値が出てくる。アパレル製品にも、オーダーメイドか賃貸があっても良いと思う。デザイナーマンションの賃貸物件があってもいいだろう。そんなビジネスモデルを考えたいのである。

*有料メルマガj-fashion journal(198)を紹介しています。本論文は、2015.8.31に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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