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June 18, 2016

BUからAU、ファッションビジネスの変化 j-fashion journal(199)

1.BU(Before Uniqlo)とAU(After Uniqlo)

 ユニクロ以前とユニクロ以後ではファッションビジネスの構造が全く変わってしまった。
 多くのアパレル企業は、ユニクロ以前の体制のままである。「ユニクロは凄いけど、自社とは関係ない」「ユニクロと比較しても意味がない」と思っている。
 確かにユニクロのような規模、資本力、商品開発力を持っている企業は少ない。しかし、ユニクロとて、最初から力があったわけではない。その意味でも、ユニクロに学ぶことは多いと思う。
 そこで便宜上、ユニクロ以前とユニクロ以後を比較するために、BU(Before Uniqlo)、それ以後をAU(After Uniqlo)という概念を提案したい。
 Just Uniqloは、ユニクロが原宿店をオープンした1998年としたい。ユニクロがフリースブームを起こし、郊外型店舗から都心型に初めて転換したのが原宿店だった。同時に、既存のファッション専門店、アパレル企業への挑戦状を叩きつけたとも言える。地方都市や郊外型の店舗だけなら、ロードサイド立地の大型専門店というジャンルでくくることができた。しかし、原宿店がオープンしたことから、都心立地の大型店開発が始まり、百貨店内にも出店するようになったのだ。 
 

2.相対価格から絶対価格へ

 AU(After Uniqlo)のファッションビジネスモデルの特徴を整理したい。
 第一に、「相対価格から絶対価格への転換」である。
 そもそも、フリースのジャケットを1900円に設定したことに驚かされた。当時のアパレルの常識から言えば、ジャケットはインナーアイテムより高く、秋冬は、春夏より高いのが普通だった。なぜなら、一般的に生地の単価も秋冬ものの方が高いし、用尺も多いからだ。
 「フリースのジャケットを1900円で販売したら、ポロシャツはどうするんだ?Tシャツはどうするんだ?」と思ったものだ。しかし、ユニクロはその常識を破壊した。トップスもボトムも、アウターもインナーも価格は変わらない。商品原価は違っているはずなのに、小売価格は同一なのだ。
 例えば、ニットも無地とインターシャの製品が同じ価格に設定されているのには驚かされた。インターシャ装置付きの編機は高いし、編むのに時間も掛かる。だから、インターシャの製品は高く設定するのが一般的だ。
 カットソーでも、無地とボーダーが同一価格であり、ボーダーもタテ替え(細いボーダー)と切り換え(ラガーシャツのような太いボーダー)も同一価格。これもBU(Before Uniqlo)の常識にはない。
 つまり、ユニクロは商品原価に基づいた価格設定をしていない。あくまで市場価格を中心に設定している。価格を相対的に設定するのではなく、絶対的な価格を提示しているのだ。

3.付加価値と価格は関係ない

 相対価格から絶対価格に転換したことは、更にBU(Before Uniqlo)の常識を破壊した。
 それは、「付加価値と価格は関係ない」ということだ。
 BU(Before Uniqlo)の常識では、ベーシックな商品に装飾や後加工を加えることで、価格を上げることができた。それを付加価値と称していた。
 例えば、Tシャツのプリントが前だけの商品よりも、前後にプリントされた方が高い。あるいは、プリントと刺繍が組み合わされると更に高い価格が設定できる。
 しかし、ユニクロの商品にこうした細かい価格設定は存在しない。手間をかけた製品もそうでない製品も、同じアイテムなら価格は同じなのだ。
 これが浸透すれば、顧客は付加価値を感じないということになる。最早、一般のアパレル製品に付加価値は存在しない。ラグジュアリーブランド、デザイナーズブランドのようなブランド価値があれば、付加価値と呼べるのかもしれない。しかし、素材の差別化、加工の差別化等については、次第に意味をなさなくなっているのだ。
 
4.新・単品平場のMD

 GAP、H&M、ZARA等とユニクロとはと大きな違いがある。それは、欧米の専門店が基本的にコーディネートを主体とした売場構成になっているのに対し、ユニクロはアイテム別の構成になっていることだ。
 コーディネート別売場は、ターゲット設定が必要である。若い顧客を対象にするのか、シニア層を対象にするのか。
 あるいは、着用シーン、商品テイストの統一も必要だ。アウトドアなのかインドアなのか。カジュアルなテイストなのか、エレガントなテイストなのか。コーディネートは、一つのイメージの元に構成され、コーディネート別売場は、そのイメージの元に商品がデザインされる。
 しかし、ユニクロはアイテム毎に売場が分類され、必ずしもターゲットを絞り込んでいない。商品企画もアイテム毎に行われているため、全体の統一感が取れていないし、ウインドーのVPは常にまとまりがない。
 反面、若い中高生からシニア層まで幅広い客層を取り込んでいる。その結果、アイテム毎に見ると日本一の販売量を誇っているものが多いのだ。
 例えば、ユニクロの「ルームシューズ・スリッパ」の販売量は日本一である。大手量販店よりも販売量が大きい。
 その他のTシャツ、肌着、チノパンツ、ポロシャツ、パーカー、スウェット、フリース、ニット、ソックス等も、正確な数字は把握していないが、日本一だと思う。
 現在、百貨店、量販店でも、アイテム別平場の面積は縮小している。ほとんどがブランド別編集になっているのだ。その結果、実用衣料としてのアイテムを目指す顧客が行く売場がなくなった。
 そのため、季節が変わって肌着が欲しくなれば、ユニクロに行く。スリッパが痛めばユニクロ、ソックスが擦り切れればユニクロ。寒くなって防寒衣料が必要になれば、ユニクロのダウンやフリースを見に行くのである。
 ユニクロは、売場内をアイテム別に構成することにより、実用衣料の平場を再現して見せたのである。

5.素材開発と計画生産

 ファストファッションとユニクロが一線を画しているのは、「素材開発と計画生産」である。日本国内の一般のアパレル企業は、市場の売れ筋を追いかけ、短サイクル生産で商品を供給する。そのため、素材開発するリードタイムを確保することができず、在庫されているテキスタイルから選ぶのが一般的である。
 ユニクロは、素材開発から行っているため、基本商品については計画生産をせざるを得ない。また,日本全国の店舗でほぼ同時に商品を展開するために、検品やデリバリーにも非常に時間が掛かる。綿密な商品計画が必要なのだ。
 素材開発から行えるということは、競合店との差別化が可能になるということだ。
 計画生産は、店頭の動向を見てから動くのでは間に合わない。しかし、世界市場のトレンドは常に観察している。新しいトレンドにも積極的に対応している。
 例えば、2015年の秋冬シーズンで注目すべきは「ジョガーパンツ」である。このアイテムは、グーグルのファッショントレンドレポートでも取り上げられたアイテムである。グーグルは、検索ワードを地域別、時間別に分析し、トレンドレポートを発表している。
 例えば、ファッショントレンドが発表されれば、そのキーワードが検索される。また、ネットショップで話題になれば、同様に検索される。検索から分析されるトレンドは、消費者の興味を反映しており、コレクショントレンド等よりも市場の実態に近いのではないか、と思う。
 
6.オムニチャンネル戦略への対応

 ユニクロは、店頭販売だけでなく、ネット販売にも力を入れている。
 例えば、中国ネット販売最大手の「淘宝網」で最も売上の良い海外ブランドはユニクロである。中国のネット販売の特徴でもあるチャット対応も完璧だ。専属のスタッフを24時間体制でチャットに対応している。
 また、アクセンチュアとIT提携を強めることで、ビッグデータの分析し、更なるネットビジネスの成長を目指している。
 また、オフラインの流通戦略についても、セブン&アイと業務提携し、通販ブランドを設立する予定だ。これにより、セブンイレブンの店舗網を通じて販売だけでなく、ネット取引の商品受け取り、返品等を可能にする狙いだ。
 ユニクロの企業戦略については、その他のアパレル企業、流通企業よりはるかに進んでいる。
 それでも、日本国内市場だけを見れば、そろそろ成長の限界に近づいているのも確かだ。今後は、グローバル戦略を強め、国内は、ユニクロとGUの棲み分けを目指すことになるだろう。
 いずれにしても、まだまだユニクロからは目が離せない。世界市場で勝負できる数少ない日本企業なのだから。

*有料メルマガj-fashion journal(199)を紹介しています。本論文は、2015.9.7に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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