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May 20, 2016

Japan Qualityの次に考えること j-fashion journal(194)

1.クリエイティブディレクター不在の日本

 私の学生時代の友人は、38年間パリで生活をしている。最初は、アシスタントデザイナー。次に独立して自分の名前のブランドを立ち上げ、デザイナーとして活躍した。日本ではそう紹介されるが、実際は異なる。
 彼は、デザイナーではなく、クリエイティブディレクターだ。クリエイティブディレクターは、商品のデザインを行うだけではない。ブランド価値を左右する全ての要素の方向性を定めるのが仕事だ。
 例えば、ブランドを立ち上げ後、どんな相手と取引すべきか。これは、ブランドイメージを左右する重要な要素である。従って、どんな店と取引すべきかについても、クリエイティブディレクターは意見を言わなければならない。
 クリエイティブディレクターは、最高の営業マンでもある。どんな流通企業と組むのか。戦略的な取り組みであるほど、クリエイティブディレクターがプレゼンする。従って、最も重要な顧客を担当するのは、営業マンではなく、クリエイティブディレクターなのだ。
 勿論、展示会の会場デザインやディスプレイ、広告デザイン、ブランドに関するグラフィックデザイン等々についても、クリエイティブディレクターが担当する。

 クリエイティブディレクターという仕事を日本企業の職種で表現すると、企画部長兼営業部長兼販売促進部長のようなイメージだろうか。それらの権限だけでなく、実際のワークをするデザイナー兼ディレクターでもあるということだ。
 こうした職種が誕生したのは、現在のビジネスが複雑であり、専門家でなければ分析やプレゼンができないこと。そして、トータルなブランドイメージをコントロールする責任者が必要だということである。
 私の友人は、現在日本企業と契約しているが、「クリエイティブディレクターという職種を理解してくれない」と嘆いていた。バイヤーとの商談に呼んでくれないというのだ。そして「あなたはデザイナーだから、商談はこちらでやります」と言われるらしい。「僕は、デザイナーではなく、クリエイティブディレクターだ」と言っても、その職種と責任範囲を理解することができない。
 
2.高品質の意義とは?

 友人はこうも言った。「どの日本企業も、ヨーロッパに来て、必ずクオリティをアピールする。日本の商品の品質が高いのは分かっているが、品質だけで高く売れるわけではない。品質だけアピールしても通用しない」
 日本市場は品質に厳しい。それも最終消費者よりも、中間流通業者の品質管理が厳しい。ほんの少しのタッチの違いや色の違いにも気がつくし、クレームの対象になる。従って、バラツキのない品質を高く評価し、価格が高くても納得する。
 しかし、価格が高い商品の品質が高いのは当たり前だ。問題は品質と価格のバランスである。
 流通業者にとって、「品質が高い」ことのメリットは、消費者クレームが少なく、信用失墜のリスクが軽減されることだ。
 しかし、消費者にとっては、検品で何割の商品が不良が出ても関係ない。自分が購入した商品が良ければいいのだ。極論すれば、生地にキズがあっても、それを避けて裁断してくれれば何の問題もない。
 Japan Qualityを標榜するのなら、「品質が高い」とは、消費者にとって、どんなメリットがあるのか。どんな魅力を訴求するのか、を明確にしなければならないだろう。

3.テキスタイルの品質とは?

 イタリアのテキスタイルと日本のテキスタイルの違いは何か。日本のテキスタイル(ウール、コットン等の短繊維織物)は、糸番手がJISにより規格化されている。また、糸番手と原料の関係もほぼ固定されている。すなわち、細い糸は高額で高級な原料(繊維が長く細い繊維)を使い、太い糸には安い原料(繊維が短く太い繊維)を使う。従って、糸番手を言えば、大体の糸値が分かる。
 イタリアは、職人の手加減で糸の太さを決めている。日本で言えば、イタリアの糸は破番手であり、規格に基づいていない。また、糸番手と原料の関係も日本のように固定的ではない。太い糸にも、高級原料を使うこともある。
 日本のテキスタイルの品質は均一なことを重視している。これは綿紡績の混綿技術にも共通している。
 イタリアのテキスタイルは均一性や安定性よりも、官能性を求める。イタリアのテキスタイルやアパレル製品は、日本の品質管理に合格しないものが多い。
 日本を代表するテキスタイルは、ハイテク合繊織物である。こちらは官能性よりも機能性に優れている。合繊に関する品質とは、均一性に加えて高い機能性を意味することが多い。こちらは、スペックとして表示できるので、分かりやすい。しかし、日本ほどではないが、類似した機能を持つ合繊織物は、中国、韓国、台湾等でも生産されている。

4.アパレル製品の品質とは?

 アパレル製品の品質とは何だろうか。日本の量販店では、品質管理室の基準を通ることが品質と考えられている。
 すなわち、染色堅牢度(湿摩擦、乾摩擦、汗堅牢、耐光堅牢度)、洗濯試験、縫い目の滑脱、針目の細かさ等々である。
 ここには、着心地、デザイン、風合い等の基準は存在しない。
 例えば、強度や染色堅牢度だけの基準なら、ポリエステル織物の薄地をジャケットやコートに使っても問題はないのだ。デザインと素材の関係性、シルエットという項目はないのだから。アパレル製品の品質は、計数だけでは判断できない。美しさ、着心地といった官能的な要素がより重要である。
 こう考えていくと、「日本勢である」ことだけで価値を認めることはできないことが分かるだろう。
 また、工場の自己申告の品質が必ずしも、顧客の価値とシンクロしているとも限らない。
 例えば、縫製工場は針目が細かい方が品質が高いと考えるが、イタリアのブランドでは、柔らかいシルエットを出すために、強度を犠牲にして粗い針目を選ぶこともある。
 パターンや縫製仕様書に忠実に縫製することが高品質であると考える縫製工場もあるだろうが、パターンが悪かったり、素材と縫製仕様があっていなければ、製品の完成度は低いと評価される。
 アパレル製品は、パソコンやスマホとは違う。品質の基準すら、常に変化するのである。購入する消費者も、合理的なスペックだけで商品を比較購買するのではない。好きなタレントが着ている服が欲しくなることもある。購買動機は感情に左右されるのだ。
 
5.日本品質のコンセプトとは何か?

 ファッションとはアートやエンターテインメントに近い要素を持つ。ここでは商品原価など関係ない。専門性が高い分野ならば、専門の評論家や評価システムが必要になる。
 一方で、市場の中心は、実用品に近いコモディティとしてのアパレル製品である。こちらは、スペックと商品原価が重要である。そして、売上金額が価値基準となる。
 日本のメーカーが品質を語る時、多くの場合、後者の品質を語っている。均一であることは、バラツキがないことは、大量生産に適している。しかし、こちらの基準では、価格がより大きな意味を持つ。それほど品質が高くなくても、低価格ならば選ばれる。
 もし、前者を志向するのであれば、品質の中に官能的な要素を盛り込まなければならない。品質は目的ではない。どんな感情を引き起こすための品質かを設定しなければならない。
 例えば、贅沢なラグジュアリーに期待される品質とは何か。
 あるいは、強い環境意識を持つ人にアピールする品質とは何か。
 日本の伝統を愛する人の品質とは何か。
 ポップカルチャーが好きな人にアピールする品質とは何か。
 これらの品質が同一であるわけはないし、固定的な基準であるわけがない。
 さて、Japan Qualityとは、どんな品質なのだろうか。あるいは、あなたが目指す品質とは何だろうか。
 この問題を解決しない限り、海外で日本品質が評価されることはないだろう。

*有料メルマガj-fashion journal(194)を紹介しています。本論文は、2015.8.3に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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