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May 01, 2016

売るから着せるへ j-fashion journal(191)

1.ファッションは無駄だろうか?

 人は一生のうちに、何着の服を着るのだろうか。「フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ“暮らしの質"を高める秘訣~」という本が人気を集めているが、そのフランス人は最初から10着に絞り込めたのだろうか。私は、若い時にはいろいろな服を着て、その遍歴を元に、自分のワードローブが設計できるになったのだと思う。
 「日本人のサラリーマンは10着の服も持っていない」という本を書いたところで人気を集めることはないだろう。ビジネススーツしか知らない男性が定年を迎え、「何を着ていいのか分からない」と悩んでいる人は少なくない。彼らは、次の10着を選ぶことができないのだ。
 ファッションは、ある意味で無駄である。実用衣料だけでいいという人もいる。しかし、そうなると音楽を聞くのも無駄であり、ゲームをするのも無駄である。グルメも無駄だし、旅行も無駄だ。
 結局、何が無駄で、何に価値があるか、という基準は個人で決定するものだ。何に興味を持つのか。人生の中でどんな楽しみを見出すのか。

 ファッションに人生の楽しみを見出す人もいるだろうし、グルメに人生の楽しみを見出す人もいるだろう。これは、あらゆる趣味に共通している。
 ファッションの楽しみとは、自らのアイデンティティと直結していることではないか。自分がどんな人間に見えるかは、ファッションに大きく左右される。自分をどんな人間に見せたいかで、ファッションも変化する。
 そして、ファッションは他人とのコミュニケーションツールとしても重要な意味を持っている。
 定年になり、ビジネススーツを脱いだ男性は、地域社会の中でアイデンティティを見出さなければならない。それは、「どんな服を選ぶのか」でかなりの部分が決定されるのではないか。
 こうしたファッションの役割を、ファストファッションに求めるのは無理がある。ある程度の年齢で、トレンドや売れ筋を追いかけるファッションを身につけることは、「私は軽佻浮薄な人間です」という意志表明としか映らないのではないか。 
 
2.「着育」の発想

 「食育」という言葉がある。食育(英語: Food education)とは、「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得すること。
 より良い食べ物を選び食べることは、固有の歴史や文化を学ぶことであり、同時に健康につながる生活習慣の習得という意味もある。
 同様に、「着育」も考えられるだろう。着育とは「服に関する知識と服を選択する力を習得し、健全な衣生活を実践し、自らのアイデンティティを高め、他者とのコミュニケーション能力を育成すること」等と定義できるのではないか。
 これまでの服装教育、被服教育は、あくまで服の作り方を教えるものだった。どんな服を着るのか、を教えるという発想はなく、それは個人の好みに任されていた。しかし、服は自己表現の手段ばかりではない。第三者に見せつけるものでもある。その意味では、社会を構成する要素でもあり、景観を構成する視覚的要素でもある。
 「どんな服を着ていいのか分からない」という人は、「どんな生き方をしていいのか分からない」ことにつながっているのではないか。
 「どんな人になりたいか」という具体的イメージを持ち、それに近づけていくことは、自己形成に有効なプログラムだと思う。
 生活者がファッションに対する深い認識を持つことで、ファッションは進化していくのである。

3.所有から共有へ

 現在のファッションは、ファストファッションが主流である。価格は安く、視覚的にカッコイイ。しかし、素材や仕立てに期待はできない。
 素材や仕立てが良い服は価格が高い。ファストファッションより少し高いのではなく、かなり高い価格になってしまう。これでは、普通の人は着られない。
 まともな服はなぜ高いのか。それは、売れるか売れないか分からないからだ。セールで処分することを前提に価格設定をしているので高くなる。
 もう一つの理由は、商品原価率が低すぎるからである。商品原価とは生地代、付属代、縫製工賃等、服を作るためのコストである。縫製工賃の中には、縫製工場の利益が含まれているし、生地代には生地メーカーの利益が含まれている。勿論、ボタンやファスナー等の付属の原価には付属メーカー、付属卸の利益が含まれている。
 通常はそこにアパレル卸の利益が乗せられ、約二倍の価格で卸売し、小売店が更に二倍の価格で販売する。(実際には、もっと商品原価率は低いが、分かりやすく、商品原価の4倍で販売するという設定にした)
 私は、「ファッションの楽しさや意義を知るには、質の高い洋服を着る体験」が必要だと思う。安くて質の低い服ばかりを着ていたのでは、品質の違いを理解することができない。大げさかもしれないが、日本の消費者が質の違いを認識できなくなれば、日本の繊維、ファッション産業にとっても、大きなマイナスになる。
 勿論、業界のためではなく、個人にとっても、質の高い素材を触れ、仕立ての良い服を着用することは、生活の質を向上させるだろう。
 
4.着放題のサービス

 音楽や動画には、定額料金を支払うと、聞き放題、見放題というサービスがある。音楽配定額信では、「KKBOX(ケイケイボックス)」「レコチョク Best」「AWA(アワ)」「LINE MUSIC」「Apple Music」等がある。
 動画定額配信としては、「dTV(旧:dビデオ)」「hulu」「楽天SHOWTIME」「U-NEXT」「ビデオマーケット」「観劇三昧」「ドラMAXアリーナ」「ビデオパス」「UULA」「バンダイチャンネル」「dアニメストア」「アニメパス」「アニメ放題」「GEO動画」「NHKオンデマンド」「東映アニメオンデマンド」等がある。
 そこで、「洋服を定額で着放題なサービスができるのないか」と思ったが、既に存在していた。
 「airCloset(エアークローゼット)」は、月額6800円で、プロのスタイリストが選んだ服が3着自宅に届く。好きなだけ着て、着終わったら返却するだけ。交換もOKだ。クリーニング料、送料共に無料。
 「SUSTINA(サスティナ)」は、月額5800円で、5点の服、アクセサリーが届く。返却すると、新たに5点のレンタルが可能。
 現在は、女性向けだけだが、本当にこの種のサービスを欲しているのは、シニアの男性ではないだろうか。
 例えば、事前に好みやサイズを登録しておいて、バリッと決めたい時のジャケット、パンツ、シャツの組み合わせを選んでもらう。購入してもいいし返却してもいい。
 あるいは、着物を着たいと思った時に、履物から小物までコーディネートして届けてくれる。
 あるいは、蕎麦打ちをしたい時に、本格的な藍染めの作務衣を取り寄せられる。
 シニアの場合、段ボールに入った商品が自宅に届くよりは、カフェのような店に届き、プロのスタイリストにコーディネートしてもらって納得してから、レンタルする。あるいは、購入するという形態が良いのではないか。
 この種のサービスで重要なのは、自分で選ぶのではなく、「専門家が選んでくれる」ところだろう。自分では選ばなかった商品でも、プロが選んでくれたのならば、試着してみようという気になるはずだ。それにより、スタイリングの幅が広がっていく。その体験こそが、重要だと思う。

*有料メルマガj-fashion journal(191)を紹介しています。本論文は、2015.7.13に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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