ファッションビジネスの変革 j-fashion journal(196)
1.絶対王者「ユニクロ」
ユニクロ以前とユニクロ以後では、ファッションの定義が変わったような気がする。ユニクロは、コモディティとしてのファッションを確立した。ファッションもコモディティである。余計な思想やデザインは必要ない。日本人のファッションは、低価格でベーシックな商品を使い捨てていくこと。そんな思想を、一般消費者に植えつけることに成功したと思う。
ファッション業界では、ユニクロを批判する人も多いが、それ以上にユニクロに追随する人が多い。ユニクロで新製品が出れば、それと似たような素材を探し、ユニクロに近い価格で販売する。
しかし、ユニクロを模倣する限り、ユニクロには勝てない。ユニクロほどの店舗数とグローバルなサプライチェーンを確立している企業はないからだ。
そして、ネット戦略もグローバル市場戦略もユニクロに勝るアパレル企業はない。
ユニクロに追随するか。ユニクロの論理を踏襲し、棲み分けるか。それとも、アンチユニクロに徹するか。これを明確にしなければならない。
ユニクロの論理を踏襲するとは、低価格、コモディティ路線を基本にすること。その上で、顧客ターゲット、アイテム構成、ライフシーン等で棲み分ける。そうすれば、ユニクロの隣に出店しても成立するのではないか。
例えば、顧客ターゲットの設定で、65歳以上の顧客に限定する。シニア好みのデザイン、色、素材等を考え、商品構成する。
アイテムという視点で考えれば、ワンピースだけに特化する。ニットアイテムに特化する。プリント素材のアイテムに特化するなど。
ライフシーンで考えるならば、ガーデニングと家庭菜園に特化したアパレル商品を構成する。これができれば、ホームセンター等にコーナーやショップを展開することもできるかもしれない。
アンチユニクロに徹するのであれば、手作り商品だけを集積する。アートとしてのアパレル製品に特化する。ユニクロで使わないような高級素材に特化するなどが考えられるだろう。
いずれにせよ、絶対王者ユニクロの存在を前提にした戦略を考えなければ、日本のファッション市場で生き残ることは難しいと思う。
2.ネットで買うのが当たり前
「携帯電話でアパレル製品が売れる」ようになったことは、それ以前のアパレル業界の常識を覆すものだった。
「アパレル製品は試着しないと売れない」「アパレル製品は接客しないと売れない」「実物を見て、生地を触らずに、アパレル製品を買う人はいない」というのが当時の常識だった。
しかし、クーリングオフ、返品や交換を可能にすることにより、これらの常識は意味をなさなくなった。良さそうだと思う商品を発注し、自宅に届いた商品を見て気に入らなければ返品すればいい。素材、カラー、サイズ等を確認して気に入れば購入するということが可能なのだ。
カタログ通販のカタログが、デジタル化するのは時間の問題だった。カタログのコスト問題だけではなく、WEB上で発注してもらえば、データベースと連携することにより、在庫を確認し、発注の指図が行われ、送り状が作成されるのである。
最早、ネットで購入することは特別なことではない。店頭で購入するのと同じように当たり前の購買行動なのだ。
こうなると、百貨店やSCの売場シェアを押さえることで、ビジネスを独占してきたアパレル企業の戦略は意味をなさなくなる。
売場のシェアを押さえるよりも、消費者の心の中のシェアを押さえることが重要であり、それにはSNS等で流通する情報の量と質が問われるのだ。
今年(2015年)になって、大手アパレル企業が次々と店舗の縮小とリストラの発表をした背景には、リアル店舗からネットショップへの大きな流れが存在していると言えよう。
3.雑誌よりスマホ
ファッション雑誌の廃刊が続いている。同時に、ファッション雑誌の影響力が薄れている。
というより、消費者の生活の中でファッションの存在感が薄らいでしまった。ファッションがコモディティならば、ユニクロの週末のチラシが唯一のメディアであっても困ることはない。
かつて、ファッションは、時代の変化を表すメディアであり、素人には分からない複雑で難解なパズルのようなものだった。だから、ファッション雑誌という攻略本が必要だったのだ。しかし、ファッションが分かりやすいコモディティ商品になれば、攻略本なんて必要ない。スマホで割引クーポンがもらえる方が余程価値がある。
気がついてみれば、電車の中で新聞を読む人はいなくなった。週刊誌を読む人もいないし、マンガを読む人もいない。紙媒体の活字を読む人が少なくなったということだ。
その代わりに、ほとんどの人が見ているのがスマホである。スマホのゲームやSNS。ニュースもマンガもスマホアプリで無料で読むことができる。音楽もスマホで聞いている。
現代人はスマホ中毒である。スマホがなければ、生きていけないと思う人も少なくないだろう。
最早、スマホの中に現れないものは、売れないのかもしれない。スマホの中で話題になり、拡散され、人気を集める。その仕組みがない限り、コモディティ以外の商品は売れないのではないか。
スマホで、あるいは、ネット上で話題になるには、キーワードが重要である。リアルな店舗では、ビジュアル情報が重視されたが、ネット上では画像検索よりもキーワード検索が優先される。
これまで、ファッションデザイナーは、テーマ設定よりも、視覚情報を優先していた。しかし、今後のデザイナーやブランドはキーワードをどのように設定し、それを検索させるか、という仕組みが重要になる。ビジュアル情報であっても、どのようなキーワードで検索させるのかを考えなければならない。
4.顔の見える手作り商品
手作りサイトがブームになっている。人気のあるクリエイターのアクセサリーは、数分間で売り切れになるほどだ。
しかし、手作り商品なので、売上はそれほど大きくならない。したがって、ファッション関連企業は本気で手作りサイトに取り組んではいない。
ネットで常に売り切れになるクリエイターがイベントに登場すると、行列ができる。ネットでは買えないので、イベントに行って、直接購入しようとするのだ。
アパレル商品にも、手作り商品がある。それは、一点サンプルだ。これまで一点サンプルは、サンプルチェックに使われるだけだった。多くの場合、展示会には各色サンプルが展示され、一点サンプルはサンプルセール等で販売されるだけだった。しかし、一点サンプルに更に手を加えて、スペシャルバージョンとして手作り商品サイトで販売してはどうだろうか。
手作り商品は、ある意味、アートに近い。ファッションクリエイターとして、一点サンプルを元にした一点モノをアート作品のように販売するのだ。価格は高く設定して良いと思う。好きな人しか買わないのだから、価格よりも差別化が重要になる。
そして、ファッションクリエイターの一点モノのアート作品が本物であり、そのライセンス商品が量産品であるという位置づけにするのだ。
これまでサンプルセールで処分されてきた一点サンプルに命を吹き込み、固定ファン作りと、プロモーションに活用する。
こうすれば、トレンドに流されて、同質化と価格競争に陥らなくても済むのではないか。
5.憧れは二次元の世界
「三次元の女性よりも、二次元の女性に魅力を感じる」と言う発言を初めて聞いたとき、一部のオタクだけの話だと思った。しかし、その考えは見当外れだったようだ。男性も女性も、リアルな恋愛、リアルな恋人よりも、二次元の異性に憧れを抱いているようだ。
アニメやゲームの主人公、リアルなアイドルの動画や画像、ボーカロイドなど、様々な二次元の対象に憧れ、恋している若者は少なくない。
洋服のルーツはヨーロッパであり、ヨーロッパ社会はカップルを基本にしているので、ファッションも基本的には異性にアピールするものだ。しかし、日本は男女の役割分担が社会に定着しており、同性同士で行動することが多く、ファッションも同性からの好感度を重視している。
もし、異性より、同性より、二次元の存在に憧れを抱くのであれば、ファッションもまた、二次元のモデルに着用してもらうべきかもしれない。
ファッションショーに何千万もかけるのならば、その費用で二次元のコレクションを作るべきかもしれない。それを、アニメやゲームという形で表現する。そのコスチュームを三次元に再現したものがコスプレであり、それが商品となる。
つまり、コスプレこそがファッションの主流である、という考え方である。二次元の世界が主役になるのであれば、イラストレーターや漫画家が主役になり、それを三次元に再現するのがモデリストということになる。
最早、ブランディングも二次元を主体と考えるべき時代に突入しているのかもしれない。
*有料メルマガj-fashion journal(196)を紹介しています。本論文は、2015.8.17に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。
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