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May 01, 2016

大阪繊維業界のレジェンドの体験を若い世代と共有し、繊維産業の未来を考えるフォーラム j-fashion journal(192)

1.過去の体験を共有する価値

 ビジネスは時代と共に変化する。我々は、自分が努力すれば成功できると信じることが多い。しかし、現実には、経済状況、テクノロジー、法律の変化等により、個人の努力ではどうにもならないほどの環境変化の波が押し寄せるものだ。
 時代と共に変化するのだから、昔の話を聞いても役に立たない。年寄りの自慢話に付き合うくらいなら、ビジネス書でも呼んだ方がましだ。そう思う人も少なくないだろうし、私も若い時にはそう思ったものだ。
 しかし、時代はらせん状に変化する。全く同じことが繰り返されることはないが、それでも、同じような状況が表れるものだ。
 例えば、ファッション商品は、価格訴求と付加価値訴求を繰り返す。現在、書店に並んでいる書籍には、直近の20~30年の成功事例は紹介されているが、それ以前のことは書いていない。
 戦後の復興期から高度経済成長、1970年代から始まった輸出から内需への転換、そして、80年代のDCブランドブームと90年代のインポートブランドブーム。90年代半ばから始まったバブル崩壊の影響と、中国生産による激安商法。

 この間の状況を、自分の体験を通じて、現場の声を伝えられるのは、当時の現場の人間しかいない。そして、これらの生の声は書籍で紹介されることはないのだ。
 歴史に学ぶこと。過去の体験を共有することは、未来を予測するために有効である。また、「過去、変化にどのように対応したか」という知恵を共有することは確実に未来につながるだろう。

2.世界を見渡せば、過去の日本も未来の日本も見える

 世界の市場を見る時に、私たちは、日本市場を基準に考える。この国は、日本の何年代に似ているのだろう。あるいは、この国の物価は日本の何割くらいなのだろう。
 海外に工場を作り、日本市場で販売するというビジネスは、ある意味で日本のビジネスである。日本の価値観を反映させ、日本市場に対応した商品を生産すればいい。
 しかし、海外市場で販売するビジネスにおいては、日本のビジネスをそのまま持ち込んでも成功は難しい。
 最近、食の分野で日本のFC店を海外展開して成功する事例が増えてきた。多くは、現地の食生活に対応するようなアレンジを加えている。日本が進んでいるから、日本の好みを押しつけるのではなく、日本のノウハウを導入し、現地市場に対応しているから成功したのである。
 日本のアパレル業界は、日本の商品をそのまま持ち込む事例が多かった。日本のアパレル業界は、日本オリジナルの商品よりも、海外市場のトレンドを追いかけた商品を評価してきたし、日本市場でしか勝負したことがない。その意味では、ドメスティックなビジネスの経験しかないのである。
 しかし、かつての日本の繊維産業は世界市場て戦っていた。特に、テキスタイルは、アフリカや中近東の民族衣装にも、インドのサリーにも使われていた。自らの商品を押しつけるのではなく、現地ニーズに応えたモノ作りを実践していたのである。
 残念ながら、日本のテキスタイル産業が持つ輸出のノウハウは、アパレル業界と共有されなかった。
 私、今後とも同様のことが起こると思う。繊維業界は日本の花形産業だった歴史があり、世界市場を制覇した実績がある。勿論、時代は変わったのだが、その経験を共有することは価値があると思う。 

3.若者が希望を持てる産業を考えよう

 繊維産業は、国家財政を支える花形産業だった時代があり、戦後の焼け跡から復興した歴史もある。また、高度経済成長とバブル景気を経験し、バブル崩壊後はリストラと合理化をも経験した。
 海外生産にもいち早く取り組み、国内製造業の空洞化に直面した。そして、生産量の減少、産地の崩壊、企業の淘汰も目の当たりにしている。
 現在の繊維産業を見ていると、時代に乗り遅れた構造不況業種のように感じるかもしれないが、あらゆる産業が直面する問題に最初に直面した産業でもある。ICT産業が繊維産業と同じ道をたどらないという保証はないのだ。
 繊維産業とファッション産業は、全く性格が異なるものだ。しかし、常に背中合わせに存在している産業でもある。
 繊維産業の製造業モデルだけを考えれば、新興国の圧倒的なコスト競争力に勝つことは難しい。しかし、付加価値産業であるファッションの視点に立てば、周辺の新興国で生産し、国内で販売することもできる。
 また、ファッションビジネスをコンテンツビジネスと捉えれば、独自コンテンツで世界を相手にすることもできる。
 自らを製造業と捉えるか、流通業と捉えるか、コンテンツ産業、デザイン産業と捉えるかによって、様々なビジネスモデルを考えることが可能になる。
 私は、繊維産業の資産を活用しながら、将来成長できる新たな産業にリプレイスすべきと考えている。そうなれば、若者が将来に希望を持つこともできるだろう。

4.未来を担う人材を育成する地域になれるか?

 産業は地域と深い関係にある。経済成長時代は、生活環境よりビジネス環境が優先していた。コストの高い都市部に住むことがステータスだったし、夜中まで飲み歩く生活がカッコイイと思っていた。そういう意味では、大都市は単身者の生活に適しているかもしれない。
 しかし、ファミリー層には適していない。家族がゆったりと生活するスペースを確保するにはコストが掛かる。また、自然環境にも乏しい。
 最近、社会起業家を目指す若者が増えている。個人の経済を優先するのではなく、社会全体を考え、社会に変革を起こすベンチャー企業を目指す動きである。
 彼らは、地域に目を向けている。売上や利益のスケールを求めるのではなく、地域と密着した継続可能なビジネスを目指し、個人の生活を充実させたいと考えている。
 今後は、ビジネスと生活を分離して考えるより、ビジネスも生活の一部であり、社会活動もプライベートな活動も生活の一部であるという発想が求められるだろう。それが、本来のワークライフバランスであり、単なる生活時間の配分ではなく、生活の質が問われるようになる。
 東京という都市は、企業優先、政治優先、組織優先の都市になろうとしている。下町の人情や近所づきあいは、次第に失われ、人と人のつながりより、経済効率を優先する傾向が強い。
 今後、我々が目指すべき生活地域とは、人と人のつながりを優先する街ではないだろうか。店も商品を販売するだけではなく、コミュニティの拠点としての役割を担うこと。会社は、報酬を得るための組織ではなく、コミュニティの基本単位となること。
 そして、何より重要なことは、個人が成長できることではないだろうか。個人の側から見れば、会社は個人の能力を高める機関でもある。地域社会も社会について学ぶ場とも言える。
 大阪は東京を目指してはいけないのだと思う。大阪は大阪のアイデンティティを活かした街づくりをすることである。そして、大阪で若者が育ち、大阪で起業し、世界で成功する環境を整えることが重要だろう。
 そんな未来の大阪を目指すために、まずは、大阪の繊維業界の歴史を学ぼうではないか。

*有料メルマガj-fashion journal(192)を紹介しています。本論文は、2015.7.20に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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