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April 25, 2016

ソーシャルなファクトリーブランド j-fashion journal(190)

1.価格と数量を工場に任せる

 「ファクトリエ」ブランドを展開しているライフスタイルアクセント株式会社の山田敏夫社長にお会いした。と言っても、取材ではない。
 私は以前から山田社長にお会いしたかったのだが、機会に恵まれなかった。そんな折り、私のクライアントである(株)日本アパレルシステムサイエンスの社長が山田社長に会いに行くというので、「ぜひ一緒に連れて行って」と頼み込み、実現したのだ。
 (株)日本アパレルシステムサイエンスは、パターンメーキング、グレーディングの会社で、現在、トレンドに則したオリジナルのパターンを開発し、セミナーを行っている。
 一方、「ファクトリエ」は、国内縫製工場と連携したファクトリーブランドを展開し、独自のネットショップで販売している。

 今回は、ある意味、表敬訪問であり、今後の取り組みの可能性を図ることが目的であった。それについては、ここでは触れないが、話し合いの中で、いろいろと感銘を受けることがあった。その内容は、メディアにも紹介されているが、私なりに感じたことをまとめてみたい。
 まず、驚いたのが、商品の価格設定と数量を縫製工場に任せているということだ。
 その代わりルールがいくつかある。
 生産数量の半数を買い取り、半数は工場が持つということ。工場が小売価格を設定し、その50%で仕入れること。
 値切らないことを条件に原価を全て公開してもらうこと。その代わり、ファクトリエの経営もガラス張りにして公開している。
 例えば、シャツ工場が1万2千円のシャツを200枚生産すると、ファクトリエは6千円で100枚仕入れる。残りは、ネットで売れれば仕入れるし、売れなければそのリスクを覚悟しなければならない。
 商品原価が3千円だとすると200枚で60万円。6千円で100枚買い取って貰えるので、売上は60万円でトントンになる。
 小売価格を決めるのは縫製工場なので、3千円の商品を1万5千円で売るのも、2万円で売るのも自由だ。一度限りの商売ならば、小売価格を高く設定すれば工場は損をしない。しかし、最終的に消化しなければ、継続的なビジネスはできなくなる。
 おそらく、縫製工場にとっては初めての経験に違いない。縫製工場は、アパレルが高い価格で販売すると文句を言うが、自分で価格を決定するのも勇気が必要だ。何といっても、原価計算を公開しているのだ。暴利を貪っていると思われるのも嫌だろう。
 
2.縫製工場が強かった時代

 私がアパレル企業に就職した頃は、縫製工場の立場は強かった。基本的に工賃は、縫製工場から提示され、多少の調整はあったが、それは他の品番との調整に過ぎず、縫製工場の取り分を減らすことはなかった。また、納期遅れなどのクレームにしても、必ず裏で埋め合わせをしていたものだ。
 アパレル企業は、協力工場となった縫製工場の仕事が途切れないように、閑散期対策を考えていた。定番の商品を備蓄したり、サンプル仕事で埋め合わせをしていたのだ。
 中国生産が始まる前、既に日本の縫製工場は人手不足に陥っていた。縫製スペースを確保することは、アパレル企業の至上命題だった。
 それが変わったのは、1990年代に入った頃だろうか。アパレル企業が直接縫製工場に工賃を支払うケースが減少し、商社通しになった。同時に、海外生産が少しずつ増えていった。
 現在でこそ、「国内縫製工場は保護しなければならない」という状況だが、かつて縫製工場は強かった。自らの技術を高めるよりも、立場の強さに胡座をかいていた工場も少なくなかった。
 それに引き換え、中国の工場は技術は未熟だったが、やる気はあった。工賃水準も低く、どんなに手の込んだ仕事でも嫌とは言わなかった。だから、私は手放しで国内工場を礼賛する気はない。国は関係ない。要は、チームとしての信頼関係が持てるか否かである。
 中国生産が主流になるにつれ、最初に小売価格を決め、それから価格に見合う生地を探し、工賃はアパレルが指し値するようになった。現在のアパレルは、これが唯一正しい方法と思っているが、それはアパレルの立場が縫製工場より強いという前提があればこそである。つまり、中国には工場がいくらでもあり、「工賃を飲まないのならば、他の工場に振り替えるぞ」という脅しが通用したから成立したのだ。
 現在の状況を考えると、それほどアパレルが強いとは言えない。ある意味、アパレルと縫製工場は対等の関係に近づいているのではないか。そんな時期だからこそ、信頼関係を再構築しなければならない。
 その意味で、ファクトリエの取り組みは興味深い。
  
3.上質なベーシック訴求を

 アパレル企業は縫製工場との力関係、ボジションを考え直す時期に来ている。
 最早、中国生産のコストは上がってしまった。しかし、、ASEAN諸国の生産技術は日本市場の水準に達していないし、生産ロットも大きい。世界中に縫製工場は多数あるが、日本のアパレル企業の要求を満たす工場は圧倒的に少ない。
 もし、国内の縫製工場と新たに取り組もうとするなら、まずコストの問題を解決しないといけない。と言っても、中国水準の工賃を国内工場に指示するだけでは解決にならない。小売価格を上げ、それでも売れる商品が提案できないならば、アパレルの存在価値はない。
 しかし、縫製工場がファクトリーブランドを展開するのも容易ではない。まず、企画機能が必要である。シーズン毎に新しいデザインの製品を提案し続けることが求められるのだ。その人材が社内にいるのか。あるいは、社外のデザイナー、パターンナー、企画会社、パターンメーキング会社とのネットワークがあるのか、が問われる。
 これは私見だが、最早、国内の縫製工場がファストファッションを追いかけることは無理があると思う。低価格の商品を国内で生産することは難しいからだ。
 世界市場でも通用する日本のテキスタイルと、国内縫製工場が取り組み、新たな上質ベーシック製品を作り、その素材の魅力や、品質を訴求することが必要だろう。
 そして、なるべくダイレクトに販売することだ。現在のコスト状況を考えると、問屋や小売店を仲介させる余裕はないと思う。
 
4.テキスタイルを含めたSCM

 ファクトリエが縫製工場に販売価格を設定させたことは、非常に意義がある。そこにテキスタイルメーカーを加えることはできないだろうか。
 生地代もテキスタイルメーカーが自由に設定して良いものとする。但し、生産した半量を買い取るというのは難しいだろう。テキスタイルはテキスタイルメーカーに在庫してもらわなければならない。
 逆に言えば、テキスタイルメーカーもまた、問屋や商社の受注生産だけでなく、オリジナル商品を構えて欲しい。全ての商品の在庫を持つことはできないかもしれないが、一部でも挑戦してほしい。
 そうでないと、「テキスタイルは海外から輸入すればいい」となってしまう。それでは、国際的に差別化することができない。国内市場であれば、イタリア製の生地を使っても良いだろう。しかし、グローバルなブランドを目指すのであれば、テキスタイルの差別化は欠かせないのだ。
 例えば、テキスタイル卸が、ファクトリエのような取り組みに挑戦することはできないだろうか。
 機屋がオリジナル素材を作り、価格と数量を決定する。その代わり、原価明細を共有する。
 問屋は一定の利益を確保して販売する。その内容もメーカーと共有する。ネットでファクトリーブランドを展開する縫製工場に販売する。
 仮に、このメーカーが「ファクトリエ」ブランドで販売するのであれば、縫製工場の原価構成を、テキスタイルメーカーと卸商も共有する。これにより、テキスタイルと縫製が情報を共有することが可能になる。
 サプライチェーン全体が情報を共有することができれば、リピート生産が可能か否かの判断も早いだろう。
 サプライチェーンが互いの利害で対立するのではなく、新たな運命共同体を構築することができれば、今より面白い商品が市場に供給できるし、そのことでファッションが活性化するのではないか。

*有料メルマガj-fashion journal(190)を紹介しています。本論文は、2015.7.6に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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