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April 25, 2016

アパレルパターンのEマーケットプレイス j-fashion journal(189)

1.トレンドを分析したオリジナルパターン販売

 株式会社日本アパレルシステムサイエンス(以下、JASS)は、パターンメーキング、グレーディングの受託を主な事業としている。
 2015年から、新しい試みとして、パターントレンドセミナーを行っている。これは、JASSがコレクショントレンドを元に、オリジナルパターンを設計し、発表するというものである。
 ここで開発されたパターンは、販売される。将来的には、クラウド上にパターンのCADデータを置き、誰でも利用できるようにしたいと考えている。
 実は、トレンドを意識したパターンを公開するのは、これが初めてである。パターンはアパレル企業のノウハウそのものであり、通常は最も重要な企業秘密として公開されることはない。
 ファッション専門学校で教材となっているパターンは基本的なものであり、トレンド変化に対応していない。

 一方で、90年代半ばから激安商法が主流だったアパレル業界では高度なパターンが必要とされなかった。価格とスピードだけが求められたとも言える。そのため、アパレル企業内でパターンを引くよりも、企画会社が提案するサンプルを仕入れるという形態が増えている。
 そのため、新人採用も少なく、企業内教育ができるベテラン技術者も不足している。しかも、重要な人材供給機関であったファッション専門学校の入学者も減少を続けている。
 最近になって、中国の人件費が上昇し、円安になり、激安商法を続けることが困難になっている。
 また、中国等からのインバウンドが増え、上質な日本製の商品に対するニーズが高まっている。日本国内市場はシニア層の比率が高まり、ここでも、上質な製品へのニーズが高まっている。
 このようにアパレルビジネスのトレンドが変化しているのだが、バターンメーキングがそれに対応できるかは大きな課題と言えよう。
 その意味で、JASSがオリジナルパターンを発表することの意義は大きい。
 これを有効に活用することにより、新たなビジネスモデルが生まれるかもしれない。

2.テキスタイルメーカーによるアパレル生産

 テキスタイルメーカーの展示会には、アパレル製品サンプルが欠かせない。アパレル企業は製造卸から製造小売りに業態転換し、小売店の性格を強めている。
 テキスタイルメーカーも、テキスタルを販売しているだけでは、ブランディングができない。ブランディングができないと、価格が通らない。常に価格競争に巻き込まされる可能性がある。
 私は、テキスタイルメーカーもアパレル製品をプロデュースすべきと考えている。その目的はアパレルで利益を出すことではない。テキスタイルを活かしたアパレル製品をつくり、テキスタイルの良さを訴求することが目的である。
 同時に、アパレルのトレンドを理解し、素材開発と製品開発を連携させること。それらによって、テキスタイル企業としてのブランディングが目的である。
 テキスタイルメーカーがアパレル製品を開発し販売することは、得意先と敵対する行為だと考える人もいるが、私はそうは思わない。但し、条件がある。それは「販売先のアパレル企業と価格競争をしない」ことだ。
 テキスタイルメーカーがアパレル製品を作れば、生地代は低く抑えられる。しかし、それをしたら、得意先を裏切ることになる。
 例えば、織物メーカーは小売価格の設定が先行し、価格優先のモノ作りを強要されていることが少なくない。アパレルが高くて使えないならば、テキスタイルメーカーが独自の製品をつくり、直接、小売店や消費者に販売すればいい。それにより、新たな市場が開拓されれば、最終的にアパレル企業にとってもプラスになるからだ。
 例えば、毛織物メーカーならば、素材の良さを活かした一重仕立てのブレザーやコート。
 厚地のコットンならば、究極のチノパンツ。
 薄地のコットンならば、シャツ、ワンピースなど。
 合繊機屋ならば、レインコート、アウトドアのアウターなど。
 いずれにしても、トータルコーディネート訴求ではなく、テキスタイルの特性を活かした単品訴求が良いのではないか。
 
3.縫製工場によるメーカーズブランド

 海外の縫製工場は、加工業ではなく、生地や付属を仕入れて製品で販売するために、ファクトリーブランドを立ち上げやすい。日本の布帛の縫製工場の多くは、加工賃仕事であり、テキスタイルを自社で調達することができない。また、パターンメーキングもアパレルや企画会社に依存しているために、オリジナルの製品を作ることができない。
 縫製工場の展示会をしたくても、「展示できる商品がない」ことも珍しくない。デザイナーやパターンナーと契約した経験もないために、どうすればオリジナルの商品を作れるかが分からないというケースが少なくないのだ。
 JASSのトレンドに沿ったパターンを活用すれば、縫製工場のあり方も変わるかもしれない。
 アパレル製品を企画生産するには、かなりしっかりしたチームが必要である。それらのコストを全て先行投資するのは中小企業にはあまりにも厳しい。
 もっと自由にテキスタイルメーカーと出会い、パターンを入手し、権利関係の契約もクリアできれば、アパレル業に参入する障壁は低くなるだろう。
 
4.小売店によるPB開発

 小売店がPB(プライベートブランド)を展開する場合、商社、企画会社が提案するサンプルから商品を選び、発注することが多い。同じような素材で、同じようなトレンドを元にモノ作りをするために、周囲の売場と同質化しやすい。
 今後、価格訴求だけでなく、上質志向が強まれば、ますます差別化が問われるに違いない。
 また、企画会社から提案されるサンプルは、継続性がない。シーズン毎の売れ筋を追いかけ、パターンナーも一定しないので、全ての商品はバラバラになってしまう。
 ブランドとしてのマスターパターンがあるわけでもないし、ゆるみの分量もバラバラである。
 今後、ブランドの個性を確立したければ、社内にデザイナー、パターンナー等を雇用し、チームを組まなければならない。
 しかし、全てのスタッフを雇用するとなると、一定以上の利益を確保しなければならず、そのことが更に売れ筋追求の姿勢となり、結局、同質化した商品を展開することになるのである。
 この悪循環を防ぐには、素材開発、ブランドとしてのマスターパターン作成等が不可欠である。
 その一助として、トレンドを意識したパターンを元に独自のグレーディングをすることで、ブランド独自のフィット感を出すことが可能になるのである。
 この方法が優れているのは、全てのスタッフを雇用するより低コストであり、パターンCADデータをデータベース化することにより、商品の継続的な展開が可能になることである。
 
5.新人デザイナーの育成

 新人デザイナーの才能を認め、服づくりをしたいと思っても、一人のデザイナーを雇用するには一定以上のコストがかかる。
 昔、ヨーロッパではデザイナーと契約できない中小零細メーカーはデザイン画を購入していた。
 ヨーロッパのメーカーは工場であり、デザイン画だけ購入すれば、製品化は可能だったが、日本のアパレル企業、アパレル小売店はモノ作りのノウハウがない。デザイン画だけ購入しても、それをパターンにして、製品にすることができないケースが多いのである。
 もし、新人デザイナーのビジネスの一つとして、オリジナルデザインのパターンを販売すれば、アパレル企業は一型ずつ試すことができる。但し、販売するのは使用権のみであり、著作権はデザイナーが保持すべきと考える。
 そのためには、クリエイティブ・コモンズライセンス等の制度を活用して、著作権者のクレジットを表示することが必要だろう。
 アパレル企業に対しては、デザイナーとの契約の障壁を下げ、デザイナーに対しては、認知度を上げる機会を増やし、少額ではあるが、着実なビジネスモデルを提供することにつながるのではないか。

 以上、全てに共通するのは、パターンそのものを売買する制度を整備することで、アパレル企画~生産のフローが変わるということである。そして、新しいビジネスモデルが誕生するのではないだろうか。

*有料メルマガj-fashion journal(189)を紹介しています。本論文は、2015.6.29に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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