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March 27, 2016

「衣薬同源」 j-fashion journal(187)

1.漢方薬と草木染めの原料は同じ

 草木染めの原材料は、薬草と重なるものが多い。薬草が先だったのか。草木染めの染料が先だったのか。
 私は薬草が先だったと思う。草木染めは、天然の植物、昆虫、貝等から取り出した染料を使って布や糸を染める染色方法だ。極論すれば、どんな植物でも乾燥して煮出すか、生の葉を煮出せば、何らかの色素が抽出される。着色だけが目的であれば、どんな原料でも使える。
 どうせ染織するなら身体に良いものを選ぶということは、ごく自然なことだ。同じ色なら、身体に良い薬草で染色した方が良いし、薬草で染色した布で身体を包むことで薬効が期待できる。実際、経皮吸収により身体の調子が良くなったと思う。
 草木染めによる染色は、着色だけが目的ではない。むしろ、漢方薬のような薬効が目的であり、それを表すために色を愛でたと考えた方がいい。

 それがいつのまにか着色だけが目的となり、身体に悪い化学物質が使われるようになった。草木染めは色落ちするというマイナス点ばかりが強調されるが、染料が身体に良い物質であれば、色落ちすることに価値があるとも言える。色落ちを完全に止めてしまえば、染料が持つ薬効も期待できなくなる。
 着色だけなら、化学染料が安価で効果的である。しかし、染料だけでなく、糊剤、助剤など、身体に有害な化学物質が大量に使用されるようになった。加えて、合成洗剤が大量に使用されるようになった。
 草木染めなら、薬効を維持するために水洗いが最適だ。水洗いだけだと汗や細菌のために変色や臭いが発生するが、藍染めのように抗菌性を持つ染色方法であれば、それも防げる。というより、それらを防ぐために染色したと言えるだろう。
 合成染料と合成洗剤は、身体に悪いだけでなく、環境も汚染している。そして、染色作業と洗剤の双方に使われている「合成界面活性剤」もまた、環境汚染につながる化学物質なのだ。
 
2.経皮薬と経皮毒

 経皮吸収とは、皮膚から物質を吸収すること。皮膚は基本的に身体を守るバリアであり、外部からの物質を防ぐ役割を持っているので、近年までは皮膚からの物質の吸収はほとんどないと考えられていたようだ。
 しかし最近の研究によって、分子量が小さく、脂溶性が適度に高く、融点が低い物質は皮膚から吸収されやすいことが分かってきた。
 医療薬にもこの性質を生かした経皮吸収パッチと呼ばれる薬品が多くある。代表的なものは、吐き気に対処するためにスコポラミンを伝達するパッチ、禁煙を助けるためのニコチンパッチ、閉経後に骨粗鬆症を防止するためにエストロゲンを伝達するパッチ等である。
 勿論、皮膚から吸収されるのは、身体に良い物質だけではない。身体に有害な物質も皮膚から吸収されるのである。それが「経皮毒」である。経口吸収の毒素排出率が90%なのに対して、経皮吸収によって取り込まれた毒素の排出率は10%程度といわれている。
 「経皮毒」の危険性を指摘する時に、必ず登場するのがシャンプーである。
 シャンプーには非常に多くの経皮毒性の有害化学物質が含まれている。シャンプーの洗い流す働きに使用する化学物質をはじめ、よい香りを出すために使用する香料など様々だ。
 特に問題なのは、ラウリル硝酸ナトリウムのような合成界面活性剤が使用されていることだ。その他にも、保湿剤・乳化剤・防腐剤・着色剤など、様々な経皮毒性のある化学物質が使用されている。
 頭皮は、皮膚(角質層)が薄いため経皮吸収率が非常に高い。更に問題なのは、入浴時には体温が高まり、経皮毒性化学物質を吸収する割合(経皮吸収率)が高まることだ。
 合成界面活性剤が含まれているのは、シャンプーだけではない。ボディシャンプー、リンス、トリートメント、整髪料、シェービングクリーム、洗顔用品、洗剤等にも含まれている。
 合成界面活性剤は、染色工程でも使用されている。界面活性剤を加えることにより、繊維が濡れやすくなり、染料が浸透しやすくなる。界面活性剤は、下水処理でも分解できず、高い残留性がある。ヘドロの原因になったり、魚のエラにつまるなど、環境汚染の一因になっている。
 
3.視覚以外で感じるファッション

 人間は「視覚」に依存している。ファッションという分野はほとんどが視覚に訴求するものだ。
 ファストファッションでも重要なのは、視覚的要素と価格である。本来は、テキスタイルが持つ風合いがシルエットを決定するが、安い生地を使っても芯地によりカバーすることもできる。大量生産の場合、接着芯が多く、ここでも化学物質が使われる。
 ファッションが視覚と価格が中心になったことにより、高価な天然染料より安価な化学染料が普及するようになった。同時に、大量の化学物質が使われるようになった。
 また、視覚的な汚れを落とすために、繊維を壊して汚れを落とす酵素を使った合成洗剤が使われ、素材の風合いの劣化をカバーするために柔軟剤が使われている。
 化学染料がなかった時代には、素材そのものの色を使っていた。ウールは、羊毛が原料だが、羊には白、グレー、茶色、黒など、様々な色の羊が存在する。それらを組み合わせて、アランセーターやカウチンセーターが作られた。
 江戸時代の日本人の大多数は藍染め木綿の着物を着ており、明治に来日した外国人がその美しい紺色を「ジャパンブルー」と呼んだ。日本人が藍染めの着物を着ていたのは、色の美しさよりも藍が持つ薬効だった。
 過酷な農作業で虫や蛇を避け、皮膚病や日焼けから身を守るために、抗菌機能、抗酸化機能を持つ藍染め木綿を着用していたのである。
 それでも、日本人は縞や格子、絣、刺し子や刺繍、絞りや蝋纈という技術により、様々な装飾を施した。紺色の濃淡だけで豊かな表現をすることは可能だったのだ。
 戦後になり、化学染料と合繊が普及し、農民も合繊ジャージーを着用するようになった。化学肥料、農薬が普及するにつれ、農作業も楽になり、農地を荒らす野生動物も昆虫も少なくなった。
 人間に害をなす動物、植物、昆虫、病原菌等は全て化学的に対応するようになり、漢方薬も草木染めも時代遅れとなった。
 そして、次第に我々の環境は、化学物質に支配されるようになったのである。
 それらは、我々が視覚的な美しさだけを評価したことにも原因があるのではないか。もっと、手や身体で感じることを重視しても良いのではないか。
 
4.オーガニックな衣生活

 オーガニックとは、「有機の」「化学農薬を使わない」という意味であり、化学肥料や農薬を使わずに栽培した農産物、あるいは、添加物を使わない食料品を指す。
 ファッションにおけるオーガニックと言えば、オーガニックコットンが有名だ。オーガニックコットンは、アメリカの綿花畑の土壌汚染を防ぐために、農薬を使わずに天敵の昆虫による害虫駆除を行い、他の綿花や糸が混ざらないように、サプライチェーン全体を管理しているものから始まった。その後、農薬を使わないインドの高地などで栽培された綿花もオーガニックコットンと呼ばれるようになった。
 オーガニックコットンは、生産工程で環境に配慮している素材であり、その製品が身体に良いというわけではない。
 もし、オーガニックコットンの商品を購入しても、市販の合成洗剤や柔軟剤を使えば、アレルギーを引き起こすこともあるだろう。
 身体に良いという意味ならば、身体に良い素材の商品を使う方が効果的である。
 例えば、麻(リネン、ヘンプ、ジュート)は抗菌性に優れている。
 シルクも外的環境から蛹を保護する機能を持っている。抗菌性、抗紫外線に優れている。更に、ワイルドシルク(野蚕)は、通常の家蚕よりも抗菌性、抗酸化性が強い。
 ウールもまた、身体を保護する皮膚が変化したものであり、免疫性、抗菌性、防臭性に優れている。
 コットンは、保温性にも吸湿性にも優れた快適な素材だか、麻のような抗菌機能を持っていない。しかし、藍染めすることにより、抗菌性、抗酸化性を獲得する。藍の効能については、生葉の方が優れているという意見とスクモの方が優れているという意見があるようだ。いずれにせよ、歴史的に日本人が生活着として藍染め木綿を認めてきたのは事実である。
 このように見てくると、天然素材を身につけ、合成洗剤を使わず、素材そのものが持つ抗菌性等を活用することが最も環境と身体に優しいのではないか、と思う。
 加えて、日本の温帯モンスーンの気候を考えると、洋服のような密閉型の衣服よりも、きもののような開放型の衣服の方が快適ではないか、と思う。その形態については、現在のきものよりも、野良着に近い半着とモンペやタッツケ、股引きのような組み合わせが現実的ではないか。
 オーガニックな衣生活という視点に立てば、オーガニックコットンに限定するのはあまりにも視野狭窄に過ぎるだろう。
 天然素材、草木染め、藍染め等についても、風合いや色の美しさではなく、環境や身体に良いか悪いか、という基準も必要だと思われる。

*有料メルマガj-fashion journal(187)を紹介しています。本論文は、2015.6.15に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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