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March 13, 2016

モノのインターネット(Internet of Things、IoT)とファッション j-fashion journal(186)

1.モノのインターネットって何?

 パソコンがインターネットにつながるイメージは理解できる。WEBを見ることができるし、メールの受発信ができる。スマホも同様だ。無線LANがあれば、どこでもインターネットにつながる。
 米国電気電子学会によると、走行中の自動車は、2025年までに60%がインターネットに接続される見通しだという。それにより、悪天候の地域や渋滞が避けられるようになるらしい。この動きは、最終的に自動運転につながっていくのだろう。
 インターネットとつながった家電製品は、スマート家電と呼ばれている。現在は、スマホでクーラーのスイッチが入る、というレベルだが、これも発展すれば、地域全体の電力消費コントロールという方向に発展するだろう。
 こうしたモノがインターネットにつながることにより、膨大なデータが生成される。
 走行中の自動車がマッピングされ、ワイパーの動作をモニターすることで、ゲリラ豪雨などのピンポイントの天候が分かる。

 また、エレベータの運行状況により、不動産の空室状況が分かる。
 更にモノに近づくと、無線タグ(RFID)が上げられる。これを商品に付けることで、棚卸が簡単にできるようになる。
 回転すしの皿に付けることで、一定時間を過ぎた皿は自動的にラインから弾かれる。
 無線タグは、情報の書き込みもできるので、トレーサビリティが実現できる。運送会社の制服に無線タグを縫いつけることで、成り済ましを防ぐことができる。
 こうした無線タグを読み取るデータもビッグデータとなる。これらを分析することで、これまで見えなかったことが見えてくるだろう。
 
2.服は、インターネットにつながることで付加価値が上がるか?

 インターネットにつながることで、モノは情報発信することになり、モノ以上の意味を持つようになる。
 ウェアラブル・コンピュータは、身につけられるコンピュータである。アップルウォッチは、美しく、新しい生活を予感させる魅力的なデバイスだ。
 グーグルグラスは製造中止に追い込まれたが、面白い試みだったと思う。使う場面を制限すれば、様々な活用方法もあったはずだ。
 ウェアラブル・コンピュータは、あくまでコンピュータだ。身につけるファッションではない。モノのインターネットと言うならば、服もインターネットでつながらないのか。そして、それによって、付加価値は高まらないのか。
 服は工業製品である。工業製品の原料から製造工程のトレーサビリティを確保するためには、無線タグの活用が効果的だ。しかし、着用者にとって、服の価値を上げるわけではない。他の工業製品とは異なる、服としての価値を上げられないのか。
 服は社会的地位や、着用者の人間性を表す。服そのものがメディアであり、視覚的に自身の情報を伝えているのである。インターネットとつながることによって、視覚以外の情報を伝えることはできないのか。
 例えば、ビジネスウェアであれば、服の一部に液晶画面か、電子ペーパーが取り付けられていて、そこにメッセージを流すことができるようにする。名刺を胸につけるように、名前を表示することもできるし、何らかのキャンペーンのメッセージを流しても良い。
 同様のアイディアとしては、ピンパッジのように、小型の液晶かLEDをテーラードジャケットのラペルに付けられないだろうか。それを社章にすれば、社員への緊急連絡も可能になるし、どこにいるかをマップ上に表示することもできるのではないか。
 いずれにしても、服そのものではなく、服飾雑貨やパーツがインターネットにつながるのかもしれない。
 
3.ビッグデータ活用による脱大量生産

 ビッグデータを解析することは、より細かいニーズを把握することにつながる。これまでマスマーケティングを展開してきた量販店等は、そもそもデータを解析するという姿勢が希薄だ。競合店のデータを集めることで満足し、多くは価格帯とSKU、売上等しか見ていない。肝心の商品の内容やデザインの分析等は十分ではない。
 独自のハウスカードを発行し、購買履歴と紐付けも可能なのだが、顧客毎のライフスタイルを分析しているわけではない。誰にでも、同じチラシを送付しているだけだ。
 時間ごとの顧客特性も把握していないし、それに対応した店頭構成に変更することもない。結局、量販店の担当者は、個々の顧客を類型化し、一つの固まりとして見る癖がついている。従って、個々に対応するという思想そのものがないのだ。個別の顧客を見ずに、仮想の顧客像を作り上げ、思い込みの商品戦略を展開しているのだから、売れないのは当然である。
 これはビッグデータ云々の問題ではなく、思想の問題だ。
 大量生産大量販売の思想から脱せない限り、ビッグデータの解析による細かいニーズには対応できない。モニター調査もテストマーケティングもせずに、半年も前に商品計画を決定し、より安い商品を求めて海外工場に発注し、トラブルに追われているだけで時間は過ぎてしまうのである。
 量販店はビッグデータの宝庫であり、それを解析すれば、様々なニュービジネスが生まれるはずである。
 
4.きものをインターネットにつなげないか?

 きもの着用者は減少を続けている。生産者も卸売業者も減少を続け、呉服業界も崩壊の一歩手前だ。しかし一方で、若い世代がきものを再発見している。特に、きもので生活したいという人が増えているのは興味深い。きものをフォーマルウェアとしてではなく、日常着として再発見しているのだ。
 きものには帯があり、ほとんど洗濯はしない。帯に小型のデバイスやバッテリーを仕込むことは十分に可能である。お太鼓にモニターを仕込むことも十分に可能である。
 また、印籠や根付など、アクセサリーとしても不自然ではないアイテムが多い。形態としては、最もウェアラブルに適応しているのかもしれない。
 きものならば、着用者のきものに対する思いやきものそのものの情報を共有することも意義があるのではないか。
 例えば、きもの着用者のためのアプリを開発する。そのアプリをダウンロードし、きものを着用する時には、きものボタンを押す。そうすれば、マップに落とし込むことができる。また、きものを着用者に対する割引サービス等の情報も見ることができる。
 勿論、きもの関係のショップ情報や展示会情報も配信される。きものは生産者が少ないのだから、生産者と直接つながることができるサービスがあってもいいのかもしれない。
 このアプリは、誰でもダウンロードできるのではなく、特定のショップやイベント会場できもの着用者のみにダウンロードさせる方が良いのかもしれない。
 それにより、生産者と着用者がネットワークされ、規模は小さくても緊密なネットワークが可能になるだろう。

*有料メルマガj-fashion journal(186)を紹介しています。本論文は、2015.6.8に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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