アパレル生産の危機 j-fashion journal(182)
1.円安が海外生産ビジネスを直撃
アベノミクスで円安が進み、輸出産業は好調だが、輸入ビジネスは危機的状況を迎えている。アパレル製品の9割以上が輸入であり、為替のコスト上昇分を小売価格に転嫁できなければ、輸入業者は利益が減少する。
テキスタイル輸入、アパレルの海外生産で利益が圧迫され、廃業する中小企業も出ている。また、繊維商社も利益が出ないビジネスを継続することはできないので、むしろ、インバウンド相手のビジネスか、海外市場をも視野に入れた事業に転換していくだろう。少なくとも、下請けのOEM生産を続けていっても将来性はないのだ。
中国生産のコストが上がったことから、チャイナプラスワンでASEAN諸国に進出した商社も既に撤退が始まっている。中国生産も日本に輸出できる水準に達するには10年かかった。ASEAN諸国も同様なのだが、最早それほどの長期間投資を続けることはできない。また、技術指導できる人材も枯渇している。
いずれにせよ、90年代半ばから続く、デフレビジネスから脱却しないことには海外生産ビジネスが継続することはないだろう。
2.国内テキスタイル生産の危機
円安なのだから、国内メーカーが輸出するのに有利だと思う人もいるかもしれない。しかし、ほとんどの国内メーカーは国内市場に依存している。むしろ、原材料の糸の価格が上昇しているので、海外生産と同様に、小売価格が上がらないと利益が減少する。
更に、国内産地では大手の整理工場が次々と廃業し、生産能力が落ちている。メイドインジャパンが注目されても、生地が上がってこないのでは、何もできない。また、従業員の高齢化、後継者問題も深刻だ。
3.国内縫製工場の減少も止まらない
国内の生地が調達できなければ、国内縫製工場も回らない。海外生産から国内生産への流れは確かにあるが、多くは、国内縫製工場に中国工場のコストを求めている。小売価格が上がらなければ、仕事をすればするほど赤字ということになる。
また、メイドインジャパンが注目されているからと言って、若い人材が集まっているわけではない。相変わらず、高齢者に依存しているのだ。頼みの綱だった、海外からの研修生も様々なトラブルが発生している。中国の人件費が上がる中で、実質的な日本への出稼ぎも魅力が薄れている。
4.若い世代は海外に行きたがらない
あらゆる段階で、生産の危機が始まっている。全ての解決策は小売価格を上げることだが、それでも、国内の人件費の格差が解消されることはないだろう。
日本の繊維関連の製造業は、海外に依存するしかない、しかし、若い世代は海外に行くのを嫌がる人が多い。
海外に行って苦労するより、安心安全な日本で仕事をしたいのだろう。それに、日本国内にも仕事がないわけではないのだ。
結果的に、若い世代は繊維関連の製造業に従事することはないだろうし、海外生産ビジネスを目指す人も少ないのだろう。ということになれば、益々、アパレル生産は危機に瀕することになる。
5.それでも消費者は困らない
私は繊維アパレル業界にいるので、製造業に危機感を感じているのだが、消費者は全然困っていない。ユニクロも無印良品も海外生産に困っているわけではないし、SPAなので価格決定権も持っている。為替が変動すれば、小売価格に転嫁すれば問題はない。
また、海外資本のファストファッションも同様である。
問題は、下請け的なOEM生産、大手小売店に依存している下請け的アパレル企業である。おそらく、こうした業態は今後も淘汰が進むだろう。
そして、海外のアパレルメーカーが日本市場に商品を供給するようになるだろう。中小アパレルで生き残るとすれば、海外メーカーが企画生産した商品を仕入れて、販売する小売中心の業態ではないか。すでにこうした動きは始まっている。
そうなっても、消費者は困らない。SCモールに並ぶ商品が、日本企画だろうと、中国企画だろうと、消費者には関係ないのだ。
*有料メルマガj-fashion journal(182)を紹介しています。本論文は、2015.5.11に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。
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