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February 10, 2016

装苑賞は世界に認知されるか? j-fashion journal(180)

1. オーダーメイドの時代の装苑賞

 装苑賞は、新人デザイナーの登竜門と言われている。高田賢三、コシノジュンコなど、有名デザイナーも、装苑賞を受賞している。しかし、時代を経るに従い、装苑賞を受賞しても、ビジネスで成功し、有名になる人は、次第に少なくなっていった。その理由を考えてみたい。
 「装苑」は文化出版局が発行するファッション雑誌だ。かつては、日本全国に文化服装学院の連鎖校があり、本校及び連鎖校の学生の大部分が「装苑」を定期購読していたのだから、発行部数も相当多かったはずだ。
 現在は、ファッション専門学校の学生は減少の一途であり、当然、「装苑」の発行部数も激減している。
 昔の「装苑」の特徴は、作図が掲載されていたことだ。雑誌に掲載されている作品の写真を見て、文化服装学院の教員が、文化式原型から型紙を起こし、それを巻末に掲載していた。
 当時は、オーダーメイドが主流だったので、こうしたことが許されていたのだろう。文化の卒業生で洋装店を開いている人は、「装苑」を見れば、一流デザイナーの服を制作することができた。文化服装学院の学生にとっても、常に最新ファッションの作図を見て、勉強できる教材だった。同時に、文化服装学院の教員にとっても、有名デザイナーの作品を見て、作図することは勉強になったはずだ。

 しかし、既製服の時代になると、知的所有権の問題が生じるようになる。市販している商品を「装苑」に掲載すると、勝手に作図が公開されてしまう。それでは、コピーしてくださいと言っているようなものなのだ。次第に、商品を掲載することができなくなり、新人デザイナーが「装苑」のためにデザインした服だけが掲載されるようになっていった。
 高田賢三やコシノジュンコが装苑賞を受賞した時代は、オーダーメイドの時代だった。従って、デザイナーが独立するにも、それほど大きな資金は必要なかった。しかも、全国津々浦々に読者がいる装苑に作品が掲載され、装苑からデザインの仕事が依頼されれば、それだけでも、ビジネスに直結した。装苑賞受賞から、デザイナーとして独立するまでの道が見えていたのである。
 既製服の時代になると、次第に、装苑賞の作品は、市場性から遠ざかっていく。応募者は、既製服にはできない作品を応募するようになり、審査員のデザイナーも既製服にはない創造性を評価した。
 こうして装苑賞は市場とビジネスから乖離していった。勿論、ファッションデザインコンテストとしては、最も伝統があり、ステイタスも高かった。しかし、コンテストを勝ち抜いて、装苑賞を受賞しても、そこからデザイナーとして仕事をしていくまでの道は失われたままだった。

2.第89回装苑賞受賞者は中国人留学生

 2015年の第89回装苑賞受賞者は中国人留学生のケイツボミさん。佳作1位は、フ・アヤさんだった。
 過去にも、留学生が候補者になることは多かったので、特別驚くべきことではないかもしれないが、中国人留学生がワンツー・フィニッシュを飾ったというのは、やはり時代の流れを感じさせるに十分だった。
 実は、何年も前から、文化服装学院の卒業製作等では留学生が表彰されることが多くなっていた。ある先生は、「このままでは表彰されるのは全て留学生になるのではないか」と危機感を募らせていたほどだ。
 私も特別講義を行うことがあるが、留学生は最前列に陣取り、懸命にノートを取っていた。授業中居眠りをしているのは、日本人学生ばかりだった。その意味では、ようやくその日が来たというべきかもしれない。
 
3.「装苑賞」はアジアで最もフェアで権威ある賞となるか?

 私は、中国人留学生が装苑賞を受賞したことで、装苑賞に新しい意義が生まれるのではないか、と期待している。装苑賞では、国や人種の違いが審査に影響を与えることはほとんどない。
 そもそも、日本人デザイナー自身、パリやニューヨークでは人種の違いにも関わら、高い評価を与えてくれたからこそ、世界的に有名になった。
 しかし、こうした経験を持つアジアの国は少ない。明治以降、多くの日本人がパリに渡った。画家や彫刻家、音楽家、建築家、調理人、そして、ファッションデザイナーやパターンナー。日本人デザイナーがパリで受け入れられたのは、こうした日仏交流の歴史的な蓄積があったからである。
 現在、アジアの多くの国々でファッションデザイナーを対象にしたコンテストが開催されている。しかし、国や人種に関係なく、フェアでレベルの高い審査を行っているケースは多くない。
 中国人留学生が装苑賞を受賞したことは、装苑賞審査がフェアであることを証明したとも言える。中国国内においても、人脈の力やコネクションの有無が審査に大きく影響する。中国の若きデザイナーにとって、中国国内のコンテストにエントリーするより、装苑賞にエントリーする方が魅力を感じるに違いない。
 アジア各国の若者が装苑賞にチャレンジし、その受賞者がアジアのファッション業界の中で活躍できるようになれば、装苑賞は成功へのスタンダードなステップとして定着するだろう。
 
4.日本のファッション業界は装苑賞を活用できるか?

 装苑賞がアジアで最も権威ある新進デザイナーの登竜門として機能するようになったとして、日本のファッション業界は、それを活用し、ビジネスにつなげることができるだろうか。
 もし、世界中から新進デザイナーが装苑賞のために日本に集まるとすれば、日本は世界的なヤングファッションの聖地になる。現在の渋谷や原宿のファッションとの相乗効果も生まれるかもしれない。
 日本企業がこうした中からビジネスチャンスを見いだせるだろうか。それとも、中国アパレル企業が先行するだろうか。
 私は日本でも中国でも良いのだが、アパレル企業が、装苑賞を後押しして欲しいと思う。例えば、装苑賞の冠となって、特別副賞を設定し、自社のプロモーションのためのコレクション制作の契約をする。こうしたことができれば、スポンサーとなるアパレル企業にもメリットがあるし、受賞デザイナーにもメリットがある。
 スポンサー企業は、アパレル企業でなくても良いのかもしれない。自社のブランドイメージを上げるためのプロモーションと解釈すれば、化粧品メーカー、食品メーカー、飲料メーカー、ゲーム会社等にも参加のチャンスはあるだろう。
 コンテストもコレクションも新しいビジネスモデルが必要である。それにより、デザイナーのビジネスモデルも見出せるはずである。

*有料メルマガj-fashion journal(180)を紹介しています。本論文は、2015.4.27に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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