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February 10, 2016

変革を阻む日本的思考 j-fashion journal(178)

1. Wスタンダードの国、日本

 現在の日本では、、グローバルスタンダードの思想と、日本国内のドメスティックな思想が重複している。
 欧米式の実力主義を導入しようとしても、人事や総務などの管理セクションが、その論理をすり替えてしまうことも多い。そもそも、人事部による一括採用は、日本独自のものであり、欧米では人材の採用は現場の責任者が行うのだ。
 評価や報酬もルールをオープンにすれば、そこに総務や人事が介入することはない。しかし、人事や給与をコントロールするという企業内の巨大な既得権を手放すことはない。その結果、現場権限強化どころか、管理部門の権限が強化されることになり、企業の活力が失われる。
 こうした問題が起こる原因は、判断の基準が明確ではないことだ。ドメスティックなビジネスルールと、グローバルスタンダードのビジネスルールは対立する要素も多い。従って、両者の違いを徹底的に分析した上で、どちらの考え方を採用するのかを明確にしなければ、基準が曖昧になってしまう。ルールを明確化しないままに、グローバルスタンダードと呼ばれるいくつかのルールだけを、自分たちの都合の良いように導入しようとするので、全体の調和が取れなくなるのである。

 しかし、こうした問題は、今に始まったことではない。戦後はアメリカ式のライフスタイルと、日本独自のライフスタイルが対立していた。その結果、公団では、「和洋折衷」という独自の様式が誕生した。この時も、どちらかに統一することはできなかった。
 江戸時代は天皇と将軍という二つの支配者が両立していた。
 もっと歴史をたどれば、神仏混淆がある。大陸から伝来した仏教と、日本固有の神道を、どちらも否定することなく、融合したのだ。挙げ句の果てに、日本の八百万の神々は、実は様々な仏が化身として日本の地に現れた権現であるという、本地垂迹なる、とんでもない説が生まれている。
 逆にいえば太古の昔から、日本は対立概念を統合することなく、両立させてきたのであり、それこそが日本文化の基本になっているとも言えるのだ。
 最も身近なWスタンダードの事例は、本音と建前の使い分けである。本音と建前は違って当たり前だという概念が定着している以上、一つの思想を徹底的に分析することはない。何となく、フワッとした理解で済んでしまうのだ。
 そのため、徹底的に分析し、論理を組み立てるという姿勢も失われていく。各自が自分の都合の良いように解釈し、明確なルールを設定することはない。ルールを決めたとしても、力のある者が独自の解釈をする余地を残しておく。そのため、ルールそのものが曖昧な言葉で定義されている。
  
2.アメリカの流通戦略の表面だけを導入
 
 変革とは、これまでの延長線上の改善ではなく、全く異なる概念による変化を意味する。例えば、メーカー、問屋、小売店という流通が一般的だった時に、製造小売業を展開することは流通の変革だった。そして、変革が起きた結果、旧来の問屋流通は淘汰が始まり、流通全体が変化していった。
 変革の主役は、新規参入の新興企業であり、既存の企業が変革を行った事例は少ない。一度、決まったルールを変えることは、各プレイヤーの関係を変えることになる。あるいは、他人のテリトリーを侵犯することになる。こうしたことは、日本社会ではタプーだ。
 しかし、新規参入者は、既得権もないし、古くからの関係性もない。関係のない者に苦情を言うことはできないし、最初から特定の関係だけを強要することもできない。そのため、革新は新規参入者から生まれることが多い。
 80年代にアメリカで生まれたVMDという概念がある。70年代のアメリカの流通業界は、「バイヤーズ帝国」と呼ばれていた。バイヤーが非常に大きな権限を持っていたからだ。その頃、店頭を演出する職種は、装飾担当に過ぎなかった。装飾担当の責任者と、バイヤーの責任者とは、組織上の地位は全く異なっていた。バイヤーのトップは「部長(バイスプレジデント)」であり、装飾担当の責任者は、「主任」クラスだった。しかし、VMDの重要性が指摘され、アメリカでは、VMD担当を、バイヤーと同じ地位に引き上げた
 日本では、VMDという概念と、専門用語は導入されたが、業務フローや、組織や職制は改革されなかった。結果的に、VMD以前のディスプレイ担当やデコレーターが名称を変えただけ、という事例が多かったのである。
 現在、アメリカの流通業界で話題になっているのが「オムニチャンネル」である。店舗販売とネット販売を統合するために、販売管理、残管理システムを統合し、無駄をなくし、効率的なビジネスを展開することを意味しているが、ここでも、組織上の革新が見られる。店頭販売とネット販売の序列をなくし、トータルに商品戦略や販売戦略を担当するマーケティング担当が全てを統括するのである。
 しかし、おそらく、日本では「オムニチャンネル」という言葉や概念を導入し、いくつかの事例を踏襲するに過ぎないだろう。決して、組織を変革し、職制を改革することはないはずだ。
 結局、日本で本格的な「オムニチャンネル」企業が生まれるとすれば、最初からそれを目指した新興企業に違いない。既存企業に改革は困難だ。
 
3.起業を促す学会活動を

 既存の企業が変革できないならば、ベンチャー企業が変革すればいい。次々とベンチャー企業を生み出す仕組みができれば、業界は変革できる。
 しかし、現在のファンション業界において、既存のビジネスモデルで起業することは難しい。起業するなら、革新的なビジネスモデルが必要であり、革新的なビジネスを行うには起業が必要なのだ。
 ということは、革新的なプロジェクトを実現するには、起業とセットで考えることが必要なのかもしれない。
 起業が成功するか否かは、起業家そのもので決定されると思う。特に、「情熱」「アイディア」「情報」「ネットワーク」等が重要ではないだろうか。
 資本は、優れた事業計画と人的ネットワークがあれば生み出される。ノウハウは、情熱と人的ネットワークがあれば獲得できる。起業家を育成するには、面白い人が集まり、自由にアイディアを話し合い、情報交換する場が必要だ。
 今年になって、私は友人と「ビジネスデザイン@ファッションインダストリー学会」を立ち上げた。目標は、「ファッションの好きな人が、好きな仕事をして、幸せになれるファッション業界を目指す」ことだ。それには、業界内の人間だけで話し合っても解決は見いだせない。IT業界、金融業界等の異業種の人達と話し合い、消費者の視点で業界を考え直すことが必要だと思っている。
 また、一方通行で話を聞くだけではなく、全員がファシリテーションに参加して、自発的に学べる学会運営を考えている。こうした学会の場こそ、起業家を生み出すインキュベーターになり得るのではないだろうか。

*有料メルマガj-fashion journal(178)を紹介しています。本論文は、2015.4.13に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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