My Photo

お知らせ

無料ブログはココログ

« インドに行って、日本と中国を考える j-fashion journal(168) | Main | オムニチャンネル時代のマーケティングアプローチ j-fashion journal(170) »

September 24, 2015

変化するブランディング j-fashion journal(169)

1.生涯付き合いたい人とは?

 あなたが考える「一生涯付き合いたい人」とは、どんな人だろうか。誠実で嘘をつかない人。社会的な責任を持っている人。お金持ち。気前のいい人。どんな人に対しても親切な人。
 勿論、そんな理想の人にめぐり合えることは少ない。理想像でいいから、書き出してみて欲しい。
 ブランド価値とは、そんな人になることである。これは容易なことではない。
 商標を取得すれば、ブランドができたと思う人がいる。確かに、商標がブランドである。しかし、一般に「ブランド」というのは、「ブランド価値」「価値あるブランド」を指している。
 人間も同じだ。人間として生まれたのだから、誰でも人間である。しかし、社会から価値があると認められている人間、尊敬される人間となると、誰でもいいというわけにはいかない。
 ブランディングとは、ブランド価値を育て、ブランド価値を高める活動である。勿論、簡単なことではない。
 もう一つの問題も指摘しておきたい。あなたは、生涯信頼できる人を必要としているだろうか。

 それとも、SNSのような軽い人間関係の方が望ましいと考えているのか。人間同士の関係、商品と人間の関係も変化を続けている。
 軽い人間関係を望む人が増えるように、商品に必要以上の付加価値を求めない人も増えている。そういう人にとって、そもそもブランドなど必要ないのかもしれない。
 そのあたりの意識の変化についても考えていく必要がある。
 
2.ブランディングのためのコレクション

 企業がブランディングに取り組む目的も変化している。その目的によって、ブランディングの手法も変わってくる。
 現在、ラグジュアリーブランドになっているプラダ、ルイヴィトン、エルメス等は、皮革製品からスタートしている。高級な皮革製品により富裕層の人気を得ていたが、そこから、アパレルのコレクションを展開し、ブランドを確固たるものとした。
 皮革製品メーカーがアパレルコレクションを始めたのは、アパレル製品を販売したかったからではない。ブランディングのためにアパレルのコレクションを展開していると言っていいだろう。
 皮革製品メーカーがショップを作ると、メンズ、レディス、フォーマル、カジュアル、スポーツなど、多様な製品を展開するのが一般的だ。自社の生産設備を生かした製品を考えると、どうしてもそうなる。しかし、様々な対象に向けて、様々な用途に対応すると、ブランドとしても性格を固めるのが難しくなる。
 ブランディングとは、用途を広げるのではなく、一つの人格に商品を集約する作業である。
 アパレルのコレクションを展開することにより、ステージに登場するモデルのイメージは固まってくる。音楽や照明、モデルのヘア&メイクやスタイリング等を決定するには、ブランドの性格を明確に設定しなければならないからだ。

3.売場獲得のためのブランディング

 アパレル企業のブランド開発では、必ず企画書が求められる。企画書の内容は、市場背景、顧客ターゲットの設定、ブランドコンセプト、ブランドのポジショニング、ショップデザイン等である。
 不思議なことに、この企画書は、ブランド立ち上がり時期だけ必要とされるものだ。売場が確保されれば、いつものように売れ筋を追いかけてしまう。
 この企画書は、アパレル企業が百貨店やデベロッパーを説得するために使われる。そして、百貨店等では、新ブランド導入の社内稟議や、売場のゾーニングの資料として使われるのである。
 従って、この企画書のポイントは、流通企業のニーズに応えることである。
 もし、SCモールでシニア層を重点的に拡充したいというニーズがあれば、シニア人口の推移、シニア層の購買行動、シニア層のライフスタイルや意識の変化等を分析し、そのブランド企画書を作成する。それにより、シニア層重視のテナント入れ換えやリニューアルが行われる。
 逆に言えば、インターネット販売だけで展開していくならば、この種の企画書は必要ない。

4.顧客へのプロモーション

 ブランディングの基本は、顧客の脳の中に、ブランドイメージを表現し、それを蓄積させることだ。そういう意味では、流通へのプレゼンではなく、顧客への訴求でなけければならない。
 顧客に訴求するのであれば、マーケティングの資料など役に立たない。分かりやすいストーリー、シンボル等が重要であり、顧客の感情に訴求することがポイントである。
 顧客へのプロモーションで成功した事例としては、「今治タオル」が挙げられる。
 今治タオルのシンボルは、デザイナーの佐藤可士和氏によるものだ。佐藤氏の仕事は、単なるグラフィックデザインの範疇には留まっていない。企業であれば、CI(コーポレートアイデンティティ)まで踏み込み、ブランドにおいては、マーケティング戦略まで踏み込む。プロジェクト全体を成功に導くことを目指しているのだ。
 彼の仕事は、プロジェクト全体のクリエイティブディレクターであり、その具体的表現がグラフィックデザインであるということだろう。
 今治タオルのシンボルデザインは、日本らしく、かつ非常に視認性が高い。最初から個々の商品に付けられることを想定している。
 「今治タオル」は、企業のブランドではなく、組合に所属する産地企業のブランドである。そのため、種々雑多な商品が存在する。佐藤氏はその中で白いタオルにスポットをあてることで、ジャカードの柄ではなく、今治タオルの本質的な良さを訴求することに成功した。
 
5.顧客とのコミュニケーション

 顧客とのプロモーションでは、顧客と商品の出会いが重要だ。更に、その商品をリピートして使い続けてもらうためには、「顧客とのコミュニケーション」という視点が重要になる。
 例えば、「オーガニックコットン」は、綿花畑に大量に投与されていた農薬を使わずに、将来の子供たちに汚染されない環境を残そうという運動から始まった。オーガニックコットンと言っても、品質的に通常のコットンと変わるものではない。農薬を使った綿花から紡績した糸でも、製造過程で農薬成分は完全に除去されている。従って、オーガニックコットンの方が健康に良いとか、身体に良いということはない。
 個々の商品の問題ではなく、消費者の意識の問題であり、消費のスタイルの問題である。同じ商品を使うなら、「割高でも環境を汚染しない商品を選ぼう」という姿勢がオーガニックコットンを支えているのである。
 ここまで来ると、商品の品質やデザインも乗り越えてしまう。これは、フェアトレード、様々なチャリティ商品等に共通している。
 ふるさと納税の制度もこれに近いのかもしれない。消費行動は、私的行動だけでなく、社会的な行動とも言える。消費者真理が変化するのであれば、企業もまた社会的な存在として自らのアイデンティティを表現しなければならない。ソーシャルなブランディングが求められているのだ。

*有料メルマガj-fashion journal(169)を紹介しています。本論文は、2015.2.9に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

« インドに行って、日本と中国を考える j-fashion journal(168) | Main | オムニチャンネル時代のマーケティングアプローチ j-fashion journal(170) »

「ファッションビジネス」カテゴリの記事

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

« インドに行って、日本と中国を考える j-fashion journal(168) | Main | オムニチャンネル時代のマーケティングアプローチ j-fashion journal(170) »