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August 09, 2015

つまらなくて儲からない仕事 j-fashion journal(160)

1.儲からない仕事を継承する経営者

 70~80年代は、アパレル業界が成長していた。アパレルの仕事も楽しかった。作り手と顧客の意識がシンクロしており、「次に何が売れるか」が明確に分かっていた。商品企画にも迷いがなく、サンプルが上がった来ると、デザイナーやパターンナーがサンプルを取り合い、試着した。
 当時のアパレルのほとんどは、現在の基準で言えば「ブラック企業」だった。残業手当はほとんど支払われず、夜中まで仕事をしていた。それでも、仕事は楽しく、文句を言う者はいなかった。
 自分たちが一生懸命働けば、売上が上がった。顧客は喜んで商品を購入し、販売員は予算を達成し、会社は成長し、社員の給料は上がった。自分たちの仕事が、会社と社会に直結しているという実感を持つことができた時代である。
 バブル崩壊以後、アパレル企業は簡単に成長できない時代になった。中国から大量の安価なアパレル製品が輸入され、商品価格の水準が下がった。個性を競い合い、いかに高く販売できるかを競い合っていたアパレルが、いかに安く作り、安く売るかを競い合うようになった。

 アパレル企業は、顧客と直接気持ちを通い合わせるのではなく、「トレンド」を仲介した情報分析に依存するようになった。リスクヘッジという言葉が多用され、客観的なデータが重視されるようになった。
 リードタイムが長い素材開発は避けられ、いつでも手に入る在庫の生地から選ぶことが当たり前になった。その結果、益々商品は同質化し、価格競争が激しくなった。
 仕事に追われるようになり、仕事を楽しむことができなくなった。仕事はつまらない。その上、会社の売上、利益は予算を達成できない。こうしてつまらなくて儲からない仕事が蔓延することになった。

2.儲からない会社にしがみつく社員

 企業は利益を上げるために、ビジネスをする。しかし、ある時期に儲かっていた仕事も時代の変化と共に儲からなくなる。
 儲からなくなったら、別の仕事に転換すればいい。それが経営者の仕事だ。現在儲かっていない仕事で、将来も儲かる見込みのなければ、経営者は業務内容を転換しなければならない。
 アメリカ的な発想ならば、不採算事業を売却し、将来性のある新規事業の会社を買収する方法が最も効果的だ。
 しかし、日本人は事業の継承を重視する。先人が築き上げてきた事業を自分の代で終えることを申し訳ないと思う。
 儲からない仕事は、努力しても報われない。努力しても儲からないから、儲からない仕事なのだ。売上も利益も上がらないし、給料が上がる見込みもない。
 そんな中で努力をして成果を上げたとしても、更なる経費削減が待っている。人員は削られ、頑張った人の仕事は増える。仕事が増えても、給料が上がるわけではない。こうなると、努力することさえ馬鹿馬鹿しくなってくる。モチベーションは地に落ちる。程々に仕事をしても、努力しても、結果は変わらないのだ。
 儲からない企業にいる社員は、退職して転職するか、起業すれば、新たな可能性が開けるかもしれない。しかし、その道はリスキーだ。失敗すれば、現状以下になってしまう。 だから、辛くても現在の仕事を続ける人が多い。むしろ、一度自分の仕事と決めたら、それを貫徹することが正しい行為と考える。一生懸命努力していれば、いつかは苦労が報われる、と考えるのだ。
 
3.デジタル技術の進化が時代を変革した

 企業も個人も時代の変化に対応できないで苦しんでいる。これは、アパレル業界に限らず、日本中の企業に共通する現象である。
 この問題を解決するには、「時代の変化とは何か」を読み解かなくてはならない。そして、その変化への対応を考えなければならない。
 時代の変化の根本は、デジタル技術の進化である。文章も音声も画像もプログラムも全てデジタルで処理できるようになった。
 そして、大量のデジタルデータを高速で処理するCPU、大容量のハードディスク、大容量のメモリーのコストが驚異的に下がった。また、それらに見合う高速通信回線が情報インフラとして整備された。誰もがインターネットに接続できるようになり、インターネットという魔法の扉が開かれた。
 インターネットの普及により、劇的に情報量が増え、世界中の情報が猛烈な勢いで飛び交った。そして、次々と新しいビジネスが誕生した。
 多くの人々は、これらの現象を断片的に理解し、個人的に活用している。しかし、この巨大な変化が、既存のビジネスに与える影響を正確に理解している人は少ない。流通企業に勤めている人もインターネット通販で買い物をしている。しかし、自分の勤めている会社がその影響で倒産するかもしれないとは考えない。
 通勤電車でスマホゲームを楽しむ出版社の社員は、その行動こそ雑誌の発行部数を減らしていることに気がついているだろうか。
 オンタイムとオフタイムは使い分ける。会社の仕事は家庭に持ち込まない。公私混同してはならないという個人の生活のルールを守ったとしても、個人の生活が社会に影響を与え、それが企業に影響を与えることを防ぐことはできない。
 インターネットの進化は、製造、流通、小売り、サービス等々、例外なくあらゆる業界に劇的な変化をもたらしている。しかし、インターネットが普及する以前の20世紀末から業務内容、業務フローが全く変化していない企業は少なくない。まだ、変化に対応していないのだ。
 
4.大量生産大量販売は儲からない?

 インターネットは、誰もが新聞社や出版局、放送局になることを可能にした。あらゆる企業は、消費者にダイレクトに情報を伝達することができるのだ。
 そして、SNSにより、会社という枠組みがなくても、世界中の個人同士が互いにつながることができる。
 大量生産大量販売は、生産コストの合理化を可能にしたが、設備投資、店舗経費、販売管理費、流通経費、プロモーション経費、余剰商品の処理費用等を増加させた。インターネット流通を活用したダイレクトな流通は、設備投資、店舗経費、販売管理費、プロモーション経費、余剰品処理費用等を劇的に合理化した。そして、デジタル技術、デジタル機器の進化により、無駄のない少量生産が可能になった。
 最早、大量生産大量販売のメリットは絶対ではない。産業革命から始まったオートメーション的な仕事、作業の標準化と分業化は、仕事を作業に分断し、仕事を達成する喜びを奪った。そして、仕事をつまらなくした。それでも儲かっていれば、我慢もできる。しかし、時代は変わった。大量生産大量販売は、つまらなくて、儲からないビジネスに転落しようとしている。

5.会社は利益優先、個人は面白い仕事優先

 こうなったら、我々の選択肢は三つしかない。「つまらなくても儲かる仕事」を選ぶか、「面白くて儲からない仕事を選ぶか」、「面白くて儲かる仕事を選ぶか」である。
 更に、二つの選択肢がある。これまで通りの「閉ざされた会社の中で組織の一員として働くか」、「個人主体で働くか」である。個人主体と言っても、トレーダーのように全くの個人で働く場合だけでなく、必要に応じて、チームを編成するケースも増えるだろう。
 例えば、facebookやLINEでグループを作り、Googleカレンダーでスケジュールを共有して働く、ようなスタイルだ。これが可能になれば、個人は複数のチームに所属するのが普通になるだろう。
 会社が多くの社員を抱えるのではなく、個人が多くのチームを作り、多くのチームに所属するというイメージである。しかも、仕事のチームと趣味や遊びのチームという違いもほとんどなくなるだろう。こうしたワークスタイルが定着すれば、オンとオフ、公私混同という言葉もなくなるかもしれない。
 会社は利益を上げるためのチームなのだから、「大きな利益を上げて、社員に高い報酬を支払う」ことが求められる。仕事が楽しいか、つまらないかは関係なく、利益と報酬が会社のミッションになる。
 個人で働くならば、面白い仕事が優先されるだろう。「面白いボランティアの仕事」、「面白いけど儲からない仕事」、「面白くて儲かる仕事」のいずれかだ。どんな仕事も最初から儲かることはないので、まず面白い仕事を始めることだ。それが儲かれば言うことはないし、儲からなくても面白い仕事なら楽しい人生を過ごせるようになるだろう。

*有料メルマガj-fashion journal(160)を紹介しています。本論文は、2014.12.8に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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