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August 26, 2015

パラレルワールドに生きる時代 j-fashion journal(164)

1.パラレルワールドに生きる時代

 SF小説に登場する「パラレルワールド」は、我々の時空と並行して存在する別の時空を表す言葉だ。
 最近、「我々は、同一の時空ではなく、別々のパラレルワールドに住んでいるのではないか」と思うことがある。そんな違和感を感じるようになったのは、SNSが普及してからだ。それまでは、他人の個人的なつぶやきや、信条を知ることはなかった。我々は、同じように世間の常識に従って考えたり、行動していると思っていた。ところが、SNSにより、全く別の常識を持っている人が数多く存在することを知った。
 SNSの画面は、人それぞれだ。ツイッターは、自分の気に入った人をフォローし、その人達のつぶやきだけを見ている。「ツイッターでは、皆、○○と言っている」というツイートを見かけるが、その人のタイムライン上のことに過ぎない。私が見ている画面では誰も○○と言っていない、ということも起こり得るのだ。
 facebookも友達の投稿だけを見ているのだから、一定のグループの発言を見ているに過ぎない。それを見て、世論や常識と思うのは錯覚である。

 マスコミの功罪はいろいろあるが、少なくとも、国民の大多数が同じ情報を共有するという機能は果たしていた。しかし、新聞もテレビも見ずに、SNSだけに情報を依存していると、気がつかないうちに特定の思想に偏っていくこともある。自分の好きな相手を選んでいるうちに、互いに影響し合い、特定の思想に固まっていくのだ。特定の教祖は存在しなくても、ある種の宗教的コミュニティが形成されるかもしれない。しかも、それは他の人々には関係のないところで進行していくのだ。
 我々は、同じ時代、同じ社会に生きているが、接している情報は全く異なっているのかもしれない。
 反面、オフラインの世界では、人間関係を重視し、場の空気を読みながら、行動している。あからさまな意見の対立や議論は、決して起こらない。真実の顔も見えにくくなっているのである。
 
2.パラレルな企業戦略

 ビジネスもパラレルにシフトしている。
 これまでの繊維ファッション業界は、横並びの護送船団方式が主流だった。皆で中国生産に集中したり、ASEAN諸国に移転するように。護送船団方式を選択するメリットは、スケールメリットによるコストダウンが図れることだろう。大量生産大量販売のビジネスモデルでは、コストダウンが最大の競争力となるからだ。
 大量生産大量販売は必然的にコモディティに向かう。大量販売を行うには、標準化された店舗を多店舗化することが必要だ。多店舗化すればするほど、商圏は狭くなる。狭い商圏で採算を取るには、毎日使う商品、コモディティ商品を販売するしかない。
 付加価値の高い商品、趣味性の高い商品、限定的な顧客しか購入しない商品を販売するには、商圏を広く設定しなければならない。商圏を広くするには、多店舗化してはならない。
 ネット流通の場合、商圏は広い。しかし、同一のコモディティ商品を多くの店舗で販売する場合には、ネット上で価格を比較される。最も薄利で販売する業者が選択されるのだ。限定商品で需要が供給より多ければ、価格比較によりプレミアがつくかもしれない。つまり、ネット販売には「薄利多売」と「厚利少売」の二極化したビジネスモデルが存在するということである。
 二つの対立したビジネスモデルが存在するということは、正解は一つではないということだ。
 「中国のコストが上がった」ことも、生産という面で見れば厳しいが、消費という面で見れば市場が成長することにつながる。中国生産商品を中国市場で販売できれば、多少のコストアップは吸収できるだろう。
 コモディティ商品は中国生産のコストが見合わないかもしれないが、中国で高級品を生産するという戦略も考えられる。中国からASEAN諸国への生産移転は、コモディティ商品なら意味があるかもしれないが、高付加価値商品の生産には向いていない。
 同様に考えれば、日本国内の生産にも可能性はある。しかし、中国生産商品と同様のビジネスモデルでは成立しないだろう。価格設定も売り方も変えなければならない。
 ファッションビジネスに特定の方程式や正解はない。各企業の経営哲学が重要であり、各企業がオリジナルのビジネスモデルを構築しなければならない時代になっている。

3.小は大を兼ねる

 店頭で販売することを前提にすると、店頭を埋めるだけの商品が必要になる。1店舗だけでも1000店舗でも、店舗に必要なデザイン数は変わらない。1型あたり10枚生産するか、1万枚生産するかの違いである。アパレルの企画という仕事を中心に考えれば、「大は小を兼ねる」と言うより「小は大を兼ねる」の方が相応しいだろう。ネット販売ならば、一つのデザインでも10枚売れるか、1万枚売れるかの違いはあるが、商品企画としてやることに大きな違いはない。
 勿論、仕入れ、生産、物流等の作業は、10枚と1万枚とでは大違いである。資金繰りも重要な課題である。しかし、資本力のあるメーカーと組むことができれば、その問題も解決する。
 私の友人が「上質でベーシックな服がない」とこぼしていた。現在のファッションビジネスは、情報をコントロールして、シーズン毎にある種の熱狂を作り出し、商品を売り切るというビジネスモデルである。プロパー比率が高ければ儲かるし、セール比率が高くなると儲からない。
 一度、セールに掛けた商品をプロパーで販売することは難しいので、次々とデザインを変化させることになる。変化の指標は、欧州のトレンド情報である。
 このビジネスモデルを続ける限り、ベーシックで上質な商品を継続的に供給することはできないだろう。
 継続的に良質な商品を供給するには、ブームにしないことである。できれば、継続的に一定量を生産し、販売すること。そして、常に需要が供給を上回るように情報をコントロールすることだ。
 今後は、スモールビジネスが重要になる。売上の大小で判断するのではなく、ブランディングが重要である。具体的には、コンセプトと顧客とのコミュニケーションが問われるだろう。売上を増やしたければ、資本力のあるメーカーにセカンドブランドをライセンス供与することを考えればいいのだ。

4.「宗教の時代」のファッション

 コンセプトとは、生き方の提案であり、ライフスタイルの提案である。大袈裟に言えば、人生哲学の提案である。これは、宗教にかなり近い。
 私は、科学の時代から宗教の時代に移行しているのを感じている。例えば、遺伝子工学のような科学が発達し、クローンを作り出すことが可能になっている。それを認めるか否かは、科学の問題と言うより、宗教の問題ではないか。
 科学の進化には、必ずメリットとデメリットが伴う。利便性が増しても、それで人間が幸せになるとは限らないからだ。既に、科学の可能性の追求という段階は過ぎているのかもしれない。これからは、何を選択するか、だ。あるいは、放棄するという選択肢もあるかもしれない。
 ファッションにおいても、変化を放棄するという生き方も出てくるだろう。それが極端になれば、アーミッシュのような生活を理想とするかもしれない。
 また、マニアックな世界に価値観を置く人達は、その世界独特のコスチュームをまとうかもしれない。
 最近、「フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ“暮らしの質"を高める秘訣~/ジェニファー・L・スコット (著), 神崎 朗子 (翻訳)」という本がベストセラーになっている。例えば、デザイナーが何人か集まって、各人が10着の服をデザインするのはどうだろうか。但し、そこには、明確なファッション哲学とコンセプトがなければならない。そして、その服はシーズン毎にミリ単位の修正をしながら、何年も継続して販売するのである。
 「型数を絞る」ことは、非常に重要なことだ。型数を絞ることでサイズ展開が可能になる。また、素材のバリエーション、カラーのバリエーションを持つことができる。
 そして、ファストファッションとの徹底した差別化になる。勿論、企画のコストダウンにもつながるのだ。

*有料メルマガj-fashion journal(164)を紹介しています。本論文は、2015.1.5に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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