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August 24, 2015

ヤングアパレルへの改善提案 j-fashion journal(162)

1.企業内の課題

 成長している会社ほど、人材が足りない。そして、人材は募集すれば集まると思っている。しかし、人材はどこかで勝手に育つわけではない。どこかの企業で採用され、教育され、責任ある仕事に就いてこそ、人材は育つ。バブル崩壊以降、社内のリストラに追われ、新卒採用を止めてしまったアパレル企業が多い。業界全体で人材を育ててこなかったのだ。
 新卒採用を継続したアパレル企業も、90年代半ばからは、激安商法が中心となり、「いかに安く作って、安く売るか」が主な仕事だった。最近、市場が求める上質な商品など作った経験はないはずである。
 責任ある仕事に就くには5年程度の経験は必要だ。90年に新卒で入社し、95年まで上質な商品を作ったデザイナーがいても、2014年で44~46歳にはなっている。「経験を積んだ仕事ができる30代のデザイナー」は、ほとんど存在しない。存在したとすれば、現在の会社でも手放さないだろう。
 勿論、全く存在しないというわけではない。意識の高い人は、どんな環境でも育つことができる。しかし、必要になったからと言って、募集すれば集まると考えるのは、あまりにも短絡的である。

 組織全体を見ると、個別に育った少数の人材と、支持待ちでしか動けない人材が混在している。
 最も問題なのは、能力の低い人材が多数派となり、能力のある人材が孤立したり、追い出されてしまう事態である。例えば、優秀な女性を、無能な男どもが追い出すという話は決して少なくない。
 ファッションは予測ビジネスであり、いかに需要を予測するかが重要だが、最初から予測を諦めてしまう営業担当やMDも多い。彼らは、昨シーズン売れた商品をリピート生産するのが好きだ。実績がある商品だから、リスクが少ないと考える。新しいデザインは、売れるか売れないか分からないのでリスクが高いと考え、新しいデザインを「没」にして、実績商品を生産する。一定まで成長して、そこから衰退するアパレルの多くは、この病気に陥っている。
 そして、能力のない販売員は「商品が安くないと売れない」としか言わない。本当に能力のある販売員は、「一定時間接客しても安い商品だと売上が上がらない」と言うものだ。
 能力のない担当者が集まってチームを作ると、「一切の冒険はせずに、無難な実績商品だけを、より安く販売すればいい」という結論になってしまう。その結果、優秀なデザイナーのモチベーションは下がり、店頭は陳腐化し、売上も利益も上がらないという状況に陥ってしまうのである。
 これを防ぐには、結果を科学的に分析し、シーズンが終わった時点で次のシーズンの方針を固め、それを記録しておくことだ。新デザインの商品と、リピート商品の売上と消化率を比較すること。売れると思って予測通りに売れた商品、売れないと思ったのに売れた商品、売れると思ったのに売れなかった商品をすべて書き出し、「なぜ、売れる、売れない」と思ったかを記録しておくことである。
 多くの人は、シーズン末のことは、次のシーズンが始まる頃には忘れてしまう。そして、毎年、同じ過ちを犯すのである。
 
2.マーケティング上の課題

 アパレルの9割は、ヤングをターゲットにしているらしい。少なくとも、SCモールのテナントを見る限り、ほとんどがヤング向け商品である。
 しかし、SCモールを歩いているシニア層は少なくない。シニア向けのショップがないので、シニア層は、ユニクロに吸い込まれていく。他のテナントは、「シニア層はユニクロに任せておけばいい」と考えているのだろうか。
 今後5年、10年を見ると、益々ヤング人口は減少し、シニアの比率が増える。
 この問題は、アパレル業界全体が取り上げるべき問題だと思う。私もシニアに近い世代なので、シニアの気持ちは分かる。若い人は、「シニアもヤングの服を着ればいい」と思うかもしれないが、ヤング向けの服は似合わないし、満足できない。この感覚は、30~40代の人には理解できないかもしれない。
 私は、ヤングのブランドでも、一部の商品をシニアでも着られるディティールデザイン、パターン、サイズにすることを提案したい。デザインによっては、サイズだけのコントロールで良い。あるいは、基本デザインはヤングと同じで、襟ぐりや袖の一部だけを変えるだけでシニアに対応できることもある。テキスタイルも、シニアだけでなく、ヤングも着られる上質なものを選べばどちらにも販売できるだろう。
 こうした商品を一定量加えるだけで、ショップのイメージを年寄り臭くせずに、売上を上げることが可能だと思うのだ。
 
3.社内の関係性改善

 ICT企業等では、科学的に組織力向上をアプローチする企業が少なくないが、アパレル企業では非常に少ない。
 私は以前、組織コンサルティング会社(株)びりかんと合同セミナーを開催した。私は、彼らと一緒に、是非、アパレル企業の組織内の問題解決を行いたいと考えている。私は、アパレル企業の業務を理解しており、課題の抽出から改善提案をすることもできる。そこに、(株)びりかんの組織コンサル的なアプローチが加われば、新しいアパレル企業の組織作りや、運営モデルができると思う。
 例えば、経営者と社員間、部門間などに意識のズレが大きい場合、社内がギスギスした ムードになっている場合等は、新しい人材を採用しても、すぐに退職してしまうことが多い。そこで、社内アンケートを実施し、どのポイントにズレや不満が発生しているかを調査し、アンケート結果をもとに関係性を高めるワークショップを数ヶ月間、毎月実施する。ワークショップは、互いの感謝を伝えるなど関係性の向上につながる内容であり、活気のある雰囲気や意見の言いやすいムードなどを社内文化として徐々に定着化することが可能になる。そのことが、帰属意識や愛社精神が高まることにつながるのである。
 意識の問題は、トップダウンでは伝わらない。「意識を変えろ」とハッパをかけても、意識は変わらない。時間をかけて、話し合い、互いを理解することは遠回りのようだが、結果的には最も合理的な対応と言えよう。

4.業務の棚卸とルール化

 多くの企業では、一部の人間に業務や意思決定が集中している。多くは、ベテラン社員であり、彼が定年退職する前に、「次世代を育成しなければならない」という課題が出てくる。
 しかし、人材が育つには、それなりの環境が必要だ。経済成長期は、若い人が責任ある仕事を任されたし、仮に失敗しても取り返すことができた。
 新しい世代の社員に、ベテラン社員と同様の経験をさせることはできないし、同じような仕事も存在しないだろう。経済衰退期になると、経営そのものが保守的になり、新しい分野に手を出さなくなり、ルーチンワークだけを繰り返す仕事が増えるからだ。
 ベテラン社員に匹敵する若手社員を採用したり、育成することは非常に困難である。それならば発想を変え、新たなモチベーション、新たなチームのあり方を考えた方が良いのではないか。
 もしかすると、現状の社員にも潜在的な能力が眠っているかもしれない。能力はあっても、部署や役職の枠に閉じ籠もっていると、ごく一部の能力しか使わなくなる。新しい仕事を与えれば、新しい能力が開花する人材も少なくない。
 能力がある人材がいるから、仕事が存在するのではなく、良い仕事が設定されるから、人材は育つ。良い仕事を設定するには、業務フロー全体を俯瞰しなければならない。その上で、役割分担と責任の明確化、業務マニュアル、業務シート等を整備することで、業務の比重を分散し、楽しくやり甲斐のある仕事に改善することが可能になるかもしれない。
 同時に、社内人材に対する教育が必要であれば、その内容を整理し、動画を作成し、社内教育システムとして蓄積することも有効だろう。

5.新企画の提案

 多くのヤングアパレル企業は、カジュアル商品を展開している。多種多様な色、素材が使われており、それが魅力にもなっている。
 私から見ると、素材構成も整理されていないし、カラーパレットも設定されていない、混沌とした状態である。しかし、古着やセレクトショップに慣れている若者には、統一感よりも宝探しのような店づくりの方が良いのかもしれない。実際、売れている店を、きれいに整理してしまうと、売れなくなることもある。
 但し、ヤング向けではなく、シニア向けの商品を加えるということであれば、その部分を整理することは効果があるだろう。
 前述した、マーケティング上の課題を解決するためにも、商品構成の一定比率は、シニア層まで着用できるデザイン、パターンにすることも検討するべきだと思う。
 その前提のもとで、テキスタイルを軸にした合理的な商品構成を進めるのはいかがだろうか。シニア層向けの場合は、特にカップルでの買い物を想定すべきであり、できれば、メンズ&レディースの展開を考えたい。
 例えば、「オーガニックデニムを中心にした大人のジーンズライフ・コレクション」
 ジーンズと言っても、ベーシックな商品は市場にあふれている。むしろ、アンチベーシックの商品を志向すべきだろう。
 あるいは、「インドシルクを中心にしたインティメイト&インテリアコレクション」はいかがだろうか。アパレル市場が低価格化したことで、シルクはほとんど姿をを消してしまったが、インティメイトとインテリア、リゾートシーン等に絞ることで、大人のコレクションが構成できるだろう。
 いずれも、ヤングの上級者のニーズを満たすことができる分野でもある。
 こうした商品を現状のコットンや合繊の商品に加えることで、他ブランドとの差別化も可能になるのではないだろうか。

*有料メルマガj-fashion journal(162)を紹介しています。本論文は、2014.12.22に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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