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August 09, 2015

bd@FashionIndustry学会設立決起集会 j-fashion journal(161)

1.学会のビジョン

 2014年12月14日、立教大学にて、「bd@FashionIndustry学会設立決起集会」が開催された。本学会の発起人は、私、シナジープランニング代表坂口昌章と、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科の瀧澤哲夫教授。
 私は業界に詳しい専門家として、瀧澤教授はビジネスデザインという異なった視点から「ファッション産業にイノベーションを起こそう」というのが、学会設立の目的である。
 最初に、学会のビジョンのイメージを話し合った。その結果が、「ファッションを愛する人達が 幸せにファッションに関われるような ムーブメントをつくりたい!」だ。
 通常、産業を語る時には、産業が主役になる。「繊維関連の国内製造業を守るための課題とは何か」「それを改善するにはどうすればいいのか」等である。
 しかし、こうしたアプローチは成果を上げていない。業界の問題は、当事者だけで解決することはできない。得意先が賛同してくれることが条件であり、その先には消費者から支持されることが必要だ。消費者が動かなければ問題は解決しない。したがって、消費者と生産者は、WIN-WINの関係にならなければならない。生産者の幸せだけでなく、消費者の幸せも同時に考えなければならない。

 我々は、原産国がどこであろうと構わない。しかし、日本製の製品を訴求することで、ファッションを愛する人達が幸せになるなら、それを支持する。フェアトレードをすることで、その事業に携わる人達が幸せになるのなら、それもいい。
 産業が主役になると、「産業の発展のためには個人が犠牲になるべし」という考え方が出てくる。安い給料で馬車馬のように働くことは、産業や企業側にはメリットがあっても、そこで働く人にとってはマイナスだ。
 昔、多くのアパレル企業は、残業手当を正当に支払っていなかった。現在の基準で言えば「ブラック企業」だが、経済成長期のアパレル企業の仕事は楽しかった。会社の幸せと個人の幸せがリンクしていたし、それが社会の発展にもリンクしていた。個人のモチベーションは上がり、企業は成長した。
 激変する現在の環境の中で、70年代、80年代のようにファッションが輝きを取り戻すことはできないのだろうか。そんな素朴な願望が本学会誕生のきっかけである。

2.ファッション業界の課題

 人間を中心に考えると、ファッション業界の課題は、以下のようにまとめられるのではないか。
 ファッション業界は「元気じゃない。幸せじゃない。辛いのに儲かってもない」だから、元気になって幸せになって、楽しく儲ければいいのだ。
 我々にとって、仕事とは何だろう。多くの人にとって、仕事は生活の手段だ。仕事をすることで生活するための報酬を受け取る。
 あるいは、仕事が好きなので、儲からなくても仕事をしたい、という人もいる。好きな仕事を続けるために、生活費はアルバイトで稼ぐという人もいる。この人にとって、アルバイトは仕事ではない。生活費を稼ぐための労苦だ。
 理想的なのは、好きな仕事をして、十分な収入を得ることだ。
 70年代、80年代のアパレル業界が楽しかったのは、好きな仕事をして、会社が成長し、個人の収入も上がったからである。
 しかし、ビジネス環境は大きく変わった。85年のプラザ合意によって、円高ドル安が容認され、欧州のラグジュアリーブランドが手の届く価格になった。これにより、次第に国産プレタ、DCブランド等の国内アパレルのシェアが失われていった。
 更に、中国の改革開放政策により、80年頃から経済特区が設置され、縫製工場などが進出を強めた。92年の南巡講話により、中国生産シフトは決定的なものになった。日本の商社は競い合うように、中国に合弁会社を設立した。そして、量販店の売場は中国製品に独占された。
 日本のアパレル市場はデフレスパイラルに陥り、市場が収縮した。そして、アパレル企業、小売流通、繊維製造業者の淘汰が進んだ。気がついてみれば、2014年のアパレル製品の輸入浸透率は96%を超えている。
 世界市場を見ても、ファストファッションがシェアを高め、世界中に新興国の繊維製品があふれている。
 その結果、時代の変化に対応せず、事業領域、ビジネスモデルを刷新できなかった企業は、元気がなくなり、そこで働く人も幸せを感じることができなくなった。そして、辛い仕事に耐えて頑張って働いても、儲からないのである。
 ファッション業界の企業は、自分の仕事を変えていない。「ビジネス環境が変わって、業績が落ちたのだから、ビジネス環境を元に戻せばいい」と考えている。しかし、ビジネス環境は元に戻らない。ビジネス環境を変えることは、世界経済を動かすことだ。そんなことを考えるなら、自社の業務を変える方が合理的だ。
 そして、顧客が喜んでくれることを考えなければならない。そうすれば、儲かる。
 最近、「第一次産業の農業や漁業は、第六次産業を目指すべきだ」という声を聞く。本業以外に、第二次産業の食品加工や調理、第三次産業のレストラン等を経営して、新しいビジネスモデルを構築することにより、儲かる農業が実現するというものだ。
 ファッション産業でも同様のことはできるだろう。しかし、ここで気をつけるべきことは、「外国人からも高い評価を受ける製品であること」だ。日本の技術や品質を讃える人は多いが、海外の製品を知らずに、自画自賛しているケースも少なくない。外国人から評価されるということは、海外製品との競争力があるということだ。
 不味い野菜を作る農家がレストランを開いても、客は来ない。不味い魚を獲る漁師も同じだ。第六次産業が成立するのは、第一次産業の部分が突出して優秀だからこそ成立するのだ。
 ファッションの製造業も同様だ。グローバルに見ても魅力のある素材、技術、製品が条件だ。魅力があるとは、工賃が安いということではない。どんなに日本工場が工賃を下げても、中国やASEAN諸国には太刀打ちできない。
 日本に求められているのは突出した品質や性能、デザインである。これらは単独の技術の問題ではない。優れた経営マネジメント力、デザイン力、資金調達力等が組み合わされなければ、実現しないのだ。
 それには、優秀な人材が必要だ。人材を活用するには、雇用するだけでなく、コラボレーションという方法もある。いずれにしても、既存の人材だけで新事業に挑戦するのは危険である。
 また、ファッション業界が第五次産業(第二次+第三次)を目指すことは、かつての「問屋無用論」より厳しい。問屋だけでなく、小売店も抜いて、自社で一貫して行うことが求められるからだ。
 挑戦しなければ、ジリ貧である。挑戦すれば、大きなビジネス上の摩擦が待っている。
それでも、自分が幸せになり、顧客を幸せにすることを優先しなければならない。そうしなければ儲からないのだ。
  
3.キーワードは「オープン化」

 現状のファッション産業をイノベーションするには、「オープン化」がキーワードになる。
 オープン化とは、オープンでなかったものがオープンになることである。
 例えば、問屋流通が全盛だった頃は、産地情報は公開されていなかった。したがって、誰も産地にどんなメーカーかあるのかを知らなかった。知らなければ受注することもできない。
 問屋流通がほぼ崩壊した現在も、商慣習を頑なに守り、情報を公開しないメーカーは少なくない。反面、情報が海外に伝わり、海外企業からの受注に成功したメーカーもある。
 繊維流通の取引形態もオープンとは言い難い。繊維流通は、基本的に信用商売であり、オープンに競争入札をすることはない。リーマンショック以来、加速しているグローバル調達の波には全く乗れていないのだ。
 更に言うならば、ファッション業界の取引そのものがオープンではない。例えば、百貨店は取引口座がない企業からは商品を仕入れない。口座があろうがなかろうが、良い商品があれば、世界中のどこからでも仕入れるという姿勢がなければ、グローバルな競争力は得られないだろう。
 アパレルが小売価格を決めて、その掛け率で小売店に卸すという形態もオープンではない。本来ならば、販売先がどこであっても同じ商品は同じ価格で販売すべきであり、それがグローバルスタンダードだ。価格もオープンプライスにすべきなのだ。
 産地企業ももっとデザイナーやクリエイターに門戸を開放すべきである。そして、自社の生産設備をいかに活用して互いに利益を上げるかを考えなければならない。
 ファッションの教育機関もオープンにするべきだ。当然のように、固定した教師や講師が教えるのではなく、その内容が現在、将来のファッションビジネスに有用かどうかを常に評価し、常に内容を変革しなければならない。それができないから、ファッション専門学校は著しく衰退してしまった。それなのに、未だに人材もコンテンツも変えようとしない。ファッションビジネスが変わったのだから、教育を変えなければならない。
 勿論、今回の学会もなるべくオープンに運営したいと思う。ファッション企業の経営者、専門職、異業種の人、行政の人、学生等の人々に集まっていただき、様々な視点からファッション業界を変革するようなムーブメントを起こしたいと思う。 
 
4.学会のゴールイメージ

 学会のゴールイメージとして、以下のような項目を上げてみた。
 *日本のアパレルが元気だった70・80年代頃の熱気を取り戻すのに一役買っている。
 *あの学会だけはほかの学会とは一味違うと業界内外で噂されている。
 *業界をオープン化する流れを学会が牽引している。業界外からの様々な意見を取り込み、今までにない新しい取り組みが増えて各社が楽しそうにワクワクして取り組んでいる。
 *研究内容レポート化され出版も行った。その内容が起点となり、業界内で様々なイベントなどが巻き起こる。そして、各社で今後の企画や開発、労働環境改善に活かされてる。徐々に業界全体が進化して、業界内の人達が幸せになっている。
 *学生もアパレル業界に面白さや夢を見いだせるようになってきた。
 *学会がプロトタイプイメージを作って、みんなで出資して新会社を実験的に作っている。日本のアパレルを変える会社になりそうだとみんな期待している。
 せっかく新たな活動を行うのだから、この程度のことは実現したいと思う。もし、興味がある方がいらしたら、一緒に取り組んでみましょう。そして、ファッション業界を楽しくて、エキサイティングで、面白い業界にしましょう。

*有料メルマガj-fashion journal(161)を紹介しています。本論文は、2014.12.15に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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