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July 14, 2015

ファブ時代のファッションビジネス j-fashion journal(147)

1.デザインを職業にできない世代

 2014年9月7日、原宿のcoromozaにおいて、TOKYO FABBERS'MEETINGが開催された。テーマは「ファッション」。興味深いテーマだったので、私も話を聞きに行った。
 その中で、印象に残ったことが二つあった。
 第一は、ファッション専門学校の学生が、「就職は学校の就職相談室に任せていて、深く考えていない」こと。そして、「デザイン活動としては、自分のブランドを作りたいと思っているが、それが職業になるとは思っていない」と考えていること。
 就職氷河期のアパレル企業は、新卒のデザイナー、パターンナーを採用しなくなった。即戦力としての経験者だけを契約社員で採用していたのだ。最近になって、「30代のデザイナーを探している」という声を良く聞くが、20年近く新卒のデザイナーを採用しなかったのだから、企業内で経験を積んだ30代のデザイナーなどいるわけがない。

 それでも、「企業内で人材を育成しよう」と考えるアパレル企業は少ない。というより、企業内で人材育成するノウハウもなくなっている。
 そんな状況が続き、専門学校の学生の意識も変わった。ファッション専門学校に進学する高校生も激減している。
 デザイナーになりたい学生は多いが、企業内でデザイナーとして働くことはできない。ファインアートのクリエイターのように、趣味としての活動が中心になっている。
 もう一つ、驚いたことがある。原宿のCOROMOZAで開催している「洋裁教室」がキャンセル待ちの盛況というのだ。
 ファッション専門学校は、家庭洋裁を教える洋裁学校からスタートした。その後、アパレル産業の成長と共に、職業教育に転換していった。そのファッション専門学校の人気が落ち、趣味の洋裁、あるいは自作のための洋裁教室は人気が出ている。しかも、受講生の年齢は20代から30代の若い女性だという。
 家庭用ミシンの購入者は、50代、60代が中心である。これらの人々は洋裁の経験者だろう。シニア層とは異なる洋裁未経験の若者が洋裁に興味を持っているのだ。
 ファッション専門学校でデザインコースに進んでも、結局は就職できず販売員として就職するのであれば、大学に進学し、趣味で洋裁教室に通った方が堅実だ。2年も3年も学校に通う必要はなく、週一回程度洋裁を習う。作品はネットで販売し、人気が出れば、量産も可能かもしれない。初期の資金調達ならば、クラウドファンディングという方法もある。
 生活のための仕事と趣味としてのモノ作りを分けて考えることは、現在の環境下では合理的とも言える。
 
2.半製品を販売すること

 私が昔から温めている企画がある。それは、プラモデルのような形態でファッションを販売できないか、ということだ。
 現在、デザイナーがデビューしようと思えば、生地や付属を仕入れ、それを製品にしなければならない。最初にサンプルを作るのだが、サンプルを作るためには、パターンを作り、サンプル屋さんや縫製工場に加工賃を支払わなければならない。そして、サンプルをファッションショーや展示会でプレゼンして、受注を取る。しかし、受注を取れるという保証はない。
 現在のように、大手のファストファッションが市場を独占している状況では、新人デザイナーの商品を買い取り条件で仕入れる専門店が生き残っていくのは困難だ。
 そこで、デザイナーによる「生地と付属とパターンをセットにしたキット販売」を考えたのだ。アパレルのファブがあれば、そこで縫製すればいいし、ファッション専門学校の学生ならば、学校で縫製してもいい。
 あるいは、サンプル屋さんに縫製を依頼することもできる。
 生地を乗せ換えて、オリジナル商品として販売したければ、受注後にテキスタイル問屋やテキスタイルメーカーから生地を仕入れればいいのだから、リスクはない。
 シアタープロダクツの“THEATRE, YOURS”というプロジェクトは、この発想に近いもので、私も大いに共感し、微力ながらお手伝いさせていただいた。“THEATRE, YOURS”のオリジテルパターンには、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス「表示 - 非営利 2.1 日本 (CC BY-NC 2.1)」を付与して販売している。これにより、 型紙は、作者名などのクレジットを表示し、かつ非営利目的であることを条件に、自由に複製・改変したり、改変した作品を 再配布することができる。
 「著作権を明確に規定した上で公開する」ことは、ファブ時代の服作りにとって、非常に重要なアプローチと言える。こうした動きが広まれば、一からパターンを引かなくても、パターンをアレンジしたり、サイズをグレーディングすることでオリジナルの服を作ることができる。
 私は、その仕組みにテキスタイルコンバーターや、テキスタイルメーカーを参加させたいと考えている。安価な定番素材ならリピート可能だし、こだわりの限定テキスタイルなら、世界に一つだけの服ができる。
 また、織ネームメーカーが参加することも重要だ。パターンをアレンジし、オリジナルの織ネームを付けることは、ブランディングの第一歩につながるからだ。
 
3.FASHION-FABの条件

 現在のファッションFABは、設備、ネットワーク、人材等のリソースが不十分だと思う。
 まず、テキスタイルとアパレルは分けて考えなければならない。
 テキスタイルFABとは、どんなイメージだろう。最も簡単なのは、決められた基布を用意し、後加工することだ。スクリーンプリント、インクジェット型デジタルプリント、昇華転写型デジタルプリント、コンピュータジャカードの刺繍機。
 織機を設置するなら、欧米にあるような、コンピュータ制御のドビー装置を付けた手織りに近い簡単な織機がいい。(この存在は、テキスタイルデザイナーの新井淳一氏に伺った。新井さんは「ドビコン」と呼んでいた。)
 本格的な設備ということになれば、トヨシマビジネスシステムの「織華」が良い。量産のテキスタイルメーカーへの指図も可能だが、誰でも簡単に使える機械ではない。かなりの熟練が必要である。
 また、切り売り対応のテキスタイルコンバーター、テキスタイルメーカーとネットワークすることにより、生地調達を可能にしておくことも重要だ。
 アパレルFABには、出力機としてのパターンCADを設置したい。それを使って、前述したクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを付与したパターンを出力し、販売することができる。
 また、パターンメーキングの会社ともネットワークをつなげる。新人デザイナーや小規模アパレルは、ベテランのパターンナーを確保することが難しい。パターンを外注できる体制を組んでおくことは、ビジネスにつなげる上では重要だ。
 織ネーム、プリントネームのメーカー、付属卸とのネットワークも必要である。
 ブランド織ネーム、洗濯ネーム、ボタン、ファスナー、裏地、芯地、パッド等を発注できるようにしておくことはアパレル生産に欠かせない。
 ミシンは直線縫い、ロックだけでなく、専門ミシンがあるのが理想だが、その場合にはオペレーターも必要になる。素人に高度な機械を扱わせると、故障の原因になるからだ。
 人材として、パターンメーキングと縫製ができるモデリストを確保したい。ベテランと若者のバランスも重要になる。
 こう考えていくと、「ファッション専門学校の設備や機能を活用したアパレルFABはできないのだろうか」と思う。そうすれば、インターンシップという形態でオペレーターを確保することができるからだ。
 これまで、ファッション専門学校は、ショップを作ることに熱心だったが、今後はFABを作る方が良いのかもしれない。
 
4.FAB時代のファッションデザイン

 FABが普及すると、大量生産の既製品を購入するのではなく、「自分で作る」ことに価値を見いだすようになるだろう。そうなると、技術者も特定の工程だけを担当するのではなく、かつてのオートクチュールのクチュリエのようなトータルなスキルが求められる。
 そういう意味では、モノ作りが産業革命以前に回帰するとも言える。但し、現在はデジタル技術が活用できるのだ。
 採寸は、3Dスキャナーで行うことができるし、パターンを紙に出力することなしに、直接CAMの一枚裁断機で裁断することもできる。
 既製服の時代になって、単品コーディネートという考え方が生まれた。ジャケットとパンツは別の生地を使い、それを組み合わせるという考え方だ。
 オーダーメイドの時代は、同一生地を使ってスーツやアンサンプルを作った。一つの工房で全てのアイテムを生産していたからである。
 さて、FABの時代のファッションはどのような特徴を持つだろうか。オーダーメイドのように、同じ素材で全てのアイテムを作ることも可能である。あるいは、自分オリジナルの刺繍、プリント、織ネーム等で統一感を出すこともできる。
 デジタルプリントもプリントの総柄の生地を作るだけでなく、異なるアイテムの共通性を演出するパーツを作ることにも適している。
 3Dプリンターの素材が改善されれば、オリジナルのボタンや、パーツを作ることもできる。それより、独自のファッションを創造することができるのだ。
 既製服は、専門家による服作りだが、FABは高度な技術を必要としない服作りが主流になる。
 例えば、きもののように決まった形を基本として、テキスタイルデザインで差別化するという考え方もある。あるいは、サリーのように、一枚の大きな布でボディを包んでしまうという服も考えられる。
 日本の温帯モンスーン気候には、ヨーロッパの地中海性気候に適したボディにフィットした服よりも、民族衣裳のように平面の布を巻き付けたような開放的な構造の方が適しているともいえる。
 そういう意味では、「キモノFAB」というコンセプトも考えられるだろう。

*有料メルマガj-fashion journal(147)を紹介しています。本論文は、2014.9.8に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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