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July 13, 2015

日本オリジナルファッションのコンセプト j-fashion journal(144)

1.明治維新と衣服の悩み

 社会的地位や職業、年齢、宗教等にとらわれず、自由な自己表現としてファッションを楽しめることは、とてもクールだ。日本人にとって当たり前のことでも、欧米の人達にはクールと感じるようだ。
 しかし、日本でも江戸時代までは服装は職業により細かく規定されていた。そして、職業用の衣服はフォーマルにも使われた。現在でも、鳶職の親方はフォーマルの場でも半纏を着用する。
 武士も階級により細かくドレスコードが決められていた。商人も、旦那、番頭、手代、丁稚等は明確に区別がつく格好をしていた。
 職人、農民、漁民等もそれぞれの地域、職種等によって細かく分かれていた。つまり、封建制度の中で細分化された身分や職業が外見から判断できたのだ。
 それほど裕福ではない庶民は古着を着用するのが当たり前だった。着物の一部が擦り切れれば、その部分だけを換えたり、継ぎを当てていた。

 農民、漁民は貧しかったし、新品のきものは決して安くなかったために、元の布が分からないくらい、継ぎを当て、ボロボロになるまで着用するのが一般的だった。
 そんな中でも、江戸や大阪など大都市の町民の服装には、流行があったようだ。特定の色や柄、羽織の丈、袖の形等が流行ったことが伝わっている。
 江戸末期には、錦絵や浮世絵、歌舞伎などはファッションメディアの役割を果たしていたし、当時の吉原は文人が集まる知的、芸術的サロンでもあった。現在のタイアップ広告のような広告手法も取り入れていたようだ。
 しかし、あくまでトレンドは職業的なドレスコードの下位に存在するものであり、一部の都市型生活者に限定されていた。 
 明治維新になって、封建的な社会制度、職業区分等が崩壊した。そして、丁髷からザンバラ頭となり、和服に加えて洋服が導入された。
 社会の変革は、社会的階層や職業の変革ももたらした。当然、和服のドレスコードも崩壊してしまった。一方で、洋服を導入したものの、その細かなドレスコードまで理解することはできなかった。
 明治の日本人の服装は、ある意味でアナーキーだったと思う。そして、この時代から、服装に関する混乱と悩みを抱えることになったのだ。
 
2.ビジネススーツというユニフォーム

 日本の紳士服は、昭和から平成に至るまでの期間で、急速にビジネススーツに集約されていった。
 江戸時代の衣服が個人の職業や社会的地位に従属していた。フォーマル、カジュアルの区別もないし、オンタイムとオフタイムの区別もない。常に同じ服を着ていたのだ。
 一方、欧米の服はTPOによるドレスコードが存在する。しかし、結局、この欧米の習慣は日本人に浸透することはなかった。
 日本人のTPOとは、和洋折衷であり、建前のシーンでは洋服を、本音のシーンでは和服を、という使い分けから始まった。会社に通勤する時にはスーツを着用し、家に帰ったら和服に着替える。やがて、その和服がジャージーになったり、カジュアルウェアになったが、明らかに欧米人のTPOとはニュアンスが異なっている。
 ビジネススーツに集約されたことは、日本人が階層や職業による衣服を選んだ結果ではないだろうか。誰が明文化したわけでもないのに、会社員はユニフォームのようなビジネススーツを着用した。合理的であるにも関わらず、欧米のようなジャケット×パンツのコーディネートは定着しなかった。
 加えて、大手メーカーの役員は、現場の工場を視察する時には、シャツにネクタイを締めた上にワーキングユニフォームを着用するという奇妙なスタイルが定着している。これは災害時に首相がシャツにネクタイの上に災害時のユニフォームを着用するのと同じ原理である。
 この場合、日本人は洋服のドレスコードよりも、職業や役割を表現する記号としての衣服を優先していることになる。
 このように考えていくと、日本人の服装原理は江戸時代から変わっていない。日本人が衣服を選ぶ時には、職業別ユニフォームの要素がTPOより優先するのだ。
 欧米人がクールだという原宿ファッションも、就職前のモラトリアム時期に自主的に定めたユニフォームと解釈できるかもしれない。その証拠に、中高年まで原宿ファッションを通す人は少ない。彼らは、やがて原宿ファッションから卒業していくのだ。
 
3.「クールジャパン」のファッション

 最近になって、外国人が様々な日本の事象やモノを「クール」と表現するようになった。「クールジャパン」とは、外国人による日本再発見かもしれない。
 最初に「クール」という評価を受けたのは、日本のマンガ、アニメだ。欧米のコミックやアニメは、基本的に子供向きの勧善懲悪の単純なストーリーが中心だった。しかし、日本のマンガやアニメは小説以上に豊かな世界観、ストーリーを持っている。
 複雑な世界を描写したビジュアルなメディアは、江戸時代の「絵草子」に源流があるように思う。その独自性が「クール」と評価されたのだ。
 原宿などの若者ファッションが「クール」と評価されるのは、社会的、宗教的タブーに関係ない自由が存在していることだ。
 逆に言えば、日本以外の国では、服装は社会的に規定されているということである。反社会的、反宗教的なファッションは社会的に許容すべきものではなく、社会を守るために排斥されるのが普通なのだ。
 日本で若者の奇抜なファッションが許容されるのは、「あの人たちはああいうグループだから」と思われているからだ。江戸時代も物売りは奇抜で目立つ格好をしていた。しかしそれが特定の職業、あるいはグループであると解釈すれば抵抗はなくなる。それが多神教的な価値観なのかもしれない。
 ファッションそのものが「クール」なだけではなく、そういうファッションを許容する街や人々、多様な価値観が「クール」なのである。
 「クールジャパン」とは、西欧社会とは異なる価値観を持った特殊な国を表現している。キリスト教やイスラム教社会のような一神教的社会ではない、多神教的社会。多様でありながら、ムラ社会独特の連帯感や相手を気づかう人々が住む国。古代からの伝統と、最先端のハイテクが同居する国。
 こうした「クールジャパン」のイメージの中で、我々はどんなファッションを志向すべきなのか。もちろん、着用者である我々自身が快適でなければならない。
 また、観光立国という意味でのファッションも考えるべきではないか。原宿や渋谷のファッションは需要な東京の観光資源となっている。東京以外の地方都市のファッションはどうあるべきなのか。
 
4. シニア貴族のユニフォームとは?

 日本は高齢化している。(以前ここにも書いたが、)働かずに、貯蓄と年金で生活する、シニア貴族層が大量に誕生している。
 ここで考えたいのは、彼らのファッションである。日本のファッションは、江戸時代から現在に至るまで、職業を基本に設定されてきた。日本のシニア貴族は、どのようなユニフォームを選ぶのだろうか。
 私は、このシニア貴族のユニフォーム提案こそ、大手流通や大手アパレル企業の使命ではないか、と思うのだ。
 もちろん、シニアになる程、趣味もライフスタイルもファッションも多様化するので、ユニフォームと言っても、多様化するのは避けられない。しかし、共通する要素もあると思うのだ。
 まず、第一には、日本の高温多湿の気温に対応した快適な服であること。少なくとも、ネクタイ姿はあり得ないだろし、タイト過ぎるシルエットも窮屈だ。ある程度のゆとりと開放的な構造が基本になると思われる。
 第二は、トレンドに左右されないこと。同じ服を継続して着用できることが重要だ。これは、洋服のカジュアルウェアでもいいし、きものでもいい。
 トレンドを追いかけるのではなく、良質な素材で作るベーシックなアイテムである。
 第三に、条件次第だが、「日本製であること」という条件も入ってくるのかもしれない。
 安心安全、サイズ対応、リフォームや回収など、アフターサービス等の提案ができれば、国産であることの意味も見いだせる。
 こうした条件の中で、流通各社、アパレル各社、縫製メーカー、デザイナー等が提案するべきではないだろうか。少なくとも、顧客はそれを待っていると思うのだ。

*有料メルマガj-fashion journal(144)を紹介しています。本論文は、2014.8.18に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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