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July 29, 2015

ニットのインパナトーレを育てよう!j-fashion journal(154)

1.昔ながらのニット展示会

 先日、久々にニッター(ニットメーカー)の展示会に行った。驚いたのは、30年前と何も変わっていないこと。
 昔はニット産地ごとに組合が展示会を開いていたが、繊維関連の補助金が打ち切られ、組合員が減少し、産地展はなくなった。
 今回、見たのは東日本ニット展という名称だったが、出展者は全員山形のニッターだった。
 山形産地はローゲージ、ミドルゲージのニットらしいニット製品を作る産地だった。シルエットよりも、糸使い、編み地の変化で見せるニットである。仕事も丁寧で付加価値の高い商品を得意としていた。
 しかし、手間が掛かるニットは、真っ先に中国製品との競合に陥った。
 同時に、トレンドがヤング化、カジュアル化に振れていたことも不利な条件だった。重くて高価なニットよりも、軽くて安価なカットソーが好まれたのである。
 婦人服のカットソーは、デザイン変化が遠かったので、日本縫製が残った。しかし、ニット(横編み)は、ほとんどが中国生産に変わってしまった。

 かつて、どの百貨店にもセーター売場が存在した。セーター売場に商品を提供するニットアパレルも多かった。しかし、セーター売場が消えたことで、ニットアパレルも淘汰された。
 最近、市場がシニア化し、高額品が動くようになった。トレンドも軽くタイトなシルエットから、ルーズで長いシルエットに変化している。ニットにとっては、まさに千載一遇のトレンドになっている。これから、何年間かはニットらしいニット、ハンドクラフト的なニットが売れるだろう。それが分かっているからこそ、昔ながらの展示会を歯がゆく感じる。
 
2.OEMメーカーもデザイナーが必要

 日本のニッターは、アパレルのデザイナー、あるいは、企画会社のデザイナーからの指図通りの製品を作ることが仕事だと考えている。しかし、最早、ニットデザイナーも激減している。
 かつてのニットデザイナーは、手編みや家庭機が出来て、編み地の組織を指示することができた。編み機の知識を持ち、糸とゲージの関係等も理解していた。勿論、寸法の指示もできたし、ニッターと対等に話ができた。
 しかし、ニットデザイナーも高齢化してしまった。国内生産から中国生産に変わったことで、後継者も育っていない。多くのデザイナーは、布帛の知識しかないので、雑誌の切り抜きやサンプルをコピーするしかないのだ。
 こういう状況は、ニッターが主体的な企画を取り戻すチャンスでもある。企画提案力があれば、アパレルだけでなく、小売店にも売り込むことができるだろう。
 香港ファッションウィーク等の海外見本市に出展しているニッターは、少なくとも新作のサンプルを展示している。OEM生産といえども、見本市には新しい見本を出さなければならない。新しい見本が作れないのでは、OEM生産とも言えない。単なる下請けメーカーに成り下がってしまうのである。
 私は、産地のニッター一社に一人はデザイナーが必要だと思っている。ニッターの展示会は、そのデザイナーの新作が展示されるべきだ。デザイナーを雇えないのであれば、契約でも良い。

3.インパナトーレというビジネスモデル

 イタリアのテキスタイル産地、プラート産地には、インパナトーレと呼ばれる職種がある。
 インパナトーレは、テキスタイルメーカーと契約して、テキスタイルの企画を行う。そして、テキスタイル製品をアパレルメーカーに売り込む。取引は、テキスタイルメーカーとアパレルメーカーが行い、テキスタイルメーカーはインパナトーレに一定の報酬を支払う。
 プラート産地のテキスタイルメーカーは、機械設備と生産技術は持っているものの、「トレンド情報分析」「企画」「マーケティング」「営業」の機能を持っていない。
 インパナトーレは、「トレンド情報分析」「企画」「マーケティング」「営業」の機能を持っているが、生産設備、生産技術,資本力がない。
 そこで、テキスタイルメーカーは、自社の生産設備をインパナトーレに開放し、協働ビジネスを行うのである。
 インパナトーレは、テキスタイルメーカー何社かと契約することもあるし、テキスタイルメーカーの社長以上の収入を得ることもある。
 日本人にとって、インパナトーレは問屋に限りなく近い業態である。しかし、問屋は価格決定権を持っているが、インパナトーレは持っていない。価格決定権はあくまでメーカーが持つ。インパナトーレは一定の歩合の報酬を受け取るだけである。
 メーカーにとって、問屋は商品を買い取ってくれる。しかし、問屋は自由に価格を設定することができる。メーカーが大量に販売しようと思って、価格を抑えても、高い価格を付けられるかもしれない。メーカーが高級品にシフトしようとしても、問屋が買ってくれなければ、問屋の意向に従うしかない。
 そう考えれば、インパナトーレを活用したビジネスの方が、よりメーカー主体のビジネスモデルであることが分かるだろう。

4.ニットインパナトーレ構想

 この仕組みをニットに応用できないだろうか。インパナトーレという名称は馴染みが薄いので、「営業企画代行」という名称でも良い。
 「営業企画代行」は、企画を組立て、メーカーがサンプリングを行う。企画費用は「営業企画代行」が負担し、サンプル生産はメーカーが負担する。
 「営業企画代行」は、アパレルや小売店にセールスを行う。展示会の費用はメーカー。展示会でセールスするのは「営業企画代行」。 「営業企画代行」の報酬を決定するのは、二つの方法がある。
 第一は、メーカーが「営業企画代行」の報酬歩合を乗せた販売価格を決定し、インパナトーレはその歩合を受け取る。
 第二は、メーカーが出し値を決めて、「営業企画代行」がそこに自らの利益を乗せて販売価格を決める。但し、価格リストは、メーカーとインパナトーレが共有する必要があるだろう。
 いずれにせよ、取引主体はメーカーであり、価格決定権を放棄することはない。
 また、「営業企画代行」は資本がなくても、オリジナルの商品でビジネスができる。
 そして、「営業企画代行」が存在すれば、メーカーの企画提案力は教科され、メーカーの展示会の反響も大きくなるに違いない。
 しかし、能力のある「営業企画代行」がすぐに見つかるとは限らない。ニッターも「そんな人がいれば、理想的だけど、いるわけない」と思っているだろう。
 そこで提案だが、「ニットインパナトーレ育成講座」を実現することはできないだろうか。しかも、座学ではなく、インターンシップとインターネット通信教育を組み合わせた形態で行う。
 期間は、1年間。最初の半年は、昼間はニッターで働きながら、仕事と技術を覚える。夜、休日を利用して、インターネット通信教育を受けてもらう。
 次の半年は、商品企画と営業について、これもインターンシップのような形態で、プロの指導の元で、具体的な商品企画とデザインを学び、ニッターにサンプル依頼を行う。
 こんな職種を育成することが、日本のニット製造業復活につながるのではないか、と思う。 

*有料メルマガj-fashion journal(154)を紹介しています。本論文は、2014.10.27に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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