My Photo

お知らせ

無料ブログはココログ

« モチベーション3.0を考える j-fashion journal(152) | Main | ニットのインパナトーレを育てよう!j-fashion journal(154) »

July 14, 2015

テキスタイルのメイカーズ革命とは? j-fashion journal(153)

1.面白いテキスタイルが市場にない

 最も面白いテキスタイルが見られるのは、産地の機屋だ。整経した経(タテ糸)を用意し、組織と密度を決めて、緯(ヨコ糸)を打っていく。基本的な試織をした後に、遊び心が芽生える瞬間がある。「あの糸を打ったら面白いかもしれない」と手元の残糸を使って試織をする。その切れはしを手で洗ってみる。
 産地に通っていると、そんなテキスタイルを見せられる。「こんなのできたんですけど、何かに使えますかね?」
 私も必死に出来上がりを想像する。ジャケットはどうかな。ワンピースの方が面白いかも・・・などと頭の中で目まぐるしくシミュレーションを行う。
 第三者の勝手な想像に過ぎないが、機屋という仕事の中で、コスト計算をする前の試織が、最も楽しい作業なのではないか。そして、アパレルのデザイナーも面白い生地に出会って、「これで何を作ろう」と頭を悩ませる時が最も楽しいのでばないか。

 しかし、こういった面白いテキスタイルは商品化されないことが多い。一定の販売量が見込めないものは、商品化されないからだ。そして、一定の販売量が見込める商品とは、今までに見たこともない面白いテキスタイルではなく、程よくトレンドに乗った売れそうな顔をしたテキスタイルである。
 機屋が試織した中で、面白いテキスタイルがボツになり、問屋の段階で更に面白いテキスタイルはボツになる。そして、アパレルのデザイナーが選んだ後も、展示会前の会議でいくつかがボツになり、展示会でもボツになる。
 一般の消費者が店頭で見ている商品は、このように選ばれたテキスタイルである。私が面白いと感じるテキスタイルが市場にないのは当然だろう。
 
2.クリエイティブなテキスタイルのマーケットプレイス

 面白いテキスタイルで服を作れば、そのデザイナーは高い評価を受けられる。このことは、日本国内より海外で顕著なことかもしれない。
 デザイナーが評価されるのは、「商品が大量に売れそうだから」という基準ではない。「大量には売れないだろうが、時代の気分を良く表現している」、あるいは、「時代性を感じるオリジナリティがある」ということで評価されるのだ。
 しかし、テキスタイルにおいて、その種の基準で評価される場がない。量産できるか否かという基準しかないのだ。その結果、日本のデザイナーが国際的に評価される可能性が低くなっているのだとしたら、大きな問題である。
 現代日本のテキスタイルは、デザイナーと一緒に取り組む開発素材において真価が発揮されると思う。それを実現するような仕組みはできないのだろうか。
 これまでもテキスタイルのアーカイブを保存するという試みはなされていた。しかし、アーカイブは過去の記録に過ぎない。それが量産されたのか、それとも試作で終わったのか、等は分からない。テキスタイルメーカーが参考にすることはできるが、アパレル企業やデザイナーが活用するのは難しい。
 テキスタイルアーカイブではなく、最新の試織サンプルを集め、それをアパレルデザイナーが使えるようにすることはできないのか。

3.最低ロットをクリアする仕組みを

 オリジナルのテキスタイルを作ろうとすれば、必ずぶつかるのが最低ロットの壁である。しかし、最低ロットと言っても、その内容はいろいろだ。例えば、経(タテ糸)が用意されていれば、少ないロットでも生産できる。しかし、経から作ろうとすると、整経ロットになってしまう。
 自社で試織した見本ならば、ほとんどが整経はできているはずだ。というより、整経はできていて、緯(ヨコ糸)さえ打てば生地になるのであれば、少ない量でも生産することはできる。
 次に、染色のロットがある。これも着分染めができないわけではない。あるいは、ジャカードの柄違いの生地をつなげて染めることも不可能ではない。
 試織の段階で、デザイナーと話し合い、経共通、あるいは、同色で後染めというようなことができれば、かなり少ない量でオリジナルのテキスタイルを開発することが可能になる。
 以上のような相談窓口を設置するのが一つの方法と言えるだろう。
 第二の方法は、企画をオープンにして、最低ロットに達するまで注文を集めるという方法である。例えば、m単位の切り売りを含め、予約が100mに達した段階で、生産するという方法である。
 但し、デザイナーがコレクション用に使うのであれば、バッティングしないような工夫も必要だろう。
 また、いずれの場合も、決済をルール化することが必要である。テキスタイルメーカーの多くは、デザイナーに対して支払いの不安を抱えているものだ。したがって、クレジット決済、あるいはエスクローサービスを活用することができれば、この不安は解消できる。
 これが実現できれば、テキスタイルメーカーとのネットワークがないデザイナーもオリジナルテキスタイルを開発し、コレクションに使うことができる。
 
4.効率追求からクオリティ追求へ

 産業革命以来、あらゆる生産機器は効率追求を第一義としてきた。繊維機器も同様であり、シャトルを使わない革新織機が開発されたのは、生産効率を高めるのが目的だった。現在も人気が高いセルビッチ(耳付き)のデニムとは、シャトルを使う旧式織機を使ったデニムである。速度が遅く生産効率は低いが、より高密度でクオリティの高いデニムが織れる。
 革新織機は生産効率が高いのだから、より利益が取れるかというと、そんなことはない。革新織機が導入された段階では、旧式の織機を基準にした工賃計算だってので、利益は確保できたと思う。しかし、革新織機が一般的になれば、その生産効率を基準に工賃が決められる。生産効率が上がっても、利益は上がらず、高価な織機の支払いだけが残るということにもなるのだ。
 工業用ミシンもより高速に縫製することを追求して発展してきたが、それで製品のクオリティが高くなったわけではない。むしろ、低速の旧式の見いだせないミシンの方が味が出ると好まれることも多いのだ。
 今後は、機械の開発においても、生産効率追求ではなく、より付加価値が上がり、高く売れる商品が生産できる機械というコンセプトが必要ではないか。
 その代わり、オペレーターにはある程度の技術が要求されても良いと思う。
 私のイメージは手動に近い旧式の機械にコンピュータをつなげたような機械だ。プログラムによって、いろいろと発展する可能性があるような機械である。
 例えば、均一なものができるのではなく、ゆらぎを感じさせるようなムラができる機械。そのゆらぎが何らかのセンサーやアナログの信号と連動するような仕組みはできないだろうか。
 あるいは、高速から超低速まで速度がコントロールできる機械。特に、低速の時に何ができるかがポイントになる。手作業に近い速度にすることで付加価値が上がることはできないのだろうか。
 以前、京都で手織りの速度で動く、レピア織機を見たことがある。低速なので、複雑な組織も可能だし、切れやすい糸をかけることもできる。低速で動く機械には、高付加価値の可能性がある。

*有料メルマガj-fashion journal(153)を紹介しています。本論文は、2014.10.20に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

« モチベーション3.0を考える j-fashion journal(152) | Main | ニットのインパナトーレを育てよう!j-fashion journal(154) »

「ファッションビジネス」カテゴリの記事

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

« モチベーション3.0を考える j-fashion journal(152) | Main | ニットのインパナトーレを育てよう!j-fashion journal(154) »